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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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透き通るまであと少し 1



「あっ、水城せんぱーいっ」

 部室のドアが開いて、マネージャーやってる俺と同い年の女子が嬉しそうにそちらを向いた。そういえば好きとか言ってたっけ。どーでもいいけど。
 部室に放置してあった雑誌を開いていた俺は、それを閉じて放り投げる。
 ドアを開けた先輩は、珍しく申し訳なさそうな顔をしている。ほんと、珍しい。

「悪い、講義ちょっと延びた」
「講義ちょっと延びて、どこの女に捕まってたんですか? ちょっとあしらい方学んだ方がいいですよ、先輩」

 先輩は、う、と詰まって、それから睨むように俺を見た。憎しみがこもってる。けど、約束してる時間から三十分以上も遅れられたら俺だって嫌味のひとつも言いたくなる。久々に形勢逆転だ。

「いいですよ、そんな待ってないですから。部室に用ないならもう行きますよー」

 投げた雑誌の代わりに、足元の鞄を引っ掴んで部室を出る。マネージャーにはひらひら手を振って。先輩はいつも通り眉間に皺寄せて黙ってドアを閉めたらしい。あーあ、あの子先輩のこと好きっつってたのに。先輩は不器用だから、軽く手を振ってあげることも難しいらしい。
 ――まあ、そこが先輩らしいんだけど。
 



 今日は珍しく、一限終わった後俺も先輩も暇。二限はいつも一緒の講義だけど、たまたま休講になった。部活も今日は定休日。二、三日前に休講情報見てはしゃいで、たまには一緒に買い物とか行こうかって話になって。季節の変わり目だからいいかもね、なんて先輩もほんっとーに珍しく同意してくれて!! それで浮かれてたんだけど、そこに空気読まないうちの親父からの電話。

『たまには夕飯でも食べに来いよ、流風先輩も来るっつってるからさ!』

 そんな風に言われたら、先輩が行かないわけないじゃんか。せーっかく出かけられると思ったのに、もうちょい空気読めよな、ほんと。嫌じゃないけどさ。地元までは電車で数駅かかる。先輩は毎週喫茶店のバイトのために通ってるけど、俺はマンションの近くでバイトしてるから、一緒に電車乗るなんてのもすごく久々だ。高校の時はよく一緒に出かけたりしてたのにな。

「今度休みかぶった時はぜーったい一緒に買い物行きましょうねー!!」
「別にそんな息巻かなくてもいいだろ。お父さんたちの都合もぴったり合ったって方が珍しいんだし」
「そりゃそうですけど……。毎日毎日まーいにち練習ばっかじゃ不健康ですって。いくら体育大生でも!」

 先輩が、否定はしないけどさ、と苦笑する。
 当然だ。先輩なんて俺より背低いし華奢に見えるしで、部活の連中からも「何で体育大でバスケ部?」って意外に思われてる。連中いわく、美術部とかのが似合うって話だけど。

「こういう機会でもないとお前の家族と顔合わせる機会って、そうないから」

 吊り革につかまって、少しずつ近づいてくる懐かしい景色を眺めながら、先輩は言う。

「……家族って、羨ましいもんなんですか、先輩にとって」
「ルミさんが母親代わりやってくれたし。お祖父ちゃんとかお祖母ちゃんも近くにいたから。羨ましい気持ちが全然ないわけじゃないけどね」
「俺みたいな奴がいる家でも、ですか」

 先輩が横目で俺を見る。
 俺みたいな、憧れの人と父親が混同して意味がわからなくなってる子供がいる家でも、か。

「お前は、血とか才能とかもうどうでもいいんだろ。僕がいる」

 さらりとそんな台詞が言えてしまう先輩は、すごいなあと思う。先輩はよくこういう恥ずかしい台詞をさらっと言うけど、言ったその時はよくても言って五秒もすると自分がいかに恥ずかしいこと言ったか噛み締めるらしく、真っ赤になる。ほら、今もそうだ。

「そーですね。先輩がいれば俺、才能とかどーでもいいです」

 真面目に言ってくれたってことは、本当にそう信じてくれてるってことだ。
 うん、先輩は不器用だから思ってないことは言わない。俺も器用とは言えないけど、先輩よりは要領いいはず。
 だから、俺は全然恥ずかしくない。本当のことは、さらりと笑顔で言えるんだ。



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2008.09.30(Tue) | Title | cm(0) | tb(0) |

スノウメモリー 17

 
 あたしの、ふたつの柱。



『こっちが本気なら、気持ちが通じないことなんて絶対にないんだぞ』



 小さい頃からお父さんに教えられていたこと。あたしも櫂も、小さい頃から本当にずうっとそうやって教えられてきた。そうやって育てられてもう十五年以上になるけど、あたしは、そしておそらくは櫂も、お父さんのこの言葉を少しも疑ってはいない。
 気持ちが通じないことなんて絶対にないの。その事実に絶対の自信を持っている。そう思うから、幼稚園の頃から、ひとりでいる子をどうしても無視したりできなかった。ひとりでも多く友達を作りたいって本気で思ってた。大勢で遊ぶ方が絶対楽しい、って思ってた。
 幼稚園でも、小学校でも、中学の時も、それが失敗したことなんてない。隅にいる子にも、話しかける。鬱陶しいと思われているのかもしれないけど、それでも話しかける。相手が見えてくると、嬉しくなる。どんな音楽聞くの? あたしもそれ聞くよ、櫂も好きなんだよ。その本、あそこにいる子も面白いって言ってたよ。そうやって輪が広がっていくのが、嬉しくて仕方なかった。
 あたしと櫂にとっては、お父さんのあの言葉は格言みたいなもので、お父さんが身を持って感じたことだからこそ、重みがある。




『仕っ方ねぇなー! 父さんなんかに微笑んだばっかりに叶えられなかった母さんの夢、俺と黎で叶えてやっから!』




 小さい頃からの夢。歌をうたう人になること。櫂と一緒に。あたしの人生で、きっと櫂が隣にいないことなんて有り得ない。
 お母さんは元々歌手になりたかったんだって話を聞いた。そこら辺の歌手なんかより、お母さんの方がずうっと歌がうまい。あたしも櫂もそう思ってる。
 お母さんは歌よりお父さんを選んだから、今あたしたちがいる。歌が大好きなあたしたちは、きっとお母さんと同じように上手に歌をうたえるだろう。
 お母さんが歌をうたえなかったこと、残念だと思う気持ちは確かにある。けど、本当に歌って欲しかったのか聞かれたら、首を振るだろう。だって、そうじゃなきゃあたしたち、きっとここにいないから。瀬川家はいつだって幸せ。幸せそう、じゃなくて幸せ。お父さんが、お母さんが、お父さんとお母さんが、直面してきた一瞬一瞬の間に目の前に出される膨大な量の選択肢から、最善を選んで積み重ねてきた結果が今だ。あたしも櫂も、自分たちが両親に幸せを与えることができてるって自信を持って言える。逆もまた然り、だけどね。
 世界を見れば、いろんな人がいて、いろんな親がいる。あたしたちの身近でいえば、ルカ父とかハルパパとか。どっちも親バカ代表だ。ルカが、ハルが存在していることが、嬉しくて幸せで仕方ない親。見てて分かる。そういう親の元にいる子は、誰しも幸せそう。



 そのふたつの柱が、今、ちょっとだけ揺らいだ。




「――ねえ、そうやって人のことに首突っ込んで楽しいわけ? クラス委員だから、ムードメーカーだからやんなきゃいけないとか思ってるの? 人の気持ち考える機能ついてないんだ?」
「あ、う、」

 去年からそうだった。
 頼むからひとりにしてくれ、ってオーラが出てるの。
 誰と話してても楽しくなさそうで、二人組作れって言われても自分から進んであぶれていく。ふわふわでやわらかそうな金髪に、綺麗な緑色の目。そんな色彩でただでさえ目立つのに、顔も綺麗に整っているから、近づきたいって子は男女問わずたくさんいるのに。
 でも、誰も近づけない。誰とでもすぐ仲良くなるあたしや櫂も、京都からこっちに来たばっかりなのにすぐ周りと打ち解けたエンジも、彼に大きく踏み込むことはできなかった。
 人間、わからないことって知りたくなるじゃない? それと一緒。隠されると知りたくなる。きっと櫂も同じことを思っているだろう。ただ、今、たまたま踏み込んだのがあたしだっただけで、条件さえ揃えば櫂も同じ事をしたと思う。
 ――そして、同じことを言われただろう。

「それどころか状況考える頭もないんだよね。君が言ってることがホントウだとして、――どうして僕がひとことも喋らなかったと思ってるの?」

 校舎の裏のゴミ捨て場。
 あたしはその近くの壁に背中を押し付けられて、身動きが取れなかった。
 相手の端整な顔。去年同じクラスだっただけだけど、あたしが知っている彼の表情は“無”だけで、その他は知らない。今は、――激怒、かな。春の野原みたいな緑色の瞳が、温度もなくあたしを射抜く。
 こわい。
 というよりも、
 かなしい。

「……あたしも、みんなも、ただ、樹理と仲良くしたくって、」
「へえ。みんなを代表してるんだ? 話しかけて仲良くなればみんな自分と意見違わないと思ってるんだ。じゃあ聞くけど、君の言う“みんな”って誰?」
「っ、櫂も、エンジも、みんなだよ!! 去年同じクラスだったみんな、なかなか樹理には近づけないねって話してて!」
「近づかないで欲しかったんだからそれでいいんだよ。最低限の会話はしてたつもりだし、放課後まで君たちのお遊びに縛られなくてもいいと思うけど」
「あ、あたしと仲良い人みんな馬鹿みたいに言わないでよ!!」
「そう聞こえた? ならごめん。馬鹿なのは君だけで十分」

 あたしの眼前で樹理はそう吐き捨てて、離れた。
 悲しくて、寂しい。
 分かり合えない人もいるのかな、お父さんは運が良かっただけなのかな。
 それに、……どうして樹理からは、あんまり幸せそうな感じがしないんだろう。それも悲しい。
 どうして隠してるの? わかんないよ、隠さなきゃいけないほど後ろめたいの?

「……君がさっき言った戯けた話。いつもの調子で他の人に広めたりしたら、……首、絞めるよ」

 樹理から温度が感じられない。
 分かり合えない人はいないってお父さん言ったのに。あたしは本気だよ、本当にもっと樹理のこと知りたいって思ってるよ。成績トップのくせにいつもぶすーっとしてる。中学の時も今もどこの部活にも入ってないって言ってたのに、バスケ部の連中よりバスケが上手い。笑ったところ見たことない。下校する時、学校の向こう側のお屋敷の方によく行く。入学して半年経っても校舎把握してなくて家庭科室がわかんなくて迷ってた。そういうとこ、結構見てるから、気になるのに。もっと仲良くなれると思うのに。ただ馴れ合いで仲良くしたいんじゃないんだよ、って、言いたいのに、そう声を掛けることさえ樹理の背中は拒絶している。


『樹理って水城先生の子供だったんだねー! 意っ外意外! 流風先生っててっきり独身だと思ってた!』


 クラスは離れたけど仲良くしたくて、この前たまたま樹理と中学同じだった子の卒業アルバム見せてもらって、住所録をたまたま眺めて、その日帰って、たまたまお父さんの机にあった教職員の住所録を見て、それで、あたしだけが気付いてしまった。
 去年の連絡網の電話番号は違ったはず。調べたら、当然だった。先生が連絡網に載せてるのは携帯の番号。樹理は家電。
 ――これで少し距離が縮まるんじゃないかな、って舞い上がっちゃったんだ。
 深く考えないで、声を掛けてしまった。この学校は先生の子供っていうの結構多い。実際あたしも櫂もそうだし。だから、その事実がわかればもっと仲良くなれるかもって。
 どうしてわざわざ別の番号出してるのか、どうして樹理が今までそんな素振り少しも見せてこなかったのか、そんな理由、少しも考えようとしないで。
 樹理の背中がちょっとずつ遠ざかっていく。また距離を感じて、あたしは泣きそうになった。久々に今心が痛い。
 ぎゅっと唇を噛み締めて、ゴミ捨ての帰りだったことを思い出す。もう帰ろうと樹理の歩いていった方とは反対方向に足を踏み出すと、スカートのポケットで携帯が震えていた。
 ディスプレイも確認せずに通話に出る。

『黎!?』
「か、櫂!? どったのいきなり」

 櫂の声が、どこか焦っている。

『や、何か、変な感じしたからさ。何かあったかなって』
「あ、……」

 話してしまいそうになる。
 樹理の背中を思い出す。
 温度もなくただあたしを拒絶していた樹理の背中。

「……ううん、なんもないよ。ちょーっと心配しすぎじゃないの、櫂さん? もしかしてシスコン気味ぃ? 黎ちゃんてば人気者だから愛されすぎると困るわぁ」
『茶化すなよ。……てゆーか、分かるからさ。なんとなくだけど。……黎がこんだけ苦しく思うことって流石に限定されてくるし。俺も苦しい。息詰まりそう』

 なんでかわかんないけど、昔からあたしと櫂にはそういうところがある。
 風邪引いたり怪我したり、そういう肉体的痛みも一緒に受けることが多いし、片方が悲しくなるともう片方も訳もなく悲しくなるんだ。多分今、櫂はそれ。
 一卵性だからかなあ。双子って都合いいなあ。

「櫂の馬鹿な声聞いたらちょっと元気出てきたかも」
『そーかよ。つーか馬鹿じゃねぇ!! 俺と母さんに謝れ!!』

 お父さんは最初から度外視。それが瀬川ツインズクオリティ。
 ……ほんと、ちょっと元気出てきた。

「……やっぱりあたし仲良くなりたいなあ、樹理と」
『おー奇遇。俺も』
「だよねー! あんな綺麗なんだもん、暇なら軽音とか入って欲しいよね!」
『したら俺と樹理でツインボーカルやるからお前裏方決定な』
「その台詞、そっくりそのまま返させてもらうよ!」

 あたしの片割れ、一番の理解者。あたしのテンションをあげてくれようとしてる、その声に普段は絶対しないけどちょっとだけ感謝してあげながら、目尻の涙を拭った。






2008.09.28(Sun) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

スノウメモリー 16



 どうしてか、俺は目の敵にされているらしい。
 俺は身に覚えなんてないし、第一その人とは一ヶ月くらい前に校門で一度顔を合わせたきりだ。目立つ人だからよく覚えてる、黒の入り混じった金髪に、薄いグリーンの瞳。ハーフなんだろう。
 始業式の後だ。校門でエンジさんを待ってたら、エンジさんと喋りながらその人は来て、すぐに校舎に戻ってしまった。俺とエンジさんが知り合いだから居づらい、って空気じゃなかったと思う。俺がいることそのものが嫌みたいに。
 ――拒絶された?
 名前も、何も知らない人に。何も知らないんだから別に深く落ち込む必要なんてないのに、俺も気にしないことにしようと思ってたのに、その人は校舎や校庭で鉢合わせる度に俺を睨むように見てくる。
 練習の時だってそうだ。バスケ部でも何でもないくせに、たまにコートの近く通りかかっては俺を見て、忌々しげな目で俺を見る。
 何だよ、何だってんだよ、俺が嫌なら見なきゃいいだけの話なのに。近づかなければいいだけの話なのに。こっちは少しも近づきたいなんて思ってないのに。
 その人が俺のバスケを見る時の、まるで格下を見るような目が気に入らなかった。エンジさんと同い年ってことは、俺の方が年下なんだろう。それはわかる。でも、バスケを見下されることは許せない。あんたなんかより数百倍俺は上手い自信がある。根拠もなく俺を睨んで、見下してるような奴よりは絶対上手い。それだけの練習を積んできたつもりだ。
 天才じゃなくたって、それなりに上手いプレーは、できる。
 
「っ、くそ……!!」

 すっかり陽が落ちて暗くなったコートで、俺はボードに向かって思いっきりボールを投げつけた。 
 部員は皆もう帰ってしまった。俺も校門までは一緒だったけど、練習したくて適当な理由をつけて戻ってきたのだ。
 ……俺の何がそんなに気に食わないんだ。
 俺のこと一番気に食わないのは、他の誰でもない、俺自身なのに。
 バスケのことを考えるといつも苛立つ気持ちが募ってしまう。それが嫌で、深くは考えないようにしているのに、あの人はそんな俺の気持ちを抉ってくる。最悪だ。
 わかってるよ、どうせ俺はそれなりに上手いプレーしかできない。そんなの、あんたに睨まれる前から、ずっとずっと前から分かってた!!
 


