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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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かえりみち



「ん、まあ座って待ってて。準備してくるから」

 先生はそう言って一度部屋を出た。
 今は放課後、ここは進路指導室。あたしは数学の教科書と問題集、それからノートを抱えたまま、小さな部屋でため息をついた。
 ――どうしてこんな日に登校しちゃったんだろう。
 叡一が言うみたいに、えっと、扇谷貴久?みたいに、もっと計算して登校すること考えた方がいいのかもしれない。でもあたしは計算して登校しても試験が全然ダメだから出席日数だけじゃ進級が危うい。でも、だからってよりによって一番苦手な数学の小テストの日に登校してしまうなんて。その返却の日にも登校してしまうなんて。しかも補習って言われるなんて、本当にどうしようもない。数学できないのなんてあたしだけじゃない。他にも補習って言われた人は当然いる。けどみんな上手い理由で逃げ出したみたいで、あたしだけが断れずにここにいる。黙って帰るって選択肢、どうして見えなかったのかなあ。もう一度ため息をついて、あたしは扉から一番遠い席に腰掛けた。
 数学担当の水城 樹理先生は、戻ってくるなりこの部屋の扉を全開にすると、部屋の前に立てるタイプの黒板を置いた。ちらりと黒板の文字を見ると、『補習中』の三文字。

「あー、そっちじゃなくてドア側座って」
「あ、はい。すみません……」
「僕も何するつもりもないけどさ。何か言われても後々面倒でしょ」

 ……ああ、そういうことか。
 もう校舎全体に冷房が入っているこの時期、ドアを開け放せば空調は効きづらい。なんでだろうとちょっと思ったけど、一応そういうこと考えてくれたみたいだ。
 先生の腕にも教科書と問題集。それとシンプルなペンケース。言われた通りにドア側の席に移動すると、それじゃあ始めようか、と先生も奥の席に腰掛ける。
 マンツーマンでの補習授業が始まった。 




「全然できてないってわけじゃないと思うんだけどな。休んでる時も家で一応はやってるんだ?」
「あ、えっと、叡一、じゃなくて、あ、安瀬くんが教えてくれる範囲は、あの、少しだけ」
「安瀬って安瀬 叡一? 仲いいんだ」
「……幼なじみ、です」
「へえ、意外だな」
 
 よくそう言われる。それはあたしに友達がいなさそう、という意味なのか、叡一にあたしが似合いじゃないという意味なのか。両方のような気がする。
 叡一はよくあたしの面倒を見てくれる。ああいうのを、甲斐甲斐しい、って言うのかな。あたしは叡一の妹でもなければ彼女でもない。幼なじみといっても小さい頃からずっと一緒にいたってわけでもない。なのに叡一はあたしに本当によくしてくれる。それが少し申し訳なくて、でも断るのもあたしが寂しくて。あたしに割いてくれる時間、叡一ならもっともっと有効に使えるんじゃないかな、とはよく思う。人に教えることができるってことはその分叡一自身は勉強については理解しているってことだ。だから特別基礎からやり直す必要だってないだろうし。

「面倒見良さそうではあるけどね、安瀬くん」
「教えてもらってるのに満足にできなくて、申し訳ないです」
「あんま考えすぎない方がいいよ。ああいうのって自分が好きでやってるからさ」

 あたしのノートを覗き込みながら、先生がさらりとそう言う。
 それは、なんだか、少し複雑な台詞だ。先生は叡一じゃないのにどうしてそう言えるんだろう。
 少し睨むような視線に気づいたのか、樹理先生は緑色の瞳を見開いてから、笑った。それから、ごめんごめん、と言う。

「今のじゃよく思わないよね。ごめん。……僕にも似たようなのが身近にいたから分かるんだ」
「先生にも?」

 先生は大真面目に頷いた。

「ものすごくお節介な奴でね、僕が学校サボると」
「え、学校サボったりしたんですか? 全然イメージない」
「そう? 子供の頃から見た目で何だかんだ言われること多かったからね。聞き流すのも面倒でそのうち登校しなくなった。……君と同じ、かな? 違ったらごめん」

 同じです、と小さく返すと、ならよかった、と微笑みを返される。
 ……そっか、そういえば先生もハーフだった。中身はまんま日本人だけど、見た目はどう見たって外国の人。あたしと同じ、かな。もっと苦労したのかな。どうなんだろう、先生は受け流すの得意そう。あたしみたいに大真面目に受け止めたりしなかったのかも。

