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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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魂の闘い




 ケイは書類という形で積み上げられた仕事の中で奔走していた。
 あれもこれもそれも全部。全部なしとげなければ。自分が元凶だから尚更その気持ちは強く、書類に目を通し続けてサインする、その作業が止まることはない。
 やっと城の補修関係の手続きが終わり、あとは最大の課題となる兵士の補充を残すのみ。それでもまだまだ書類は積みあがったままだ。手を休めることなく仕事を続けていると、執務室の扉を叩く音があった。

「どちら様ですか」

 書類の末端にサインをしながら扉の向こうに問いかける。

「あー、俺です。シキです」
「今ちょっと立て込んでる。急ぎじゃなければ後の方がいいんだけど」

 とはいえ、いつ終わるともしれない仕事だ。後というのがいつになるのかはケイ自身にもわからなかった。
 これまでこの執務室の扉を叩いた部下はそうやって取りあえずは帰らせていたのだが、シキはどうやら立ち去っていない様子だ。

「ていうか、俺が用事ってんじゃないですよ。届け物です」
「届け物? あ、じゃあ入って」

 そう声を掛けると、失礼します、という声と共に一礼してシキが執務室に足を踏み入れる。確かにその手には何か握られている。

「届け物って?」
「……すげえ言いにくいんですけど、……国書です」

 ケイはペンを机に置き、はははははは、と乾いた笑いを披露してから椅子ごとシキに背を向け、目に見えてずどーんと落ち込んで見せた。
 その落ち込み方は異様だ。さっきまでバリバリ仕事をこなしていた執政官の姿はどこにもない。

「……なあシキ君、それここで燃やしちゃってさ、郵便事故ってことにできないかなぁ……」
「ご自分が火炙りになる覚悟があるのならどうぞ?」
「……ちょっと、それシャレになんないから」

 シキの一言でケイは余計落ち込んだようだった。
 城の補修、兵の補充、君主を城へ呼び戻す。全ての仕事をケイは執政官としてそつなくこなしていたが、最大の問題を後回しにしていた。
 ケイを通さずに勝手に君主が契約したのだろうが、一応国家間の約束事だ。盗賊を捕らえたら引き渡すと。それを、いくら最高の権限を与えられているとはいえ、執政官たる立場の人間が逃がしてしまったのだ。その上相手があの国のヤマトとなればややこしくなるのは当然だった。
 うなだれながらシキから郵便を受け取り、その封を切る。

「…………」

 ケイの周りの空気が一瞬ぴしっと固まった。

「……なんて書いてあったんですか?」
「……ははははは、やっぱりこれ燃やしといてもらえる?」
「ま、そうだよな。わざわざ手渡しで来たんだし、燃やそうが何しようがすぐそこに末路はあるってことで」

 ぎょっとしてケイはシキを睨むように見つめる。何だか聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がしていた。
 ……手渡し? 誰が手渡すというのか。決まっている、使者だ。使者以外に何がいる。
 しかし一抹の不安を拭い去ることができずに、ケイは一応シキに訊ねてみることにした。

「……て、手渡しって?」
「いや、だから、お隣の国の代表様が、河を越えてはるばると」
「……シキ君、お、大人をからかうもんじゃないんだよ?」
「目に見えて動揺しまくってるくせに何が大人ですか」
   
 未だに信じようとしないケイを見てか、シキはやれやれと息をつき、仕方無しに口を開く。嘘を言っているわけではないだろうことはケイもわかってはいたが、この忙しい時には相手にしたくない人間なのだ。

「あのですね、俺だって人がいないから臨時とはいえ門番やらせてもらってんです、役目くらい果たしましたよ。こっちに来るなんて聞いてなかったから、約束がないなら後日でって言ったんですけど、『ならこれ国書だから、届けといて』って」
「……で、その人は今……?」
「しばらく観光するって。この前来た時はとんぼ返りだったから見て回れてないとか言って、お付きの人と市場の方に」

 ――雲隠れするなら今のうちか。
 瞬時にそんな考えが頭を過ぎったが、その思考はけたたましい音と共に砕かれることとなる。
 とんでもない音が響いて、ドアが蹴破られる。ドアのすぐ近くにいたシキは驚いて飛び退いた。

「よう、ケイさん。ひ・さ・び・さv」
「ええお部屋どすなー。流石執政官サマは格が違うわぁ」

 暴れ馬の来訪に、取り合えずシキは上司たるケイを庇うように腕を広げて後ずさったが、その肩を後ろからケイが叩いた。何をしても無駄だと判断したらしい。
 しかし、目の前の二人の格好は異様だった。おそらくヤマトであろう人物はおそらく鬘であろう金色の髪を被っているし、もう一人はきっとツヅキなのだろうがよくわからない怪しげなオカルトじみた小物をいくつも手にし、二人とも頭からしっかりとフードを被っていた。
 似ても似つかないが、まさか。

「……えーと、盗賊のつもり、だったりする?」

 目の前の来訪者がにいっと嬉しそうに笑う。
 いくら実物を目にしたことがないとは言え、酷い。特にツヅキの変装は変装ともいえない。術を使うという情報だけを頼りに作り上げた感じだ。

「このカッコして市場歩いて回ったらみんな物恵んでくれるのな。いやあ、しっかりした執政官サマがいると国民もみんなしっかりするもんなんだなぁ」
「ちょーっと大股で歩いて、ちょーっと道端の物蹴飛ばしたりしただけやのに素敵な町やわ。遊び心で適当に呪文みたいの唱えるだけで道開けてくれはるし」
「いい町だなぁ本当に。――つーか、さっきちょっとばかし市場の真ん中でゴタゴタ起こしちゃってさ☆ 城で殺された兵士の親とか言って切りかかってきたもんでさぁ」
「俺らは別人やってちゃんと主張したのに酷いお人やったわ……」
「正当防衛正当防衛」


「……シキ君、市場の方、頼んでいいか?」
「……勿論デス。……ご武運を」
「いや、本気でシャレになんないからなそれ」


 小声でシキに市場の沈静化を指示すると、シキは振り返って深く一礼した。まだ死ぬと決まったわけではない、まだ。まだ分からない。 
 ヤマトとツヅキ、その二人の隣をすり抜け、シキは早々と執務室を出て行った。彼らの話は十中八九本当だから、きっと市場は地獄絵図だろう。盗賊の再来だとか騒いでいるのかもしれない。

「……遠路はるばるようこそ」
「もてなし方が足りねぇなぁ? 危うく門前払い食らうとこだったし」
「アポ無しや言うても、こちらから赴いてんのやからもう少し対応があったんとちゃうん? ――約束不履行なんやし」

 息を呑む。
 それはそうだ。向こうの言い分は正しい。
 
「執政官の立場とはいえ、あんさん君主に雇われてる身ぃやないの? そんな人が上の許可も仰がず一存で大それたことを。まだ首があるのが不思議でしゃあないわ」
「……それは、」

 被ったフードを取り去り、身につけた小物を外していくツヅキが、きろりと鋭い瞳でケイを射抜いた。
 何か、……何かとてつもない裏がありそうな表情だった。上司部下の関係について、何か彼なりに思うところがあるのだろう。
 しかし、それを抜きにしたとしても。今の台詞を他の誰に言われたとしても、ケイは頭を下げざるを得ないだろう。自分の勝手な事情で、相手を切り伏せることさえ敵わなかった。

「こら。お前こそ俺のいる前で出すぎた発言すんな。俺の台詞だろうが」
「俺ってばとことん上司に尽す良い部下タイプやから黙っとけへんのですわv そんなんヤマトはんが一番知ってるくせにぃ」
「――ま、こいつのいう事は正しい。な、ケイさん」
「……ああ」

 国家の利益を害するものを排除する。上に立つ者としてその判断をするのは当然だ。どんなに不透明で後ろ暗い利益だったとしても、そんなものはどこの国にでも存在する。だから、国家にとって害のある人間は秘密裏に処理されなければならない。あの盗賊たちはいい加減有名になりすぎている感はあったから、秘密裏に処理しようと公開処刑だろうと影響は大差なかったろう。今まで捕らえることもできなかった盗賊たち、しかも両人を捕らえて処刑の一歩手前にまで持ち込んだのだ。あれが無事遂行されていれば、国同士の連結も密になっただろう。
 ――今回の一件で国に不利益をもたらしたのは、他でもない自分だ。

「……俺の一存で彼らを逃がした。脱獄を許したのは、元々彼らを捕らえられるとは思っていなかったことも原因だ。それに、脱獄の手助けをしたのは何故彼らに加担したかも分からない、君たちと同じくらいの青年だ。少年といってもいいかもしれない。理由もわからずにまとめて処罰するのは、……気が引けた」

 我ながら適当な理由をでっちあげていると思う。
 心底そう思っていないわけではない。多少は考えている。けれど、ケイにとって本質は別のところにある。執政官の立場にありながら、騎士に拘り続ける愚かな自分。すべての原因はそれだ。

「すべて俺が悪い。煮るなり焼くなり好きにしてくれていい。彼らに施す予定だった刑を代わりに受けてもいい」

 向こうにとってもそれが一番楽だろうし、それで解決することなのなら安いものだ。国交断絶というのは避けたいところ。そんなことは相手方も望む話ではないだろうし。
 ツヅキが上目でヤマトの様子を確認するのが見て取れた。
 当のヤマトは、つかつかとケイに近づくと、その肩を強い力で掴み、鼻先が触れるほどに顔を近づけた。

「……勘違いしないで欲しいですね。何であんたが全部悪いことになる? 悪いのは盗賊サマご本人でしょうが。さすがに俺でも、全部が全部誰でもいいってわけじゃないんでね」
「……ッ、なら、何のために来たんだ……。そう思ってるならわざわざこっちにまで来る必要はなかったはずだ」
「機嫌悪かったから気分転換ついでって奴。チャラにしてもいいけどさ、ひとつ条件呑んでくんないかな」

 先ほどのツヅキの視線と同じくらいか、それよりも強い力が伝わってくる。とんでもない条件なのだろうか。しかし、ケイを身代わりにするようなことはしたくないようだった。なら、他に何が?
 目を逸らすことなく、ケイは口を開いた。

「……俺に、何をしろと」
「簡単。……あんたと例の盗賊サン、どっちが強いんだろうなーって、知りたいだけ。いつか機会があったら殺し合い、してみてくんない?」

 意味の無い殺し合いはできない。無駄な殺生を、神が赦してくれるはずはないのだ。君主の命だとしても、守るべき契約だとしても。

「何に固執してはるん? 自分の立場、わかっとるんやろ?」
「あんたはこの国の執政官なんだろ? ――実力があるなら、自分でできることはやっていいんだ。……騎士としての自分は、今は捨て置いた方が無難だと思うけどな」

 ――神の命に忠実に従うべきなのは、騎士の仕事だ。
 悠長にそんなことを言っていられる立場なのか。今、自分は何者なのか。
 声が、選択を迫る。
 騎士を捨てることができるのか、できないのか。
 今はどちらを選ぶ時なのか、もう子供ではない、わかっている。

「……そんな機会、あるかどうかわからないよ」
「分かってる。何年先でも構わない」
「……第一、そんなこと知ってどうするんだ」
「俺より強いかどうかが分かる」
「――俺は君ほど偉くも強くもない。無駄だと思う」
「いいや?」

 ヤマトの大きな手が、ケイの肩を軽く押して突き放した。 
 ヤマトの声にはいつも迷いが無い。どうしてそこまで自信が持てるのかと思うほどに真っ直ぐだ。

「あんた馬鹿なんだもんな。負けますよ」

 吉報お待ちしてます。
 それだけ言い残して、隣国からの来訪者は部屋の外へと消えた。





「あのまま追い詰めたら、三日後にでも首刈ってきそうなもんやったのに」
「いいや、俺は身代わりになるに一票だね」
「そんなんやりようですわ。やり方によってはどうにでもなります」
「そうだとしても、あの人はどんな理由があっても、一週間一ヶ月じゃ誰も殺せない」
「だからって無期限やなんて」

 小舟に揺られながら、二人はそんな会話を繰り広げていた。
 砂漠の国の南端から舟に乗り、かなり長い距離を舟で渡る。最短距離を選ばないのはもちろん、本国に帰って仕事をするのが嫌だというヤマトの意見のためだ。

「甘いなぁヤマトはん。そんなこと言うてると、吉報聞く前に俺に殺されてまうわ」
「そんな簡単に殺させてやんねぇよ。嫁と子供に見守られて眠るように死ぬのが夢なんだ」
「それやったら誰の目も届かへんような暗いところで送って差し上げます」
「うわあい、最悪の心配り嬉しいなぁ☆」

 いつものやり取りだ。
 これは誰が聞いたって冗談で、おふざけだ。ヤマトだってそうは思っている。
 けれど、ツヅキは確実にヤマトの胸を貫く何かを懐に忍ばせているはずだ。それが分かっているから、ヤマトも常時武器を携帯している。
 殺されてやるものか。日々が魂を守るための緊張状態だった。
 ただ、ツヅキもすぐにどうこうしようというわけではなさそうなので、緊張状態は軽く緩んだ状態ではあるのだが。

「あの執政官サマが盗賊はんに勝てるとお思いで?」
「さあな。けど、負けないよあの人は」
「差し違え?」
「それもどうだか。ただ、自分の命の他に守るものがある奴は、絶対に負けない」

 馬鹿馬鹿しい話を聞いたかのようにツヅキは笑いながらヤマトから視線を逸らした。
 砂漠から段々と離れ、肌に馴染みのある冷気が近づく。

「――だから俺も、お前には負けない」
「――その自信粉々に砕いたるわ。覚悟しとき」

 二人がフードを目深に被ると、見慣れた雪がちらつき始めた。




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2008.06.30(Mon) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

またあした


「ふえー、彼氏サン一人暮らしなんだ? まだ若いのに」
「これまでも野島先輩の家にお世話になっていたようですから、独立するだけで本質的には変わりませんわ」
「あたしじゃ考えられないなぁ……」

 みのりも部活の無い放課後、二人でよく行く喫茶店に足を向ける。
 みのりはいかにも甘そうなアイスキャラメル・ラテを頼み、私は紅茶を頼む。いつもはホットで頼むのだけれど、今日はみのりに合わせて私もアイスにした。
 
「で、新居はどんな感じ?」
「広いお部屋でしたわ」
「お兄ちゃんの部屋とどっち広い?」
「断然、炎而様のお部屋の方が」

 真紘さんの部屋も広い。それは父様に宛がってもらった部屋だからで、真紘さんは父様の申し出に甘える時になるべく狭い部屋をと口を酸っぱくして言っていた。当然だろう。一人暮らしにあまり広い部屋など必要ない。
 キャラメル・ラテをストローでかき回しながら、へぇえええ、とみのりは感嘆の声を上げた。あれより広い部屋、ということで相当インパクトが強かったようだ。