 中間試験も終わったある日の夜、俺は意を決してエンジさんに尋ねてみることにした。
 夕食の後、エンジさんの部屋のドアをノックする。勉強の邪魔になったりしたら嫌だな。

「ルカか? いいよ、入って」
「すいません、お邪魔します」
 
 エンジさんは床で軽くストレッチ中だった。小さくお辞儀して部屋の中に入り、後ろ手でドアを閉める。でも、どこにいたらいいかわからなくて俺はドアの前に突っ立ったまんま動けずにいた。エンジさんが苦笑する。

「何突っ立ってんだよ。座ったら?」
「あ、はい」

 エンジさんは椅子に腰掛けて、顎でベッドを示した。促されるままベッドに腰を落ち着ける。

「授業でわかんないとこでもあった? 俺が分かるとこなら教えるけど」
「あ、そうじゃなくて、……エンジさんに聞きたいことあって」
「俺に?」

 エンジさんが首を傾げた。思い当たることがないのだろう。それは当然かもしれない。俺だって、……俺だって、別に聞きたくないんだし。

「……始業式の日、エンジさんと一緒に校門まで来てた人、いるじゃないですか」
「始業式? 随分前の話持ち出すな」
「俺、その時しかその人にちゃんと会ってないんで」

 もっとも、向こうはずっと俯き調子だった気がするけどな。……そうだ、俯いていた。最初は俺のことちゃんと見ようとしなかったくせに、なのに、俺のこと今では睨んでくる。ぐっと拳を強く握った。
 エンジさんは友達が多い。突然始業式の日と言っても思い出せないのだろう。

「……金髪に、緑の目の人です」
「あー、ジュリか。そういや始業式の日途中まで一緒だったな」
「……ジュリ?」
 
 ……女みたいな名前。
 俺だって人のこと言えないけど、でも俺の名前は一応オリジナルがいるわけだし。その人は男だし。

「そ。ミズキ ジュリ」
「みずき、って、水城先生と同じ水城?」
「苗字で呼ぶことないからどういう字だったかはわかんないけど、そうなんじゃないか? 名前は樹木の樹に理科の理でジュリ」

 その樹理がどうした? とエンジさんが続ける。

「……その人、バスケ、するんですか?」
「? 部活入ってるって話は聞いたことないけど。バスケ部にはいないだろ?」

 頷く。いてたまるか。あんな人が部活にいたら部活が地獄になる。毎日あんな目で、しかも間近で睨まれると思ったらたまらない。
 バスケしないくせに俺をああいう目で見るなら、余計に腹立つ。でも、エンジさんはしばらくして、あ、と声を上げた。

「してんのかな、やっぱり。……けど中学の時も部活入ってなかったって言ってた気するしな……。ちょっと離れたところにさ、バスケのゴールあるでかい公園あるだろ? 前、休みの日ランニングしてたらそこでシュート練してんの見たことある」
「そう、ですか……」
 
 それくらい、手近にボールがあって、公園通りかかったらするだろう。たまたま友達と遊んでたとか、そんな感じなんじゃないだろうか。
 エンジさんはもうひとつ何か思い出したようで、話を続けた。

「去年俺あいつと同じクラスだったんだけど、球技大会バスケで出てたよ、確か。俺はバレーだったからわかんないけど、結局総合優勝取ったしな。部活入ってないくせにバスケ部の壁楽に抜いたとかいう話で櫂が相当テンション上げてた。本人は相手が疲れてたんだよ、とか言ってたみたいだけど」

 ――そんな馬鹿な言い訳が通用するものか。
 俺は俯いて、口の端を上げた。どれだけ邪悪な顔をしているだろう。
 そうやって、部活に入ってないからって上手いともてはやされるのがそんなに楽しいか。同じ調子で俺を見下すのか。冗談じゃない。
 普通、いくら相手が疲れていたとしても、練習を積んでいるバスケ部部員の壁を抜けるのは簡単じゃない。雑魚部員だったって可能性もあるけど、そんな部員のいるクラスはそもそも決勝まで上がれないだろう。
 だから、水城 樹理は、部活に入っていなくともそれなりにバスケが好きで、それなりにバスケに触れていて、それなりに練習を積んでいる。
 ……だからって、俺は自分がそいつに劣るなんて少しも思えない。

「……ありがとうございました。すいません、いきなり変なこと聞いて」
「いや、いいよ。……けど、急に樹理のことなんて聞いてどうしたんだ?」

 ベッドから立ち上がって、俺は笑顔を作ってエンジさんに答えた。

「バスケするなら、仲良くなりたいなと思って」

 ――絶対、ぶっ潰す。


2008.09.28(Sun) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

超笑いました。



「アキラ……一緒にトイレ、行くか……?」



ものの数秒でこんな神セリフを吐き出した緑川はやはり神と呼ばざるをえない。(笑)
しかもどこが愛を囁いているのかという!
巷で話題の「狗ラジ」を聞いたのですが、緑川ヤバかったです。なんだろうあのグダグダ感。
TBの宣伝ラジオなのに「軍服」ってそれPC版ネタバレだから!!! お前らコンシューマのエンディング把握してないだろ!!
緑川のしか聞いてない、っていうか長いのでそんな時間もなかったわけですが、今度福山のも聞きます、是非。
4回目配信のゲストが処刑人とか絶対聞くし。(笑)
DJCDとか買っちゃうだろ私これ。踊らされるだろ。だってDJCD特別編のゲストがケイスケ……!!!
もうあれですよね、策略としか思えないですよね!!!!
5回目か6回目のゲストはやっぱりユキヒトかなー。個人的にはトウヤと出て欲しいもんですが。
源泉とかn出ないのか。リン2回なのに。むしろペスカ・コシカでもういいよゆうきゃん!!ってのもよい。
ユキヒト是非聞きたい。処刑人待ってます。
ソリドネタは盛り上がるな。オムライスにグリーンカレーに焼肉はデフォなのか。シキって何食って生きてんだ。
キラル新作のスイプーも欲しいとこですが後日で! 実はスプレーの新作も気になるんだけど、それはまだ開発中らしい。スプレーは今のところ鬼畜眼鏡で忙しいだろうし。平川稼ぐなあ!(笑)
アニメに出てくるよりBLゲーで目にすることの方が多い気がするぜ、平川。
そういえばカズイの声は平川ですが、カズイのビジュアルってどことなく諒さんに(略)


部長にもらった「さよならを教えて」のディスクを長らく放置しておりまして、っていうかどうやって立ち上げたらいいかわかんなくて。容量足りてなかったのかな? ちょっと前にCドライブ綺麗にしたのでもう1回いじってみたらようやく立ち上がりました。
超序盤ですがさすが鬱ゲーで定評あるだけあります。気持ち悪いです。
これで明日にはD.C.G.S.やるんですか私。双子と主人公でスクイズ展開希望ですがありえませんね、そうですよね。


取り合えず狗ラジ超オススメ。「プロですからね」とか言っておきながら作品名フルで言えないとか(笑)

2008.09.27(Sat) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

楽しくなってきました


久々に奥田美和子引っ張り出した。やっぱりすごいなあこの人。


何を思ったかスノウの続きを書き始めました。
櫂と黎を書きたかったから。ていうか出番作ってやろうよ、みたいな。
双子にとってきっと樹理は「気になる存在」で、黎は一応女子だから櫂よりもちょっとその気持ちが強かったんじゃなかろうか。
恋愛云々じゃなくて、こいつらの場合の「気になる」は「孤立している」ってことなんですよね。さすが瀬川さんち。黎はそのうち樹理が気になってても構わないんだけど、発端が書きたい。
エンジ君と軽く喋ることはあっても、仲良しなようには見えないっていう。寧ろひとりにしてくれオーラがひしひしと伝わってくる。っていうのが双子はきっと大嫌い。みんなが楽しくなきゃ嫌だ。
そういう人って現実にもいるけどかなりウザがられる。しかし、それを自分で分かっててもそれが性分だから仕方ないんだろうなあ。
……っていう感じで、つまるところが樹理が黎を拒絶する話が書きたい。楽しい。
仲直りするシーンとかも頭の中にはあるんだけど、そのためにはスノウ自体を終わらせなきゃならんのでいつになるか。
櫂と黎のシンクロ具合はいっそ美しいくらいだといいな。
「俺は女の気持ちは分かんねぇけど、双子だから黎の気持ちはすっげー分かるんだよ!!」っていうのを櫂に言わせたい。いつ書けるかわかんないから今書いとく。(笑)


樹理と黎でフラグ立てたら多分、黎がものっそい可哀想な感じで進みそう。
樹理とルカとか超ドレッドノート級に鈍感だろうから、卒業しても普通に遊ぶけど友達、みたいな。
しかも樹理とか絶対後輩できたら勢いに流されて付き合ったりするだろうし(流されるだけだから長続きしない)、人づてに黎がそれ聞いて人知れず落胆してればいい。黎が落ち込んでる時は櫂もブルー。
でも頑張ってまた樹理を誘ってみて、次とかに会った時に「黎と話すのはやっぱり楽だな」とか言いやがったらそれ超絶死亡フラグ。(笑)
その台詞は言っちゃいけないセオリーなんだよ……!


っていうのをいろいろ考えました。でもバンド話で書いた3-Aトリオが楽しすぎてそれには劣るかなって感じです。
文化祭云々でも書いてた気がするんだけど、ファイルどこ行ったかなあ。
今日マクロス最終回か! 吉田死んだか。

2008.09.27(Sat) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

月の眩暈と光源体 5



 中間試験を終えて少し経った頃。とある日の昼休み。
 適当に昼食を取ってから、午後の五時間目に備える。原本を持って小テストを刷りに印刷室へ。同じように小テストの準備なのか、印刷機にかかりきりの八朔に二、三声を掛けて、さっと印刷を済ませて部屋を出る。
 昼休みの職員室は大体うるさいもんだが、予鈴直前ともなると教員の姿もまばらになる。静かなのはいいことだ。俺も学生の頃は騒ぐ側だったけどな。
 あとは授業の準備をして、予鈴が鳴ったら職員室を出るだけだ。刷ったばかりでまだ温かい小テストを抱えて席へ戻ろうとすると、外線の電話の呼び出し音が響いた。外からの電話は原則教頭の机にかかってくる。教頭は昼休み満喫中なのか不在。こういう時は近くにいる教員が電話を取ることになっている。
 教頭の机にテストを置き、受話器を取る。

「はい、私立月見ヶ丘高校職員室です」

 どこかの保護者からか、はたまた教材の業者からか。そういうのを全体的に把握してるのは教頭だし、そろそろ予鈴の時間だから教員自体少ない。厄介だな、と思った時、電話の向こうから予想外の言葉が飛び出した。

『あ、かざみ保育園教諭の長尾と申します。そちらに水城 樹理くんのお父様の水城 流風さんはいらっしゃいますでしょうか?』

 ピンポイントで名前を出され、驚く。
 これは俺が取って正解だったかもしれない。
 ――樹理に、何かあったのだろうか。

「私ですが、……何かありましたか?」
『すみません、携帯電話に連絡差し上げたんですけれども不在のようでしたので』

 印刷室に向かう短い間だからと思って携帯は机に置きっぱなしだ。ということは着信は向こうにも入っているのだろう。

『樹理くんが遊具の上から落ちてしまいまして、今病院の方に運んだところなんです』

 ぼんやりと携帯のことを考えていたからか、耳に飛び込んだニュースを即座に受け取ることができずに、電話口の女性の声を噛み砕いて理解するには数秒の時間を要した。

「え、……怪我、したんですか」
『全然泣かないので私達も気付くのに遅れてしまって……。他の園児たちが泣きながら教えてくれてやっと気付いたんです、申し訳ありません……!』

 そんなことはどうでもいい。あの子は元からあまり泣かない子だから、でも、どの程度の怪我で泣かなかったのか、それは場合によっては普通の子だって泣けない状態だってこともある。先方を責めるつもりは毛頭ない。

「落ちたって、どれくらいの高さから」
『だいぶ上の方だったみたいです……』
「出血とか、意識とかは」

 思いつくことをひとつずつ聞き出して、ジャングルジムのだいぶ上の方から落ちて頭を打ったらしいことを知った。園児が泣いて知らせたというのだからきっと出血もしているだろう。
 心臓が早鐘を打つ。それとほぼ同時刻に予鈴が鳴った。舌打ちをする。でも、授業云々と言っていられる状況ではない。
 すぐ行きます、とだけ告げて電話を切る。小テストの束を脇に抱えて、とりあえず自分の机へ。細かい荷物は考えずに、財布と携帯が鞄に入っているのを確認すると、次の授業は空きらしい元担任の席へ近づく。

「次、2-Bの授業頼む。これ小テスト。進み具合は生徒に聞いて」
「ざけんな、大学の学生じゃねぇんだぞ」
「っ、時間ねぇんだよ!! ぜってーどっかで埋め合わせすっから。頼むよ、せんせー」

 多少取り乱したのを取り繕って、なるべくいつも通り軽い感じで頼んでみる。
 これで断られたとしても、生徒放って行くだけだ。……きっと断ったりしないと思うんだけど。
 祈るような気持ちでせんせーを見つめ、せんせーがため息交じりに、俺が差し出した小テストを受け取るのを確認してから、俺は一目散に職員室を飛び出した。
 




「うわああ、痛そう……。樹理くんよく平気だったねー」
「軽い脳震盪と浅い傷だけで済んでよかったよホント……。焦った」
「脳震盪って言っても危なかったりするんじゃない?」
「いろいろ検査したけど、平気そうだって話になってさ。タフだなって褒められてたよ、医者に」

 車を飛ばして、保育園の側の総合病院へ向かった。つい最近解熱剤を打ってもらったばかりの病院だったから、病室の場所もすぐにわかった。
 保育園のジャングルジムだったから、小学校や普通の公園に比べて高さがなかったのが幸いだったらしい。駆けつけたときには、金髪の上に包帯をくるくる巻かれているところだった。

「けど泣かないんだね……。偉いっていうのか、可哀想っていうのか」

 その後樹理を引き取って、車に乗せて、芹沢邸の母屋に来ていた。
 樹理がそう大ごとじゃなかったから、職場においてあるノートだとか諸々を取りに行くためだ。学校に子供連れては入れないから、葉山に預けてから行くつもりで。
 樹理が泣かないのは確かに助かる。ひとりでいても平気っていうのも、強がりではあったとしても助かっているのは事実だ。けど、こういうときにまで泣かないのは逆に困ったりするのだ。すべて俺の思い通りになれって方が無理なのは承知だけど、痛い時くらい泣いてくれないと本当に重傷なのかもわからない。

「樹理くんは本当にお父さん大好きなんだねー」

 部屋の隅で小さいパックのジュースを飲む樹理を見ながら、葉山が優しく呟く。葉山からすればそうなのかもしれない。……でも、俺は。

「……あいつの母親、俺が樹理のこと置いてくと思ってたんだよな。だから樹理も、なんとなくそれ分かってたんじゃないか、って思う」

 異様に俺を気遣ったり、何があっても滅多に泣かなかったり、それは全部母親の気持ちが影響してるような気がしていた。
 置いていくなんて、そんなことできるほど冷たくはないつもりだ。樹理を可愛いとも思う。だから、全部の責任は、あいつにそう思わせた俺にある。

「だから、余計に水城が好きなんでしょ。水城は病気もないし、お母さんみたいにすぐ死んじゃうとは思えないけど、全然泣かなくたってお母さんがいなくなったのは悲しかったはずだし、同じように大好きな水城が突然いなくなったら、って思ったら」
「……俺に捨てられるって?」
「置いてかれるんじゃないかって思ってた頃のこと、樹理くんはずっと覚えてると思うよ。あたしも水城も、誰もそんな経験ないから気持ち分かってあげられないけど、友達が引っ越すのだって寂しくて仕方ないのに、それが親ならと思ったら怖くなっちゃう」

 葉山は、結構樹理のことを親身になって考えてくれる。一緒にいて頼もしい。

「……お前みたいのが母親で、椿はいい子に育つだろうな」
「あんたねー、いっくら母親がよくても父親がアレじゃダメよ絶対」
「可愛がってるように見えるけど?」
「……あれは父親じゃなくて当主だもん。どれだけいい子に育っても、大和の気持ちはひとつもわかってくれないんじゃないかな」

 それは、とても的を射ている気がした。
 俺はヤマトの立場は分からないから、父親として、その立場の人間としてどう考えているのかはわからない。でも、そういう立場って、ただ単に妻を愛するようには子供とは接せないのだろう。それが分かるから、葉山は何も言えない。ヤマトが自分で選択した結果なのだ。

「水城といいあいつといい、何なんですかね。不器用っていうか馬鹿?」
「うるせぇよ。……じゃあ樹理頼む。超だるいけど学校行かなきゃな」
「別にいいんじゃないの? 明日でも。樹理くん怪我してるんだし、一緒にいてあげれば?」
「いや、……五時間目の授業、元担任の某化学教師に押し付けちまって」
「……雷落ちる、かなあ」
「樹理のこと知らねぇんだからそれも覚悟しないとな……」

 ため息をついて俺は立ち上がると、樹理の側に寄って軽く頭に触れる。

「いい子で待ってろよ」

 薄いグリーンの大きな瞳で、樹理がひとつ頷くのを見届けてから、俺は学校へと向かった。




2008.09.25(Thu) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

20――a condition



 発作を起こしたシンゴはツバキに鎮静剤か何かを打たれ、そのまま地下の寝台で眠ってしまった。このまま寝かせてやれ、とのヤマトの言葉に従って、ルカは先を歩くヤマトの背を追い、ヤマトの私室へと来ていた。地下を一緒に出たツヅキは、二、三ヤマトに耳打ちされて、屋敷から出て行ったようだった。仕事でも言い渡されたのか。無駄に豪勢なつくりの扉を開くと、だだっ広い部屋の内部が露になった。

「まあ、ゆっくりしろ。疲れてるなら説明は明日に回しても構わないが」

 ヤマトとしては一応ルカに気を配っているのだろう。それはわからないでもなかったが、ルカは首を横に振った。

「今すぐ全部話せ。……俺たちをどうするつもりなのか、シンゴはどうしたらいいのか、あの国の王がどうして今関係してくるのか」

 先刻、ルカに青い瞳の王について聞いた後、ヤマトは何の説明もすることなくシンゴの元に向かったのだ。何の脈絡があってその言葉を出したのか、今後のことよりもそのことの方が気にかかっていた。
 ヤマトは、ルカたちが自分の睨んだ通りの人間ならシンゴの処罰は免除すると言った。果たして、自分とシンゴはヤマトのお眼鏡にかなう人間だったのだろうか。

「座れ」

 庭を望む位置にある長いテーブル。一番庭に近い側にルカは腰掛け、ヤマトはルカに対面する形で席に着いた。窓の外では再び雪が舞っている。庭の植物の揺れ方から見て、風も強い。色とりどりの花が、強い風に揺られているのが分かった。もしかしたら、これから吹雪くのかもしれない。

「お前の連れに関してはまだ何とも言えない。医学には詳しくないが、ツバキがしばらく休ませろと言うんだから間違いないだろう」
「……砂漠にいたときから、様子がおかしかったんだ。調子悪そうで、よく頭痛してたみたいだった」
「最初から不安定だったのが、河渡って増長されたんだろう。無理もない、気持ちは分かる」

 わかるわけがない。国の頂点でのさばっている人間に、シンゴの痛みなどわからない。強くルカはそう思ったが、ルカ自身シンゴの心情をすべて理解しているわけではない。だから反論することはできなかった。
 失うものがひとつもない自分とは違う、シンゴは守るものがあった。なのにすべて捨ててしまった。不安定にならない方が不思議なのだろう。
 
「お前の今後の身の振り方について話すか。手短にな」

 仕切りなおすようにヤマトはわざわざ声のトーンを上げた。
 あまりシンゴのことについてうだうだ言っていても仕方ない。取り合えずは休ませておこう。ルカも割り切ってヤマトの話に合わせることにする。

「俺の?」
「ああ」

 ヤマトは椅子から身を乗り出すようにして、テーブルに肘をつき、静かに告げた。

「守って欲しい人がいる」

 その言葉は、あまりにもヤマトに似つかわしくない。金も力も何でもある人間だ、自分で守ればいい。何よりも簡単なはずだ。そう、思いはしたが口には出せなかった。ヤマトの声も、表情も真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えない。思わずルカは息を呑んだ。この男は、本気だ。

「お前、その見てくれで人の役に立ったこと、ほとんどないだろ? 力仕事も満足に出来ないだろうし、身売りなんかしてたんじゃ学もそう望めないな」
「っ、……うるさい」

 しかし反論はできなかった。ルカがしていた力仕事など、体の大きいシンゴに比べればもっと年下の子供でもできるような内容だった。

「だが、お前だから意味がある。現状を疎ましく思っているなら向学心くらいはあるだろう。それなりの思考力もあると見た」

 それはルカ自身を正しく評価してくれているからの言葉なのか、単に皮肉っているだけなのか、ルカには分かりかねた。この男の内面を察することができるほど、相手を知る会話をしていない。

「……だったら、何なんだよ」
「側近として俺に仕えろ。もちろん報酬は支払う。――この条件を飲めないなら先の話はできない」
「は!? 何だそれッ、卑怯だ!! 第一、守る守らないって話はどこ行った! まさかあんたを守れとか言うんじゃないよな!?」