「その幼なじみの人、助けてくれたんですか?」

 話を戻すついでにその質問をすると、いや、と即答された。

「僕は余計な面倒起こしたくないからさらっと流したいのに、わざわざ庇ってくれるもんだから火が大きくなるんだよ。で、クラスメイトと顔合わせるのも面倒になってサボると血眼になって探してくれちゃうし、そのうち朝から僕のことつけて回るようになってさ。余計なことしなくていい、って言うと、樹理は方向音痴なんだから放っておいたらいつか北海道行っちゃう、って泣かれたよ。そりゃ確かによく道に迷うけど、そんな本気で心配される程じゃないと思ってたし、驚いた」
「……随分変わった人、なんですね」

 だよねえ、と先生はため息交じりに苦笑。でも、苦手とか嫌いとかって雰囲気ではない。

「最初は、自分をいい人に見せたいだけなのかも、とか勘ぐってたんだけどさ、ただ自分がそうしたくてやってんだろうなって段々わかってきた。僕は黎の中で、そうしてやらなきゃならない人間のポジションにいるんだろうなって」

 れい、というのはもしかしてその幼なじみの人の名前なんだろうか。
 先生の表情が優しくて、なんかくすぐったいような感じがする。
 叡一はどうなのかな。あたしはそんな風に割り切っては考えられないよ。叡一には叡一の考え方があるし、生活があるし、あたしが好きなように生きてる一方で、勉強でも生活でもなんでも、叡一を縛り付けちゃってるみたい。勉強だってもう少しできるようになればいい。そのためには学校でちゃんと授業受ければいいだけなんだけど、それもやっぱり、少し怖いから。もう少し、叡一に迷惑かけないでいられるようになりたいよ。……今はまだ、あたしなんかに構ってくれるの叡一だけだから、たくさん甘えちゃってるけど。
 余程あたしが思いつめた表情をしていたのか、先生は何も言わずしばらくあたしを見ていたけど、そのうち、「まあとにかく」と切り出した。

「教えるのって根気要るからさ。安瀬くんの負担は減らしてあげたいね」
「あ、……はい」
「紗央さん一人頑張ってくれると僕もだいぶ楽になることだし。……じゃ、仕切り直して次解いてみようか」

 この先生はそんなに怖くないかもしれない。
 そう思う。先生の声に頷いて、教科書に目を落とすと、背後に誰かの立つ気配があった。樹理先生には当然その主が分かってるらしい。

「いけねェなあ、先生? いくら相手が校内一の美人だからって密室に連れ込むなんて」
「職員室の先生方にも報告済だからまるで密になってないんだけどね。で、芹沢君どうしたの?」

 その名前にぎくっとして、肩が震える。恐る恐る振り向けばそこには本当に、その、あたしが今一番苦手な人がいた。
 
「一対一で補習なんざコイツも辛いだろ。参加してやる」
「偉そうに言う前に君も補習対象ってことを忘れないように」
「試験は俺の責任じゃねぇよ」

 芹沢が堂々とあたしの隣に座る。それから、教科書見せて、とあたしに言う。あたしは教科書ごと芹沢に押し付けた。

「別に今ここで取って食おうってんじゃねぇんだからそんなに気ィ張るなよ」
「芹沢君、それはここ出たら食います宣言してるようなもんだからすぐ撤回すべきだよ」
「あ? つーかこんだけの美人が手ぇつけられてないってことの方が奇跡だろ」
「論点ずれてる。現国の補習も必要なんじゃない?」
「コイツが出るんでなきゃぜってー出ねぇ」

 なんで、この人は、そんな自然に、怖いこと言うんだろう。
 教室よりも今は距離が近くて、この緊張全部バレてるんじゃないかと思うくらいで、怖い。
 あたしが何も言えずにカタカタ震えていると、先生が気づいてくれたらしく、芹沢からあたしの教科書を奪い取る。

「はい、紗央さんは今日の分おしまいってことで。問題集、できるところまで解いてみて。次答え合わせするから」
「は、はいっ」

 何度も何度もこくこく頷いて、あたしは鞄を抱えると脱兎の如く駆け出した。ドアが近くて本当によかった。
 後ろで芹沢が先生と言い争ってるような声が聞こえたけど、知らない。そんなのあたしは知らない。