「彼氏サンの家ってすごいんだね……。親御さんの持ち物なんでしょ?」
「ええ、そう伺ってます」
「それでお兄ちゃんの部屋よりひっろーい部屋もらってるんでしょ? 芹沢に負けず劣らずって感じ?」
「規模的にいえば芹沢の方が大きい気はしますけれど、」

 するけれど、どうだろう。
 結局同じくらいのような気がしている。
 断定的なことが言えないのは、私が彼の実家のことをよく知らないからだ。
 前に父様に聞いてみたけれど、「炎而に聞いてみたら?」とだけ言われた。あの喋りたがりの父様が自分から話さないのだから、裏社会、とまではいかなくても、そう軽く話すことを躊躇うような家柄、ということなのだろう。

「……けれど?」

 私の沈黙を不思議に思ったのか、みのりが大きな黒と薄い青の瞳でこちらをのぞき見る。

「なんでもありませんわ」
「えー、何でー? いじわるっ」

 こんなこと言ったって分からないだろうし、第一芹沢の構造さえ理解していないみのりだ。縁を切っているとはいえ、その体には芹沢の血が流れている。しかも父様のお兄様、つまりは長男の血が。
 いつひょんなことから芹沢に呼び戻されるかわかったものではない。もし父様も母様も私も一度に死ぬようなことがあれば当然長男に目は行くだろうし。
 ……まあ、そんなことないだろうけれど。

「あ、それはそうと、椿最近野島先輩とも仲良いでしょー? 何、浮気ぃ?」
「どうしてそんな話に。いろいろお話ししているだけですわ」

 みのりが炎而様のことを「彼氏サン」と呼ぶのはもう訂正も面倒だから無視することにしても、野島流風と喋ることが浮気につながるというのがよくわからない。
 単に話を聞いているだけだ。最近エンジさん元気ですかー、とか、その他諸々。この人も私と彼を恋人関係にあると思っているから、無闇に訪ねるのが憚られるらしい。この前彼に会った時にその話をしたら、連絡よこしてくれたら歓迎するのに、と苦笑していた。
 それと、野島流風は私が水城樹理と仲が良いから、ということでもよく話をもちかけてくる。私の記憶している範囲では随分と仲が悪かった気のする二人だが、いつの間にか仲良くなっていたらしい。……もしかしたら、野島流風が一方的に、という可能性もあるけれど。

「人の話ばかりするのはよくありませんわね、みのり?」
「んー? あたしに浮ついた話はないのだよ」

 ストローでグラスの中の液体を吸い上げ飲み込んでから、みのりは可愛らしく笑った。無いわけがない。私よりずっと年相応で、母親譲りの顔立ちのみのりが。

「冬二さん、でしたか? 大分好かれていたでしょう?」
「え、まあ、いや、ねえ。目がおかしいってことで」
「まあ。お母様を貶すものではありませんわ。よく似ているんですから」

 それを言うと、流石のみのりもそれだけは自覚しているのか、うう、と唸ったまま黙ってしまった。まあ、何も言わないのだから進展も後退もないのだろうなとは思う。あまりしつこく言うと怒り出すのでそれ以上は言わないことにする。
 アイスティーを飲み干して、携帯のディスプレイで時刻を確認すると、もういい時間だった。席を立ってお代を支払う。大抵いつも二人で来るから、二人分を交代で払うことにしていた。今日は私の番。
 ドアベルを鳴らして外に出、帰ろうと歩くみのりとは逆方向に私は向かう。みのりがまた不思議そうに振り向いて私を見た。

「どーしたのー? どっか寄るとこあるなら付き合うよ?」
「いいえ。今日はこれから約束が」

 一時間後に、彼と会う約束がある。
 そこまで言わなくても誰との約束なのかわかったらしいみのりは、あーあ、とわざと大きなため息をついた。

「幸せそうで羨ましいですねー。はいはい、あたしはさっさと帰って宿題でもしてますよーだ」
「それが賢明ですわ」
「何よそれー、皮肉って言っただけなのにっ」
「みのりが宿題なんて言葉持ち出しては皮肉に聞こえませんわ」

 ふてくされてみのりは私に向かって子供のように舌を見せると、軽やかに走っていく。夕焼けの中、横断歩道の手前でみのりは振り向いてこちらに大きく手を振った。

「……また明日」

 小さくなるいとこの背中に、私も小さく手を振り返した。




2008.06.29(Sun) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

DOESって
ダズって読むもんだと思ってたらドーズなんですね。(無知)
アリス九號がアリスナインだと知ったときくらいの衝撃がありました。


今ちょっとリベリオンでギャグっぽいの書いてみたいなあと妄想中。あくまで妄想中。
書類の山に追われてるケイさんをヤマトとツヅキ君が爽やかーに訪問する話です。
どうなるかなあ。この話でじゃなくて、もっと後に盗賊さんたちに会ってもいいと思ってるんだけど。



ケイさんが娼婦に対してどんな感じなのかは、……あれですよね、創造主に聞くのが一番早い。(笑)
まあでもケイさんには私の妄想と理想を詰め込んでるのでキャラ設定違うか。違いすぎるか。
もうアンドゥーにはとことん理想家でいてほしいと思うとともに、ものすごい現実主義でもあって欲しいような気がするので、そういうことには冷めてそう。
だってほら、叶わない想いを抱えながら戦闘に向かうのが騎士のロマンスだからさ!!(大好き)
だからあれですよね、恋愛と結婚についてリベリオンのアンドゥーに聞いたら、「恋愛と結婚は究極的に別物だと思う。……けど俺は一致してればいいと思ってる」とか言い出すんだと思います。現代では受け入れられない人じゃないか……!(何)
ていうか騎士にとって恋愛と結婚が別なのは当たり前じゃないか。お家至上主義だぞ。
いや、いいよねえ騎士道物語。夏休みに手出したい。うん。
というのは置いといても、娼館を利用することはきっとないにしても、存在は受け入れなきゃいけないものだと思ってるだろうなあ。
だって生活に困ってる若い人が結局最後に行き着くのって大体身売りなわけだし。国として何か対策を取れないのであれば、売春によって生活している人を非難するようなことは立場上しちゃいけないことだと思ってて欲しい。何か対策が取れるならそりゃあない方がいいだろうけど、生活苦の人は立場が上の人の目に見えてるよりももっと実際はいるもんだろうし。


アンドゥーはどこまでもアンドゥーでいてほしいよ……!
いつか清浦を出そうと思ってるんだけども、清浦は馬鹿だけど意外と賢王だったしないだろうか。
この国の執政に加わりたいと思うんだからそれなりの人だったはず。
アンドゥーは騎士として清浦に雇われたんじゃないんだよ……! 自分は騎士じゃないと思ってるからあくまでも執政官として雇われたんだけど、後でなんだかんだあってきっと清浦に騎士長の位もらっちゃったんだ。
いろいろこの人パラドックスあるから考えてるとごっちゃになります。何したかったんだっけ? とか。


免許取った日にせっかく秋臼さんとメールしてたのに私の軟弱な携帯は即電池切れと相成りまして(笑)
それから交付時間までつらつらといろいろ妄想していた次第です。
取りあえずストックの下書をどうにかしたいなあってのと、その他まあいろいろ。
ヤマトが盗賊さんたちと会うってのもいいけど、やっぱり町でアンドゥーとケレスさん会わせたいかなあとも思う。
七夕ネタとして……!(笑)
清浦イベント好きだろうし! 町で星まつりやるってんでみんなで行ってみて、っていう。全員とじゃなくてケレスさんだけが遭遇すればいいと思う。しかもアンドゥー七夕伝説聞いたことあるけどあんまり好きじゃないとかだったらいいなあ。だからあんまり乗り気じゃなかったり。
何だ私、さっきのごくせん中といい、絶好調じゃないか。

2008.06.28(Sat) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

細々と妄想中。


秋臼さんが素敵なもの書いてくれたので、シンゴでちょっといろいろ考えてみる。
例の膝ついたら負けみたいなあれです。

シンゴは所詮一般人なので絶対ケレスさんには敵わないし、いっつも腹に蹴りいれられて青あざ作ってればいいと思う。でもってルカに見つかって問い質されて、笑顔で「勲章です!」とか答えればいい。(何者)
けど砂漠を出る日の早朝とか、前日の深夜とか、最後に殺気放ってたら面白いと思う。
これまで自分たちにとって脅威だった砂漠だとかケレスさんとヒサさんは、それなりに今の自分たちを庇護してくれるものだったけど、そこを出るってことはまた違う危険に身を曝さなきゃいけないってことで、今度こそ本当に覚悟決めてかかったらそれが殺気に変わったみたいな無茶苦茶な設定を今考えた。
何度でも言うけども、シンゴは所詮一般人だから、少なくとも国にいたような時には絶対人殺しなんかしないだろうし、妹とか弟が危険な目に遭ったとしても、相手を殺そうと思えるかどうか疑問です。
だからシンゴが誰かを殺せるのは簡単に言えば理性を全部捨てたときで、理性を取り除いたところに残った本能の部分に使命感と義務感が刷り込まれてる。ルカを守るために自分はここにいるんだから、躊躇ってちゃいけないとか思ってるんです。
対してルカは、自分が死にたくないと本気で思っていた頃があるから、理性がなくなったとしても死に対しての恐怖感が植えつけられているように思う。けどいつかブチギレて爆発してもいいかなあとは思うんだよね。殺せないけど半殺しくらいにはしそう。タチ悪いな(笑)


今キリスト教と売春だの男娼だのについてちまちま調べてるんですが、まあ信仰を強制されてたわけじゃないしいいのかな。ていうか迫害される方がまだマシだよね、国民みんながひとつの宗教を信仰してるなら教義が法律みたいになるもんねえ。だったらやってることもいけないことだし罰せられて当然だと思えるかもしれないけど、そうじゃない場合だと単に後ろ指さされるだけだったりするんだろう。
面倒だから王族しか信仰してない宗派みたいのでも構わないんじゃないかと思えたり。町に広まってるのとは若干聖典の解釈が違う、みたいなね。
授業でイスラムの同性愛調べてたときは結構楽しかった覚えがあります。うっわあすごいよみんな死刑だよ、っていうかこの規定すごいですね、とか思ってました。未遂と実行じゃあもちろん刑が違うわけだけど、その量刑考えるとどう考えても未遂は割に合わないという(笑)
法律で規定されてるってことは、それだけ厳しい量刑でもやる奴はいるってことで、国がどんなに規制しようとあるもんはあるんだなあと冷ややかな感想を抱きました私です。
男色と男娼もちょい違うだろうし、男娼もひとくちに説明するには微妙な言葉だし、ルカはなんていうか虐待に近いことだったと思うのでそれもそれで。
シャリーア適用したらルカとっくに死んでる(笑)


ああ、ダメだ。眠いので寝ます。

2008.06.27(Fri) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

(笑)


点呼どん先に書かなきゃダメだよ……!!

アンドゥーの過去話はラストに向けて小出しにする予定なので、終わるのは本編が終わる直前くらいになります。
いやもうその前に教会のモカちゃんとかいろんなこと書かなくちゃですよね!
そろそろサオとかも出さないといかんし。
しかし一番書きたいのはアンドゥーの過去話だ。あまりにもお約束で書くの楽しみすぎる。

久々にまともに勉強してる感じです。楽しくない……!
また七夕ネタしたいなあ。今度はアンドゥーとかシキ君とか出して。

2008.06.26(Thu) | 未分類 | cm(0) | tb(0) |

Memory of Rainy Day


なんてことないがえぐい話なので隠してみた。
ルカの過去話はかなり書いてみたかったので楽しいです。
extraでもないしinterludeにするにもなあ、と思ったのでいっそ何でもないものにしました。


こんな経験してる子が今のルカみたいに育つって奇跡じゃないか。
普通もっと捻くれて人生斜に構えて見たりしそうだけど。
多分ちょっと前まではそうだったんです。幸せそうな子供みんな「世界の黒い部分なんて何も知らないんだろお前ら」みたいに見下したりしてたと思う。
だからきっとナオと会って変わったんだろうと考えるのが自然です。ナオと会ってからも仕事は仕事で続けてたけど、今まで慣れてたのがすごく嫌になったと思う。こういう設定楽しすぎる。
本当は雨の中で誰かが助けてくれるとかいう展開にしようかと思ってましたが、救いはない方が楽しい、と思って救わせませんでした。
なんていうか、もしかして盗賊の二人よりも幼少期恵まれてないかもしれない。でも自分の中でも嫌だった歴史だからわざわざひけらかして言ったりはしなかったり。
シンゴはともかく、こんな話聞いたら普通かなり引くと思うんだがどうなんだろう。
あ、ヤマトがルカの稼ぎたかが知れてるとか言ってますけど、多分悪くはなかったと思います。
ただ借金の貸主が悪い人なだけに、法外な利子つけられて返しきれないんですよ。


こんな生活してたから新しい世界っていうのにものすごく憧れてて、今実現してるわけなので多分もう死んでもいいと思ってるはずです。痛いことばっかだけど、あれだけじゃない世界を見られて幸せだろうと思う。
まあしかし目的はお姫様救出なので。


2008.06.24(Tue) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

うあああ
GLAYの「VERB」聞いて下さい。
アンドゥーシンクロ率90%以上です(笑)

ときめいた!!(笑)

なんていうか、リベリオンだと確実にアンドゥーなんだけど、これ普通にタっくんぽいかもしれない。
またリベリオンCD編集しようかなあ。

2008.06.24(Tue) | 未分類 | cm(0) | tb(0) |

秋臼さんの
雷さんの話読んで、ルカとシンゴは雷知ってんじゃね? と思ってみる。
音だけじゃわからなくても、光れば分かりそう。
だって温暖湿潤気候ですよ、雨も降りますよ。
ってな感じでガキの頃のルカの話を書きたいな。そういうの楽しくないですか。

日本刀関連な話もいずれ書きたい。
リベリオンの今後の予定考えてたんだけど、100%ヤマトが自害する方向に持ってくつもりですよ私。
殺されてももう別にいいかなあと思ったけど、その時のヤマトをどうしても書いてみたいなあと思って。
なんだかんだウザいキャラだけど、多分それがヤマトの本質なんだろうと思う。完璧すぎるキャラも好きなんだけど、どうしようもない欠陥があるから萌えるんじゃないか。ヤマトはまさしくそんなキャラなのかなと。
キャラ設定萌えする人なんで私。
私のキャラの中では最強だろうし普通じゃないけど一番弱いかもしれない。楽しい。自分でもそれを分かってるだろうからたちが悪いです。

ツバキ書きたいなあ。
しかし砂漠話もちょいちょい書いてます。
みんな自分なりの答えを持ってると楽しいなあ。本質的にシンゴとケレスさんが同じ考えしてそうってのも楽しい。ならヒサさんとルカだなあ。急進派と穏健派みたいな感じかな。
そしたらきっとヤマトとエンジ君でくくれそう。急進派と穏健派の中間くらいな感じで。
……ふ、妄想すげえなあ自分……。


追記。
ヴァンパイア騎士のOPヤバい、ちょ、シンクロ率……!!!!(笑)
いかん、動揺しすぎだ私……!
ルカ過去話書きたいです。身売り云々のえっぐい話書きたいです。なんか、こう、描写だけ痛々しい感じのとか楽しいと思います。
雷関連でね! 楽しそうだ。

2008.06.23(Mon) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

突発的に。



「な、……何スかそれ、俺が悪いみたいじゃないスかっ」
「悪いだろ。昼休みはしゃいでて右足捻挫って、お前小学生か」
「う、……け、けど大会とか試合もないですし! 頑張って三日くらいで治しますし!」

 捻挫したのは昨日の昼休み。おかげさまで今日は松葉杖を伴っての登校。もちろん部活には参加できないわけだけど、今日は部活がないからまだショックが少なくて済んだ。バスケできない時間が俺にとっては一番辛い。バスケやってて怪我することも結構あるけど、今回のはバスケが原因じゃないだけ俺も自分でアホだと思うし、先輩の言葉も冷たいのだ。自業自得だけどさ。
 で、部活が無いというのに俺はバスケコートに呼び出され、流風先輩始め他三人の先輩に囲まれていた。三人の先輩はうちのバスケ部のレギュラーで、レギュラーは他にもいるけど、ここにいる先輩たち四人と俺を足して、事実上うちのバスケ部の最強メンバーだ。自分で言うの恥ずかしいけど。 

「……あ、あの、今日って何か、ありました、っけ?」
「……やっぱ忘れてる」

 流風先輩が盛大にため息をついた。続いて他の先輩も。もうこいつレギュラークビでよくね? とかいう超絶物騒なお話も聞こえてくる。
 い、いや、教えてくれないと忘れてたのか知らないのかわかんないから! 十中八九忘れてんだろうけど一応教えてくれないと!!