 側近として仕えろというのなら、守る対象は明らかにヤマトということになる。けれど、力仕事もできない、学も無いと散々列挙してその結論はないだろうとルカは思った。一国の主なら、もっと屈強な男を側近につければいいだけの話だ。わざわざ使えない子供を雇う意味などない。

「ツヅキが戻ってくれば分かるんだが、」
「ヤーマトはーん! ツヅキ印の宅配便がお届けにあがったでー」

 ちらりとヤマトが扉に目を向けた瞬間に、けたたましい音をさせてツヅキがふたつの大きな袋を抱えて部屋へとなだれこんできた。袋の中身はわからないが、ツヅキはつかつかとテーブルに歩み寄ると、袋をどさりと置いた。片方は軽そうな音だったが、もう片方からは明らかに金属の音がする。

「使える部下を持って幸せやなぁ、ヤマトはん?」
「だから得体が知れなくても手放せねぇんだよなぁ、罪作りな奴め」
「嫌やわぁ、そないに褒められたら照れますってー」

 お決まりのやり取りなのか、暖かい空気というよりはむしろ冷めた空気が辺りに流れた気がして、ルカは軽く目を逸らした。こんな気色悪いやり取りをいつもやっているのか。ならあまり雇われたくない。

「さて、見てみろ。お前の服だ」

 ヤマトは、袋の中身を開けて一つずつテーブルに並べていく。
 重そうな音を立てた袋の中からは、真紅を基調とした兵士服。それを見て先ほどの金属音も納得できた。
 そしてもう一つの袋からは、何やらいろいろなものが出てくる。どこかの本で見たことのあるような服だ。羽織物に近い形で、丈は長い。この地域の気候のためか生地自体はそれなりに厚いものだ。色は薄いオレンジが一枚、淡い桃色が一枚。それと、妙なベルトのようなもの。色合いからいって男が身につけるものとは縁遠いように思われた。
 そして最後に広げられたのは、ルカの髪の色によく似た、長髪の鬘。ここまで見ればルカにもさすがに話が読めてきていた。

「……俺に、女装しろって?」
「ご名答。普通の野郎がするには見苦しいし屈辱的だが、お前がやるならそれなりに似合うだろうし、今までの仕事に比べれば耐えられるだろう?」
「……ふざけんな……」

 今までの仕事。思い出すだけで吐き気がする。誰にでも見下されるしごとだし、“仕事”と称するにも卑しすぎると言われたこともあった。自分が掃き溜めになっているような気分になるのだ。それに比べれば確かに遥かにマシではある。でも。

「……俺にだって、自尊心くらいはあるんだが」

 人として、男としてのプライドくらいは持ち合わせている。生きるために甘んじてあの仕事をしていたからといって、屈したわけではない。
 だから、権力が相手だったからといって、自分が卑しい身分の者だったからといって易々と屈しては、いけない。ここは元いた国ではないのだ。縛られる必要など皆無のはず。
 そこまでを言葉にすることはなかったが、ルカの心情を汲み取ったのかツヅキがはははは、と笑いを交えながら口を開く。

「そらそうやわ。いっくら細くて女顔やゆーても男! 事情がどうであれ男らしゅうないことは俺かてしたくないわぁ」
「俺は何もプライドを捨てろと言ってるんじゃない」

 ヤマトの反論は正当性を欠いているように思えた。

「単に、これを身につけて俺の傍にいればそれでいい。言葉遣いを変えろとか、女の振りをしろとか、そういうことじゃない。もちろん側近として仕えてもらうからには訓練も受けてもらうし、お前には特別俺が直に相手してやってもいい。こっちはそのための兵士服だ。俺は、“男のお前に、これを身につけて欲しい”それだけだ」

 それは、あまりにも意図が理解できない相談だった。
 側近としておきたいのなら兵士にすれば良い。女が必要ならどこかの女を引っ張ってくればいい話だ。わざわざ女装させて傍におく必要などどこにもない。
 ヤマトの申し出は、あくまでもルカが男であることが主軸で、女が必要なわけではなさそうだ。それは、考えれば考えるほどルカを困惑させる。ヤマトはそのルカの困惑具合を見てか、薄く笑った。

「――婚約者がいる。……しかしそいつは俺とは身分が違う、普通の村の娘だ」

 どくん、と胸が鳴るのがわかった。
 
「俺はこういう地位に居る人間だ、見合いも何度もしているが、そいつがいるから全て蹴っている。それに二十になれば正式にそいつを妻に迎える予定だ。だからだな、俺の成人が近づいて、周りの有力者が焦りだしている」
「自分の娘をここに嫁がせて、将来自分が権力握りたいってわけか。それにはあんたの恋人が邪魔で、有力者サマたちがよってたかってその子をいじめ始めると」

 ヤマトはひとつ頷いた。それくらいなら察することができる。簡単な構図だった。

「けど、そんな奴らあんたの権力でどうにでもなるんじゃないのか」
「ここは今のところ合議だって知ってるか? 使い勝手はいい制度だが、ひとりが恣意的に権力を振るうことは許されない。加えて俺はまだガキ扱いだ。少なくともあと二年、成人するまでは身動きが取れない。暗殺でもすれば話は別だが、昔話の正統性は旧家がいなければ成り立たない。俺はあんな話信じちゃいないが、家を守る意思はあるんでね」
「それじゃ八方塞だろ……。そこに何で俺を入れるんだ。俺が入ったからって改善できるような状況だとは思えない」

 逆に、女装なんかして側にいればあらぬ噂を立てられる。リスクの方が大きいはずだ。

「――ある程度のリスクは覚悟している。家に関しては、俺自身は執着はそこまでではないが先祖の手前簡単に放り出すことはできない。あいつをこの屋敷に軟禁してる、俺が外からあいつを守るためにできるのはそこまでなんだ。だが、そのお陰であいつは外の空気を吸うことさえ満足にできない」
「屋敷に軟禁、って、そんなのよく承諾したな」

 ちらりとツバキの姿が浮かんだが、彼女は娘だとヤマト自身が公言していたし、あの子ではないのだろう。
 ヤマトの瞳が、多少の後悔で揺らいでいるように見えた。
 屋敷に軟禁すれば外から苛められることもないし、粗方の問題は片付いているのではないかとも思えたが、合議という性質上、そうでなくとも一国のトップの屋敷となれば有力者が多々出入りする。普通の村の娘が相手なら、親族の間でも評判はよくないだろう。
 ただでさえリスクばかり背負っているのに、これ以上どうにかしようというのか。

「男色の噂立てられるくらいなら安いもんっちゅーこっちゃ。お分かりで? ルカはん」
「……ああ」

 上手くいくとは到底思えないのだが、ようやく意図だけは把握した。
 悲しいくらいに身分の違う相手。自分のせいでその相手が傷つくなんて、もしルカ自身がヤマトの立場であったとしても耐えられないだろう。“男”で“側近”なのに女装している人間が側にいれば、十中八九妾の代用だと思われるだろう。ヤマトに男色の噂は立てられるだろうし、子孫を残してくれないことには国が続かないから見合いの回数だって今とは段違いに増えるだろう。ヤマトが本当に守ろうとしている女はもう飽きられたものとして見られるに違いない。その間、彼女を苛めるような年寄連中の目は彼女から逸らされる。気にも留めないかもしれない。誹謗中傷を受ける可能性はヤマトだって承知の上だ。本当なら自分で守りたいところを、一番屈辱的な方法で、最悪の事態を回避しようとしている。
 成人まであと二年ともなれば周りが焦るのも道理だ。年寄と同じくらい、ヤマトも焦っているのだろう。

「俺が冬の神の末裔としてこの国の指導者たる正統性を持っているなら、俺が生贄として欲する春の女神はあいつだけだ。そのためにはどんな苦労も恥辱も厭わない。今、俺に床に頭を擦り付けて哀願しろというなら喜んでそうしよう。それであいつが少しでも救われるなら、俺はどんなものを捨てたって構わない」

 聞いているだけでルカの方が赤面してしまいそうな口上だったが、ヤマトが表情を少しも崩さないところからすると、ヤマトはもう長いことこの信念を抱いて生きてきたのだろう。
 ――人を愛するためには、ここまでの覚悟が必要なのか。

「この図体でこの口上! はっずかしいやろー! ていうかっ、ええなあルカはん! このヤマトはんに絶対命令権もらえるやなんて!」
「いいぞー、ツヅキの言う事聞けってんならそれを聞いてやろう」

 ヤマトの口調は明るく、軽い。心が揺らいでいないのだろう。これでどうしろというのか。ルカは迷った。

「……要らない」

 ほんのわずか考えて、出た結論はそれだった。
 ヤマトは数分前のように薄く笑い、ツヅキは拍子抜けだといった表情でルカを見た。

「誠実には誠実で対応すべきだ。あんたは本気だと思う。だから俺だって本気であんたの話を聞かないと。土下座させてそれでいう事聞いてやるなんて、……フェアじゃない」

 力関係で屈服するとかさせるとか、もう嫌だった。
 相手が望むなら、誠実なら、こちらも最大限期待に副えるよう努力したらいい。こちらの人としての権利を害さないのなら、それでいいと思う。そもそもヤマトはこれさえ飲めば他に条件はつけずに雇うと言っている。女の服を纏うことも、今までの仕事に比べてしまえば確かに遥かにマシなのだ。

「……いいよ、あんたの女、守ってやるよ」

 ――それは、ルカ自身ができなかったことだから。
 だから、すべて失う覚悟をして、どんなことをしても大事なものを守ろうとすることのできるヤマトは、ルカにとって正直羨ましい。
 
 ……シンゴは?

 ふと頭を過ぎったシンゴの存在に、その時ルカは、原因のわからないぞくりとしたものを背に感じたのだった。




2008.09.24(Wed) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

いつ終わるんだ……


「あれ、先輩まだ起きてたんですか」

 バイト上がりで帰宅した野島に、僕は欠伸交じりで教科書を閉じると、「おかえり」と返す。
 深夜二時だ。最寄り駅の駅前にある居酒屋のチェーン店でバイトしている野島は、週二回くらいこの時間に帰ってくる。僕は朝練もあるからこの時間には部屋にいることが多い。今日はたまたま居間で勉強していただけだ。学校行って、夕方少しだけ練習に参加して、それでこのバイトしてるんだからタフなものだ。僕には絶対真似できない。

「お前と違ってテスト前までバイト入る気にはならないんだよ」
「高校からずっと同じバイトしてればそりゃあ多少融通利くでしょうよ。せっかく大学の近くに部屋借りてんのに地元戻ってバイトとか、ほーんと奇特ですよね」
「いいんだよ、そう遠いわけでもあるまいし。図書館の蔵書整理もやらせてもらってるけど、空きコマで本読み放題だし楽しいよ」

 一応掛け持ちしているのだが、喫茶店のバイトには週一回程度しか入らないのでメインとはいえない。そもそもあまりバイトに熱を入れている余裕がないのだ。それは野島も同じだろう。
 野島の父親は要らないほど仕送りしたがっているみたいだが、そこは流石に野島のプライドが許さないのだと思う(というよりも、野島慎吾はやりすぎる節があるからそのせいかもしれない)。仕送りはお互い最低限しかもらっていない。部屋は大和さんの持ち物で、家賃はちゃんと払うと言ったのに「黙って使っとけ」と凄まれて、払わせてもらえなかった。最低限の仕送りで、体育大の男二人が余裕ありすぎるくらいの生活を送れている。普通バイト代も生活費に使うものなんだろうけど、そこはきっと大和さんが「家賃を樹理たちから貰う」という前提でお父さんと野島の父親に話しているに違いない。実際は家賃を払わずに済んでいるから、仕送りの中からお父さんたちが考慮する家賃分が自然と浮く。バスケに専念できるように、って一応あの大和さんも思ってくれてるのだろうか。
 けど僕も野島も浮いた分を使い込むような人間じゃないから、それは銀行に預金してある。服とか靴とかは大体自分の稼ぎで買うようにしてる。いつかバスケでお金をもらうようになったら、利子つけて突っ返してやるつもりだ。

「あ、そーだ先輩!」

 上着を脱ぎ、野島が僕の隣に腰掛ける。試験勉強していた僕は、いい加減寝ようとペンを片付け始めた。

「異文化理解のノートって取れてます?」
「お前、あれ一緒に出てるんだから欠席してないだろ。寝てもいないし」
「や、そうなんですけどね? あの先生板書しないじゃないですか。プリントも図とかばっかだし。口頭の説明、言葉難しくてノート取りようがなくって! あの先生体育大生の敵ですよねー」
「……お前、高校時代は一応勉強できる方じゃなかったっけ……?」
「人とは日々進化し、進化した分だけどっかが衰えていくものですよ」
「偉そうに言うなよ……」

 ちょうどさっきまで勉強していたのが異文化理解だ。端に寄せたノートを開いて一応確認してから、野島に手渡す。高校時代は勉強教えるのとかも大分渋ったもんだけど、大学入ってからこういうの増えた気がするな……。甘いのか僕。

「夕飯は? まあいっつも僕いなくてもどうにかしてるんだよな」
「この時間に帰るときは面倒なんで風呂入ってすぐ寝ちゃいます。疲れてるんでコンビニとか寄る気にもならないですし」
「へー、じゃあ僕寝るから電気とか全部消せよー」
「え、ちょっ、ここは“じゃあ今日は作ってやるから早く風呂入ってこいよ”とか言うところじゃないんですか!?」
「勝手に妄想するなよ」

 今日はたまたま居間で勉強していただけで、いつもはこんなことないのだ。
 だから僕がこんな態度を取る取らない以前に、いつも野島がするようにすればいいのに。
 ……まあ、明日は祝日で休みだし。珍しく練習もないし。

「……分かったよ。作っといてやるから風呂入れ」
「いよっし! 先輩やっさしー!」
「けど、僕明日予定あるから作ったら寝る」
「あれ、どっか行くんですか?」

 席を立って冷蔵庫へ向かいながら、野島の質問に答える。

「ん、黎から待ち合わせ時間と場所だけの迷惑メールが来たから」
「は!? ……何ですかそれ、黎さんとデートなんですか、冗談いい加減にしてくださいよ」
「そんなんじゃないよ」

 時間と場所だけのメールって。
 毎回そうだからあまり気にしてないけど、こちらの都合というのを向こうは考えていないらしい。会う日は奇跡的に毎回空いているからいいものの。
 余ったご飯を冷やしているから、チャーハンくらいなら簡単に作れるだろう。
 具材を準備していると、まだ野島は風呂に入る様子もなく僕をじっと見ている。

「……人に夜食作らせてその態度、どう反応して欲しいわけ?」
「だ、ダメですよ黎さんとデートなんて!! しかも何ですか、場所と時間だけのメールって! あー! さては俺に内緒で何回も会ってたんですね!? ていうか先輩って女の子と簡単に約束しすぎなんですよ! その気もないくせに!」
「何でお前にそんな怒られなきゃいけないんだよ……」
「この前も俺がバイト行くのをいいことに練習終わった後女子部の後輩と食事したんでしょう!?」
「帰りたかったのに服引っ張られて帰れなかったんだよ」
「同じ実技取ってる人、喫茶店まで押しかけたんでしょう!? 知ってるんですからね俺!」
「それは約束とは違うと思うんだけど。あんなとこまで押しかけられてすごい迷惑だった」

 その前に「誰?」って感じだったから更に困った。大勢で一度食堂行っただけなのに覚えてろって方が無理だ。
 けど野島は猛然と反論してくる。

「押しかけられるってことはそれだけのことやらかしてるってことです! あーもう、無意識で女癖悪いって最悪ですよ、女泣かせ俺泣かせです!」
「ちょっと待て、今妙なフレーズ聞いたんだけど」
「問答無用! ってことで俺も着いていきますよー、黎さんにまで手出してるっていうか出されてるなんてほんっと先輩油断も隙もない」
「だから何で僕は四六時中お前に見張られてなきゃいけないんだよ……」

 しかもどうしてそんなに偉そうなんだ。自分だって散々遊びに行ってるくせに。その上休日は「大勢で行くみたいです」とか言ってたのに帰ってきてから「何で二人きりなんですか興味ないんですって……」とぼやくのだ。それも一度じゃなく二度三度で、そういう時は大体告白されてばっさり断ってくる時だ。女泣かせはどっちだ。

「じゃ、俺風呂入ってきまーす」

 にいっと笑って風呂に向かう野島の背を忌々しく思う。
 米の代わりにセロリでも使ってやろうか。大体あいつでかい顔しすぎなんだ、年下のくせに。それで優位に立ってるつもりなのか。

「……バスケしか考えてないっての」

 女とかに現抜かしてる暇ないんだ。日本と世界。僕もあいつも、それしか見てないのに。

「なのにあからさまに嫉妬とか気ッ色悪いんだよ!」

 もう寝るって言うのに作らせやがって。たまねぎをみじん切りにする包丁に殺意を込めた。



2008.09.24(Wed) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

咎狗TB



どうっしてもユキヒトルートやりたくて久々にTBつけたら、ケイスケルートまだ終えてなかった!
ケイスケの声、追加ボイスは若干低くて銀さん寄りになってるんですよね。
まあ、杉田の声からするとケイスケってかなり高めだからなあと思う。
ついでにケイスケルートのいっちゃいちゃしてるシーン見直しました。
追加シーンの破壊力は……! いちゃいちゃしすぎだろお前ら! いいよ勝手にやってろ!!
シーン回想でカズイとリンとトモユキのところも見てましたが、やっぱりトモユキのリンへの執着は異常。そしてゆうきゃんボイス。


ユキヒトルート、改めてやると本気で悶える。ちょいサド入ったユキヒト好きすぎる。
でもやっぱりトウヤですよね……!
処刑人2人相手にして生きて帰ってくるってちょっと何それ最強!? 右腕が麻痺してるとか怪我たくさんしてるとか言ってたけど、それでもあの2人相手にして生きて遊びに行けるんだからトウヤ本気で強い。
トウヤの武器何だったんだろう……。だって銃しか持ってなかったじゃない。
「早く行けよ」とか超絶死亡フラグなのに……! あれだけカッコよくてCV伊藤健太郎だけど大和じゃないですよね! あんな仲間の為に奮闘しないよ……。結構ボイス的にはいいかなと思うんだけど。ビトロ氏と会話するとことか、話持ちかけられて「冗談」とか、あの辺。
あの一件でトウヤはユキヒトにマジギレされたらしいですが、なんか、そのシーンこそ見たい
どんなマジギレなんだろう。「絶望した!! 仲間を盾にされたからってあいつを売ったリーダーに絶望した!」とかかな!
ラスト、缶切りで怪我したアキラさんの指舐めるシーンとか、それっぽいシーンがあれだけなのでユキヒト好きです。
「忘れられなかったってやつ?」
……こいつ……!! いい声しやがって……!