 校舎を出て、校門まで走る。あまりにも怖くて革靴をちゃんと履けていなかったから途中で躓いて派手に転びそうになる。避けようと思ったけど慣性の法則?とかいうので無理な話で、前を歩いていた男子生徒に思いっきりぶつかって、二人して地面を転がった。びっくりして、申し訳なくて、謝りたくて顔を上げると、なんだかその相手はよく知った人のように思えた。

「あ、あの、」

 一応声を掛けてみると、相手がゆっくり振り向く。

「あ、紗央ちゃんか。後ろからだからわかんなかった」
「ご、っ、ごめん! 怪我なかった!?」
「平気。紗央ちゃんは大丈夫? 急いでたみたいだけど」

 大丈夫、と答えると叡一は安心したように笑ってくれた。
 安心したのはあたしの方だ。さっき本当にびっくりしたから、だから、安心して泣きそうになるのを堪えるのが精一杯だ。
 叡一は先に立ち上がると制服の埃を払って、あたしの手を引いて立ち上がらせてくれる。ついでに、転んだ拍子に飛んでいったあたしの革靴も拾ってくれた。

「珍しいね、すぐ下校しないなんて」

 叡一の肩を借りて靴を履く。数学の補習だったの、と答えると、補習なんて出なくても言ってくれたら教えるのに、と叡一は言ってくれる。
 それが嬉しくて、でも申し訳なくて、あたしはどうすればいいんだろう? 樹理先生はああ言ってたけど、でもあたしはそんな風に割り切ったりできそうにない。

「えっと、叡一は何してたの?」
「部活。ちょっと顔出しただけだよ」
「そうなんだ」
「走ってたけど、急いで帰らなくて平気? 紗央ちゃん」

 その質問には頷きを返しておいた。校舎から離れたかっただけで、急ぎの用事があったわけじゃない。
 
「そっか。じゃあ一緒に帰ろうか」
 
 叡一が先に歩き出す。あたしもその後を追う。
 もうちょっと、叡一に迷惑かけないでいられたらいいのに。構ってもらって当たり前なんて、あたし思ってないんだから。本当にいつも申し訳なくてありがたくて仕方ない。
 叡一の半袖のシャツの袖を後ろから引っ張って引き止める。何言おうか考えてなくて、つい引き止めてしまったから頭が慌ててるのがわかる。えーと、えーと。

「こ、これから、暇?」
「うん? ああ、何か教えて欲しいところあるの? いいよ」
「あのね、さっき先生に見てもらったから、だから、ちゃんと解けるか見ててもらってもいい?」
「勿論。一から教えなくて済む分、僕も楽だし」

 叡一の返事にほっとして、今度は隣を歩き始める。
 ちょっとずつ、でもちゃんと、叡一に心配かけないで済むようになるから。愛想尽かさないで付き合ってくれると嬉しい。そんなの絶対自分の口からじゃ言えないけど、ちゃんと、思ってるから。
 あんなに緊張してヒヤヒヤしてたのに、今はもう鼓動も穏やか。居心地がいい。叡一といると本当に楽だなあ、なんて思う。そうだ今日は冷蔵庫で冷やしてあるレアチーズケーキを出そう。そんなことを考えながら、二人で家路を辿った。



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2010.06.26(Sat) | パロディ | cm(0) | tb(0) |

ねむねむねむねむ

眠くて死にそうです。
けどおお振り見たい……。どうしよう……。
ワールドカップは明日ハイライトで何回もやるだろうから別にいいかなとか思ってる!


聖櫃戦争で、黄金郷で初めて紗央に会ったタっくんをすごく書きたい。
タっくんを紗央の前に跪かせて「我が君」って言わせたい。
タっくんはブリージンガ・メンの黄金の番人で、首飾りはフレイヤの罪の証なわけで、となるとやっぱりタっくんが仕えるべき人は最初から紗央だったとか云々。とにかくその辺り想像するのが何となく楽しい。
首飾りと引き換えにフレイヤは旦那を失うわけですが、うちだとタっくんがその後釜にすっぽりはまるのでそれもまた楽しい。
ただの妖精さんwwなくせに澪央たんにパパって呼ばれるタっくんとか役得すぎるwww
澪央たんは紗央が流した娘の名前で。きっとすごく可愛い。フノッスって綺麗な子なんだもんね!
大和と奈央が仮面夫婦とか、やっぱり神々編は面白いと思うんだよね!