「ホシ高のバスケ部のレギュラーの面子と非公式の練習試合するって話、しただろ? そろそろ来るんだよ。あっちは土曜って学校休みだからメンバー集まりづらいんだろ」
「は? ……あ、そっか、……って、えぇええええええ、俺抜けたら四人じゃないスか!!」
「だから問題なんだろ。お前も参加できると思ってたから他の連中には声掛けなかったし」
「ほ、ホシ高って、今年結構いい一年入ったって聞きましたよ!? 公立の割に結構頑張ってるって」
「だから問題なんだって。四人でも別に負ける気しないけど、ただディフェンスがな。慎吾の身長なくすのはちょっと怖い」

 そう、ツキ高の最強メンバーだ。俺ひとりいないところで戦力に大きな差は出ないだろうと思う。寂しいけど、多分それは事実だ。
 けど、流風先輩が入るまで単に進学校だったこの学校に、最初からバスケ目的で入ってきた人なんていない。先輩たちも同じだ。俺はちょっと強くなってきたツキ高に、バスケ目的で入ったからそれなりに身長もあるから、このメンバーの中ではディフェンス要員だった。俺が一番背が高いのだ、要するに。他の先輩が極端に小さいわけじゃないけど、やっぱり身長が高い奴がゴール前にいると心理的な圧迫感が違ってくる。流風先輩はそういうことを言ってるんだろう。気分的に攻めやすくなるのだ。

「ま、いいや。どーにかなんだろ。お前審判やれよな、責任持って」

 流風先輩は軽くそう言ったけど、ああも問題だと言ってくれたってことは、このメンバーに俺の力が必要だったってことで、軽率な行動で流風先輩の期待を裏切ってしまった自分を恥じた。ここはどうにかして挽回しないと……!!
 先輩に手渡されたストップウオッチを弄りながらふと目を逸らしてみると、校舎から見慣れた人影が現れたのを確認。
 近くにいた先輩に、ちょっと行って来ます、とだけ告げて、俺はその人物の元へ向かった。松葉杖で。



「おー、まだ練習試合始まってなかったんだ? つーか、何ソレお前その足」
「はは、はははは……」

 芹沢大和先輩。
 今から帰りらしく、俺に大きく手を振ってきた。俺はかくかくしかじかで、と怪我の経緯を説明し、笑われ、現状を説明し、笑われた。すいません至極尤もです。悪いのは全部俺です。

「あーあ、ホシ高の連中完膚なきまでにぶっ潰してツキ高バスケ部レギュラーの実力思い知らせてやる、とか子供のようにはしゃいでたのになあ、流風」
「い、嫌味ですかヤマト先輩……!」
「当然。俺の大事な親友である流風を失望させたお前の罪は重い」

 ずびしっ、と指をさされながらはっきり言われると俺も痛い。言葉に詰まるしかなかった。そんな俺を見るのが、ヤマト先輩は楽しくて仕方ないらしい。

「で? 四人で試合すんだろ、お前審判任されてんのにここで油売ってていいわけ?」
「そ、それなんですけど、………俺の代わりにっ、試合出てくれたりしませんかっ」
「は? 俺?」
「はいっ!」

 ヤマト先輩は背が高い。俺より数センチでかかったような気がする。それだけあれば、バスケの腕が確かでなくても十分相手にプレッシャーを与えられる。それにヤマト先輩はバレー部の主将だ。ジャンプ力も見込める。加えて、流風先輩の親友。この人に勝る代打はいないってわけだ。
 ……あとはヤマト先輩が引き受けてくれりゃいいってだけの話。

「おい慎吾!! もう相手来たから準備始めろよ……って、ヤマト?」
「よっす。馬鹿な後輩持つと大変だな、部長サン?」

 俺を呼びに来た流風先輩は、ヤマト先輩の言葉に「ほんとだよ」なんて答えながら、俺達に近づいた。俺がここでヤマト先輩と喋ってる意図が汲めない様子だ。

「俺でいいなら出てもいいけど? ……欠員いるまま試合なんてしたんじゃ先方に失礼だろ」

 それもある。対等に試合して勝たれるならまだしも、一人欠員がいる状態で試合に臨まれて、それで勝たれたりしたら気分も悪いだろう。
 流風先輩はその言葉を聞いて、ちらりと俺を見てから、口を開いた。

「……お前がいいなら、ありがたいけど」
「なら決まりな。ああ、生憎体操着持って来てないんだ、野島予備持ってたら貸せ」
「そ、それはもちろんです!」

 それは申し出た者として当然の行動だ。スポーツバッグの中にシャツは入れていたと思う。
 それじゃあ、ということで俺と流風先輩、それにヤマト先輩はコートに向かうことになった。流風先輩の表情が終始あまり明るくなかったのは何だか不思議だったけど、それもやっぱり俺の所為なんじゃないだろうかと思って深くは聞かないでおいた。
 コートに戻ってすぐ、先輩方からは“とんでもねぇ助っ人連れてきたなー!”との声。“お前絶望すんなよ?”と優しい声まで掛けてもらったが、何のことやらさっぱりだった。
 ヤマト先輩は俺のシャツを被り、サイズがちょうどいいと笑っていた。体格も同じくらいだからサイズだって合うだろう。

「あ、靴どうしますか? 革靴じゃやりにくいですよね」
「あ? どうせ俺ディフェンス要員だろ。突っ立ってりゃいいんだから靴とか関係なさそうだけど?」

 ヤマト先輩はちらりと流風先輩を見た。
 ディフェンス要員なのは確かだろうけど、だからって一切走らないわけじゃない。

「……慎吾の代わりなんだ、慎吾がやるだろう仕事してくれたらいい」
「なるほどな。なら貸せ、野島。合わなきゃ革靴でやる」

 俺の運動靴を貸すと、それもサイズが合ったらしい。軽くその場で足踏みして、足手まといにならないように頑張りマス、とふざけた口調で告げた。ヤマト先輩もやっぱりスポーツマンだからか、運動着姿がよく似合う。
 そう間を置かずに相手チームの準備も整ったらしい。俺は、首に提げたホイッスルを鳴らした。




 元々四人でも勝てただろう試合は圧巻だった。
 ヤマト先輩が加わったことで更に勝率を上げたのだろう。それくらい、俺の代打と言うには勿体無いようなプレーだった。
 ディフェンス要員なんかじゃない。的確に攻め入ることもできるし、ちゃんと周りを見ている。基本的には流風先輩のアシストに徹し、要所要所でその体躯を生かして相手のディフェンスを破っていく。
 何も言わなくてもヤマト先輩は流風先輩の行動がわかっているらしい。試合中の流風先輩は、何となく楽しそうに見えた。
 何よりも目を奪われたのは、ヤマト先輩の決め手、ダンクシュート。バレー部でブロックとかやってるからだろうか、本当に跳躍力は半端じゃなかった。確かに体がでかい奴がディフェンスやってるとプレッシャーになる。でも一番プレッシャーかかるのは、でかい奴が素早く攻めてくる時だ。しかもダンクなんて、いい場所で跳ばれてしまったらあとは打つ手がない。
 つまりヤマト先輩は、――すごくバスケが上手い、ということで。
 試合終了後、ヤマト先輩は他の先輩方と談笑中。俺はコートの隅で絶望中。

「んな落ち込むなって。あいつスポーツ何でもできんだよ。適応率でいうと俺以上じゃないかな」
「だ、代打が本人より上手いなんてへこむに決まってんじゃないですかぁ……」

 流風先輩はそう言ってくれるけど、俺の気分としてはへこんで当然だ。あんなに上手くて黙っていられるものか。バレー部だから、ディフェンスならきっと上手くやってくれると思っただけなのに、オフェンスまであんなにこなすなんて卑怯だ。

「慎吾がやるだろう仕事をしろ、って言ったからだな。手加減もお手の物ってか。あいつとバスケするとあいつ欲しくなるから嫌なんだよなー。部活なんてどこだっていい、とか言ってたくせに一回決めたところからは出ようとしないし。俺と先輩がいて、あとヤマトがいたら、一年の時ももっといい成績残せた気がするんだけど」

 流風先輩にそこまで言わしめる人物、芹沢大和。ヤマト先輩、確かにバレーも上手いしなあ。あれだけガタイがあれば大抵のスポーツはいけるだろう。だからってあのプレーを間近で見たらへこむ。試合前に先輩方が俺に声かけたのもうなずけるってもんです。すいません意図汲めてなくて。

「バレーもできるし、バスケも今の通り。サッカーもそれなりにできるし、野球なんてかっ飛ばすぜあいつ。剣道は防具が汗くさいから嫌だとか言ってるけど、他の武道は習ってるみたいだし、長距離走は慎吾より早いな。前授業でずっと隣走ってたら軽く息切れた」
「流風先輩が!?」
「そ。持久力命のバスケやってる俺が息切らしたの。短距離は流石に俺の方が早いけど、慎吾とだったらどっちかわかんないな」
「げ、俺この体格の割には短距離自信あったのに……」
「だから、何でもいけんだよヤマトは。あ、けど本気で1 on 1やったら勝つのは俺だし慎吾だ。何でもできるけど、パーフェクトなわけじゃないからな」

 恐るべしヤマト先輩……!
 流風先輩に息切れさせた上俺と短距離のタイム張れるとか意味分かんねぇ……! 流風先輩はああ言ってるけど、正直俺勝てる自信ないぞ。あの人いつも余裕だし。俺余裕ないし。

「……ヤマト先輩が試合出るって言ってからちょっとご機嫌ナナメっぽかったのはヤマト先輩引き抜きたくなるからっスか、もしかして」

 さっきからの疑問をぶつけてみる。
 あんまりいい顔してなかった。引き抜きたくても引き抜けないから複雑な気分なんだろうかと思ってたんだけど。

「あ、それは、あー……」
「何ですか」

 流風先輩は急に茶を濁して視線を宙に逸らした。

「……一年の時、新人戦の時期に同じことあってさ。公式試合でヤマトが代打で出たことあんだよな。欠員のそいつ怪我だったから試合見てたんだけど、……ヤマトがあんまりいい仕事するもんだからそいつショック受けて退部するって事件があって、……みたいな」
「……そ、そりゃ複雑っスよね、先輩も……」
「そいつが練習結構頑張ってたの俺も知ってたからもっと気の毒で、」

 そりゃそうだろう。流風先輩は新人戦の秋には実質キャプテンだった人だ。その人のこともちゃんと見てたんだろう。けどヤマト先輩のことも責められないだろうし、複雑だっただろうなあ。
 流風先輩は横目で俺を見てから、視線を地面に落として、ぽつりと呟く。

「……慎吾が続いたら嫌だな、って」
「え」
「お前もすごい頑張ってるの、俺知ってるから。ヤマトが上手いのは否定できないけど、……こんな些細なことでショック受けて欲しくないって思った」
 
 ……えーと、何ですかそれ。この胸の高鳴りはなんですか一体。
 この人俺の心破壊するつもりか……!!
 ていうか何ですか、何ですかそれ告白ですか、いいように受け取っていいんですかそれ!!!
 先輩がこの台詞言うのに照れてるんだろうことが見て取れるから余計だった。さっきまでショックとか一切吹っ飛んでく。寧ろありがとう俺の怪我。ありがとうヤマト先輩のスーパープレー。おかげで可愛い流風先輩間近で見れました。役得役得。

「けど、お前はそんな弱い奴じゃないとも思ってる。ていうか、マジでバスケしたら絶対慎吾が勝つから。勝って欲しいとかじゃなくて勝つから。……じゃなきゃ、お前とだけ自主練したりしない」
「なんか、……ショック受けてたのとかホント、全部どっか行っちゃいました。先輩にそう言ってもらえるだけで俺、これから何でも頑張れます!! 怪我だって三日で治します、根性で!!」

 流風先輩はふっとやわらかく笑ってから、俺の頭を勢いよく叩いた。
 な、何その豹変、可愛いんですけど! いやもう俺末期か。

「三日で治るわけないだろ、ここまで酷く捻っといて!! 二週間でも三週間でもかけてしっかり治せ、完治させろ! それと、何でも頑張れるって聞いたからな俺。明日から全マネージャー業務お前の仕事だから。洗濯からドリンクの準備から炊き出しからタイム取りとか全部やってもらう。怪我理由に休んだりしたら即レギュラー降板な。ちなみにお前がふざけてて捻挫したって聞いた瞬間にマネージャーには休み出してあるから。俺の役に立てて幸せだなあ、慎吾?」
「え、ちょ、何ですかそれ、俺ホントに捻挫酷くてこんな松葉杖状態なのに」
「甘い!! お前のおふざけでどんだけの人間に迷惑かかったと思ってんだ? 俺がいつまでも甘いと思ったら大間違いなんだよ!! 分かったら二度と軽率な行動取るんじゃねぇぞ!! 俺にとって後輩はお前だけってわけじゃないんだからな!!」
「う、うう、流風先輩が超厳しい……!!」
「ったり前だろ、甘えんな馬鹿!!」

 け、怪我人にこの仕打ち……!!
 いつも小さく見える流風先輩がすげえでかく見える、うわあああ、ちゃんと部長してるよ先輩がぁあああ……!!