どっかのサイトさんでも書いてたけど、トシマ脱出してしばらくは友達ともいえないし微妙な関係で良いと思う。誰よりもユキヒトが一番自分に疑問持ってたらいいなあ。
自分は失敗作で、アキラはある意味成功してて、最初は研究所とか成功した被験体とか憎んでただろうけど、そのおかげで今アキラはどうなんだろうとか横目でアキラさんチラ見したりしてればいい。
日本を壊したいとか中2なこと言ってたけど、ユキヒトって「見た目より力がある」とは描写されてたけど特別な力ってのはないんですよね! リンみたいに小さいけどめちゃめちゃ強いとかいうわけでも、シキみたいなのでもないし、ケイスケはライン使うとああだし。だから一番普通の人。そこがいい。
一緒に住み始めて、ひとつのベッドに枕ふたつでも、多分最初からそう考えてたんじゃなくて、単にスペースがなかっただけなんだろうなあ。2,3ヶ月そうやって友達ともいえないし仲間だったわけでもないしで微妙なところだったんだろうけど、ゆっきー(待て)なら、ある日ふと気付きそう。
自分は仕事が休みで、アキラさんは仕事行ってて、昼間っからビール片手に床に座って絵とか描いてるときに、いきなりふっと気付いちゃったりして、そっからあのエンディングみたいな関係になってたらいいな!
ゆっきーはそういうのには動揺なくてストレートにぶつけてくるタイプだと思います! あれですよ、俗にいうクーデレという奴です。
でもってアキラさんの本質は強いものに流されるところにあると思うので。同年代相手にアキラさんっていつになったら恋愛感情持つんだろう。リンだって恋愛云々じゃなくて「守ってやりたい」が主軸な気が。シキは同年代じゃないよね!(爽)
ケイスケ相手でも微妙だったけど、TB見てこいつらバカップル確定しました。追加スチルのアキラさん嬉しそうな顔しすぎ。(笑) 今度の休み空けといて一緒にどこ行く気だお前ら。
洋食屋なアキラさんがツボすぎるんです。同棲っていうのがツボでした。ゆっきーヘタレじゃないから困りました。だれですか、ゆっきーとアキラが受カップルだって言ったの。ゆっきーサドじゃないですか。


ってことで、咎狗やったあとリベリオンの下書き見たらルカの台詞が全部アキラさんぽい。
書き直すか……!?

2008.09.23(Tue) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

もういかんな私は。


ルームシェア話でカテゴリ作れるんじゃなかろうか。(笑)


洋食屋洋食屋言ってたら洋食屋しか考えられなくなって焦った。
ということでルカと樹理のバイト考えてました。
ルカには明るい接客業やらせたかったので居酒屋のホールで!! 週2くらいで!
樹理は喫茶店のバイトを週1くらいで続けてると思う。ついでに父親のとこ顔出したりして。あとは図書館の蔵書整理を手伝ったり(私がやってるからってわけじゃないですよ)。あんまり動かない静かな感じのが似合いそう。
いや、いいんだけどね。ふたりでスタンドとかでも。
慎吾とか車買い替えるからー、って古いのルカにくれそう。ルカは普通免許と、時間できたら二輪取りそう。後ろに彼女乗せるとか王道じゃないですか!

エンジ君とか椿とか真紘とかが襲来するようなのも書きたいなあと思いつつ。
いや、ルカ1年ならまだエンジ君と椿は一緒に住んでないけど。むしろあの二人相手ならこっちが遊びに行く方を書きたい。
ていうか(仮)の日常そんな感じにしようかなあ。ルカと樹理が開学記念日とかで月見ヶ丘の大学乗り込むみたいな。それなら樹理3年か。ルカ2年。
その頃にはもうインカレとかで目立ってるといいな。つーかその頃にもう目立ってるためにはルカ1年でレギュラー入りしなきゃいけないんだけど、ゼミの幹事はホッケーでインカレ出て1年でレギュラーだったって言うからダメじゃないだろう。いける。慎吾のガキならいける。で、今まで3位とかだったのがぶっちぎりで優勝してればいい。すいません妄想激しくて。


よし、明日は5限だけだと思うことにしたからゆっくり寝よう!

2008.09.23(Tue) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

ルームシェア中。


「せんぱーい、ただいま帰りましたー!」

 玄関から大きな声がして、リビングに向けて短い廊下を歩く足音がする。ちょうど揚がったカキフライを油から上げながら、樹理は首をひねって足音の主を見た。

「おかえり。メールしたもの買ってきたか?」
「もーバッチリですよー!」

 出来立てのフライを皿に盛り付けていく。カキの前にエビとアジとイカも揚げていたので、それも一緒にする。スープは作ってあるから後は器に盛るだけだ。
 あとは野菜が足りない。だから流風に買い物を頼んだのだ。
 流風は買い物袋の中身をひとつずつ取り出してテーブルの上に並べていく。もういい年のくせに買い物できたからって嬉しそうにしすぎだ、と手を洗いながら樹理は思った。

「食器用洗剤、いちごジャム、胡椒の詰め替えとレタス! ほら完璧」
「足りなくないか? その割にまだ入ってるみたいだけど」

 レタスはこれから使おうと思って頼んだものだが、もうひとつ使おうと思って頼んだものが足りない。なのに袋の中にはまだ何か入っている様子で、へらりと笑って少し後ずさった流風の手から樹理は素早くビニール袋を奪い取った。

「りんご……?」
「や、はは、赤くて美味しそうだなあと思って」
「別にそれは構わないけど、……セロリ頼まなかったっけ、僕」

 頼んだはずだ。レタスとセロリのためにメールしたようなもので、他はついでにすぎない。最初にその二つを挙げたはずなのに。
 樹理が睨むように流風の目をじっと見ると、ははははは、と流風は気まずそうに目を逸らす。

「……まさか、その年になってセロリ苦手とか嫌いとか言うんじゃないよな」
「……う、いや、……ははははは」
「はははじゃないんだよ、ガキ!!」

 どうやら本気らしかった。仕方ないじゃないですかー、と頬を膨らませる流風に、樹理はこちらも本気でため息をついた。これなら自分で買ってくるんだったと思わざるを得ない。
 
「お前、今度好き嫌い抜かしたら食事別々にするからな! 偏食厳禁!」
「うわあああ、言いません言いませんっ、先輩の料理大好きなんでそんなことされたら俺死ねます!」

 縋るようにそう言われてはこれ以上強く言う気にもなれず、再び樹理はため息をついた。大学では高校の時のように取り合えずクールを気取って生活できているのに、帰宅すると、というか樹理の前ではどうしてこうなのだろう。寧ろ一番クールを気取ってほしいものだ。これでは兄弟というよりも親じゃないか。
 袋の中にりんごが三つ入っている。そのうちの一つを手に取ってまじまじと見つめた。綺麗なりんごだ。

「俺の今日の夕飯それだけとか言いませんよね……」
「それでいいならいいんだけど?」
「よくないです! 一年の練習でしごかれて体育館の片付けしてくったくたなんですよ俺ー!」

 それは樹理も去年経験したことだからよくわかっている。あれだけハードな練習をした後片付けと掃除までやらされるのだから疲労も半端ではない。
 
「セロリの代わりに使うんだよ」
「へ、先輩そんな高等技術持ってんですか!? ならセロリなんて今後一切食事に上らなくても、」
「お前の明日の夕飯セロリの一本食いで決定」
「な、何でですかぁああ!!」

 騒ぐ流風の脛をスリッパを履いたままの足で強く蹴る。いてっ、と流風がよろめいた。 

「鞄置く! 上着脱ぐ! 手洗って来い! お腹空いてんだろ、すぐできるから」
「う、……きびしーのかやさしーのかわかんないですよ……」
「へえ、これでまだ僕のこと厳しいとかいう余力があるとはね。そんなに夕飯抜きにされたいと」
「いえ! 先輩の溢れる優しさに感動しています! そんな先輩が大好きです! ってことで手洗ってきますっ」

 脱兎の如く駆け出した流風を見て、逃げたな、と樹理は思う。
 こちらも練習後の体で食事を作るのだ、いちいち面倒かけさせないで欲しいと思う。思うものの、全部てきぱきできる流風はそれはそれで気味が悪いなと思ってしまう。ダメな流風を見慣れている弊害だろう。
 なんか、いいように使われている気がする。そう思いつつも、樹理は最後の一品を作るために流しへと向かった。



2008.09.22(Mon) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

ちょっとした遊び心です。



 背後から迫る足音に不吉なものを感じて樹理はマンションの廊下を歩く足を止めた。自宅はすぐそこだ。大体不吉なものと言っても正体は知れているのだから、走って逃げ込めば済む話。足の速さは大して変わらないが、間合いがこれだけあれば逃げ切れるだろう。
 ――そうは言っても、それはスタートダッシュが同時だった場合だけだ。
 だから、いつ踏み出すかが重要。首を大きくは動かさないようにして、目だけで後ろを確認すると、樹理は最初の一歩を、

「先手必勝ッ!! 逃がしません!!」

 踏み出す前に相手に踏み込まれた。ちッと舌打ちをして樹理は駆け出す。無駄に長い廊下を恨めしく思った。
 こういう時の相手はいつもより身体能力が高かったりする。今だっていつもより足が速い気もするし。こんなことにやる気出さないで練習に気合い入れればいいのに。だから僕からカットの一本もできないんだ、と樹理は悪態をついた。
 樹理が迫る相手に手首を握られたのは、自宅のドアの目前だった。非常に惜しい。

「……何だよ、このストーカーめ」
「う、……ちょっと傷つくけど甘んじて受けることにします」

 振り向いて見ればやはり相手は予想したとおり野島 流風だった。制服姿のまま、肩に指定鞄を掛けている。
 ノブに鍵を差し込んで回し、扉を開ける。こちらは流風に用などないのだから特別話すこともない。第一毎日学校で会っているのだ。
 じゃあ僕帰るよ、と言い残して扉の内側に滑り込むと、閉まるドアに流風が足を挟む。一刻も早く締め出したかったためにガッ、と痛そうな音がした。

「な、何だよお前!! 帰れよ!!」
「じ、実は水城先輩にお願いがあって来たんですけどっ」
「僕はお前にお願いされるようなことなんてない!」
「俺にはあるんです!! 聞いてくれるまで帰りませんからね!!」
「近所迷惑だ!!」
「じゃあ大人しく話聞いてくださいよ!」
「なんでお前が偉そうなんだよ!」

 ドアの内側と外側での攻防。
 野島 流風は外見こそ樹理の父親とよく似ているが、内面は父親にそっくりだということを樹理は嫌だと思うくらいに知っている。要するに、とてつもなく諦めが悪い。その上悪気がない。最悪だ。

「~~~っ、分かったよ、入れよ……」

 そうしていつも折れてしまう。だから漬け込まれるんだ、と思っても近所迷惑をやらかされたら折れる以外にどんな選択肢があるというのだろう。
 やっりい、とドアの外で嬉しそうな声がして、それが余計に樹理を落胆させる。ドアを開けば無邪気な笑顔。そういう顔はここじゃなくて好きな女の前でしていたらいいのにと樹理は毎回心から思うのだった。



「……で? わざわざ付け回して上がりこんで、そこまでする用事って何。大したことじゃなかったら怒るよ」

 湯のみを流風に差し出して、テーブルの中央に煎餅の盛られた皿を置く。一応客人としての扱いをしてやっている自分はとことん偉いと思う樹理である。
 流風もその辺の礼儀はきちんとしているので、ちゃんと「いただきます」と告げてから湯のみに口をつけた。一口お茶を飲んで喉を潤してから発言するのだろう。しばらく待った末に樹理が聞いた言葉は、

「俺っ、水城先輩のこともっと知りたいんです!!」

 という大したことじゃないどころかとてつもなくどうでもいい台詞だった。

「帰れ」
「え、何でですか」
「いーから帰れ! 何だそれ!! もっと重要なことかと思っただろ!!」
「もっと重要なことって具体的に何ですか! 俺がそんな用事持ってくると思います!?」
「……そんなこと自分で言うなよ……」

 そう言われれば確かにそうなのだが。勘ぐりすぎた自分が馬鹿だったのだと思わざるを得ない。
 それ以上怒る気もなくしてしまった。だからと言って用事を聞いてやるほど心が広いわけでもないのだが。

「部屋荒されるのとか嫌だからな」
「そんなことしませんよ。ごくごく身近な人に、先輩に何聞きたいかアンケート取ってきたんで、それに答えてもらえれば!」
「なんだよそれ。お前の身近な人って都筑くん除いて変なのばっかだろ」
「エンジさんは基本的に黎さんと櫂さんの暴走を止める役割でした」
「可哀想に、……って、そんなとんでもない質問する気?」
「あ、いえ、あまりにもおかしいのは俺も聞く気ないですから」

 と言われても、あまり面白い答え方を自分ができるとも思えず、湯のみを手にしばらく考えて見たが、きっとそれに答えなければ流風は帰らないだろう。父親の帰りは遅いだろうが、このまま放置していたら出くわすことだって十分考えられる。父親と流風のツーショットはなるべくなら見たくない。まったくの別人なのだとちゃんと認識して割り切っても、心が曇る。

「……わかったから、手短に」
「え、受けてくれるんですか!? てっきり断られるとばっかり!」
「な、何だよ!! 断っていいなら断る!」
「あー! ダメですダメです! 一回OK出したんですから! じゃ、質問しますよー!!」

 ……最近振り回される頻度が高くなってる気がする、と樹理はひとり頭を押さえるのであった。

2008.09.18(Thu) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

小さな君をその肩を

「樹理くーん」

 離れの戸を開けて、中に入る。しんとした室内。リビングに足を向けつつ耳を澄ますと、微かにカリカリと鉛筆の音がした。けど音はそれだけ。だからあたしは何だかいつも心配になってしまう。あたしや大和が見てない間にこの子に何かあるんじゃないかって。

「あ、ルミさん」

 樹理くんがたった今気付いたかのようにプリントの束から顔を上げる。樹理くんは今年、小学校四年生に上がった。今は夏休み中だけどうちの離れに居候中。水城がバスケ部の顧問で合宿についていかなきゃならなくて、毎年この時期はうちで預かっているのだ。
 椿もいるから去年までは母屋の部屋を使ってもらってたんだけど、今年は何だかんだ自分でできるから離れを使わせて欲しいと申し出を受けた。母屋は人がたくさんいるから今までも居心地悪かったのかもしれない。

「宿題の邪魔しちゃった?」
「疲れてきてたので、大丈夫、です」
「そっか。最中持ってきたんだけど、食べる?」
「あ、いただきます。じゃあ僕お茶淹れるので」

 てきぱきとテーブルの上の宿題を片付けて、樹理くんは席を立つ。大和と椿にはできない芸当だわ……。片付けるって概念が芹沢にはそもそも欠落しているからどうしようもない。
 ポットの中のお湯を急須に入れて、二つの湯のみにお茶を注いでいく。その様子をあたしはテーブルから遠目に見ていた。
 水城は三日間留守にして、四日目に帰ってくるという。今日は二日目だけど、昨日の夕飯、樹理くんは自分で作って食べていた。簡単なものならできる、とは言っていたけどまさか自宅ではないところで自分でどうにかしてしまうとはあたしも大和も想定外だった。
 
「ごめんね、淹れさせちゃって」
「いえ、毎年お世話になっているのでこれくらい」

 おまけに、小学四年生にしてこれだけ礼儀正しい。
 あたしの目の前に湯のみを置いて、樹理くんも席に着いた。
 母屋から持ってきた最中の箱を開けながら、湯のみに口を付ける樹理くんの顔を見る。前に水城から相手の女性の写真を見せてもらったけど、すごくよく似ていると思う。美男美女から生まれる子供はこうなるってことね、と感心してしまうのだ。もちろん椿を哀れんでいるわけじゃない。椿だって可愛いわよ、それなりに!
 父親は授業と部活とでほとんど家にいないし、若いから修学旅行だ遠足だの下見に行くことも多い。帰りだって毎日遅いだろうから顔を合わせることだって少ないだろう。これまでは夜は実家に預けて夕飯とらせてるって聞いたけど、この分でいくと最近はきっと樹理くん自分でどうにかしているんだろう。ますますできた子だ。
 だからあんまり子供っぽくなくて、心配だ。大和に対してはまだ生意気言ってるみたいだからちょっとは安心できるんだけど。

「宿題、難しい?」
「そうでもないです。ちゃんと先生の話、聞いてるし」
「偉いねー、あたし小学生の時そんなことできなかったよ? 宿題なんていつも最後の週まで残しちゃうし。日記なんかは張り切って毎日つけてたんだけどね。絵日記とかもう騒がしいくらい色鉛筆使っちゃったりして」

 ――あれ?
 今ちょっと表情が翳った気がした。何か悪いこと言ったかな……?

「あ、えーっと、寂しくなったら母屋おいで? 椿もいるから、ね?」

 取り繕うように言うと、樹理くんは控えめに首を横に振った。

「家にひとりでいるのも本当は平気なんです。けどルミさんたちがいいよって言ってくれるから甘えてるだけで。……夏休みせっかく家族でいるところ、僕が入って邪魔とか、したくないですから」

 ……で、小学四年生にしてこの口上。
 まったく水城は何教えてんだ馬鹿親父、と思わざるを得ない。子供が言わなくていい台詞いくつ言ってるんだろうこの子。こういう言葉でしか他人と会話できないのかもしれない。やっぱりこの子は、可哀想だ。
 さっき表情が曇ったのはきっと、どんなに勉強ができても日記だけはうまくつけられないからだろう。楽しい夏休みなんて知らないんだろうなあ。ただ退屈な休みが長々と続くだけ、って思ってるんだ。椿にもそういう節があるから困る。夏休みは稽古のためにあるんじゃないのに。夏休みなんてガキは遊んでりゃいいのよ、遊んでりゃ!! と思うのはもしかしてあたしだけなんだろうか。あたしがこれまで過ごしてきた夏休みって、特殊なものだっただろうか。海行ってプール行ってお祭り行って花火して映画行って遊園地行って買い物して、ってそんなに特別なことなのかな。

「……今度みんなで海行こっか、樹理くん」
「え、」
「樹理くんと、樹理くんのお父さんとー、あたしと椿とあのダメ親父で」
「でも、お父さんいつも忙しいから」

 最中をかじりながら、樹理くんは視線を落とした。それは落胆しているというよりも、最初からそんな可能性はないとわかりきってるみたいな表情。
 子供が知らなくていい表情を、この子はたくさん持ってる。そんなのダメだ。

「いーい? 子供は親を振り回すもんなのよ。たくさん我が侭言っていいんだから! 樹理くんが言えないならあたしが振り回してやるわよ、水城と大和くらい!」

 樹理くんの視線が落ち着かない。そんなことされたら父親の迷惑になるんじゃないか、困らせるんじゃないかって思ってるんだろう。本当にそんなこと思う奴だったらこの子うちで引き取ってとっとと縁切るわよ。水城はそんなこと思うほど馬鹿じゃない。人の親になるの決めたときも、賢いからこそ人一倍慎重に考えたはずだ。
 この子が小さい頃から、このふわふわした髪の感触があたしは大好きだ。ぽんぽん、と頭に手を乗せて、優しく撫でる。

「樹理くんのお父さんはこんなことで困ったりしないから、大丈夫よ」

 すると樹理くんは、しばらくの間の後、困ったように微笑んだ。多分笑った。すごいレアなもの見た気分だ。しかもやっぱり笑うともっと可愛い。けど大和が同じように撫でたところでこんな表情見せてくれないだろう。ざまあみろって感じだ。
 本当はあたしのことも苦手なんだろうな。
 ずっと母親なんて知らないだろうから、だから母屋にも来づらいのかもしれない。そんな樹理くんが新しい表情を見せてくれた。それだけで、椿が初めて言葉を話した時並に嬉しい。

「日記の楽しい書き方、教えてあげるよ」

 今年の樹理くんの日記が、綺麗な色で埋まればいいな、と心から思った。




2008.09.16(Tue) | Title | cm(0) | tb(0) |

これは引くわ……


30歳の女じゃなくてもそんなのは引くって。
絶対引くって。私のような女でも引くわ。
22の男があれって引くよやっぱり。つーか好きな女の前で酔うとか自重しろ……!
介抱イベントは真田と炎而くんの専売t(略)(あいのり視聴中)
もうやめて!! シュレックのライフは0よ!!