実は元々流風が千鶴さんのこと気に入ってたりしたら安いドラマっぽくていい。雑誌とかで眺めてたとかさ。
陸さんにはミーハーなイメージないんだけど、流風は雑誌とか結構見てそうだし。
陸さんは本当はそこまで面食いじゃないと思うんだ。ただ千鶴さんが自分にぴったりだっただけです。あれ、同じか?
流風自身と陸さんだけが知ってればいい。うん、千鶴さんは流風には合わないよ!
櫂はどうしようか迷ってるけど、黎は出そうと思ってる。空の姉ちゃんってことで、樹理と付き合ってるとかね。樹理はあれで方向音痴の設定があるので、母子揃って校内で迷ってそうです。
学パロのタっくんと紗央については瞑想中なのでどうしようか。
紗央に合うのは、根気強く説明してくれる人か、有無を言わさない人かどっちか。ご近所のケレスさんはどっちかっていうと前者だと思うし、タっくんは間違いなく後者。説明が詳しくなくても紗央が飲み込めるまで待ってくれる人とかね。推して知るべしというのは紗央にはまったく向かない。不安になって悩んでどんどん落ち込みます。
どうしようかなあ。今紗央がすごくチキンなので簡単にどうこうできない。


シュンはやっぱり梶くんだった! 私の耳すごいな!


カウンターにひとりにされる予定だったのに何故か先輩にご迷惑おかけしてだいぶ手伝ってもらってしまった。
いろいろ心配させてしまった本当に申し訳ない。
夜は完全に一人だったけどまあなんとか回せたからよかった、かなあ? メロンの箱2つ並べて包装なんて高度なこと私にはできません。1つだってできるか怪しいのに。
帰りは30分くらい残ってたけど、混んでて仕事終わらなかったからであって、空いてれば定時で帰る気持ちは変わりません。4つ下の同期は時間過ぎても閉店まぎわまで残って、社員なら残って当然みたいな言い方するんでイラッとして、そういうのが日本人のダメなところなんだと言っておきました。10代のくせに分かったようなこと言ってるのがまたイラッとするんだな私は。そうです私は不真面目なんです。
すっごい無愛想でなんとなく怖い感じのする人が職場にいるんですが、昼間突然混んだ時に気がついてくれてレジ手伝ってくれてすごく嬉しかったです。夜も「レジ微妙に混んでんなー」と話しかけられてものっそい驚きました。いつも挨拶するとき「ああ」とか「おう」なのに今日の帰りは「お疲れっす」って返してもらえたので、何か進歩したのだろうかと思った次第。
しかしレジで隣に入られると本当に本当に緊張するので私の隣はご遠慮願いたいと思ってます。


妹がPS3版薄桜鬼買いました。
随想録の沖田ルートだけ見たんですが、うん、やっぱり沖田が一番いいよね!
陸さんの声はやっぱり彼にしようかなと思う。
一人称はずっと「僕」だったんで、途中で「俺」に変わったりしないのかと妹に聞いたところ、ないといいます。理由を聞くと「それはちょっとオトメイト的にもまずいから」だそうです。その後の議論で、クライマックスで突然一人称変わったら日本中のお姉さまたちが禿げ上がるほど萌えてベジータが増殖するから、ということになりました。
病気のイケメンがクライマックスで一人称変わる、ってどっかで見たなあと思ったらDCGSだった。
蒼にーさん好きなんでいいんですが。
サンクチュアリの新作確認したら安倍晴明の声ゆうきゃんだった……。
緑川と櫻井と浪川と井上和彦ってあんた……。どんだけ豪華なの……。


あ、1点入ったんだー。
よし、もう限界だぞそろそろ寝る。

2010.06.25(Fri) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

鏡の世界


「陸ちょん見っけー」

 流風が野島に突っかかっていたので、その流風にちょっかいを出し、即屋上へと授業をサボりにきた俺を瑶子がわざわざ追いかけてきた。
 旧校舎の屋上は一部が新校舎の陰になっていて日陰、一部は陽が当たるような構造になっている。どちらも十分広いスペースがあるため、夏は日陰に避難すりゃいいし冬は日当たりのいいところでのんびりすればいい。最高の場所だ。何よりも旧校舎は新校舎から多少離れてるモンだから人が来ない。なので俺や瑶子など、普段からがっつりサボりたい人間はよくこっちに集合している。
 今日は暑いが、それなりに風がある。日陰にいればかなり過ごしやすい。瑶子の白いセーラーがぱたぱたとはためく。