「おー、見事な怒らせっぷりだな、さすが野島」
「や、ヤマト先輩助けてくださいよー!! 流風先輩マジで怖いんス、このままだと俺マネとして高校生活終えそうで!!」

 他の先輩方との話を終えたのかヤマト先輩が俺に靴を返しにやって来た、けど俺はそれどころじゃない。マジで怖い流風先輩。

「いいんじゃねぇのー? 憧れの流風先輩のお世話をちまちまできんだ、注意力散漫でバスケ部レギュラーのくせに捻挫なんかしちまう奴は骨の髄まで絞り取られて流風にカスにされて最後捨てられりゃいんじゃね?」
「ちょ、ヤマト先輩!? 何スかその不穏な単語!!」
「流風ってあれの見てくれで超体育会系だからなー。詐欺だよなあ、ドMに見せかけといて部長モード入るとサドっ気たっぷりときた」
「何の話スかヤマト先輩!!!」
「まあ頑張れ。いざとなったら都筑にでも助けてもらえよ」
「あいつ助けるようなキャラじゃないでしょうが!!」

 はははは、とか楽しそうにヤマト先輩は笑って、俺の傍に靴を置く。自分は革靴に履き替えていた。シャツは洗濯して返すから、と言われた。……え、帰るんですか先輩、この後あれでしょ、祝勝会みたいのやったらいいのに!
 
「じゃ、ごゆっくりー♪」

 遠ざかるヤマト先輩の背中。うわあ、やっぱできる人の背中って遠いなぁ☆

「さて、じゃあ俺を尊敬してやまない野島慎吾君には徹底的に俺のお世話してもらおうかな?」
「あ、……明日から、って言ってませんでした、っけ?」
「何だ、慎吾俺に口答えするんだ……?」

 流風先輩の瞳がすっと細められる。こ、怖い、っていうか悪魔かこの人……!! 天使の皮被った悪魔だろ絶対!!

「し、しません!! パシリでも何でもやらせていただきます!!」

 先輩との練習以外で怪我すんの絶っっ対やめよう、と心に誓った一日だった。




2008.06.23(Mon) | 未分類 | cm(0) | tb(0) |

うふふ・ふ!
最近リベリオンの各パートの執筆速度が異様で気持ち悪いです。
そろそろ止まります。過程論の時間手止まったってことはそろそろ尽きてきてるってことだ。
interludeが単に幕間って言うには多い気がします。
ツバキの話とか全部幕間で済ませようと思ってたけど、分量が多すぎることに気付いて別に分けようと思いました。うん。
ヤマトとルミ書いてる時が一番幸せだった。すごい楽しかった。

アンドゥー話をこれから書いていくにあたって、騎士道をちょっと調べなおしたりしているんですけども。
ヤマトってどうなんだろうなあ、と考え中。騎士道でもあり、武士道でもありそう。
けどやっぱり武士道かな。津田左右吉読んでたらカッコいい引用めっけたので似たような台詞言わせたいんです。
ただどっち適用するにしてもヤマトって行きすぎなのでそこがちょっと問題。けど「相手のために」じゃなくて結局全部自分のためなあたりとてつもないエゴイストでもある。
第三者から見ればルミのためにしかならないことは、ヤマトにとって全部自分のためにすることで、けどそれはルミにとっても最高のことだろうとヤマト自身が思ってるってところは頭おかしいくらい自信家。
こういう風に考えるから多分シンゴのことわかってくれるんだと思う。自分と似た考え方する人ってよく分かるもんじゃないか。


テロリストヤバかったです。井上和彦の高校生声!(笑)
エゴイストは3話だったのにテロリストは2話完結なんですね。いいですけど、プラトニックな感じで!
完璧に押しかけ女房話時代を思い出させる内容でした。
何ていうか対応とかまでそっくり! うわあい黒歴史!(笑)
いや楽しいですけどね。たまにああいうの書くの。
あの好きだ好きだーって追っかけてく感じとか年の差とかそのものだったよ。
ただ井上和彦が……!!!!! ツッコミどころはそこだけかってくらいそこにしかツッコミ入れられなかった。他にもあったはずなのにあまりにも衝撃的で。
年の差いいじゃない、可愛いじゃない。ラストの忍さん可愛かったです。
図書館とか言い出すのでてっきり自分が借りた本の図書カードに全部名前書いてあったのかと思いました。そりゃ運命だわ。
テロリストは話がシンクロしまくってて好きだけど、やっぱり上條さんが好き。野分さんが好き。あいつらのアホっぽさが好き。憎めない……!!


リベリオン書いた後普通にツキ高の流風と慎吾書くと、どんなに普通の話でもいちゃついてるように見えてしまう。(笑)

2008.06.20(Fri) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

[sinful knight] 1――position



「司教様」

 教会の敷地に足を踏み入れたケイは、真っ先に畑の方へと歩を進めた。目当ての人物はそこにいることが多い。もう何度も訪れている場所だから、相手の行動はなんとなく分かっていた。
 ケイの予想通り、目当ての人物は藁で編んだ帽子で直射日光を防ぎ、土いじりをしていた。その手を止めないまま、その人物、センタリア司教は顔だけをケイに向けた。眼鏡の奥の眼差しが、やわらかく微笑んだ。

「久しぶりですね、ケイ君」
「ええ、本当に」

 とはいっても、ここ三週間程度のことだ。それでも、毎週ここを訪れていたのだから、そのブランクはかなり長いように感じていた。

「かなり大きな騒ぎだったようですね。大変だったでしょう」
「生き残った者が少なかったもので。その数少ない兵士も恐れを成して続々と城を去っていったものですから、余計に。……それよりも、盗賊を恐れてあれからしばらく雲隠れしていた君主様がなかなか城に戻られないので、そちらの方に骨を折りましたが。まあ、なんとか一段落したのでこちらに顔を出そうと思いまして」

 ご苦労様です、とのセンタリアの言葉に、ケイは軽く礼を返す。
 ケレスとヒサの脱走――それに伴う城内の兵士の大虐殺。君主が雲隠れしてしまったあの城では、兵士たちの死体の処理を始めとする一切の指揮権が、騎士長兼執政官たるケイに握られていた。殺された分の兵士は補わなくてはならないし、あちこち壊された城の補修も行わなければならない。君主の側近として、遠方へ身を隠している君主を城に戻るよう説得するという仕事もあった。毎日膨大な量の書類と格闘したし、単に多忙というには行き過ぎたくらいの忙しさだったように思う。しかしケイは、その仕事の苦労は厭わなかった。投げ出そうと思ったことも、一度もない。
 元々、自分が引き起こしたことだ。あの時、あの手負いの盗賊相手なら確実に仕留めることができただろう。あの状況ではヤマトの元へ移送するというよりは、あの場で首を刈り取り、献上することの方が良策だったのかもしれない。そしてそれを実行するだけの状況にも恵まれ、ケイ自身、その実力くらいはあったと自負している。やろうと思えばできたのだ。そうしていれば、残りの兵士の士気も高まって、今のように続々と辞めていったりはしなかったのかもしれない。それは可能性の話だけれど、極めて高い確率だったのだろう。それは分かっている。
 けれど、――それは、どうしても、できなかった。

「……剣を、抜かなかったのですね」

 センタリアが立ち上がる。
 潮風を受けながら、ケイはゆっくりと首を横に振った。

「いえ、抜きました。流石に素手でどうにかなる相手ではありません」
「けれど、殺さなかったのでしょう」
「―――――」

 元々、センタリアには全て打ち明けている。今更自分の心情を隠す必要もなかった。

「国を守るべき立場にあるのに、……あれだけの被害を受けて、黙っていていい立場ではないのに、俺は、」

 ケイは、なんだか泣きたくなっていた。
 どうしてこんなに自分は未練がましいのか。新しく、地位のある役職についているというのに。

「俺は、あんな時でも、――騎士であろうとしてしまった。そんな資格はとうに失ったというのに」
「……君は、本当に騎士の鑑のような人ですね」

 センタリアはケイにいつもそんな言葉をかける。しかし、その言葉ほどケイを寂しくさせるものはない。ケイ自身がどんなに騎士たろうとして誓いを今更遵守したところで、――ケイはもう騎士たる資格を失っている。
 王に誓い、神に赦されて初めて剣を振るうことを許されるのが騎士だ。誓いに反した自分が人の命を奪うことなど許されるはずがない。
 騎士であろうとする限り、人を殺める宿命を背負っていることはわかっている。主君を守るため、そうして人を傷つけることが仕事であることも分かる。なら、資格云々など深く考えなければいいのかもしれない。そう思ったことも何度もあった。ただ、そう思って日々を過ごしていると、大事な局面で『自分は騎士ではない』という事実がひょっこり顔を出すのだ。騎士であると公言しておきながら結局、人を殺すことができない。無様な話だった。

「司教様のお時間が許すなら、話を聞いていただきたいのですが」

 話を打ち切るようにケイは苦笑して、告げた。
 センタリアは微笑みを崩さない。

「ええ、構いませんよ」



2008.06.19(Thu) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

18-2  sickness


「どうしてそう言える? 首、切れたぞ俺」

 顎を上向きにして、首筋についた傷を主張する。細く線が入っているはずだ。深く切り込まれたら死んでいたかもしれない。
 ヤマトはその傷を一瞥して確かめる。けれどさほど気にした様子はなかった。

「……あの男がこの屋敷に連れてこられたのは、町の花を踏みやがったからだ。花を踏みつけるのが屋敷の人間に見つかれば重罪というのは奴も分かってたはずだからな、本当に偶然だったんだろう。あるいは無意識か。それでも俺に見つかったのが運の尽きだ」
「……花?」

 ――そんな、花を踏んだくらいで死刑にされたらたまったものではないだろう。逃げ出したくなる気持ちもよくわかる。そんな決まりがあったからあの男は逃げ出してしまった。シンゴはあんなことをしなくてもよかったはずなのに。

「馬鹿らしいと思ったか? 無理ないけどな、でも、だからって俺の植えた花を汚い足で踏み躙っていいなんて思わない」
「それは、……」

 確かに馬鹿げている。道端の植物を踏んでしまうことなんて誰にもあるはずだ。そんなことで殺されるなんて死んでも死に切れないだろうと思う。けれど、頭ごなしに全て否定できるかと言えば、否だ。花を大切にしたい気持ちがこの男にあるなんていうのは意外だが、とにかく、植物を大切にしたいという思いからきているのなら、全否定は出来ない。
 怒りが行き場をなくしてしまう。

「……元々気の小さい男だ、人なんて殺せるわけがない。それに、仮にあいつが兵士クラスの精神と肉体を持った男だったとしても、こっちには俺や精鋭の兵士がいる。力の差は明白だ。放っておけば俺たちが簡単に取り押さえただろう。町の連中も当然そうなるものだと思ってた。お前たちが外の人間であるとしても、まずお前を解放することを優先する。まずはお前の保護が先決だ。つまり、……背中に切りかかるのは分かるとして、その後首を落とすのはやりすぎだとは思わないか? ってことだ」

 そんなに気の小さい男だったのなら、どうしてそこまで追い詰めるような極刑にしてしまおうとしたのか。窮鼠猫を噛むという言葉を知らないのか。ああでも、こいつは単に花を大切にしようとしているだけで、けれど、だからって。
 ルカの頭の中に様々な考えが浮かんでは消えていく。

「確かに、やりすぎだったのかも、しれない。けど、切りかかっただけじゃまだ下手なことやらかすかもしれなかったし、」

 そうだ、切りかかって傷を負わせただけじゃ、極限状態におかれたあの男はまだ悪あがきをするかもしれなかった。それを防ごうとした。なら、シンゴの行為は正当化できるはずだ。
 けれど、ヤマトはそんな言葉は意にも解さない様子だった。焦る。シンゴの気がふれているなんて、本気で言おうとしているのか。有り得るはずがないのに。

「……極度の緊張だったり精神が不安定な状態でこの土地に来ると、この酷い寒さで正常な思考が失われる。命に関わるくらいの寒さだからな。で、慢性的な錯乱状態に陥る。……身近な誰かを失ったりだとかするとよく発症する奴がいるんだ。お前の相方みたいに突発的にあそこまでのことをやらかすのはお目にかかったことがないが、生まれてからずっとこの土地にいて、……そうやっておかしくなる奴を間近で見たことがある俺が言うんだ、間違いない。お前の相方は、ここの風土病に罹ってる」
「……な、何だよ、何勝手に話進めてんだよ、俺は納得してない!! お前が勝手にそうだって決め付けても、そんな、……待ってくれよ」

 頭がついていかない。
 精神病?
 シンゴが?
 突発的?

「……何だよ、シンゴの、精神が不安定、って、緊張って」

 国を追放されてここに来たこと?
 弟と妹のこと?