暇なのでバトロワ云々を結構本気で考えて見る。
親子で50m以上離れられないルール導入すんのにケレス先生参戦っておかしくね?(笑)
その辺は気にしないのが私クオリティ。
特別妙なリスク背負ってたりすると笑えるんだが。
でもって流風くらいの頭があれば首輪外そうとするような気がするんだが。工学の知識ないとやっぱダメですかね。法学部が経済学部の授業受けるみたいに、理学部も工学部の授業受けたりしないのかね。まあ、しかし外れたら面白くないわけで。
流風と樹理は頭キレるしスポーツマンだから動きもいい。樹理は所詮流風の子供なのでやっぱり情の面で弱いところありそうだけど、親になったら流風はそういうところ強いと思う。伊達に女と子供の一生背負ってない。ごめん、設定だけなら流風すごい好きなんだけど!(笑)
やっぱり流風が殺されるならケレス先生かなあと思う。大和は流風が殺るはず。瀕死まで追い込むのもいいかな、と思ったけど樹理のためならその辺情け容赦なくなってそう。しかも大和は瀕死とかいうの大嫌いだと思うので。だって好きな花は椿だし!! まだ綺麗でも潔く落ちるのがいいと思ってます。
黎と櫂のどっちかは一番最初に余分だからって殺されてそう。空はどこまでいっても反抗分子にしかならんな。正義感の塊。
流風は昔はそうだけど、未来話でなら、それでしか樹理を守れないなら簡単に乗ると思います。樹理は流風庇って死ぬポジションな気がするよね。しかも事前に流風が「ここで待ってろ」とか言ってたら超絶死亡フラグ。
炎而くんにはやっぱりルカと対峙して欲しい気持ちがすごく強いので。慎吾も空と同じタイプだよなあ。けど弱そう。
個人的にもう問題は椿くらいしか残ってないのだが。椿はどうなるかな。あんまり生きることに執着してなさそうだけど、死ぬ間際の大和に頭撫でられたりしたらまずいな。(私が)
大和だってもちろん父親なんですよ嫁と娘と一族郎党守る大黒柱なんですよ。でもやっぱり流風には負けそう。流風は銃よりも短剣が似合うなあと思います。
樹理の武器は弓的なのだったらいいなあ。ボウガンじゃないが、アーチェリーみたいの。でも使ったことないからわかんない。でもって高校時代アーチェリー部の友達にやらせてもらった、とか言って流風が試し撃ち一発して、それでコピーする樹理。基本的に教科書があればなんでもできる親子。


長くなりそうだからもういいや。
頭痛いしそろそろ寝るか。

2008.09.16(Tue) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

指を咥えて見てただけ




 毎年、その後姿を見ていた。
 黒いスーツに身を包んで、毎年、墓前に白い花を供えてくれる。
 声をはっきり聞いたことはなかったが、毎年、『ごめん』と唇が動いているのは見て取れた。
 桜の花びらが舞う中、毎年その人は、花を供えて、『ごめん』と呟いて去っていく。




「何故自分などをここへ」

 その相手が、今俺の目の前で、正座したまま頭を下げている。
 俺が上座、――俺の方が偉いんだから当然か。

「そんな謙られるとやりづらい。顔を上げてもらえますか、兄様」

 記憶がほとんどないとはいえ、一応家族なのだから。
 この立ち位置の差が問題なのだろう。下に敷く座布団をどけることにした。
 触れ合った記憶などほとんどない兄。馬鹿みたいにでかい地位と力と金が手に入るのに、そこから逃げて国家権力に身を沈めた男。そうしたからって綺麗でいるつもりなのか。

「近くでの勤務が決まったと伺ったので、ちゃんと兄様と話をしてみたいと思っただけですよ」
「あんな脅迫まがい誘拐まがいの方法で、ですか」
「僕がそう指示したわけではありません。けれど、そうでもしないと貴方はこの家の敷居を跨げない。違いますか」

 相手は苦い顔をした。反論できないのだろう。
 兄の名は何だったか。海を拓くと書いて、拓海。兄らしい名前だ。
 もっとも、俺なんかよりもあの青い瞳の女性の方が余程この人のことを知っているだろう。
 だからこそ話したいと思ったのだ。芹沢の長男と。

「……自分は芹沢を捨てた身です。家元に合わせる顔など持ち合わせておりません」
「僕の名前はお忘れですか。それほどまでに芹沢はどうでもよい存在だと」
「……大和様」
「あー、だからいいですって。そんなに僕と話すの怖いですか? 姉様と同じように呼び捨ててくださって構いません」

 気分が良かったのは否定しないけどな。自分によく似た顔の、でも確実に年上の人間が様を付けて呼んでくれるってのは結構優越感に浸れる。
 
「今更、何を話すことがある。俺は家を捨てて、妹と弟に全部押し付けた人間だ。大和だって俺とは顔も合わせたくないはずだ」
「誰がそんなこと言ったんです? 誰に吹き込まれました? 吐いてくださいよ、そいつの首切りますから」

 ぐっと兄様が息を詰めたのがわかる。目を見開いて、どういうことだと詰問したそうな顔。そう、そういう目で俺を見て欲しいんだ。
 今の俺は、あんたがなりたくなかった自分の姿だ。どうだ、見てて寒気がしてくるだろう?

「俺はなりたかったんですよ。兄様がこの家にいたら絶対なれなかったですからね。莫大な財産と、力と、必要ないくらいの地位。弟子と使用人を何人も引き連れて、偉そうな祖父さんに花を活けてくれって頭下げられんのが楽しくて仕方ないです」
「……それは、……よかったな」
「ええ。俺は単に嬉しいだけですよ。姉様が継ぐのを阻止するのなんて簡単ですからね。ひとこと、“長男の”俺が継ぐべきだと語気を強めればいい。そうすれば俺は今まで手に入らないと思ってたものが転がり込んでくる。棚ボタって奴ですか。ただ、――兄様は俺とは違うはずです」

 金にも、力にも、地位にも興味がないというのは理解できる。
 実際俺だってそこまで重要視しているわけじゃない。
 俺は転がり込んできたものを受け取るだけでいいが、俺がそれを受け取ることは、この人がそれを手放すことには繋がらないはずだ。
 家を捨てたとき、この人の頭の中に俺や姉様という存在はあったのだろうか。
 愚問だ。はっきりと言える。

「やはり貴方も芹沢の人間だ。――自分のことしか考えられない。今はどうか知りませんが、当時の貴方の頭の中には長男としての責任はおろか、俺や、姉様の存在もなかった。どこまでも自己中心的。家に縛られるのが嫌だったんですよね? つまり、――ココにいちゃ面白くない、とでも思ったんですか」

 それは、俺には、簡単に理解することのできる感覚。ココにいては面白くない。分かる。そう考えた兄様の気持ちが、容易に理解できる。

「家を出る前に警官の試験を受けたのは、公務員なら原則終身雇用だから? 国家の中にいれば家も手出しできないと? 甘いですね、警官なんて身辺調査あるに決まってるじゃないですか。芹沢はちゃんと裏で手を回していた。芹沢は貴方がこの家を出ることを認めたんですよ、戸籍もちゃんと桜井になるよう手を打ちましたしね。捨てたと思っていた家に捨てられていたのがわかりませんか」

 俺が一言一言を紡いでいく間、兄様は目を閉じてそれを聞いていた。
 すべてを言い渡し終えると、すっとその瞳が開く。細く開かれた瞳。
 それから兄様は足を崩して胡坐をかいた。薄い瞳でこちらを見るその姿からは、ぞくりとするくらい威厳が感じられる。
 流石は十八年間みっちりと芹沢で帝王学を叩き込まれただけある。

「だから何だ?」
「いいえ? 僕は確認したかったに過ぎません。やはり貴方も芹沢の人間だと」
「こんな不穏分子がいるとさぞかしやりにくいだろうなぁ、大和サマ? 俺はお前よりずっと年上で、お前と違って生まれた時から家元であるための教育を受けて、家を生かすために俺の花はお前より余程保守的だった」
「ええ、存じております」

 胡坐をかく兄の前で正座をする自分。傍から見れば立場が逆転しているようだろう。
 負けるつもりはない。けれど、ここまでこの人が芹沢の直系であることを強く意識するとは思わなかった。人が変わりすぎだ。

「じゃあ俺も言ってやろう。お前は確約が欲しい。俺が芹沢に戻るなんて万一言い出してみろ、お前は俺に勝つ自信がないんだよ。末っ子として生まれて、生ぬるい学生生活送って、たまたま手に入った地位に滑り込んだだけで、そんなお前は完璧な教育を受けた俺にはそりゃあ勝てないだろうさ。復縁を決めるのは家元の仕事か? お前の仕事か? お前を取り巻く相変わらずうっぜぇジジイどもが決めんじゃねぇのか? 俺が手放したそれを手にして、お前は何か変わったのか? あぁ、大和サマよ? 末っ子の意地だろ、その地位も金も力も全部。まさか芹沢の血が流れてるくせに日本の伝統を守っていくとか適当なこと言わねぇよなぁ? お前は俺のいる世界で生きていくのにこの地位が欲しかったんだよな? 俺が今更戻ってきたら、お前はお前の基盤なくしちまうもんなぁ? あーあー、俺は何もしなくてもできるようなモンに興味なかったんだよ。俺にとってお前が手にしたモンは約束されてたからな。なあ、大和サマ分かってんのか? 家元面して偉そうにしてるが結局お前は俺が怖いだけなんだろ? 気付いてないだけでそうなんだろう、なあ?」

 で、そう豹変して俺を怒らせて、やっぱり小物だと笑いたいわけか。
 悪いが俺はそんな安い手に引っかかるほど馬鹿じゃないんでね、あんたと違って。

「ご期待に沿えず申し訳ありません。確かに兄様は生まれた時から教育を受けていたのでしょう、家元や母様、その他大勢の人に囲まれて。――ですから俺は、一人でこの地位を手に入れたんですよ。教育が足りないからと反対されることもなく、誰にも目をかけられなかった俺は文字通り一人でこの地位を手に入れた。約束されていたものに面白さを感じず放り投げた貴方とは違う。……人としての器がね」

 俺はひとつも感情が波立つことはなかった。これは事実だ。器が違う。小物はどっちだ、あんただよ兄様。
 それでも、二度と敷居を跨ぐなとか、そういうことを言うつもりはない。俺は感謝しているくらいだし、少しも恨んじゃいないのだから。
 俺が言い終わると、兄様はぷっと吹き出して、それから豪快に笑った。

「言うなあ、お前。もっと短気かと思えば、いやあ大したもんだ。器が違うな、確かに」
「正しいことを言われて怒るほど暇ではないので。まあ、それでも、上手くいかないと花を折っていた貴方とは違います」
「なるほどな。俺が家を出た頃なんて年端もいかねぇクソガキだったくせにそういうところは覚えてると」
「例え商売の道具であったとしても、ああいう風に花を扱う人間は大嫌いでしたから」

 本当にガキの頃、折られた花が何本も兄様の部屋に転がっているのを見たことがあった。殺意さえ湧いたのを覚えている。弟子の中でもそういう人間がたまにいるが、そういう奴を見かける度に、俺とは違うとよく思うのだ。
 兄を恐れていたことは認めよう。
 この人が万一戻ってきたら、今度は俺はどうすればいいのか、どう生きればいいのかわからなくなる。俺のアイデンティティは兄が握っていたのだ。
 ――絶対に言わないが、家を出てこの人は変わったのだ。
 家を出た当時のままなら、母の墓前に花を供えたり、まさか『ごめん』なんて言うはずがない。俺は毎年、その後姿を見ていたのだ。

「頼まれても戻らねぇよ。女房の方が大事だな。芹沢なんて腐って滅びりゃいいんだ」
「どこのガキですか、貴方」
「うるせぇよ。――話、終わったなら帰る。拉致られたんだから送らせて構わないな?」
「兄様の言う事を聞くかどうかはわかりませんが」

 まあ、俺の名前を出せば十中八九送っていくだろう。
 障子戸を開けて、廊下に出て行く兄様の背を見送る。

「ああ、大和」

 兄様が頭をひょっこり出して、声を掛ける。何ですか、と返すと、

「家元面してるだけじゃ全然怖くねぇんだよ。もっと貫禄つけろ、若いのにナメ
られるぞ」
「……余計なお世話です」

 ぴしゃりと障子が閉められた。

「……はあ」

 そこで俺も足を崩す。
 本当に、食えない兄だ。俺とよく似てる。




2008.09.13(Sat) | Title | cm(0) | tb(0) |

愛がなければm(略)
うみねこちょいやり直した。やはしときめいた。
いろんなサイト様で楼座無双見るのが好きです。ろざさま素敵に無敵!


だから無双モードに憧れる私。(笑)
誰かEP3状態書いてください。未来話の大人組がウィンチェスター持って子供守るとかときめくとかいう次元じゃねえ!
樹理が高校生なら共闘とか楽しそうなんだけど、樹理がマリアくらいの年だったら確実にろざさま化すると思う。大和とか所詮流風だと思ってなめてかかると思うんだけど、そんな流風には大和も絶対勝てないと思う。
バトロワでもしない限りそんなシチュにはめぐり合わない!(爽)


流風って最初から樹理のことそんなに望んでたのかなあと設定を詰めて見た。
最終的には今みたいな結論で、後悔も何もないんだろうけど、最初からそう思ってたなんて嘘だろうと思う。
流風と樹理ママは恋人同士じゃなかったから、友達っていうかほっとけない妹的存在から突然親子になったもんで、いろいろ関係付けの順序がおかしかったりする。
樹理が生まれるまでの期間には人生で一番いろいろ考えたんじゃなかろうか。成績も下がったこと請け合いだな!!
母親が死ぬって分かってるのに、子供をどうしていけばいいんだろうとか。軽く後悔してたから無双モード入れるっていう、ね! 樹理が生まれた時21とかだから(多分(授業中適当に考えた年齢だとそれくらい))、その時一生分の決意みたいなのしたんだろうな! 


あ、なんかアレですね。未来話の方がキャラ増えてるからバトロワ面白そうですね。設定めんどいから頭の中でだけ考えて楽しもうと思います。
正直、大和とか慎吾とか空には勝てるけど最後まで生き残るキャラじゃないと思うんだよね、流風って。案外大和には勝つけど椿あたりに殺られるのかも。けどそれじゃあ面白くないから未来話のラスボスはケレス先生か風哉君あたりがいいよねと思ってみる。流風より先に樹理が死んでくれたりしたらちょっとは流風主人公ぽくなるだろうか。
末継先生はもうモニター越しに賭けしてる側だろうと思う。
タっくんと大和はどっちが強いのかっていうと、ちゃんとやればきっとタっくんが強いのに、タっくんそういうの嫌いだから率先して撃たれると思う。それが分かってるからみのりあたり目の前で殺してみせそうだ、大和。姪っ子とか多分どうでもいい。そうやって煽ってみるんだけど、タっくんも椿の頬掠めるくらいに銃ぶっ放して逆に煽り返して結局大和に殺されたらいい。
自分が綺麗に大事に取っといてるもの傷つけられると我慢ならないのが大和です。
あれだよね、バトロワⅡのシステムを親子で導入したらいいんだ。片方が死んだらもう片方も、ってルールは消して、50m以上離れたらダメって奴を。
なんか書いてて十分楽しかったのでもういいや。(早)
そろそろ予備校行きます。池袋にも行きます。

2008.09.13(Sat) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

無理無理無理無理m



「うわ、めずらしー。こっちいたの」

 時刻は午後七時を回った頃。
 理科教員室の扉を開けて、流風は開口一番そう言った。
 理科の教員というのは各々が専門とする教科の部屋がそれぞれ用意されているために、わざわざこの部屋に来て仕事をすることは少ない。特別全体で集まるようなことが必要とされる機会が少ないのだ。そのためか、他の部屋よりもこちらの部屋は日当たりも悪く、校舎の中では明らかにハズレな場所に位置している。
 流風は部屋に入ると、一番手前の机に荷物を置いた。大きな紙袋が二つ。その中身は大体が生徒からもらったお菓子やら何やら、手作りの品が多い。中学あたりから毎年のことだったから慣れてはいるが、この母校に就職してからはやたらと貰う量が増えた気がしていた。

「誰のせいで入れなかったと思ってる」
「化学室? 入りゃよかったのに」
「あんなうるせぇところで仕事できるか」
「えー、残念。俺にプレゼント渡したくて待ってたのかと」
「寝言は寝て言え」

 毎日のように繰り返す、同じような問答。高校時代からなら慣れたものだった。
 白衣の上から肩を鳴らす。いつもより早く家を出たから疲れもいつもより酷い気がする。自分の恩師と同じ職場だから、普段一緒にいる時はそこまで気にしないけれど、体が軋めば嫌でも年齢を実感するのだ。子供が高校生になったのだから当然の話ではある。
 置いた紙袋をもう一度持って、流風は自分の机へと向かう。もう来週には文化祭が始まる。それが終わったら個人面談でもしようかと思っていたのだ。その用意を、本当は化学室か職員室でやろうとしていたのだが、今日が自分の誕生日だとうっかり忘れていた。誕生日の宿命で生徒に押しかけられ、仕事はできないしそもそも身動きがとれないし、部活の指導もあるしで居場所がなかなか定まらなかったのだが、ここならゆっくり仕事ができるだろうと思ったのだ。もうこの時刻になってしまえばどこにいたって大差はなかったろうが、せっかく宛がわれている部屋だ、思ったらたまには使ってやらなければ可哀想だ。

「……あれ?」

 半分だけ散らかった机の上を見て、違和感に気付く。
 紙袋は取り合えず床に置いて、机の上の違和感の正体に触れる。
 綺麗な包装だった。箱に書かれたロゴは、流風が普段使っている香水の銘柄と同じもの。
 自分で置いたものではないのだから、誰かが置いたものだということはわかる。こんなじめじめした暗い部屋に生徒が来るとは思えない。
 流風はぎこちなく首を回した。