「瑶子またサボったんだ」
「私は陸ちょんと違って勉強できるっていうか自己補完可能なので出る必要を感じないんです!」
「俺もやる気を出したら宇宙一賢いんで出る必要を感じません」
「ちぃちゃんがノート全部取ってくれてるからって偉そうに!」
「恋人の協力も実力のうち、ってね。まあフラれ三昧の誰かさんに言うのは酷なことかもしれないけど?」
「うわっ、性格悪い! そんなだから教室で堂々兄弟喧嘩するんだっ」

 ――兄弟喧嘩、ね。
 確かにそうだ、傍から見りゃただの兄弟喧嘩。チャラい兄の俺が、クソ真面目な弟にちょっかい出してキレられて、そういうシーンだ。

「なあ瑶子、俺さあ」

 けど俺は、そう思いたくない。思われたくない。
 瑶子が、なあに? と首を傾げて俺を見る。

「流風と双子でいんの、ヤなんだよな」
「へ? 陸ちょんだけはいつも無意味に楽しそうじゃん」
「んー、双子ってーとゴヘイがあるかな。兄弟でいんのが嫌なの」

 俺はよく思うんだ、どうして流風は俺のことそんなに意識すんだろう。
 どうしてそんなに対抗意識燃やすんだろう。ただの競争ならいいけど、流風の俺への態度はなんだかいつも切羽詰ってる感じで、俺も息が詰まってしまいそうだ。

「俺は流風のこと好きなんだよな。確かに生まれた時からずっと一緒だからさ、差が出るの嫌で、勉強もスポーツも流風と同じくらいには頑張ってきた。そりゃあ成長すりゃ得意分野とかも出てくるし、それなりに勉強すれば流風よりいい点とれることだってあるわけだよ。けどそれって当然じゃん? 流風は俺なんかよりよっぽど努力してて、俺よりずっとできるくせに、俺の得意分野に関してはすげー落ち込んじゃうんだよな」

 流風は俺よりずっとできる奴だ。努力するのは大変だって知ってるし、それでも全部頑張れる奴。何回も挫折して、それでも前向いてるすげー奴だ。俺は流風のそういうところは尊敬してる。俺なんかじゃ絶対真似できねぇ、すごいことしてるんだって思う。

「流風はさ、弟って思われるの嫌なくせに、自分が一番そうやって意識してんだ。少しでも努力怠ったら自分が消えるような気がしてるんだよ」
「けど兄弟なのは事実なわけじゃない? なら陸ちょんはどうだったら納得するの?」

 日陰の中、壁に寄りかかる俺の隣に瑶子が腰掛ける。
 
「俺はさあ、流風とは親友でいたいんだよ。だって俺は流風のことすげえ好きだし。見た目もそっくりで、同じ血が流れてて、何でもいつでも分かり合えて、けど俺は俺、流風は流風だから、別の人間だから、考えることは違ってさ、それでいいんだし、だから親友がいい。兄とか弟とか、ほんの数時間で上下なんかつけられたくないし、対等でいたいんだ。ま、流風って根っからのMだから“お前の方が俺より下だ”って言われると燃えちゃうんだと思うんだけど」

 本当は、あの日ひとりで出かけて、俺だけが声をかけられて、そんなのは嫌だったんだ。流風と一緒の方がいい、なんて思っていた。けど流風が好むようなものとも思えないし、俺自身は興味があったからそのままこうしてモデルの仕事始めて、それで、やっと俺は俺の好きなようにやっていこうって思った。流風が俺を気にするみたいに、それまでは俺だって流風のこと気にしてきたわけで。ひとりで踏み出せたから俺には今ちぃがいてくれるし、これでいいと思ってる。
 だから、流風にも早いとこそういうきっかけができればいいのに。ちぃみたいないい女はいなくても、他に何か、流風にとって大事にできる出会いがあればいい。
 ……とまあ、俺がどんなに流風のこと考えて、流風のこと好きだからって、こーゆー俺は流風は好きでないみたいだからいいんだけどさ。

「ふうん、陸ちょんのが大人なんだ?」
「そこだけは兄さんなのかもなあ」
「考え方もオトナで、ちぃちゃんみたいな理解ある彼女がいて、それだけで十分流風きゅんにとって陸ちょんは自分より上だって意識せざるを得ないと思うけど。私の考えすぎ?」
「けど生まれついてのものじゃない。考え方も人間関係も、成長するし変わってくだろ。俺はもっと肩並べて流風と喋りたいよ」
「流風きゅんがちぃちゃんより可愛くて聡明な彼女連れてきたらどうする?」
「ちぃより可愛くて聡明な女なんているわけないだろ」