「……普通は暴力性が小出しになる。身近な物や人に八つ当たりしたりな。ところが奴の場合、お前の様子を見る限りじゃこんな事は初めてみたいだし、気持ちを主張していたということもないんだろう。それで突然お前に対してあの過剰なくらいの保護意識が働いてる。お前を守るってことを、あいつの頭は義務だと思ってるんだろうな。……それが、あいつの不安定な精神の一端を担ってると見た。さっきの一件があったから、あいつの中でその義務感はぐっと高まって、これから暴走しやすくなっちまうはずだ。それを落ち着かせるにはやっぱりお前と離しておかなきゃならない。ただ、一時的にだ。ずっと離しておいたらそれはそれで逆効果になる。分かるな?」
「分かるか!! 何だよそれ、風土病って、おかしくない、ただシンゴは、シンゴは……!!」

 おかしくなんか、ない。
 確かに、俺の前ではいつも元気だったけど、離れたところから盗み見るとだるそうな顔をしていたりは、した。けれどそれは環境の変化に順応しきれていないせいだと思った。
 リョウに、シンゴにあまり心配をかけさせるな、と言われた。それは、これまでのいきさつを聞いての警告であって、――こんなことになると知っていたなら、もっと早くから、どうにかしようとあがいてみたかもしれないのに。
 確かに行きすぎといってもいいくらいにシンゴはルカを守りたがっていたけれど、それは分かっているけれど、でも、でも、だからって。
 少しずつ、事態を頭が受け入れようとしていた。
 シンゴは少し疲れていて、少し、シンゴの体も気持ちも休息を欲しがっているのだろう。

「……さて、納得したようだし。話を処罰の方に戻そうか」
「ッ、戻すって……!! シンゴを処罰することには納得してない!!」
「後回しにするっつってただけだろ。……お前らが俺の睨んだ人間なら、全部水に流しておいてやる。砂漠での取引だったし、真相を知ってるのは俺とあいつくらいなもんだしな」

 何だか胡散臭い話だ。睨んだ人間、というのはどういうことなのか。もう何かの見当をつけられている?
 続いたヤマトの言葉はあまりにも意外なものだった。

「――お前らの元いた国の支配者は、……青い瞳をしていなかったか?」
「……は?」
 
 ヤマトの口角が、少しだけ、上がった。



2008.06.17(Tue) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

18-1  sickness


 顔にまで飛び散った見知らぬ男の血液を拭うこともできないまま、ルカは金髪の同い年くらいの青年に取り押さえられ、意識を失ったシンゴは体躯の大きな兵士らしい男数人がかりで引きずられ、屋敷へと連行された。
 いくら抗っても、金髪の青年は心底楽しそうに笑うばかりで、ちっとも離してくれそうにない。ルカより少し背が高いくらいだろうに、ルカが思うよりずっと彼の力は強かった。
 屋敷の門を潜り、兵士達を率いて歩く、いかにも偉そうな青年。上等なのだろう上着を着ているあの男が、もしかしたら例の権力者なのかもしれない。屋敷の幅広の廊下を歩かされ、しばらく行った突き当たりでシンゴと分かれることになってしまった。シンゴより大きな体の男達が、シンゴを抱えて屋敷のもっと奥へと進んでいく。

「ッ、何でシンゴだけ!! 俺も向こうに連れてけ!!」
「やー、何を勘違いしとりますのん。あんさんの方がこれからひっどーい目に遭うかもしれんのに」

 金髪の青年はからからと笑った。……そうだ、今一番偉いらしい男は、この金髪の男と共にルカの近くにいる。嗜虐的であるのがこいつらならば、別室に連れられたシンゴにそこまでの危害が加えられることはないのではないか。あの兵士達に何か指示でもしていたとすれば話は別だが、これまでルカが目に届く範囲で特別に指示をしていた様子はなかったような気がする。シンゴに危害が加えられないのなら、自分はきっと何をされても耐えられる。死ぬこと以外なら。

「あんまり緊張すんな。取って食おうってんじゃない」

 低い声が笑っていた。こちらにしてみれば正に生きるか死ぬかの死活問題だというのに、緊迫感なく笑う目の前の二人に憤りを覚えて、両手を後ろで縛られたまま、ルカは敵意剥き出しで睨みつける。そうしたからといって、優位に立つ二人が怯むわけもない。そうと分かっていても、睨まずにはいられなかった。

「おー、勇者やなあ」
「優秀優秀。そうでないと壊しがいがないからな」
「きゃあっ、ヤマトはんったら怖いっ」

 完璧に遊ばれている。ルカとこの二人では、事態の捉え方がかけ離れすぎているようだった。
 そのまままたしばらく歩かされ、大きな扉の部屋へと通される。背中を押され、転げるように部屋へ入ると、金髪の青年がヤマトと呼んでいた男が薄く笑った。

「ツヅキ、しばらく下がってろ」

 その言葉に、ツヅキと呼ばれた金髪の男はあからさまに不満の声を漏らした。

「えー、一人で楽しもうなんてずるいやないですかー」
「うるせえな、大した用じゃない。地下でも行ってこいつの相方の様子でも見て来いよ。そっちで遊んでろ」
「なんや気が引けるわぁ、なんてったって野蛮やし」

 野蛮? それは誰のことか。深く考えなくても分かる、シンゴのことだ。

「ッ、誰が野蛮だ、ふざけんな!! あんたらの管理が抜かってるから脱獄なんて許しちまうんだろ!? シンゴは俺を助けてくれただけなのに、っ」

 シンゴはルカを助けただけだ。あの大きな叫びは、どちらかというと苦しんでいるように聞こえたけれど、それでも。

「……ほら、お前が怒らせたんだ。俺が話しつけるから、取りあえず今は下がれよ、ツヅキ」

 諭すようにヤマトが言い、それでツヅキはようやく部屋を後にした。
 シンゴを悪く言うのなら出て行って欲しいとは思っていたが、せめてこの手を縛る縄を緩めて欲しいと思った。こうして、手を縛られて権力者の前に出されると、もう酷く懐かしい気のする、あの城での出来事を思い出す。
 ツヅキが出て行った後、ぱたんと扉が閉まると、ヤマトは一呼吸おいてルカを見た。

「確かに、奴が逃げ出したのは俺たちの責任だ。お前は被害者だな」
「当然だ!! 俺たちはただこの町を通ろうと思っただけで、あんたらの杜撰な管理に巻き込まれただけだ!!」
「だな。それに対しては俺も異論はない」
「ならどうして俺とシンゴを別にした! 意識はなかったけど、俺だって心配なんだ、様子見させてくれたって、」
「だから、お前と相方を離したのはさっきの件じゃない、別の理由だ。聞け」

 先程まではあんなにもふざけた声色をしていたくせに、今は至極真面目だ。
 その様子を見てはルカもそれ以上文句は言えず、黙り込んだ。ヤマトはそんなルカの反応に満足したのか、笑いながら仕事用なのだろう大きな机の上に腰掛ける。椅子ではなく机の上に座ってしまうあたし、外見と行動が一致しているな、と思った。

「砂漠に、ある植物があってな。あの辺の特効薬として知られてる。大抵の病気や怪我なんかは数日で完治させることのできる優れもんの薬草で、この国でも学者が研究の対象にしてる」

 リョウの所でもされたような話だった。その植物なら身をもって知っている。女王につけられた鞭の傷は、あの薬草のおかげで今では軽く痕が残っている程度だ。痛むことも、砂漠に来てすぐの時のように発熱することもない。

「もう分かってると思うが、俺はこの国の実質的支配者をやってる。その俺の立場から解説させてもらうが、その植物ってのは砂漠で遭難した奴のためにどの国も手をつけない、不干渉って取り決めをしてる。何てったって万能薬だからな。治りも普通の薬使うより余程早い。手ぇ出せるなら良からぬことに使いたくなるってもんだろ? だから国家間で不正はしないことになってる」
「……それがどうした」

 話が読めずに低く問う。ヤマトは更に続けた。

「先日、ちょっと用事があって砂漠の町に出向いたんだが、そこで俺と同じくらいの年の男がその植物をしこたまもってうろついてた。別に、そいつが遭難してて、その木に辿り着いて、その町に来るまで自分の命をもたせるために持ってきた、ってんなら正当だろう。しかし、そいつを売り物にした時点で犯罪だ」

 そこまで言われれば、いくら学のないルカでもわかる。
 シンゴがあの日言っていた、不思議な青年というのが、この男なのだ。 
 国家機密レベルの話を軽くしたのもうなずける。この男がその人間なら。

「ッは、ましてや他国の首領相手に売ったら尚更……ってか? そうだよな、砂漠の国内法だけじゃなく、国家間の取り決めっていうなら国際法にも反してることになるからな。……っ、ざけんな!!! シンゴがあの砂漠の人間でないことくらい分かるだろ!! そんなルール知らなくて当然だ!」
「だが、砂漠にいる限りは当然のルールだ。隣国の奴ら、商人の奴ら、みんなルールを知ってる。町の人間だってルールについては知ってるから、あの植物を持ってうろついてるお前の相方を悪どい商人か盗賊だと思って相手にしなかったんだろう。普通、お前らみたいに砂漠のさの字も知らないような人間は突然降ってきたみたいに砂漠に来ることなんて在りえない。知らなかったから、教えなかったから悪いんじゃない、そもそも無知のお前らが砂漠にいたことが悪いんだよ。……まあ、だからってそんな根本的なこと責めてもな。あれがお前なりあいつの命を救うものには違いない。しかしどうすりゃいいのかあいつには分からなかったんだろう。売買すりゃ買った方も処罰されるから町の人間は冷たいし。それを分かってやった俺が買い取ってやったんだ。俺はお前の命の恩人だぞ?」

 なのにそう罵倒されると辛いねぇ、とヤマトは肩を竦めて見せた。
 冗談じゃない。そんな論理に騙されるとでも思っているのか。

「それは結果論だろ……! あんたは分かっててシンゴを騙して利用したんだ!! 売買すればどっちも処罰とか言っといて、制裁する立場なら何したっていいのか!?」

 何も知らない馬鹿な奴がいるとでも思ったのだろうか。分かっていたならシンゴだってそんなことはしなかっただろう。善人ぶって助けたことにしたいのか。感謝でもされたいのか。死んでもするものか。ただこの男は、私利私欲のためにただルカを救おうとしたシンゴを利用したのだ。――これでシンゴが処罰なんて、許せるわけがない。

「悪いな、それでも俺は人の上に立つ者として奴を罰さなきゃならない。密輸なんてとんでもねぇことする奴がいたもんだなぁオイ、ってな」
「本当に悪いのはそっちだろ!! シンゴを罰するなんて絶対に俺は許さないからな……!!」

 腕の自由が利かないまま、ルカはヤマトに近づいて、これまでの態度を崩さずに睨みつける。……砂漠だけでなく、こちらにも食えない人間が多い。ヤマトもまた、涼しい顔を崩そうとはしなかった。

「あんまり喚くとお前から殺すぞ? それともあれか? 餓えた兵士に喰い殺されるのが好みってか? あっちに比べてお前細すぎんだろ。意図的に肉体労働控えてた証拠だ。……ま、その調子だと稼ぎはたかが知れてるんだろうけどな」
「ッ、うるさい!!」
「あいつについての文句は尤もだ。俺にしては珍しく聞き入れてやる。だが、処罰云々は後回しだ。あいつを別室に移したのにはもう一つ理由がある」
「まだあんのかよ……!!」

 もう一つある、ということは、それはシンゴ自身に何か問題があることを意味している。この男は、砂漠でのほんのわずかな時間しかシンゴと触れ合うことはしていないのだ。その時の問題が密輸云々の話。そして今度は、――やはり先程の? 関係ないと言っていたくせに。

「……さっきのあの男の件なら、正当防衛だろ。俺はシンゴの仲間だ。あいつは俺を助けようとしただけで、」
「それは分かってる。こっちが処刑し損ねたのを代行してくれたんだ、感謝したいくらいさ。その点に関しては、な」
「……じゃあ、何が、」

 いよいよ分からなくなってきた。あの男を殺したことが問題なのではないのか。分からない。何のためにシンゴは隔離されたのか。もう一切の毒気を抜かれたルカは、ただヤマトの言葉を待った。

「細かいことを説明すると長くなるからな、簡潔に言う」
「……ああ」
「あの男、……お前の相方な、」

 一拍置いて、ヤマトの声が広い部屋に響いた。

「気が、ふれている」
「―――は?」

 ルカは、今にも笑い出しそうだった。シンゴの気がふれているなんて。ルカに言うならまだしも、シンゴなんて有り得ない。むしろそんな発言をするヤマトの方が余程気がふれている。

「シンゴはいつだって冷静だった。……俺を守る、って、そう言ってくれて、あいつがずっと冷静だったから、俺はここまで来れたんだ」
「……冷静な奴が突然目の前の背中に切りかかって、首落とすか? ――大体、お前襲ったあの男はお前を殺したりしなかっただろうよ。いや、殺せるわけがない」

 誰もが知る事実を告げるかのように、ヤマトの話は淡々と進んだ。


2008.06.17(Tue) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

interlude-Ⅶ ――daybreak for him



 明け方の砂漠は、少し肌寒い。しかしその気温のギャップにも徐々に慣れてきていた。洞窟から数分離れたところにある木の幹にシンゴは凭れかかっていた。
 国にいた頃からの習慣で、いつもどうしても早くに目が覚めてしまう。朝早くから仕事をしなければならなくて、陽が射していようといまいと自然と夜明けの頃には起きてしまうのだ。その点ルカは逆のようで、早く眠るということがどうも難しいようだった。だから最近はヒサに借りた本などを月明かりに照らして読むことが多い。
 ルカとヒサは昨日の昼から留守にしている。今日の昼には帰るという話だ。ケレスはまだ眠っているらしく、起きてくる様子はない。様子はない、というより、大体夜明けの直前に帰ってきて寝るような生活をしている男だ。この時間に起きてくるはずがないのはシンゴも承知していた。
 今日に限らず、早くに目が覚めてしまうシンゴは、全員が起きて活動を始めるまでにできることを考え、数日前から自然と剣の素振りをするようになっていた。腰に掛かるこの重みを、少しも無駄にすることはできない。
 どんなに腕が重くなろうと剣を振る。いつか実際に振り下ろすことができるように。ルカが誰かを殺さずに済むように。
 ボロ布のマントを外し、上着を脱いで大振りの剣を振るう。外気にこんなにも素肌を晒せるのは、少しずつ気温が上がり始めるこの時間帯くらいだ。昼はもちろん、夜は冷えすぎてとても衣服を脱ぐことはできない。

「っ、……は、」

 この鍛錬は、単に暇潰しでやっているわけではない。
 ――ルカが、強くなっている。
 ヒサに術を教えてもらうようになって、思いの外それが上手くいっているのだろう。昨日も突風が吹いたと思えば、それはルカの仕業だったらしい。風を味方につけるなんてルカらしい、とシンゴは思っていた。
 何にしても、剣よりはそういった術の方がルカには合っているだろう。知識の吸収は驚くほど速いし、そもそも武器を振り回すなんて原始的な動作はルカは好かないのではないかとも思っていた。体格からいっても、シンゴでも重みを感じるこの剣と同型のものをルカが使いこなすのは難しい。
 ルカの術に対する姿勢というのは、単なる好奇心と、足りない腕力の補助程度にするのが目的のようだったが、シンゴからしてみれば是非とも術を極めるくらいの気分でいてほしかった。術による遠方からの攻撃。それができれば、ルカはシンゴよりも離れていることができる。危険に晒さなくて、済む。
 数十分腕を振り続け、これ以上やって腕が動かなくなっても困る、と思う地点にまで来ると、今度はオアシスに足を伸ばして冷たい水で汗を流した。ちょうど日が昇り始めた。上着をしっかり着て、剣は鞘に戻しておく。早く日陰に戻らないとせっかく顔も洗ったのにすぐにまた汗ばんでしまいそうだ。
 洞窟にちょうど足を踏み入れたところで、珍しくもう起きたらしいケレスとすれ違った。

「……なあ」 

 ……今日は、ルカがいない。
 それを確認してから、シンゴはオアシスに向かうケレスの背を追いかけた。本来なら追いかけるどころか真っ先に離れたい相手だったが、ひとつだけ、どうしても聞いてみたいことがあった。いつものように噛みつく気もない。確かにケレスは人間として気に食わない相手ではあるが、それなら単にお互い関わらなければ良いだけだ。それで心の平穏は乱されずに済む。ルカはそれを分かっていないからいちいち突っかかっていくし、ルカがそういう姿勢をとる以上は、ルカの前ではシンゴもそういうスタンスで接していこうと思っていた。……つまり、“あの”夜は、きっと自分の虫の居所が悪かったのだろう。あの時は、判断を誤った。冷静さを欠いてしまった。
 ケレスはシンゴの呼びかけに応じることなく、オアシスで顔を洗っていた。拒否されていない。……ということは、聞く気がないわけではないのだろう。耳という器官がケレスにもあって、それが正常に機能している以上聞こえてしまうから仕方ない。勝手にしろ、ということなのかもしれない。