「……せんせー、ついに血迷った?」
「殺すぞお前」
「……そーですよねー、老いたからってまだボケちゃいないもんな、あんた。ボケたら絶対笑えんのにな」

 そのまま席に着くと隣の席から拳が飛んできそうだったので、少し椅子を離して座る。それから細長い箱を眺めた。ペンにしては大きそうだし、ちょうどいい大きさのものがなかなか思い浮かばない。
 取り合えず開けてみることにした。丁寧に包みを開くと、上等なライトブルーのネクタイが見えた。そうか、ネクタイか。と見てから納得する。

「……ネクタイってブランドだと結構するよなー……。流石にこんなのくれる奴に心当たりは、」

 ない、と続けようとしたところで、ケレスと目が合って言葉に詰まる。目が合った、というよりは軽く睨まれているのに近い感覚だ。
 わけもなく気まずくなってもう一度箱を見る。――ネクタイだ。
 それからまたケレスに視線を戻すと、今まで選択肢に入れていなかった存在が突然姿を現した。

「あ、え、……ああ、……そっか」

 そういえば高校生になったんだった。
 そういえば最近バイトを始めたんだ。
 母親に似て、価値観がめちゃめちゃな子だ。物を欲しがることも、自分で買うこともほとんどないから、こういう時どうしたらいいかわからずに、高いかどうかも判断のつかないものを買ってしまったんだろう。

「……高校生の一回の買い物にしちゃ、使いすぎ、だよな……」
「明らかにな」

 高校生のくせに、こんな馬鹿みたいに高いものを買って、いつ見つけるかわからない場所に置いて、怒らなければいけないところがある気はしていた。
 けれど怒れるはずがない。どうしても怒れない。
 
「………保育園の頃の似顔絵以来だな……」

 ケレスには聞こえないように呟く。
 もちろん毎年貰っていたものも嬉しかったが、自分のために何かしてくれたことが嬉しいのだ。そうじゃなくても、樹理という子は流風という父親のためにたくさんのものを犠牲にしてくれただろう。それだけでもありがたいというのに。
 箱を閉じて、包みを戻して、床の紙袋の中、一番上においた。
 仕事をする気はなくなった。少しでも早く帰りたい。話さないにしても、ちゃんと顔を見たい。

「あーあ、あんたには一生わかんねぇだろうなー、この愛の重さ」
「見てるだけで肩が凝りそうだ」
「持ってみる?」
「遠慮する」
「だよな」

 愛ばかり詰まって重くなった紙袋を二つ引っさげて、職員室へ戻ることにする。立ち上がって扉へ。

「お前、何しに来たんだ」

 確かにそれは疑問かもしれない。最初は、ここが静かだろうから仕事をしようと思っていたのだが、今思えば。

「――呼ばれたんだよ」

 それが、一番しっくりくる理由だった。




2008.09.09(Tue) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

ちょっと早いけど。




 放課後だ。
 理科の教員室の前に立って、僕はひとつため息をついた。

(……何やってんだろ……)

 ここに来る前、職員室を覗いてきた。
 水城先生はたくさんの女生徒に囲まれて、楽しそうで、いろんなもの貰って。一つ二つ上の先輩たちはちゃんと先生の誕生日を知っていたんだ。僕なんて、生まれてからずっと一緒にいるのに、つい最近知った。
 理科の教員室というのは申し訳程度にあるだけで、理科担当の先生はそれぞれ専門があるから、生物の先生なら生物室、物理なら物理室、地学なら地学室で、……水城先生、は、化学室にいることが多い。
 誰もいないだろうことは、中の電気が消えていることでもわかる。扉を開けると、日陰に位置している部屋だからかひんやりした空気が頬に当たった。
 水城先生の机は、……すぐわかる。机の三分の二は綺麗で、残った三分の一にいろいろと積みあがっている机だ。分厚い洋書に、論文、多分外国人より余程綺麗な筆記体で書かれたいろいろなメモ。多分自分で書く論文用のメモなんだと思う。試験問題を部屋で作るときは当然僕はその部屋に入れない。それと同じ時期に論文を書くときはリビングのテーブルを使う。するとどんどん本が積みあがっていくのだ。口出ししちゃいけないと思うから僕は遠くからその後姿を見るだけだけど、軽く頭を掻きながら分厚い本に付箋を貼って、その本が積み上げられる様子は、子供の頃から面白いと思ったものだ。

「……あ、れ……?」

 だから分かりやすい散らかり方だと思っていたのに、似たような散らかり方をした机が二つ並んでいて、僕は困惑した。
 どっちかは確実に水城先生の机だとわかっているのに、積みあがった本のタイトルも似通っているし、論文も同じように積んである。
 ――よく見て、わかったのは、片方は綺麗な筆記体なのに片方は書きなれてはいるけど綺麗とは言えない字だ。見覚えのある綺麗な字は水城先生のものだろう。じゃあもう片方は。……別に、考えなくてもいいか。
 指定鞄から平たい箱を取り出すと、その包装を見てまた僕はひとつため息をつく。
 ……こんなのも絶対死ぬほど貰ってるんだ。毎年バレンタインも大変そうだし、あれだけ女子に囲まれてたら貰うものは貰ってるだろう。見劣りするなあ、多分……。
 けど一応用意したものだし、ここに置いていつ気付かれるかはわからないけど、机の上に置いておく。差出人もわかんないだろうし、あとは帰るだけだ。
 ――と、思ったら。

「……何してる」
「え、あ、」

 全く空気を読まずに入ってきたのは、苦手どころか嫌いな部類に入る金髪の先生。この人も理科の先生だってことすっかり忘れてた。
 人が入ってくるなんて思ってなかったからものすごく驚いて、後ろの本棚に体をぶつけた。

「別に、あの、誕生日だからって、置きにきたとか、本が積んであって何で、とか、思ってないですよ」
「もうちょっと言う事整理してから話せ」

 ……それは、確かに。僕も否定できない。けど苦手な人に自分の欠点指摘されるってすごく不愉快だ。
 金髪の、……ケレス先生だっけ、その人は僕の目当てとは隣の机、つまり僕がさっき見比べて切った方の席につく。この人の机だったのか。
 仲、良いんだもんな。仲良くないって授業中とかは言ってるけど。

「……誕生日、って、知ってましたか」
「周りが騒がしくなるからな」
「……僕は、一昨日初めて知りました。担任の先生の、誕生日」

 十五年も生きてきて、ずっと面倒見てもらって、毎年僕は誕生日を祝ってもらってたのに、僕が気付いたのは一昨日のことなのだ。
 同い年でも、バスケ部の人とかはもっとずっと前に知ってたのかもしれない。
 学校での“水城先生”は僕が知らない部分をたくさん持っていて、僕が知ってる部分よりずっと知らないところの方が多くて、だから僕は学校に来るのがあんまり好きじゃない。

「……今まで誰かにプレゼントあげたことないから、何あげたらいいのかとか、全然分かんなくて……。ネクタイって妥当ですか?」
「さあな」
「あーあ、とことん使えないですね」

 僕は友達なんてものを作る気もさらさらなかったから、周りにそんなことを聞ける人もいなかった。
 もちろん、今までだって誕生日を祝ったことはあった。プレゼントはお祖父ちゃんと一緒に選んで、誕生日だろうとそうじゃなかろうと日曜日にお祝いする。平日はいつも仕事でいないから。だから僕は、いつが誕生日なのか正確なところが一昨日までわからなかったのだ。
 
「……お前、それどこのブランドだ」

 ケレス先生は軽く机の整理をしながら、こちらをちらりと横目で見て、そう言った。突然の質問に答えるため、僕は机に置いた包装に目を落とす。

「え、よくわかんないです、けど、香水と同じブランドの」
「高校生が買うもんじゃねぇだろ……」

 あんまり興味なかったからこれがどういう店のものなのかよくわかってない。
 百貨店に買いに行ったから、店構えがやたら仰々しかったということだけ覚えている。まあ、確かに僕でも名前聞いたことのあるブランドだし、高校生が買うような値段じゃなかった気もするけど。

「だ、だって、昨日水城先生、二年の女の先輩に誕生日何欲しいかって聞かれてて、フランクなんとかの時計とか言ってたし!」

 興味ないから何て名前だったかは忘れたけど、そういうものを水城先生は、お父さんは毎年貰ってるんだろうと思ったら、ネクタイなんか選んだ僕はものすごく見劣りするんだと思う。思い出せないフランクなんとかは、きっとものすごいものなんだろう。あの先輩も、先生稼いでるのにいい物欲しがるねー、って言ってたし。

「お前の頭の中に冗談っつー言葉はないのか」

 ケレス先生のため息交じりの言葉。 
 そんなの、この人より知っていると思う。

「冗談くらいわかります! あの、レンジに猫入れたら爆発したっていう、」
「それアメリカンジョークでも何でもねぇぞ。単なる都市伝説だ」
「う、」

 僕が言葉に詰まると、この人は。

「冗談すら履き違えるなんて、……てめぇの“親御さん”はどんな教育してんだか」

 僕に対して一番言っちゃいけないことをさらりと言った。僕が怒るのを見透かしてるみたいな口調だった。それが余計に僕を苛立たせる。
  
「どうしてそこまで言われなきゃいけないんですか。僕のことを無知だって言うのは一向に構わない、けど親を馬鹿にされたら僕だって黙ってられません」
「それは悪かったな」
「ええ悪いです。最悪です。気分害されたのでこれで失礼します」

 鞄を肩に掛け直して、扉へ向かう。
 やっぱり僕はこの人が大嫌いだ。よく知らない人のこと嫌っちゃいけないとか言うけど、この先生だってきっと僕が嫌いなんだろう。日本人ばっかりいる学校でこんな見てくれしてんのが気に入らないんだろうか。そんなのこの人だって一緒なのに。
 扉に手を掛けて、……この人はこの手のことで余計なこと言いそうにないとは思ったけど、一応振り返る。

「……それ、誰が置いたとか、言わなくていいですから」
「あ?」

 聞き返されて、もう一度言うのは躊躇われた。もう一度言ったら、なんかすごく、僕が置いたんですって言って欲しいみたいに聞こえそうで、嫌だった。
 ……先生が要らないっていうなら、僕は構わないんだ。ただ、僕は用意したんだ、って事実で僕自身が満足したいだけで。

「なんでもないです。机、散らかすなら散らかしてください。片付けるなら片付けてください。……分かりにくい」

 先生は変わらなくていい。僕が知ってる先生は、ずっとそういう机で仕事をしているから。……ていうか当人達は分かってるんだろうか、机の散らかり方そっくりだって。ムカつくくらいにそっくりだ。

「は?」
「失礼しました!!」

 ……分かってない。
 それだけを耳で確認して、がらりとドアを開ける。それから、怒られない程度に早足で廊下を歩いた。
 途中、バスケ部の指導に行くのか、ジャージ姿の水城先生がまた何か貰ってた。今日は何度もそれを見かけて、その度に僕は複雑な気持ちになる。
 先生は、机の上のあれをいつ見るんだろう。僕はそれを知る術なんてないのに不自然にドキドキして、

(――物を贈るってこういう感じなのか)

 こういうの、悪くないなあとほんの少しだけ思った。





2008.09.08(Mon) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

世界のあたたかさ




(――……だるい)

 薄く目を開いて、一番に思ったのはそんなことだった。
 嫌なだるさ。あの国にいた頃、ただ生きるために朝から晩まで働いて、くたくたになって寝床に倒れこんだ後、来て欲しくない朝がまた来てしまった時の気分。
 ぼんやりと見つめる先は暗い。でも見慣れている。アジトの洞窟。ごつごつした岩の天井。
 体を起こすのも面倒で、目だけを左に動かす。また、見慣れた影。大きな影だ。俺よりずっと大きい体が、うたた寝をしているのか首が小さく前後に揺れている。

「……シン、ゴ……」

 小さくそう声を掛けると、シンゴの体がぴくりと動いて、眠たそうにしていた目もしっかり開いて、俺を見つめた。
 すごく驚いているような表情。

「……お前、目の下……、すごいことになってる」

 シンゴは砂漠に来た時から疲れていたみたいだけど、今は本当に目の下がすごい。自分がどれくらい眠っていたのか分からないが、多分それは相当長い時間で、その長い時間、シンゴは眠らないで俺の傍にいてくれたんだろう。
 上体を起こすと背骨が軋んで痛む。手を伸ばして、親指でシンゴの目の下の隈をなぞると、シンゴは俺の背に腕を回して、驚くくらい強い力で抱き締めた。軋む背がもっと痛む。

「っ、あんたが死んだら、俺は、どうしたらいいのかって、俺、」
「死んでないんだからいいだろ」
「ふざけんな!! 一日半、ずっと起きないし、熱もすげえ高くて、俺、もうあんたが死ぬんじゃないかって、思って」

 はしゃぎすぎた子供みたいだ。不慣れなのに少し頑張りすぎたのかもしれない。あのどうしようもなくだるい感じは熱のせいかもしれないな、と思った。

「……怒って、る?」

 シンゴはゆっくり体を離すと、複雑そうに目を伏せた。
 俺のよく知ってるシンゴなら、「大丈夫ですか!?」って何度も何度も騒いでそうだったけど、思ったよりずっと静かだ。
 俺が眠っていた一日半の間に何かあったのか。それとも、俺が一日半眠っていたこと自体が問題なのか。多分、後者だろうな。

「……怒ってないですよ」

 不貞腐れたようにシンゴは呟いた。あんまりにも気持ちが乗ってない言葉だった。

「……俺があいつ、助けたからか」

 だって絶対怒ってる。そう思うから更に付け加えると、

「怒ってないって言ってるじゃないですか!!」

 やっぱり怒った声で、叫ぶように返された。
 そう返されてはもう次に何を言ったらいいかわからない。次は俺が黙る番だった。

「……何で、あいつみたいな奴のこと助けようって思えるんですか……。ルカさんが習ってた術は、あんな致命傷みたいな傷治すためのものじゃない! 自分の命と他人の、……あいつの命、どっちが大切なんですか! 自分があいつにされたこと、覚えてます!?」
「けど、それは誰かを見殺しにしていい理由にはならない」
「国を追い出されて、戦うことも何もわかんない単なる子供だった俺達に、こんな武器、持たせた奴なのに!!」
「あいつらに会わなくてもきっと必要になったと思う」
「っ……!!」

 俺がひとつひとつ言葉を返してやると、最後にシンゴは俺を睨みつけて、今度こそ、叫んだ。

「じゃああんたは! ここであんな奴助けて死んで! 大事なお姫様助けられなくてもそれでよかったって言うのか!?」
「――……それは、」

 本来あの術は術を使う者の力を対価とするものじゃないから、俺が不慣れだったせいで熱を出したり寝込んだりしてしまっただけなのだ。でも、シンゴにとってこの一日半は恐ろしく長い時間だったのだろう。
 俺を庇って一緒にこんなところまで来てしまったシンゴ。
 弟や妹を置いて、俺なんかのために、ここにいてくれるシンゴ。
 シンゴは俺が眠っていた間、何を考えたんだろう。俺が死んだら自分がどうなるか考えたのだろうか。俺の隣で、少しも眠らずに、俺のいない旅路を考えたのだろうか。
 『ごめん』しか言える言葉を持ち合わせていなくて、それでも、その言葉じゃシンゴは納得してくれないこともわかっている。逆の立場だったら、ここで『ごめん』なんて言われることは、ナオに会えないまま死んだってよかった、って言ってるようなもんだ。だから言えない。言えるわけがない。
 シンゴもそれをわかってくれているのか、それ以上答えを求めることはせずに、ひとつ大きな息をついた。

「……ルカさんが寝てる間、俺何考えてたと思います? ルカさんが倒れるまでして助けたあの男、本気で殺そうと思ってたんです。ルカさん倒れさせるような真似しやがって、って。もう我慢ならなかった。傷はちゃんと塞がったみたいですけど、最初調子は整ってなかったみたいで、殺すには絶好の機会って感じで。――自惚れじゃなくって、あの時の俺なら、あの状態のあいつくらいきっと殺せた。ルカさんがくれたコレ、思いっきり振り上げて、力任せに下ろせばいい」

 剣の柄を手に、シンゴは皮肉めいた笑みを浮かべて淡々と話す。
 その様子は、シンゴにはとても不似合いだ。俺が倒れたばっかりに、シンゴはこんなことを本気で考えたのだと思うと、ずきずきと胸が痛くなる。

「……けど、できなかった」

 さっきのシンゴの声があまりにも真剣だったから、その言葉を聞いた俺は心底ほっとした。でも、シンゴはそうじゃないらしい。やり損ねた、みたいな表情をしている。

「見殺しにするのは卑怯で最低だって、ルカさんは言った。なら俺がこの手で殺るのは、どうなんだって。本当に実行しようかってくらいぎりぎりまで考えてたけど、……ルカさんが本気になって助けたあいつを殺したら、ルカさんが目を覚ますにしろ覚まさないにしろ、俺はきっと旅を続けることもできなくなる……! ルカさんが助けたあいつを殺すなら、すぐに自分も死ぬ覚悟がなきゃいけない。……俺は、そこまでは、できなかった」

 シンゴの話は、たまに脈絡がなくてわからなくなる。
 どうして、俺が目覚めなくても旅を続けることができないのか。
 深く問うことは躊躇ってしまう。シンゴは本気だったのだ。
 シンゴは優しい。だからきっと、誰よりも自分のことを責めて、当然あいつのことも責めたんだろう。俺が倒れたりしたから、なおさら。
 けど俺だって、あいつを助けたからすごい人間って訳では、全然ない。きっと、俺が俺でなければ助けなかっただろうし、俺にあの記憶がなければ多分放っておいたんじゃないだろうか。それに、『貸し』なんて言葉を繋ぎに使わなければ満足に術を使えなかったのだ。それは、心から救いたいと思っていたとは言いがたい。そんな邪道な使い方をしたから一日半も眠る羽目になったのかもしれない。
 ただ、何か与えることができればいいと思った。それは自分の心を満たすため。幼い頃からこの心にぽっかりと空いている、空虚を満たすため。ぎこちなくても、未熟でも、自分の心を満たすためであったとしても、何か与えることができるような人間であれたらいいと思った。
 ――俺の為に、死んで欲しくないと思った。
 これは汚い考えだろうか。

「……あいつ、は?」

 言い出せばシンゴは不機嫌になるだろうとわかっていたけれど、聞かずにはいられなかった。
 言ってみるとやっぱりシンゴは不機嫌そうに、今はぴんぴんしてますよ、とだけ素っ気無く答える。

「命の恩人のお見舞いにくらい来るべきですよね、まったく」
「んなのガラじゃないだろ……」

 あいつが見舞いとか、想像しただけで笑えてしまう。ガラじゃないとかいう以前の問題のような気もする。
 シンゴの空気が少しだけ和らいでほっとしていると、洞窟の出口の向こうでヒサさんが歩いているのが見えた。馬の影も少し見える。
 それから、見慣れたフード姿の、