「……あの、さ」

 聞いたってこの男には答えられない質問かもしれない。
 けれど、この男がそういう感情を今まで抱いたことがなかったとしても、この質問に対して何らかの答えを出してくれると思った。それに、こんな出会って間もない、しかも最悪な人間に見抜かれたのだ。何かしら答えてくれなくては面白くない。
 太陽はしっかり空に昇った。だんだんと熱を持ち始めた空気を、シンゴは吸い込んだ。

「――誰かのために人を殺すっていうこと、……どう思う」

 ケレスは顔を上げて、首だけをシンゴに向けて回し、数秒だけ目を合わせると馬鹿にしたように息をついた。

「馬鹿馬鹿しい質問してるって分かってる。けど、俺は自分の結論に自信が持てないんだ。……こんなこと、ルカさんに聞かれたらいろいろ問い質されるに決まってる。分かるだろ、……それが俺にとって面倒なことだって」

 ルカがそうして気にする気持ちも分かる。シンゴだって、もし身近な人間が突然人殺しについて深刻に悩みだしたら真相を聞きたくなったはずだ。……つい最近までなら。

「……どうしても、あんたの答えを、聞いてみたいんだ。俺はこれから、生半可なものじゃなくて、ちゃんと覚悟しなくちゃいけない。そう思う。けど、これをちゃんと分かってないままだったら、これを知らなきゃ、知っていなきゃ、俺はいつか大事なことを間違えそうな気がする」

 シンゴの中で、ある程度結論は出ていた。ただ、自分でそう思っているだけでは踏み出す覚悟を創るまでには至らない。

「……それを俺に聞いてどうする。他人にするような話じゃねぇだろ」
「分かってる。……ただ、同意が欲しいだけなのかもしれない。多分、本質的にはあんたじゃない他の誰に聞いたってきっと答えは同じなんだ」
「ガキにしては割と考えたな」
「うるせえよっ」

 ケレスが立ち上がって、シンゴの目の前に立ちはだかった。
 冷たい視線。そして、

「――――――」

 落とされる、冷たい、言葉。
 シンゴは目を閉じてその言葉を聞いた。短い言葉が終わると、ゆっくり目を開けて、静かに笑った。

「………俺も、そう思う」

 答えは出た。
 後は、忘れないだけだ。これを忘れたら、逃げることになってしまう。

「なあ、ルカさんがヒサさんにくっついてんだからさ、暇なら俺の剣の練習付き合えよ。死んでも教えろとか言わねぇから」
「ざけんな、てめぇのことはてめぇで面倒見やがれ」
「じゃあ実戦兼ねて俺が襲い掛かるとか」
「一太刀で殺してやる」

 いっそ、その方がいいのかもしれない。
 ここ一週間くらいで突然背負うにしては重過ぎるもののような気もする。
 けれど、きっと、前からいつかこうなることはわかっていたのだ。いつかくる結末に向かって、想像と少し違う道を歩んでいるだけで。
 ゴールは変わらない。少しもぶれることなく、最終地点はそこにある。
 そこに辿り着くまでは生きなければ。少なくとも、こんなところでこんな男に殺されてやってはいけない。

「やれるもんならやってみろってんだ! 俺、ここじゃぜってー死なないからな!」

 この言葉を嘘にしないために、強くなりたい。
 強くそう思う。ぐっと重みを増した気のする剣の柄を、力強く握った。


2008.06.15(Sun) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

最近設定ばっかだな(笑)



もう教会の設定全部点呼どんに任せようかと思っている私です。
私に宗教の話を振るな……! 私の世界史は古代ローマと中世ヨーロッパで終わってるんだ!


いやかなり真面目に教会の設定考えて欲しい。
教会考えるのが難しいから、創兵くんだけ別の設定で区切ろうかと思っているところです。
創兵くんをサオとかの国とつなげたいんだよなあ。
砂漠に教会あるのはいいと思います。ほら、だってアンドゥー騎士長だし。
キリスト教じゃなくてもなんかの神様はいてもいい。ていうかいるだろう。騎士って神に許しをもらって武器を持ってるわけだし。
完全な創作じゃなくて現実をベースにすると面倒なことばかりですね!(爽)
でも国家だのなんだのをイチから構築できるかっていると当然できるわけもなく。
創兵くんはちょっと宗派が違って、サオだとかナオだとかの王家の宗教だったとか考えたけど、王家が信仰してるものを国民が知らないのはいくらガキだからっておかしいなあと思って。


まあ、ヤマトのところにいる期間すごい長いんで、ていうかルカにやらせたいことがしこたまあるので長い目で考えるかなあ。
今書いてるシンゴとケレスさんの話上げたら別視点ってことでヒサさんとルカの話書いてくれるだろうか点呼どん!(期待)
interludeとextraの違いが分かりません。(笑)
本筋に関係あるかないかで分けるつもりだったのに、結局全部関係してきてるからなあ。
今度清浦のとこの町でお祭りあるとか言ってアンドゥーとかシキ君とか出したいなあ。これはさすがにextraか。
今作業中なのはinterludeです。うん。

2008.06.15(Sun) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

綺羅星に願い事



「ううううっ、寒いっ」

 神社まであとは階段を上るだけ。この神社は山の中にあるから、明かりもそんなになくて本当に暗い。冬の夜は暗いし寒いから嫌なのよね。
 加えて、今は元日の夜。あと数時間で日付も二日に変わってしまおうかという時間。だから初詣の人も、二十四時間前に比べれば格段に少ない。ていうか、いない。そりゃそうだ、普通はもっと有名どころとか行くだろうし、地元だからって好きこのんでこんなところまで来ないだろう。あたしと友人の場合はそれを狙って、人が少ないから早く行って早く帰ってきて遊んでしまえー、というノリだった、のだけど。あたしが待ち合わせの十分前からこんな寒いとこで待っているというのに、当の友人は3分ほど前に『彼氏と予定入っちゃったv』なんてメールを悠長に送りやがって結局今日の予定はパー。寒がり損だ。奴らが熱い分あたしは冷えてろと、そういうことなんだろう。
 誰か呼ぶのも手だと思ったけどこんなところにわざわざ来てくれるような人、いないだろう。だから大人しく帰って、民放でバカ騒ぎしてるテレビ番組を見ることにしようと思う。帰りに肉まん2つくらい買って帰ってやる。でもって、今度会ったら請求してやる。……それは安すぎか? もしかして。
 小さな橋を渡って、もうすぐ学校が見える。寒いけど、人のいない夜の道っていうのは道路独占な気分で楽しくて、駅まで歩くことにした。当然ながら学校には電気ひとつついていない。ああ、非常口の緑色の明かりと、消化器の赤いランプが不気味ーに見えてたりするけど、学校に侵入したりすることはないから問題ない。
 ブーツの低いヒールを鳴らして、ダウンのポケットに手を突っ込んで歩く。マフラーくらいしてくればよかったかも。初詣終わったらすぐどっかで遊ぼうと思ってたからあまり防寒を考えてなかったのが痛い。学校の正門を通り過ぎて、坂を下っていくと、珍しく人とすれ違った。外灯の白い灯りに浮かんだその顔を横目で見ると、どうも見知った瓶底眼鏡。……あれ?

「遠藤くん?」

 あんな牛乳瓶の底な眼鏡してる人、そうそういない。意外にも高い背といい、髪型といい、それは遠藤 嵐だった。名前につけられた文字とはえらくかけ離れた性格の人。眼鏡外すと性格違うってのはお約束だけど、彼の場合別人格だったりするから厄介。別人格の方とは最近あまり出会ってないけど、眼鏡を外すとかなりのイケメン(死語?)だってことは知ってる。
 声を掛けられた遠藤くんはこっちを向いて、うわわわっ、と驚いて転びそうになっていた。何そのリアクション、過剰でしょ。あたしはそんなに恐ろしい顔してない。

「さ、佐藤さんっ、こんな時間に、ど、どうしたの?」
「初詣。……のつもりだったけど、ドタキャンされて帰るとこ」
「あ、そ、そうなんだ」
「遠藤くんは? こんな時間に出歩いて大丈夫なの?」

 そういうと、遠藤くんは嬉しそうに笑った。……多分。何せ牛乳瓶の底なもんだからどんな目してんのかまではわからない。がさがさと肩にかけたバッグを漁って、何かを取り出す。

「……双眼鏡?」
「う、うん。これから、観測、い、行くから」
「観測? どこで?」
「あの神社。あそこ、えっと、境内は、開けてる、し。この時期なら、初詣行くって言えば、お、親にも怒られないし」

 なるほど。それは賢いかもしれない。
 けど、せっかく神社で観測するなら初詣がてらすればいいのに、あくまでも主体は観測ってところが遠藤くんらしいな、と思う。

「だから完全防備なわけね。あったかそー」
「冬って、空気澄んでて、空も綺麗、だけど、あの、すごく寒い、から」

 上半身、ダウンのジッパー一番上まで上げて帽子まで被ってるのは完全防備にしてもやりすぎだとは思う。けど、下は普通にジーンズにブーツだ。きっと彼はあんまり考えてなくて、あったかそうだから履いてきたとかなんだろうけど、いろんなとこをどうにかすれば絶対カッコいいのよね、遠藤くんって。そう、眼鏡外したアラシとかなら多分似合うと思う。うん、それ見たいかも。ドタキャンの八つ当たりがてら。

「あ、さ、佐藤さん、寒いなら、これっ」

 あたしがそんなことを考えていると、遠藤くんが首のマフラーを慌てて外して(外そうとしてバッグとかに絡まって苦戦してた)、あたしの首に巻いてくれた。あたしの白いダウンに男物なマフラーはちょっと趣味じゃなかったけど、あったかいからありがたく甘えることにした。
 気まずいのか遠藤くんはあたしと目を合わそうとせずに、「そ、それじゃあっ」と言って神社の方へ駆けていこうとした、けど、あたしが近づいてそれを制止する。

「遠藤くん、ありがとう」
「あ、え、えっと、寒そう、だから」
「けどねー、普通こういうところで知り合いの女の子がひとりで歩いてたら、駅くらいまで送ってくもんだよ?」
「え、あ、え!?」

 まあ無茶苦茶だけど。そんなの義務じゃないし、ありがた迷惑ってこともあるし。それに、送って行こうか? なんて言葉がさらりと出てくる遠藤くんは遠藤くんじゃない。
 ということで随分動揺しているところを、襲ってしまおうという魂胆。え、え、と繰り返す遠藤くんの眼鏡に手を掛けた。

「隙アリっ!」
「え、あ、わ!!」

 すっと眼鏡を抜き取ると、やっぱり遠藤くんは驚いて後ろに倒れた。マンガの世界ならここで煙がぼわっと出たり出なかったりするだろう。
 久々に眼鏡無しバージョンの遠藤くん見るなあ、と思うとちょっとドキドキする。いや、性格はほんとガキなんだけどね、あっちの遠藤くん、もといアラシは。

「ってー……。何すんだよアヤっ!」
「わ、何か久しぶり、その声でその口調!」
「? 変なこと言ってんなよ」

 やっぱりやっぱりやっぱり眼鏡外した方が断然良い……!!
 遠藤くんの髪型のままだと前髪がうざったいのか、帽子を取ってがしがしと乱暴に頭を掻く。うん、何か乱雑な方がアラシっぽい気がする。一番上まで上げられたチャックも落ち着かないらしく、半分くらいまで下げた。
 着ているものは普通だから、うん、うん、さっきよりずっといい。

「しっかし寒いなー! アヤ、寒いからマフラーするならちゃんとしとけよ!! あー寒ぃ!!」

 さっきより断然カッコよくなった遠藤くん、もといアラシは寒い寒いと言いながらあたしの手を乱暴に引っ張る。 

「あ、アラシ!?」
「何だよ、文句あるってのか?!」
「文句云々の前にどこ行く気よ!」
「は? 何言ってんのお前」

 子供みたいにけたけた笑いながら、バッカでー、と本当に憎たらしいガキみたいな台詞を吐く。その息はほわほわといちいち白く上がって消えていった。

「神社まで星見に行くの! オリオンがぜってー綺麗だぜ! 俺オリオンくらいしか知らねぇんだけどさっ」
「寒いなら帰ればいいんじゃないの?」
「だぁから何言ってんだよ。星見に家出てきてんだから見なきゃいけないに決まってるだろ! あ、今正月だからあれもついでに。えっと、なんだっけ、除夜の鐘じゃなくて、甘酒じゃなくて」
「初詣?」
「あ、それそれ!! 今年もたくさん星見られますように、ってふたりで願ってみたら叶いそーじゃん?」

 あたし別にそんなこと祈りたくも願いたくもないんですけど。寧ろ恋愛だとか恋愛だとか金銭関係だとかそんな感じのことをいろいろお願いしたい。神頼み大好き。
 しかしアラシはそんなあたしの願いなんてどうでもいいらしい。……多分、遠藤くんも初詣行ったとしたら同じようなことをお祈りするんだろう。遠藤くんの場合、もっと星のことたくさん知れますように、とか、そんな感じかも。
 遠藤くんに巻いてもらったマフラーを、アラシに言われたようにちゃんと巻いて、片手をアラシに引かれて神社への道を戻っていく。
 まあ、せっかくだからお参りしていこうかな。一応ひとりじゃないし。三人くらいでいる気分だ。遠藤くんと、アラシと、あたしとで三人。ちゃんと星を見てみたいのも、星を知りたいのも事実だし、心を少し割いて、祈ってあげようかな。
 願いはアラシも遠藤くんも一緒だろう。三人で願ってみたら、叶いそう。かも?




2008.06.13(Fri) | Title | cm(0) | tb(0) |

井上和彦日和。


私、エゴイストは確かにパロりたいって言ったけど、あんなにパロディにしないでそのままなぞった話初めて見たよ……(笑)
テロリストすごいです。井上和彦……!!!!
忍ちゃんの言動といい何だかんだといい、「あれ? 君もしかしてMIT目指したいとか言わないよね?」とか思いました。酷かったですあれ。
でも騒ぎました。基本騒ぎました。


PS2版咎狗はぶっちゃけ、ヴィスキオ好きのためのファンディスクと考えるのがよろしかろう。
「麻薬組織」が「犯罪組織」になっていることに最近気付きました。
PC版よりもPS2版の方がいかがわしい気がするんですよね私!!
リンとかはまあ、うん、ね? って感じだし、源泉はまあそれなりにうまくごまかした☆って感じだけど、ケイスケルートってぼかしただけだから
いやそれでも差し替え部分については私PS2版のが好きなんですが、どうしても好きなんですが。
でもね、ただ抱き締めるとかいう表現に差し替わってるだけならいいんだけど、暗転あるから!(笑)
不自然だから、着替えするって描写あるの!!(笑)
ということでPS2版の方がいかがわしいというお話でした。
処刑人ちょっと可愛すぎる。でもミツコさん削除はどうしてなんだと思った。
キスシーン入るたびに妹が画面に向かって「お前頭大丈夫か」と言い出すので笑いました。
最近PS2版のビタミンをまた始めたんですが、瞬の声だけめちゃめちゃちゃんと聞くようになったのは言うまでもありません。
結論→・PS2版シキティーは「主」「所有者」って言ってみたいだけ(中2病です)
    ・関連キャラいてもリンルートは薄いですよ?(爽)
    ・声は大和のくせにいい奴すぎる伊藤健太郎。やっぱり奴はああいうキャラしか演らんのか。
    ・だからあのスチルはどういうサービスですか。(寧ろシキがとどめ刺せばよかったのに)
    ・処刑人可愛い。(何回目)


先生、ヤマトは嫁さん残して死ぬほどアホな男じゃありません!
嫁さん一人残して殺されるくらいなら心中しますあの男。でも殺されるなら相手は絶対ツヅキ君だろうなとは思ってると思う。だが断る(何)
ていうかヤマトとエンジ君両方いなくなったらルミより寧ろツバキが可哀想だ。どっちか残してやってくれ。エンジ君生きてるなら別にヤマトとかくれてやるが(ぇ)
ああ、しかし心中してもツバキが可哀想だな。でもいいんだ、ヤマトって結局自分が一番幸せだったら他は何でもいいんで、ツバキがどんなに可愛くても最終的には自分にとって一番いい道を選ぶんだろう。
簡単には殺させてくれないよあの人!! リベリオンのヤマトの武器は日本刀(笑)
でも失踪くらいならしてくれてもいいと思う。一緒じゃないか。何でもいいのか私。いいんだろうなあ。
ツヅキ君は人質取るような子じゃないと思うけど、誰かにルミを盾に取られたとしたら相手よりも先にルミを殺すことを選びそうです。行き着く先はやっぱり自殺ですが、逃げてるって思われてもいいからルミが誰かのものになることの方がプライド傷つけられてる気がするんですよ。変なところに自尊心はたらきますから!
まあだから明らかに奴は正義ではないけど、めちゃめちゃ悪ってわけでもないので、なんかそういうところ考えると一番人間してるのはヤマトなんじゃないだろうか。ツキ高の大和よりは断然いい奴だけどね。ルミとの約束なら愚直なまでに守り抜きます。愚直っていい言葉だな、つまりアホということか。


でもって、リベリオンの続き考えてて初めて真面目に風哉くんと流風の絡みが気になったりした。
ツキ高で全然絡まないだけにどうしたらいいのか謎。
ただあの屋敷の中でツヅキ君は本気で嫌味キャラっていうか黒いっていうかになってしまうので、いちいちルカの神経逆撫でしてそう。しかしツヅキ君そんなの怖くない(当然)。
ツバキって普段は「ツヅキさん」って呼ぶけど、エンジ君がツヅキ君の影やってる時は「ツヅキ様」って呼んでたらうわそれ何わかりやすいとか思いました私です。
ツバキはツヅキ君嫌いそうだと思ってます。しかしツヅキ君そんなの気にしない。ていうかどうでもいい。
なんだ、最強じゃないか。(何)


本編終わった後はそれなりにいろいろある予定なので妄想しがいがありますな。
ツバキの設定もこれから一悶着ある予定なので妄想しがいがあります。


とりあえず、井上和彦日和でした。
美味しんぼ見て、ビタミンでハジメやって、テロリスト見て。
テロリストの破壊力……!(何回目)
しかし真面目にビタミンのDS版やろうと思いました。瞬中心で。アキラァさん中心で。

2008.06.13(Fri) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

それは、

点呼どんが言ってたのはヤマトの人となりが関係してくると思います。
元々あそこの神話っていうのは神話らしい神話じゃなくて、単に神様が出てくるってだけの民話みたいなもんで、あの大変な気候を正当化する話にすぎないんですよ確か。
随分昔にあの土地で財を成したヤマトの先祖のおっさんか誰かが、あの特殊な気候に神様をひっつけて適当に話を作って、こんな土地で成功できたのは自分がその神の末裔だからって適当な論理をまた引っ張りだします。
だからまあ、あの豪雪っていう気候は神様の力が働いてるからとかじゃなくて、そもそもそういう気候であって、それに理由付けをしたおっさんがあそこを支配し始めたと。
それも大昔の話だから、真相を知ってるヤマトとかからすれば単なる下らない話しだし、国民の中には信じてるような人もいてもいいんだと思う。
しかしヤマトさんはどこの世界でもリアリストですから神様とか神話とか信じちゃいないんで。それでもここがそういう気候なのは事実だということと、そういう下らない話が今にまで伝わってるのも事実だってことを認識しているだけです。
で、もし反対するような輩がいても、残酷なご趣味をお持ちなのは遺伝のようですので、不穏分子はとっとと始末しちゃうんでしょう。今のヤマトの代は合議を取り入れたから、神話の正当性を巡ってヤマトを支配者として直接文句つけづらくなってるし。
ヤマトは文句つけられたとしても自分が支配者であるに足る才能と実力があると思ってるのでぶっちゃけた話別に神話とかの後ろ盾がなくてもどうにかなると思ってる。ので、全然違う信仰してる教会とかがあっても気に留めないと。でもヤマトより前の代がどうなのかはわからないから、創兵くんとか茂花ちゃんのいる教会は比較的新しいのかもしれない。
それと、自キャラで人増やせないので、教会には今は茂花ちゃんと創兵くんしかいないってことで! うわあい閑散としてる!
それに、あんな不便な気候の土地に新しく移住してくる人なんてまずいないっていうのもあるから気にしてないんじゃないかな。砂漠の方面から来るにしても河を渡らなきゃならないし、山脈は一応あれのせいで雪が降るっていうことになると思うので、雲が越えていけないほど高い山なんですよ。あの山を越えられた人はいないっていう設定です、今のところ。


まったく、点呼どんは妄想を促進させるような書き込み自重した方がいいよ!(何)
教会ネタ詰めたいから日曜是非会いたい。(笑)


あれですよね、キリスト教史とかやってるとそういう妄想できて楽しそうですよね。
政治学で古代国家の構造なんてやるから単に構造メインみたいになっちゃうんだよ。
あ、ヤマトさん多分しばらくしたら合議なんてやってられっかとか言って独裁敷くと思います。どうやってやるんだか知らんが奴ならやりかねない。
ツヅキ君を書こうとしたら単なる嫌味キャラみたいになって、「これは違う……!!」と思った次第です。アキちゃんとかシキ君(笑)とかアンドゥーとかもっと出したいなー。
(シキアキケイでログ読んで吹き出しました(独り言))


シンゴとケレスさんでひとつシリアスっぽいの欲しいな、と思ってて。
二人きりの方が都合がいいので、ルカとヒサさんが仙太郎さんのところに出かけて一晩泊まってくるみたいな日ってことにしようかなと。だから点呼どん書いて下さい(何)
いやまあ別にケレスさんと二人になれればいいだけだからどういう設定でも別に構わないんだけど。
言わせたい台詞あるなあと思ってたらやっぱり奴はケイスケぽくなった。しかしシンゴはケイスケほど強くないぞ。
剣を教わりたいとかじゃないんだけど、聞いてみたいことはある、みたいな。ただ私にケレスさんは荷が重過ぎるよ! 困ったな!(爽)

2008.06.12(Thu) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

設定だけまた上げておこう。


リベリオン設定です。


創兵君のいる教会が広まってるかどうかっていうのは、わかりません!(何)
少なくともヤマトの国では土着の神話が信仰されてるので、そこまで広まってるわけじゃないと思うけど、でも砂漠にはあったりとかサオがいる国ではあったりとかすると思う。だってつまりキリスト教だし。
茂花ちゃんはモカティナちゃんで、でもきっとモカちゃんで呼ばれてそうな気がします。
創兵君はどうしようかなあ。青だとあんまりにも違うものになっちゃう気がするので、寧ろ蒼でソウでもいいんだけど、ソウさんっていう響きがなあ。難しい。


教会は山脈の麓とかにあります。ヤマトの屋敷のある町から大分離れてるんだけど、まあ直接は関係ないから!
でもあまりにも関係なさすぎるのも面白くないので、エンジ君がそこで介抱されればいいんじゃないかと思ってます。なかなかエンジ君が仕事遂行しないってことでツヅキ君が来て、そこで始末されそうになるんだけど間一髪逃げて、教会で拾われる、みたいな。
私の適当な思いつきすごいな。全部適当でよく生きてこれたないままで。


ルカの術云々の話も書いて見たいんだけどどうしたらいいものやら。
何が得意なのかなあ、と考えてみる。
何か火とか水とかじゃなくて、やっぱり風が一番使えそうな気がする。ルカだから!(爽)
ウィンディー!!(某CCさくらのように)
あとは回復とかそんな感じなのかなあ。
回復だったらさ、ケレスさんと町行って帰りに襲われたりして負傷しちゃったりしたら治してあげたらいいと思ってる。「貸しだからな」とか言いそうですあのクソガキ。でもって「誰も頼んでねぇだろ」っていういつもの応酬。
それはちょっと楽しそうだ。


2008.06.11(Wed) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

17――his awaking




 翌日は、昨日の吹雪は収まったものの未だ重い雲が立ち込めていた。
 あまり長く厄介になるわけにもいかない。ルカとシンゴは先を急ぐことに決め、リョウの小屋を出た。

「世話になった。ありがとう」
「いいや、久々に他所の人間と話せてこっちも気分転換になった」
「俺たちも久々にまともな人と会話できて安心しましたよね、ルカさん!」

 シンゴの言葉に、まあな、とルカは苦笑して頷いた。確かにまともな人間とまともな話をするのは久々のことだった。豪雪の中とは言え、多少は心休まる時間が過ごせたし、本当に久しぶりにちゃんと眠った気がした。たった一晩のことだったとしてもだ。
 リョウも笑ってルカとシンゴの話を聞いていたが、やがて瞳の色が真摯なものに変わる。

「――お前らに頼みがある」
「どうした?」

 早々と小屋に背を向けようとしていたシンゴも向き直ってリョウの表情を窺っていた。リョウの表情は真剣でこそあったものの、深刻なものではないようにルカには思えた。

「……娘に、どこかで出会うことがあったら」

 搾り出すようにそう言いながら、リョウは懐から一枚の紙を取り出した。四つ折にされたそれは随分古いもののようで、いつ千切れてしまってもおかしくないほどに擦り切れていた。慎重に開かれる紙を二人で覗き込むと、そこには二人の女性が描かれていた。母親とその娘のようだ。

「……あったら、な」

 最後まで言わなくともリョウの言葉を把握したルカは、そう告げる。リョウだってわかっているのだろう。そんなことは奇跡にも等しい確率であると。
 そんなささやかなやり取りを終え、今度こそルカとシンゴは小屋に背を向けて歩き出した。目的地は取りあえず、この先にあるという例の権力者のおわす町だ。

「ルカ」

 数歩踏み出して、再び小さな声で呼び止められ、ルカは足を止めて振り返る。シンゴは気にしていない様子で先を進んでいた。

「――――――」





「ちょっと近づいてきたみたいですね、町」
「ああ」

 雪の壁は河を渡ってすぐの時よりは大分低くなっていた。リョウの小屋を出る前までの、今にも喰らいかかってきそうな高い壁に、いくらか人の手が加えられている。もう随分寒さにも慣れたのか、シンゴもルカももう震えることはなかった。ルカの前を歩くシンゴは、町が近いであろう事実を嬉しそうに噛み締めて、急ぎましょう、とルカに声を掛ける。ああ、とルカは再び生返事をした。
 小屋を出る直前に、リョウに言われた言葉。

『シンゴにあんま心配かけさせんな』

 それは痛いくらいによく分かっている。砂漠にいた時から、シンゴは酷く疲れていたようで、ふと見ればよく頭痛に悩まされていた。残した弟や妹が心配なのだろう。シンゴをこんな状況にしたのは間違いなくルカ自身だ。そう思った。
 それから、リョウに見せられた娘の絵。長く美しい黒髪が緩く波打っていて、穏やかな笑みがよく似合う少女だった。生きていれば十四だというが、ルカとシンゴのこれからの旅路に、十四歳の少女と出会う機会などはほぼありえないことのように思えた。それでも、そう冷たく見放せるほど他人事とは思えないこともあり、万が一見かければ声をかけると約束した。きっと、それだけでリョウは多少なりとも安心するのだろう。

「今度はどれくらいいることになるんですかね……。なんか、砂漠にいた時の話聞いてた限りじゃ、あの盗賊連中よりよっぽどおっかない気がするんで、できれば早く出て行きたいっスね」
「そうそう国のお偉いさんと近づくことなんてないだろ。寒いし、とっとと出るつもりだ」
「ですよねー! ま、どんな変態だろうとルカさんには指一本触れさせません!」
「誰もこんな汚いガキに触ろうなんて思わねぇよ。平気だろ」

 そう毎度毎度簡単に手を出されるわけではない。そこまで弱くはないつもりだし、こんな何の縁も無い土地で唯々諾々と暴力やら何やらに屈してやるほど広い心も持ち合わせていない。腕力を考えれば確かに他の大人にはかなり劣るだろうが、その分を補える素早さくらいはある自信がある。

「……見えたな、町」

 そんな少し暗い話題は一旦打ち切る。道の先に垣根が見えた。ここと大差なく雪が降り積もっているだろうに、その町の周りはぐるりと植物が植えられているらしい。この雪の中で植物が育つなんて、ルカにはとてつもなく不思議な光景に思えた。

「結構でかいみたいですね……」
「まあ、国の中心の町っていうんだからあれくらいの大きさが妥当だろ。俺たちがいた町だって、城下で国の中心だ。だからあれだけ大きかったんだ。まあ、城が建ってるかそうじゃないかって違いはあるだろうけどな」

 ここは確か王政ではなかったはずだ。表面上は議会制を取り入れ、多数の意見を取り入れているように見せかけておいて、実際は一人の人間ないしは中心となる一部の人間が権力を握るシステム。それはもちろん王政とは違うから、城なんていうわかりやすいものは建っていないはずだ。議会制なら屋敷が多い可能性はあるが。
 シンゴと共に少しずつ町に近づくと、段々と全貌が明らかになってきた。雪の中なのに、町の周囲は花で彩られている。一歩町に踏み込めば、町の中も同様に様々な色の花が植えられていた。これだけ寒い雪の中なのに、花の咲いている場所だけに春が来ているかのような錯覚を覚える。町の人々が感じているのは当然寒気だから、ルカやシンゴと同じように防寒のため服を着込んでいるようだ。町の人々と、景観が食い違っている、妙な町。ぐるりと見回した限りだとやはり屋敷と言えそうな大きな家が数軒、それに加え、一番奥に立派過ぎる門が見える。その向こうにあるだろう屋敷には噂の食えない権力者様がお住まいなのだろう。
 ルカと同じく、シンゴもしばらく町の様子を眺めていたが、やがてきょろきょろと首を回す動作を止めた。