「――……あ、」


 あいつと、一瞬だけ目が合った、気がした。


「え、何、どーしたんスかルカさん!! なんで泣いてんですか、俺変なこと言いました!?」
「っ、いや、……違う、違うんだけど、……」

 痛いわけでもないのに。何でもないのに、涙が出てきて止まらない。
 ああ、俺最近絶対涙腺緩い。どうなってんだろう。
 どうしちゃったんだろう、本当に。
 シンゴの気持ちもよくわかるくらい、最低で最悪で、こんな状況でなかったら絶対に会いたくないような人間なのに。
 あいつが今生きていて、今砂を踏んで歩いている、どんなに偉そうでもどんなに横柄でも、そんなことを今、俺は、涙が出るほど嬉しいと思っている。 

「ごめ、俺……!」
「本当は嫌ですけど、でも、いーですよ。泣いてる子供見んの、慣れてるんで」

 ちょっと偉そうなシンゴの言葉。弟扱いされてる……! そんな俺の反論も待たずに、シンゴは、

「……おつかれさま、です」

 やっぱりまだ不機嫌そうに、俺の頭に手のひらを乗せた。





2008.09.07(Sun) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

柴咲コウの曲は良い。


柴咲コウの「invitation」を聞いてるとどうしてかみのりを連想します。
多分、柴咲コウが髪ばっさり切ってみのりくらいの長さにしてた時の曲だからだと思います。確かそんなだった気がする。
暗い曲多いし、なのに可愛いのが良い。詞が素敵だ。


いろいろ自重しつつ、でも自由帳の消費速度はおかしい。相変わらず。
でもってこの前思ったんですけど、ナイフとフォークをちゃんと使える子供って可愛いですよね。(何)
箸の持ち方とか親が注意すんのって鉄板じゃないか。
大和さんは椿の箸の持ち方が変だと「椿、箸」ってだけ言って黙りそう。直そうとしてもなかなか直らなかったりしそうだなあ、椿。
樹理はきっと箸はすんなり覚えるのに、あの容姿のくせにナイフとフォークで苦戦しそう。いつまでも右にフォーク握ってたりして。
エンジ君そういうの一発でマスターしてそうだよ……!! 手間かかってなさそうだよあの子……!
こういうしつけで一番苦労してそうなのはやっぱり瀬川さんちだなあ……。

「くおらッ、櫂、黎!! 箸の持ち方ちゃんとしなきゃダメだろ!!」
「ふふふふ、ふははははは! 俺は我が箸の道を行くのだー!! 一匹狼でこそ漢! 秘儀・一本食い!!」
「私も我が箸の道を行くことにしようかねえ! あたしは奥義・三本食いー!!」
「あ、黎てめッ、俺の箸一本使ってんじゃねぇよ!! しかも三本とか普通に食えんだろそれじゃあ!!」
「櫂は秘儀だかヒッキーだかなんだかで一本食いするんでしょー?」
「ええい、やめだやめ!! こんなんやってられっかー!!」

って高校生になってもやってそう。
空の言う事には最後まで反発してふざけるけど、奈央が「こら、二人ともちゃんとしなきゃダメでしょ?」って言うと「「はーいっ」」って唱和して言う事聞くんだと思います。母は強し。


なんか樹理と椿がものすごく仲悪いんですけど、あの二人幼馴染的関係だから、仲は悪いし似てるわけでもなんでもないんだけど、けど長いこと一緒にいるから、相手のどこに踏み込んだら痛い思いをさせてしまうのかはわかってたらいいなあ。
エンジ君と椿は似通ってる部分はあるけど日が浅いからすれ違いという萌え設定を生むことができるんだと思う。(何)
でもって長いこと知ってるから、椿がエンジ君と同居するって言い出した時本気でエンジ君に同情してそうだ。もしくは「もうちょっと賢いと思ってたのにな……」とか勝手に思ってそう。


誕生日ネタをそろそろ片付けたいところです。

2008.09.07(Sun) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

暇な自分が怖い
起きてからずっと落書きしてました。愛が怖い(笑)


幼稚園の制服とか調べて描いてるのが楽しかったです。椿は絶対ベレー帽の幼稚園だ。これは譲れない。(くだらない)
しかしあれですよ。幼稚園→小学生→中学生と順を追って(暇なので)描いてたんですが、何かもう最後には流風になってる気が。(終わってる)
親子絵を描いて、あまりの自分の暇さ加減に絶望しました。ほんとに私なんでこんなに盛り上がってんだろう。
流風と創兵君が仲悪かったんだから、渚くんとももうちょっと何かあってもいいと思ってたりする。
何かあったってどうせ樹理は自分とお父ちゃん以外みんな嫌いだけどね。何あの人間不信。
よし、今日の予備校中の妄想テーマは樹理がどこで道を踏み外したかに絞るとしよう。

自分にはこの人しか頼る人がいない、とか思って、その流風も優しすぎるから依存しきってるのかも。
だからルカを初めて見た時の絶望ったらないんだろうな。自分が欲しくて欲しくて仕方なかった、見てすぐにわかるものを他人のルカが持ってるもんだから。
だから自分とお父ちゃん以外みんな嫌いなくせに、特に嫌いなケレス先生に縋ってみちゃったりするんだろう。
高校に入ってから樹理さんはずっとツンツンしてるな。
真紘のアホな感じを見習って欲しい。

本気で今日の私頭おかしいんじゃないの……!
じゆうちょうの消費速度が半端ないんですけど!(笑)
なんだろう、私家庭的設定に弱いのか……? そういうの弱いのか私!!
なんか流風が育児と仕事の両立で東奔西走してるのを考えるのがものっそい楽しいらしい。
前クリチューの流風は単なるダメ親っていうかほぼ陸さんにしかならないけど、大人になったらこっちの流風のが楽しいな。
だって前クリチューの流風の子供の設定って裏表激しすぎてまんま流風の子供だなあって感じなんだもんなあ!


私のダメなところは、最初どんなに特殊なキャラを作ろうと思ってても、ある程度経ったらそいつを普通レベルにまで貶めてしまうところだと思います。
変なキャラ作れないんです。特殊設定つけれないんです。
大和がいい例じゃないか、って感じ。
普通にいたら変な人、でも変な世界にいたらただの一般人、レベルしか作れない。
私の世界観がとことん現実に即したものだからだと思うけど。
だからリベリオンのシンゴはちょっとした冒険かもしれない。私のキャラは基本的にみんな人間くさくて動物めいた感情で動いてるけど、シンゴはちょっとそこがいかれてるから。
大和と椿の関係とかはあっさり書いちゃおうと思えたのに、シンゴの内面だけは後回しにしている私。どうやらそこはものすごく書きたいらしい。後にとっといてるのか。書くかわかんないのに……!

取り合えず(?)、絶対書けないだろうけどネタとして思ってるのは、あと2年くらいしたら芹沢さんちと一緒に動物園とか行かないかなあとかとか。
大和運転で流風助手席で、ルミがガキの面倒見てる、と。
弁当とか本気で作らせたら流風の方がルミより上手いだろきっと。(流風は教科書さえあれば何でもできる)
ルミがほんとにお母さん代わりみたいになってるけど、椿は小さい頃から賢いので変な嫉妬したりしません。一番気に食わないの絶対大和だろ。

でもって、創兵君との絡みもどうにかなんないかなあと思ってたんだけども。
帰国してすぐくらいにひとりで顔見に行って、そしたらガキいるもんでびっくりして、
「うわー意外ですねえ、青ダヌキのガキだから次は黄色いのでも出てくるかと思ったのに」
とかドラミちゃん的なこと言えばいい。帰って自分の子供見て、樹理の方が余程ドラミちゃん色だということに気づけ。


落ち着くためにご近所書いてこようかな。うん。
4兄弟の方を。

2008.09.04(Thu) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

月の眩暈と光源体 4



 帰国してすぐ、母校に新任教師として赴任することが決まり、実際に仕事を始めて数ヶ月。高校生相手に勉強教えながら子供育てるってのは結構しんどいけど、高校時代の俺が見たらきっとびっくりするくらい、俺はまともに父親できてる気がする。
 夏休みも無事に終わり、文化祭までもう目前という頃だった。

「樹理、もう起きないと遅れるぞー」

 俺は研究日の朝をのんびり過ごしていたが、樹理はいつも通り保育園がある。仕事の日は母さんに送り迎えを頼んでいるが、俺が休みの日は俺が送らないといけない。いつも起きる時間をとっくに過ぎているのに、今日は珍しく樹理が起きてこない。普段は俺と一緒に家を出られるくらいの時間にはちゃんと目を覚ましているのに。
 三歳児にそれだけのことができていた今までの方がおかしいのかもしれない。そう思って樹理の部屋を覗くと、ベッドの上の小さな体が小刻みに上下しているのがすぐわかった。

「樹理……?」

 近づいて覗き込む。小さな顔が赤い。まさかじゃなくても熱を出していることが一目で分かった。一応額に手を当てて見ると、やっぱり驚くほど熱い。これまで微熱はちょくちょく出していたけど、ここまでの高熱を出しているのを見るのは初めてだ。
 ……取り合えず、保育園に欠席の連絡か。あと薬とタオルと、汗かいてるから着替えもさせないといけない。
 そう思って一旦樹理の部屋を出ようとすると、げほんげほんという激しい咳と一緒に、行く、という小さな声が聞こえた。

「そんな熱じゃ休まなきゃダメだって。今日はお休みしような?」

 諭すように言ってみても、樹理はふるふると首を振る。黒髪の混じったやわらかい金髪はだいぶ汗で湿っていた。それだけの高熱を出しているのに行きたいなんて、そんなに楽しみな行事でもあるのだろうか。

「おかあさん、が、」

 咳込みながら樹理が口を開く。
 おかあさん。
 向こうを発ってからずっと聞かなかった言葉だ。

「おとーさんのこまること、しちゃだめよ、って」
「あ、―――」

 その言葉を聞いた瞬間、目の前がふっと暗くなった気がした。
 これが三歳の子供の言う言葉か?
 こんな小さい子供に何言い聞かせたんだよお前、相変わらず頭回ってないな、良かれと思って言ったんだろうが大迷惑だ。
 そして、――こんな言葉をどうして俺は、こんな小さな子供に言わせてしまったのだろう。

「……困ったりしないよ。もう少し寝て、後でちゃんと病院行こう」

 彼女によく似た薄いグリーンの瞳が熱で潤んでいる。
 大きな瞳で、ほんとうに? と今にも聞きたそうに俺の顔を覗くから、俺は優しく声をかけて、頭を撫でてやることしかできなかった。
 何度か頭を撫でてやって、樹理が再び眠ったのを見届けてから、部屋を出る。

「…………」

 母親を呼ばないのも。
 俺みたいな、単なるどこかの若い男としか思えない人間をちゃんと父親として呼ぶのも。
 転んでも寂しくても泣かないのも。
 こんな熱が出ている時でさえ俺を気遣うのも。

「……全部、お前が吹き込んでたのか……」

 そりゃあ困る。
 もういない母親を呼んで叫ばれても。
 もう肉親は俺しかいないのに、引き取る俺を父親と呼んでもらえないのも。
 転んで泣かれるのも、寂しいからって泣かれるのも、全部困らないわけはない。
 でも、もっと大変な三年間をお前は過ごしただろうに。気にするなと何度も言ったはずなのに、結局ずっと俺を気遣っていたのは樹理より誰よりお前じゃないか。
 あんな台詞、子供に言って聞かせるもんじゃないってわからなかったのか。樹理を引き取って、さっき一番困ったぞ、俺。
 微熱が出た時に飲ませてる風邪薬を薬箱から出して、ふと思い出す。
 あの樹理の姿は、樹理を産んですぐの彼女の姿に似ていた。本当は一人じゃ不安で不安で仕方ないくせに、もう自分が長くないことも知っているくせに、ルカがいなくても大丈夫、と震える声で電話してきた彼女に――。



『え、樹理くん熱出しちゃったんだ!? なのに水城今電話してていいの?』
「んー、今りんご擦ってる。どうせ吐きそうだけど何か食わさないととりあえずの薬も飲ませられない」
『うわー、何気にちゃんとお父さんしてるんだ……。水城、あの独活の大木にでかい顔していいからね!』
「わーい、ちょーうれしー」

 別に心細いわけじゃなかったが、ちょうど話も合いそうだったからって理由で、携帯を肩と耳とで挟みながらりんごを擦る。
 まずりんごなんて買ってたのが意外だった。なんでこんなもん買ったんだろう。母さんに押し付けられたのか? ……あれ、土曜に樹理用に作った弁当に入れてたっけか。やっぱり覚えてない。

『病院は?』
「これから」
『響先生のとこ?』
「いや、そっちはうちからだと逆に遠いかも。近くにでかい総合病院あるからそっち行く」

 絶対混んでる自信あるけど、車で連れてくこと考えてもそっちの方がいい気がした。高熱の原因は多分疲れと知恵熱ってとこだろうけど、ちゃんと薬は貰わないと。
 りんごを半分擦り終えて、そろそろ樹理のところに戻ろうかと思う。汗も拭いてやらないと気持ち悪いだろうし、着替えもさせないと。

「お前んとこはさ、椿病気になったりしたらどーすんの? 世話とかプロに任せちゃう?」
『まさか。あいつ自分がそうやって育ったから、自分はすんの嫌なんじゃない? 自分とあたし以外には抱かせたがんないもん。むしろどうすればいいのかわかんない時とか話聞きたいのに、自分で考えてどーにかしろ的な? 考えもんよ』
「また極端だな。らしいけど」

 俺は、何となく母さんには聞きづらくて、こういうことは聞けない。
 母さんも気まずいだろうとは思う。聞かれなくて気まずい部分もあるのかもしれないけど。
 だから葉山に電話してるのかもしれないけど、やっぱりヤマトはヤマトだったか。 

『熱引いたら教えてよ。様子見に行きたいっ』
「はぁ?」
『だって最近樹理くんの顔見てないし! あの髪撫でたいし!』
「あー、じゃあ最近俺大福食いたくて仕方ないからよろしく。あと美味い緑茶」
『それくらいなら任せなさい!』

 まあ、一人で来るわけじゃないだろうし、樹理の熱が引いてからなら椿が一緒でも多分大丈夫だろう。過労が原因だろうから長引くとも思わないし。 
 無駄話はそれくらいにして電話を切り、擦ったりんごの入った器とスプーン、薬、それからタオルを数枚持って樹理の部屋へ戻る。

「樹理、ちょっと食べて薬飲もう」

 目がぼんやりしてる。ああ可哀想だな。そう思いながら上体を起こしてやって、一匙ずつ器の中のりんごを掬って口許に持っていく。
 肩で息するし、ぜえぜえいってるし、汗で体中べたべただし。まともにも眠れなかっただろう。
 小さな体が悲鳴をあげている。だって見ていてわかる。こんなのも、食べられるような状態じゃないし、実際に口に運んでいる樹理も無理矢理飲み込んでいるようにしか見えない。
 どうせ食べなきゃ薬が飲めないから食べてもらわなきゃ困るんだけど、こんなに辛そうなのに必死で食べようとしてるのはすごく痛々しい。噎せることさえしないから余計だ。

「……困んないから、いいよ。ゆっくり食べな」

 必死で口に運ぶから、口の周りにりんごがところどころついていて、それを指で取ってやりながら声を掛けると、大きな瞳はびっくりしたように見開かれて、それから樹理は大きく噎せた。
 何度も何度も咳込んで、背中を摩ってやって、必死で喉に押し込んでたものは全部吐き出してしまったようだった。それで申し訳ないと思ったのか何なのか、樹理は恐る恐る俺の顔を見る。
 ……だから、三歳児のくせに要らん心配をするなっての。

「いいよ、ゆっくりで」

 そう言ってやると、樹理は大声で泣き出した。樹理の泣き声をまともに聞くのは、泣くのが仕事の時期以来じゃないだろうか。彼女の前では転んでベソかくくらいはあったけど、ここまで大泣きする子ではないし。
 そういえば、母親が死んだ時も樹理は泣かなかった。単に理解できていないだけなのかとも思っていたが、――それもやっぱり、俺を困らせないためだったんだろうか。
 時折咳込みながら、俺の服を掴んで声を上げて泣く樹理の、湿った髪を何度も撫でてやる。これだけ泣かれちゃ流石に困るな、俺も。今まで泣いてんのあんまり見たことないし。
 
 けど俺は、その時本当に、この子もちゃんと泣けるんだと安心した。




2008.09.04(Thu) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

月の眩暈と光源体 3



 ぱしん!
 これまでの人生でもそう何度も聞かない音だった。ほんと、ガキの時以来だな。

「ってぇ……」
「ま、これは殴られなきゃ嘘だろ? 喜べよ流風」

 そりゃそうだ。
 帰国したのに連絡寄越さず、突然実家訪問して数年ぶりの再会だってのに子連れなんだから殴られない方がおかしい。母さんはまだまだ複雑そうな顔をしていたけれど、父さんは明るいもんだ。ていうか絶対こいつ深く考えてない。
 母さんにリビングで樹理を見てもらって、何も考えてなさそうな父さんに事情を説明した。……説明もへったくれもなかったけどな。もう過去のことだし、説明しようにも論理的に説明はできないように思う。

「何でもいいけどさ、母親の写真くらい持ってんだろ? お父さんに見せなさい」
「誰がお父さんだよ。言っとくけど、あんたもうじいさんなんだからな」
「あー、俺は構わないけどさ。絶対それちぃ傷つくよなあ」
「……その辺は旦那の力量だろ」

 手帳から、まだまだ新しい写真を取り出す。彼女が亡くなる前、ぎりぎりで三人で撮れた写真。ほんの数ヶ月前のことなのにそれすらもう懐かしい。

「母親似だなあ」
「だよな。目とか輪郭とか似すぎなんだよ」
「成長したら多分お前に似るぞ」
「三世代とか恐怖だからそういうこと言うのやめてほしいんですけど」

 同じ顔にはならないだろうけど、見てすぐわかる親子とかもう俺いらないんで。数年経っても老けることを知らない父さんは俺と同じ顔でからから笑っていた。
 そのまま父さんの部屋で、今後のことについて簡単に話をして、きっと保育園の送り迎えとかは頼むことになるだろうからそのことも頼んでおく。実際に行くのは母さんだろうから頼みなおさなきゃいけないけど。
 しばらくして階下が騒がしくなる。軽い足音が階段を上って部屋の前までやってきた。かちゃりと扉が開くと、樹理と、その後ろに母さんの姿。

「いっつもしばらくは大人しいんだけどな。泣きはしないんだけどすげー人見知りすんの。人いないところで育ったからなー」

 母親の状況も、俺のことも幼いながらわかっていたのかもしれない。だから知らない人と一緒にいてもしばらくは大人しくいられるのだが、声をかけられたりすると不安になるようで、いつも俺か彼女の姿を探していた。