「……変、ですね」
「ああ、……なんか騒がしいな」

 町の妙な雰囲気にはルカも気付いていた。例の奥にある屋敷の方から騒がしく悲鳴にも似た声が聞こえてくるのだ。その喧騒は屋敷の前を通り過ぎ、ルカとシンゴのいる、町の入り口に近づいてくる。声と一緒に近づくもの。それは、鬼のような形相の男だった。屋敷の方面から一目散に駆けてくる。

「ルカさんッ、危ない……!!」

 ルカの後ろにいたシンゴがそう叫ぶ。避けなければ、と思っているうちに男はルカに向かって全速力で近づき、あっという間に拘束された。右を見ても左を見てもシンゴの姿はない。後ろか。後ろなら男の死角だろうし、自分が拘束されている以上、シンゴは危なくないだろう。
 それでも捕まっているというのは気分が悪い。逃れるために腕でも噛んでやろうかと思ったが、ズボンの後ろポケットに入れていたナイフを抜き取られてしまった。銀色の刃がルカの首筋に当てられる。ひやりとした金属の鋭い感触に、ルカは顔を顰めた。

「脱獄した上に人質とって逃げるなんてひっさびさの熱い展開だなー。自分の運命を知ってて抗うたぁ泣かせるぜ」

 屋敷の方向からやってきた、上等な上着を羽織った青年が緊迫感もなくそう口にする。
 ……人質?
 今まで状況をうまく飲み込めていなかったルカだったが、その一言で驚くほどすんなりと事態を理解することができた。
 脱獄。人質。
 そんな話を以前シンゴとした気がする。屋敷の地下に設けられているという処刑場。残虐と言われる刑の執行に耐え切れなくなった囚人が隙を見て脱獄したのだろう。好青年が売りの君主なら、外にまで逃げれば手出しできないかもしれない、などという話をした。確か、したはずだ。人質でも取れば完璧だろうと、そんな話も。その完璧な逃亡のシナリオに、あろうことかルカ自身が組み込まれている。

「一歩でも動いてみろ、こいつ殺すからな!!」

 男はお約束通りそんな言葉を吐き、言葉が向けられているだろう上等な上着の青年は動揺するのかと思いきや、

「別にいいけど? そいつ見かけねぇ顔だし。知ったこっちゃねぇな」
「おおっ、さすがは民のことを一番に考えるお方! 今のお言葉感動やわー」
「やっぱりか? 今のは俺もそう思ったんだよな」

 その青年の隣にひょっこりと現れた金髪。青年よりも少し背は低いようだが、正直会話の能天気さに呆然としていたし、金髪というのにももう飽き飽きしていた。そんな自分の悠長さもどうかしているとは思ったが、依然男はルカを人質にとれていると思っているようだ。
 馬鹿な。ここに来たばかりで、権力者の存在については話でしか聞いたことのないルカにだってわかる。ルカは人質として見られていない。殺されたとしても少しも痛くない存在なのだ。だから、この男の運命は、どう足掻こうときっと決まっている。
 屋敷の者なのだろう二人は相変わらず悠長に笑いながら一歩一歩男に近づく。二人が近づく度に、首筋に当てられる刃に力が込められて、ついに痛みを感じた。皮膚を切ったようだ。
 このままだと十中八九死ぬんじゃないだろうか。
 シンゴはどうしているだろう。動けないでいるんだろうか。こんなところで止まってしまうなんて本当に情けない。シンゴをこんなところまで連れて来てしまったのに、人質になって殺されたなんて死んでも笑えない。カッコ悪すぎる。自嘲気味に笑おうとした時に、青年の歩みが止まった。そのままこちらに来ようとする金髪の男の動きを腕で制止する。最初はそれに不満そうな目をした金髪の男も、一度こちらに目を戻すと状況を把握したのかすぐに引き下がった。
 状況が、読めない。
 まだ刃は首に当てられているし、男の拘束が外れるようにも見えない。
 そんな時だった。

「――!?」

 背中に大きな衝撃。それと一緒に、一瞬ナイフの刃が首筋に食い込み、しかし深く切り込むことなく地面に落ちた。男の呻き声。拘束が外れる。
 雪の降り積もる地面に投げ出され、すぐに振り向く。白い雪に赤い血が散っていた。男は片手で背中を押さえている。背中を、傷つけられたらしい。でも、誰に?

「………る、……れが、……もる」

 ――そんなの、きっとひとりしかいないと、わかっていた。
 背中を押さえて膝を折る男。その向こうに、大きな黒い影。長い金属の先から滴る雫が雪の上にぽたぽたと落ちる。

「シ、……ンゴ、」

 そんなこと、してくれなくていいのに。
 ケレスに時計を奪われ、奪り返すとき、ケレスを本気で殺そうと思ったあの時。殺しちゃいけない、と強く言ったシンゴを思い出す。

「ッ、俺が守る、ルカさんは絶対、俺が守る――!!」

 そう叫ぶように言ったシンゴが、両手で持った剣を大きく振りかざし、男の首目掛けて相当な力で振り下ろした。
 飛び散る。飛び散る。
 
「……シン、ゴ……?」

 俺に殺すなと言っておいて、お前は誰かを殺すなんて、そんな馬鹿なこと。
 飛び散った鮮血を顔に受けながら、ルカはシンゴを見た。
 肩で息をしている。高熱を出した時のように荒い息。何も映していないような瞳。それでも一瞬だけルカを見て、苦い顔をした。

「……んたは、………とに、…………っ」

 ルカにも聞き取れないほどの小さな声で何かをシンゴは呟くと、急に力を失ったのかがらんと剣を取り落とす。続けて、シンゴ自身もがくんと雪の上に膝を折ると、既に事切れた男の体の上に倒れた。 

「シンゴ、……おいッ、シンゴ!!!」

 泣き声のような叫びが喉の奥から出た。シンゴの安否を一番に確かめたくて立ち上がると、再び誰かに拘束される。首を捻って見ると、あの金髪の男だった。

「っ、離せ!!」
「あちらのお方やったらちゃんと連れて来ますよって、安心したって下さい」
「そういう問題じゃない!!」
「癪やけどご命令には逆らえへんからなあ」

 腕を後ろに拘束され、町の人々の奇異の視線を感じながらルカは屋敷へと歩かされた。シンゴは他の兵士によって連れて行かれるらしく、先を歩くルカにシンゴの様子を見ることはかなわなかった。
 飛び散った血液の温かさと、痛いくらいだったシンゴの叫び。何で、どうして。何度考えたところで、答えは少しも見えてこなかった。




2008.06.10(Tue) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

あの青い薔薇は今日も咲く 8


 また学年がひとつ上がった春。
 もうすぐ五月になろうというのに、嫌に肌寒い深夜だった。

『ケレス、逢引しようか』

 表情が容易に想像できる声。少し高めで、軽く笑う、その声。
 時間なんて気にしない、いつでも自分の思うがままに進む、その声の主。
 ――陸が、戻ってきたらしかった。




「いっや、試験終わったのが今日ってか昨日でさ! 帰りの電車で寝こけて寝過ごして大変だったりして、まあいいんだけど、終わったから」

 誰もいない公園だった。先に着いていた陸はやって来たケレスを笑顔で手招いた。
 その声の調子からは疲れた様子など微塵も感じられなかったが、この一年あまり学校にも出ずに過ごし、それでいて単位も落としていないというのだからそれなりに努力をしていたのだろう。
 ただ、ケレスには当然わからないことがあった。

「お前、何の試験受けてたんだよ」

 一年間、聞く機会がなかった。千鶴も知らないようだった。一年間離れなければならないような試験なのか。
 陸はその問いをきょとんとした目で聞いて、それから首を傾げる。言ってなかったっけ? そう言い出しそうな表情だ。

「国家公務員Ⅰ種。所謂エリートって奴?」
「そんなもんにならなくても稼いで食ってけるだろ、お前なら」
「あ、何、モデルのこと言ってる? あんなの興味ないし、ただ金必要だったから荒稼ぎしたかったんだよ。やっぱ適当にマークして試験受けただけじゃ特待にはなれなかったからさ、学費って馬鹿になんないよなー。法学部まだ安いから助かったけど」
「お前学費自分で払ってたのか」
「あ、知らなかった? まあそっか、ちぃにも言ってないもんな」

 恋人にさえ話していないことを知っていてたまるか。そう思ったが、すぐに思い直す。陸は、千鶴にこそ話していないことが多すぎる。千鶴には大事なことは何一つ伝わらずに、だからこそ千鶴は動揺して、泣き出してしまう。全部陸の至らなさが引き起こしたことだ。

「言っとくけどさ、俺はただ自由奔放に生きていたくてちぃに話してないんじゃない。もちろんそういう部分もないとは言わないけど、知らなくていいことだから教えなかった」
「ならそうだと教えればいいだけだろうが」
「俺他人ってあんまり好きじゃないから、わざわざ他人を安心させるために自分のこと教えてやるなんて馬鹿馬鹿しいと思っちゃうんだよ」
「……俺も人のこと言えないが、お前も人として悪すぎるな」
「いいよそれでも。分かってるから」

 でも仕方ないんだ、と本当に悪気がないように陸は話す。これだけのことを分かっていて悪気がないわけがない。悪いと分かっていてやっている。自分のすることが、どれだけ千鶴を追い詰めるのかわかっているはずだ。

「高校の時、部活の夏合宿中に家が放火に遭って、父親と母親殺されたんだよ。うち親戚と疎遠だからそれから俺これでもかってほど孤独でさー。……言い訳だと思われるかもしれない。でもこれは事実で、そんなことでもなきゃ俺はこんなところでモデルで荒稼ぎなんてしようとも思わなかっただろうし、他にやりたいこともあったんだ。けど仕方ない、それで孤独慣れしたもんだから人間不信みたいになってんのも事実だし」
「それなら何で、」
「何でちぃと付き合ったか? そりゃあれでしょ、互いの利益一致」

 陸はブランコに腰掛けると、ゆらゆら揺れながら、笑っていた。

「ちぃだって、自分をより際立たせてみせる男ってことで俺を選んだにすぎないよ。俺のこと好きって言ってくれてる、それが全部嘘だとは思わないけど、俺の内面までを見て好きだって言ってんのかはわかんない。見てくれだろ、と思ってるよ俺は。それで、俺としては稼ぐためのステップ」

 ひとりで学費を支払っていくために金が必要だった、から、そのステップとして千鶴を使っているにすぎない。陸の理論は極めて単純で、千鶴の用意する理由よりもずっと冷たく聞こえた。

「でもさ、ちょっと変わってきたんだよな。……ちぃってさ、俺がどんだけ淡白な反応してもずっと待っててくれるんだよ、諦めないで、俺がちゃんと言葉返すまで。そういうのを見てると、俺も変わらなきゃいけないんだなと思って」
「……それで?」

 胡散臭い、とケレスは思った。
 この爽やかさは胡散臭い。本当にそう思っているのかかなり疑わしい。

「――ねえケレス、分かってるよな、お前は」
「……何を」
「ちぃがお前といるってことは、俺を待ってるってこと。あんまり興味なかったから全然手ぇ付けてなかったんだけど、お気に召した? ……ちぃがこれまでお前に何を捧げたとしても、お前といるってことは俺を待ってるってことなんだ。どれだけお前といるのが心地よかったとしても、お前といるってことは俺を待ってることをアピールする手段なんだろ?」

 陸はいつもの爽やかな笑みを湛えたまま、揺れていた。
 ケレスはその陸の様子を見ているだけで、何もすることはできなかった。そもそも自分がここにいることがおかしいのだ。千鶴と関係を持ったことも、全てが偶然の産物で、本来なら自分はこんなことに巻き込まれるべきではなかった。

「あの下らない雑誌の記事も今朝思い出して初めてちゃんと眺めたよ。随分前に買っておいてはあったからさ。それでもちぃは俺を待ってるみたいだ。こんなろくでもない俺なのに? 何一つ喋らないで、他の男使って気ぃ引こうとしてるのわかってて連絡ひとつ寄越さない俺なのに? そう思ったら、ああ俺もこの子に報いなきゃなと思ったんだよ。――そんなに俺だけ愛してくれてるなら、俺だって愛してやらなきゃ、なあケレス?」

 彼女が今まで陸のことでどれだけ心を痛めて、そしてケレスにどんな表情を見せたのか、知っていてもケレスは口にしない。そんなこと陸にだっておそらく分かっているのだ。
 陸が持ち出す根本的な理論は、おそらく。

「……振ってもいないし、別れてもいない。そういうことか」

 千鶴が振られたように感じただけで、別れが訪れたように思っただけで。
 そんなの屁理屈以外の何物でもない。仕事での繋がりが深いのに仕事を辞めると告げられて、真相を知りたいと言えばお前には関係ないだろうと突っぱねられ、それを振られたと解釈しない方がおめでたいだろうに。

「言っただろ、知らなくていいことだから教えなかった。ちぃには関係ないから教えなかった。あの頃はちぃの事別にそこまで好きじゃなかったってのは認めるよ。けどさ、よくあるだろ?」

 陸はブランコから下りると、ケレスの目と鼻の先にまで顔を寄せて、酷く歪んだ顔で、笑って見せた。

「離れて気付く大事なモノ、ってさ」

 その笑顔はあまりにも板についていて、捉えどころのなかった陸の本質は、きっとこうなんだろうとケレスは思った。陸の発言全てが嘘だろうとは思わない。けれど、全てが真実であるわけがない。
 やがて陸は表情をふっと緩ませて、口を開く。

「お前といる方がきっと幸せなんだろうと思う。俺が見たことのあるちぃって、完璧にいい女として着飾ったちぃだけなんだよ。お前の前では違うだろ? どうしようもない女の顔、見せてるだろ? きっとそういう顔、これから一生ちぃは俺には見せないと思う」
「……それは、お前もじゃねぇのか」

 口にはしたが、おそらく陸はそんなこととっくに分かっている。

「言っただろ、俺たちが付き合ってんのは互いの利益が一致してるからだ。ちぃは、俺の隣を歩く完璧な女としての自分が大好きなんだよ。そして俺も。そんな完璧な女に引けを取らない、あまつさえ手玉に取ってみせる自分が大好きだ」

 ――本来なら。
 自分から縁を切った女が他の男と一緒にいて、嫉妬のひとつでもして、こうして話を持ちかけるという流れが適切なのだろう。
 けれど、陸の場合は違う。嫉妬などという感情と、この男は縁がない。あったとしてもそれは恋愛感情からくるものではなく、自分を一番引き立たせるであろう相手が自分とは違う誰かに寄り添っていたから。
 全ては自分のため。究極のエゴイストでナルシスト。手に負えない男だ、とケレスは思った。

「………返せよ」

 馬鹿なんじゃないのか。返すも何も、最初から何一つ奪ってはいないのに。
 その思いは言葉にせず、少しだけ口の端を上げることで伝えた。



2008.06.03(Tue) | Title | cm(0) | tb(0) |

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