「俺もこいつがもっと小さい頃毎回人見知りされてたし」

 樹理を抱き上げる俺を、父さんと母さんが不思議な目で見つめる。

「毎回?」

 ああ、そこが疑問だったのか。
 なんてことはない、そのままの意味だ。
 
「俺週一くらいでしか会えてなかったからさ。勉強も論文もあったし。それで今日本語でお父さんって呼べてんだから大したもんだよ」

 そう、この子は感情の整理の仕方も賢さも俺なんかよりずっと優れている。
 俺を父親として呼ぶことができて、俺しかいないこともわかってて、俺についてきてくれる。週に一度しか会うことのなかった俺を、重要な人物だと認めている。可愛いとか感情よりも感謝ばかりが先行してしまう。

「……ちょっと外出てくる。散歩ついでに部屋でも探してくるよ」

 結局どこまで行っても、この子を守ってやるのは俺の仕事だ。
 病を患っていながら、三年間もひとりでこの子を育てた彼女に対してできるたったひとつの恩返し。
 樹理に靴を履かせて家を出ると、道の端にはまだ先日の雪が残っていた。向こうでも雪はかなり見ていたけれど、子供は見るたび嬉しいらしい。けれど日本の雪は水っぽくて固まりやすい。軽く駆け出した樹理を止めようと後を追ったが、案の定すぐに滑って転んでいた。

「あーあ、転んじゃったな。痛くないか?」
「う、……だいじょうぶ」

 だいぶ派手に転んだように見えたのだが、まったくこの子は母親の前でしか泣かなかった。彼女がそこまで良いしつけをできたとはあまり考えられないのだけれど、俺はこれでかなり助かっている。
 固い雪に顔をぶつけて赤くなった鼻の頭や頬の水滴を払ってやって、雪に触れた小さな手を握って温める。

「滑るから抱っこにするか?」

 一応聞いて見ると、樹理は小さく横に首を振った。
 その代わりに、俺が少し前かがみになって、その小さな手を握る。次転んだら共倒れになりそうだ。大通りでだけは避けたいな。
 なんか、腰が痛くなりそうだ。
 子供の早足にゆっくりついていきながら、しみじみそんなことを思った。




2008.09.04(Thu) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

月の眩暈と光源体 2



「な、何あの子っ、髪超っふわふわ!! さっき目ちょっと開いたけど緑だったし!!」

 戻ってきた葉山は興奮気味に叫ぶようにそう言う。 
 
「……で、あの子は何なの?」
「……ヤマト、簡単な話くらい通しとけよ……」

 ヤマトには軽く話をしてあったのだが、ヤマトは自分のところで止めてしまっている。何度も同じ話をするのは面倒だというのに。

「流風のガキだよ。なあ流風?」
「………え、だって水城って留学してたんでしょ? あれ?」
「だぁから、子育てしながらの学生生活だったわけだ。それで博士号っつーんだから大したもんなのか、博士号が大したことないのかどっちかだな」
「……お前、反論しないと思って言いたい放題だな……!」

 俺はほとんど子育て参加してないからどっちでもないというのが正解だ。
 あの年まで育てるのは彼女に任せていた。俺は週末に一緒に遊んでやる程度。だから最初は慣れるまで会う度に人見知りされて驚いたもんだ。

「……えっと、じゃあ、……相手は?」
「亡くなった。先々週だったかな」
「え、……じゃあ、何、あの子お母さんいないの?」
「そーゆーこと」

 細かいことはわからなくても、葉山はそれで納得したらしい。
 まあ、俺に弟はいないんだし、金髪で緑色の目してたら誰だってこういう想像にしか辿り着かないだろう。

「えっと、名前! なんていうの?」
「樹木の樹に理科の理で樹理。普通に日本名だよ」
「樹理くんか。椿の様子見ついでにもうちょっと眺めてくるっ」
 
 椿ってのは娘だったかな、そうだよな。
 ぱたぱたとせわしなく別の部屋に駆けていく葉山を見送ると、ヤマトは早速脇に置いていたビール瓶のふたを開ける。

「よく連れて帰ろうと思ったな」
「置いてくほど薄情じゃないし、一応父親って自覚はあるもんで」
「親には? 話してあんのか?」
「全然。まあ、もう戸籍の調整も終わってるし、何か言われたってもう樹理はいるんだから仕方ないだろ。母校で勤務決まってるから金の面では面倒かけないよ」

 二つのグラスにビールが注がれ、カチンとグラスを合わせてから口を付ける。
 高校卒業して数年っていってもそう長い時が経ったわけでもないのに、もうどっちも子持ちってすげえ変な気分だ。

「お前こそ、――よく子供なんて面倒なもん作ったな? 超意外なんですケド」

 ヤマトは、そんなもん作らないと思ってた。
 家が決めた女と結婚すればまた違っただろうけど、葉山と結婚するって決めたってことはヤマトのこれまでの人生観を全部覆らせたってことだ。それって何か、すげえ進歩。家のために生きることしか考えてなかった奴が、自分の人生をいかに幸せに生きるか考えて、今こうしているって、うまく言葉にはできないけどとてつもないことなんだと思う。

「跡継ぎとか?」
「そんなもん椿じゃなくても外からいくらでも連れて来れる。直系じゃなきゃ嫌、なんて俺思ってないしな」
「子供嫌いそうに見えますけど? ヤマトさん」

 グラスの中のビールを飲みほすと、ヤマトは極上の笑顔で「嫌いだけど?」と言ってのけた。そんなこと断言していいのかよ、と思う。俺は留学してる間とかそんなに飲酒してないから酒には強くない。久々だから節制することにした。ヤマトは仕事柄そうじゃないんだろうな。空になったヤマトのグラスに新しくビールを注いでやる。

「お前のことを悪く言うんじゃないが、子供なんて愛情云々だけじゃ作ろうと思えない。特にうちみたいな旧家はな。短絡的な親が多いから虐待だの何だのって起こるんだろ」

 まあ、簡単に考えちゃえば子供といえど第三者だもんな。
 俺は悪く言われたと思ってないし、ヤマトのいう事はそう間違ってはいないと思う。
 ――樹理の場合は、愛情云々は後付けのものだったから、なおさら俺達の場合とは当てはまらない気もする。

「……慎吾の同級生の、なんだっけ、都筑? あいつに子供できたから、って葉山が前電話で言ってた気すんだけど。そこまで張り合ってんの、お前ら」

 俺が向こうに行ってそう何年もおかずにそんな話を葉山と電話でした気がする。高校時代からヤマトと都筑はよくつるんでいたけど、そこまで張り合ってるとなるといろいろ通り越してお前ら馬鹿だろ、って感じだ。

「は? あー、まあ、そうだな。あいつのところにガキが生まれたから、“今”椿がいるのは否定しない」
「“今”?」

 ヤマトの口から、奇妙な限定句が出た気がした。
 今。

「俺の性格からして、本気で張り合ってたら同い年のガキ意地でも作ってると思わないか?」
「まあ、お前バカだからな」
「うるさい。つーか、結局はきっかけってことだろ。都筑は大学行かないで家に入ったから俺とは違うし、もし張り合ってたら俺はともかくあいつは大学休むかやめるかしなきゃいけない。音楽やりたいって進んだ大学なんだ、そうはさせたくなかったしな」
「なるほど」

 そうか、大学卒業する頃の子供だよな、そういえば。
 昔から葉山のことは過剰なくらい大事にしてる奴だったけど、その姿はご健在らしい。

「ついでに言うと、周りもうっさいし跡継ぎ云々の問題もあるし、あいつの親は俺の親なわけだから孫の顔見たいって言われりゃ見せなきゃならんだろうし、」
「溺愛する嫁の子供が欲しくないわけがない?」

 からかうように俺が言うと、ヤマトは複雑な顔をしつつも否定はしなかった。つまりはそういうことなのだろう。

「ヤマト、すっげー変わった?」
「変わってねぇよ。愛情云々だけじゃないっつっただろ」
「けど、“今”って言った。確かに今一歳のあの子が今芹沢にいるのは都筑のとこのがきっかけかもしれないけど、……結局お前の中では今だっていつだってあの子の存在は決まってるもんなんだよ。俺の知ってるヤマトは絶対そんな風には考えなかったね」

 やっぱりヤマトは複雑そうな顔をした。いつまでも余裕綽々で生きてた、俺の知ってるヤマトはどこ行ったんだよ。ちょっと弱くなったんじゃないのか? 嫁の存在ってのは偉大ですねえ。旧家の長男のくせに恋愛結婚しただけある。
 痛いくらい分かったのは、ヤマトの子供は周囲のいろんな環境に望まれて生まれてきたってこと。愛されてるねえ。 
 そんな愛に溢れた子供と、樹理を並べて考えてしまうとどうしても樹理が可哀想な気がして、あまり考えたくはなかった。
 あのヤマトでさえ望んだ命。その子は世界中の誰よりも幸せに生きることができるんじゃないだろうか。自分とは関係ない誰かの命を粗末に扱うことを何とも思わないようなヤマトが、自分の遺伝子を残すことを望んだのだから。
 ――なら、樹理は。
 彼女が望んだ。俺が望んだ。それだけで十分じゃないか、とは思う。それでも胸の内がもやもやするのは、俺が、誰かに祝福されたいだけなのかもしれない。俺が、まだ子供だから。

「水城っ、樹理くん起きちゃったっ」
「ああ、悪い。今そっち行く」

 起きたからと言って泣いたりしないのがありがたいところだ。
 俺が腰を上げると、続いてヤマトも立ち上がった。

「しばらくいるんだろ? ここ勝手に使えよ。俺達は椿連れて母屋戻るから」
「悪いな、ヤマト」
「いんや、久々に親友同士水入らずと行こうじゃないか、ってな」

 子供が眠る部屋で、ヤマトは自分の娘を抱きかかえると、葉山と一緒に母屋へ戻っていく。樹理はまだ寝惚けている様子で目を擦りながら、玄関の扉を閉める俺のズボンの裾をぎゅっと握った。

「おとーさん……?」
「ん、樹理着替えるか?」
「んーん、もうねる……」
「分かった」

 三歳の子供に十時間以上の移動はきつかっただろう。樹理を抱き上げて、先ほどまで寝かされていた部屋へと戻る。
 寝惚けながらも樹理は俺のシャツの布をぎゅっと掴んで離さない。

「……樹理……」

 父親にも母親にも似ちゃいないふわふわの髪。肩口に押し付けられた小さな頭を撫でてやる。
 大丈夫、ちゃんとお前は俺が望んだから。
 どこまでも俺のエゴだとしても、俺だけはちゃんと、お前の存在を望んでるよ。



2008.09.03(Wed) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

アホですいません


流風と大和がろざさまみたいに楼座無双な感じのやらかしたらどうなるんだろう。
ていうかどっちが強いんだろう。
流風無双に大和無双すか。どっちだろうなあ。
ろざさまに境遇が近いのは流風だよなあ。「そのうーうー言うのをやめなさいって言ってるでしょ……!」とかどうよ。キモい。

大和なんかはあれですよね、「伊達に一族郎党背負ってねぇんだよおおおおお!!!」ってとこですか。いやもう伊藤健太郎ボイスで「地獄すら生温いってことを教えてやるよ……!!」とか言われたら私一生ついていきます(落ち着いてください)。
寧ろ流風と背中合わせとか非常に萌えるんですが、画的に。

流風と大和なら空よりずっと強い気がする。
何も心配なく円満な家庭には理解できないことがたくさんあるんだろうなあ。
あー、どうだろう。流風無双、大和無双。(笑)
父親してる流風が思いのほか気に入ったので、流風に勝ってもらいたいとも思いつつ、大和も絶対強いなこいつ……! 嫁と娘のためなら世界中破壊して回れるぜとか思ってる自分もいます。
なんだ私、親馬鹿か!(爽)
ならあえてアンドゥーを推しておく。(アンドゥーはオチ要員じゃありません)


今小さい樹理が風邪引く話を書いてるんだけども、流風はそういう事がある度に母親じゃなくてルミを頼ってるといいなあ。(育児レベルが自分と同じくらいぽいと勝手に判断した)
だから樹理は大きくなってもルミには頭上がらないといいな。もはやお母さん代わり。
でもってルミが「水城に呼ばれた!」って屋敷を出て行く度に大和はいらいらして流風に電話してるといい。

「うちにはそっちより2つ下の娘がいるんだが、うちの女房度々駆り出すのやめてもらえませんかねえ」
『仕方ないだろ、突然腹が痛いって言うんだから』
「んなもん金払って小児科にでも押し込んどきゃいいだろうが」
『今日本は深刻な医師不足なんだろ? わざわざ手を煩わせずとも、地域の人が手を取り合うだけで済む話じゃないか。そっちこそ椿の面倒なら有り余る金渡して有能なベビーシッターでも雇えば済むだろ?』
「……お前、人の女房呼びつけといてそれか」
『無理ならいいっていつも言うんだけど、葉山は来てくれるからなあ。それが返事だろ』

子供できたら流風はもっと腹立たしい奴になってると思います。図々しい。
で、いろんなこと考えて大和は負けると思います。逆に大和は色々と丸くなってそう。
ルミは別に学生時代流風が好きだったからとかいう理由でなく、単に樹理が可愛いから見に行ってそうです。大和は気付いてないだけで、樹理が病気だー、って呼ばれる時以外にも自主的に様子見に行ってたりな。椿の散歩がてら。
和服の女とやたら童顔の男と金髪の子供と見るからにお嬢な子供の4人が公園歩いてたりとか何そのオーラ、と私は思うわけです。


そろそろお風呂に入ります。ちょっと落ち着こうと思います。
「地獄すら生ぬるい(略)」を背中合わせで言う大和流風コンビを想像して電車内で怪しかったのはもちろん私です。ろざさまは最強。
バトラとろざさまのCPを最近よく見かけますが私意外と好きです。一番はベアバト!!
もしくはEP3で急上昇したバトベア!!
うん。

2008.09.03(Wed) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

月の眩暈と光源体 1




 その日、世界が一瞬のひかりを喪った。





 最初からこうなることは分かっていた。
 この子が片親を喪うことになること。俺が連れ帰ったとしても、周囲とは違う容姿で苦労するかもしれないこと。すべて分かっていた。
 ――それでもいいと思った。俺と彼女の単なるエゴだったとしても、それでこの子が苦しい思いをするかもしれなくても、その時はそれでもいいと思ってしまった。
 半日弱のフライトを終え、実家に帰国の連絡もせず、大きなスーツケースをタクシーのトランクに押し込んで、雪の降る夜道を通り抜ける。見慣れているはずの景色はやたらと懐かしくて、俺の膝に頭を預けて眠る子供の頭を撫でる手を思わず止めてしまうくらいだった。

「可愛いですねえ。弟さんですか?」

 ルームミラー越しに運転手がそう訊ねる。夜だからこの子の髪の色も見て取れないのだろう。兄弟、と聞いたのは俺が童顔だからかもしれない。

「どう見えます?」
「いやあ、どうだろう。お客さんまだ高校生くらいにしか見えないから」
「これでも大学生ですよ。もう卒業です。アメリカに留学してたんですけど、今回はとりあえず一時帰国って感じで」
「なるほど。で、そちらの小さいお客さんは?」

 ん、と膝の上で小さく身じろぎ。
 寒かっただろうかと、今更思う。こういう時男親ってのは気が利かなくてダメなんだろうな。脇に置いていた黒いコートを子供の上にそっとかけてやってから、運転手に答えることにした。

「息子です」

 空港から実家の方向へ近づいてくるにつれて、見知った景色も増えてくる。
 実家には連絡を入れていないのでそのままその地区は素通り。目的地は学校のもっと向こうだ。




 スーツケースをトランクから下ろし、子供をおぶって傘を差す。
 もう良い時間だ。タクシーがいなくなったのを見届けてから、大きな門の脇にある小さな門に手をかけた。こちらの鍵は開けてあると連絡を受けていたのだ。
 それから、母屋ではなく通いなれた離れへ。さすがに子供を背負って、手荷物とスーツケースを運びつつ傘も差すという芸当は難しい。門から離れまでがそこまで遠くなくてよかったと思う。
 離れの扉を叩くと、はあいっ、と聞きなれた声がする。どたどたと二人分の足音。とりあえず傘を閉じて、それからすぐ、扉が開いた。

「――遅いんだよ、流風」
「うるさい。雪で出発が遅れたんだよ」

 いいけどな、と離れから現れたヤマトは俺の荷物を持って奥へと消えていく。
 ヤマトの隣にいた葉山は、俺が来ることを教えられていなかったのか目を丸くして突っ立っている。

「……葉山、悪い。こいつ頼めるか」
「え? あ、う、うん! 椿と同じ部屋で大丈夫かな……」
「しばらく起きないから平気だと思う」
「そっか」

 ヤマトとも葉山とも会うのは空先生の結婚式以来だ。
 どっちも随分大人びた気がする。
 葉山は俺の背中から子供を下ろして抱きかかえると、椿より重い重いー! と騒ぎながら中へ。俺もその後を追った。



2008.09.02(Tue) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

何故かまだ終わらない引っ越し話。

何故終わらない……!!
帰ってきてからもちょこちょこ書いてるのにどうして終わらないんだ……!


文化祭の話も未来話も書きたいんだけど、ちょっと書いて挫折したいのは大和と流風あたりがガチで話し合うところかな。樹理連れて帰国した流風が大和を訪ねてみたりする話。
樹理2歳頃帰国ってことは、椿がちょうど生まれる頃の話じゃないかなあ。
そこでいろいろ腹割って話してればいい。それがいちばん自然な気がする。
やっぱり炎而君が生まれたのを知って、っていうのはきっかけにすぎないんだろうなあ。だって本当に対抗してたら意地でも同い年の子供作りそうだもんな大和。
という話を樹理交えて書きたい。脳内でさえ完結するかわからない。


つーことで追記。
帰国してからの流風の生活を延々と考えてました。
ケレス先生には樹理が入学するまで気付かないでいて欲しいなあと思う。流風が不自然なほど忙しい生活してたとしても。
樹理が小学校3年生くらいになるまでは実家に近いアパートとか借りて暮らしてそう。
保育園の送り迎えとかは親に頼んで仕事して、飲み会とかなければ実家に迎えに行って。
遠足とかどうしてるんだろう!! お弁当はちぃちゃん頼りかな。
4年生になる頃に今住んでるマンションに引っ越して、そこからは鍵持って鍵っ子生活と。
保育園の手提げ袋とか流風が作ってたらすごい笑えるんだけど。
保育園の若い先生と付き合ったりはしてそうだけど、基本的に結婚する気はないと思うのであんまり長くなくして別れてそう。
樹理は絶対手のかからない子だと思うのでその点では楽かもしれないけど。
椿とはほとんど幼馴染みたいなもんだから椿と遊んだりしてたりするんだろう。
でもってふたりして自分の方が親に愛されてないとか不幸だとか思ってんですよ。
どっちかっていうとまあ樹理の方が片親いないだけ不幸かもしれないが、どっちにしたってそんなに不幸ではない。


2008.09.01(Mon) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

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