 断言してやると、私だって可愛くて聡明ですけどー? としょうもない台詞が返ってきた。残念なことに俺はちぃ以外はアウトオブなんとやらだ。

「遊びならいくらでも相手するけど?」
「……陸ちょんってさあ、断っ然シーマス君よりチャラいよね」
「何それ? 褒めてんの?」
「うん、心の底から褒めてる」

 比較対象がシーマスってのは引っかかるけど、シーマスより不真面目なのは確かだろうと思う。真面目に授業なんか出てらんないし、したいことしたいようにできればそれでいいかな、とか思ってるし。社会ナメてんだろ、と言われれば、その通りです、と答えるしかないわけだ。でも今はこれでいいんだ、いつか反省して考え方変わるかもしれない、変わらないかもしれない、全部そのターニングポイント待ちってことで。だって今の俺を受け入れてくれる奴がいるんだから、そのままでいいやって思うの当然じゃん。まあ確かに、流風の爪の垢煎じて飲んだ方がいいかなと思ったりもするけどさ。
 瑶子は立ち上がってスカートの埃をぱんぱん払って落とすと、扉へ向かった。

「まだ授業中でしょ、戻んの?」
「新校舎の屋上行く。暇だし放課後栄ちんとデートしたげよっかなと思って。多分あやつなら向こうで授業サボってるはず」
「いつも足蹴にしてんのにめっずらしー」
「盛大な惚気とブラコン話聞かされたらむしゃくしゃしたんですー」

 なんだ、ただのアッシーか。うわ今の死語だな。
 扉が閉まる。日陰に寝そべって目を閉じる。
 ブラコン、ねえ。だから俺は兄弟は嫌だって言ってんじゃん。
 



 甘い香りがして目を開く。いつもの香りだ。

「おはよう、陸君」
「んー……、おはよ、ちぃ。今何時?」
「昼休み」

 そうか。四限まるまるサボって、今昼休みってわけだな。
 体を起こしてちぃの隣に座る。こっちの屋上に二人でいるのなんて珍しいので、取りあえずちぃの体を引き寄せて額に軽いキスを贈る。
 甘い香りがする。これがちぃの香りで、俺はいつも安心する。

「また喧嘩してたね、流風君と」
「流風が突っかかってくるだけだって」
「気持ち、通じないものだね」
「肝心なところでは言葉が一番効くんだよ。双子同士でも」

 以心伝心なんて、いつでも完璧じゃなきゃ意味が無い。通じる時と通じない時があるんじゃ使えたもんじゃないし。双子はよく意思疎通ができるみたいに言われるけど、そんなの時と場合による。普段はやっぱり言葉が一番効くって俺も分かってるんだ。
 お前そんなんで辛くねぇの? って、それだけ言やいいってわかってる。それを言わないのは、言ったらきっと流風は怒るからだ。

「あ、そういや俺さっきまでここで瑶子と二人っきりだったんだけど」
「だから?」
「一応報告」
「そうなんだ」

 ちぃは賢い女だ。本当は嫌で仕方ないのに、俺にそんな素振り見せない。俺の前では一番いい女でいようとする。嫉妬するのはマイナスだと思ってる。俺にマイナスイメージを与えないように、完璧な女を演じているちぃが、俺はとても好きだ。その可愛さと賢さと狡さと汚さが、すげえ人間じみてて。金切り声を上げてぎゃあぎゃあ騒いで泣いたら、多分俺はその場所がどこだろうと衝動的に押し倒してしまいそうなくらいなのに、ちぃはそれをわかってない。わかってないちぃが、俺は好きだ。
 ……なんて、そんな歪んだこと考え始めたのはつい最近であって、それまでは普通にちぃの包容力に惹かれてただけなんだけどさ。俺が俺でいるのに、相川千鶴って女は必要なんだ。俺のいいとこ悪いとこ、全部最大に引き出してくれるんだよ。

「妬かないの?」
「だって陸君、絶対私のところに戻ってくるから。嫉妬するだけ無駄でしょう?」
「けど瑶子はちぃと同じくらい成績よくて、適度にサボるから俺といる時間も長いし、ちぃほどじゃなくてもそれなりに可愛いし、小柄だけどスタイルまあまあいいし、下ネタもガンガン乗ってくるしさ、俺あいつ嫌いじゃないよ」

 瑶子を褒める言葉を羅列させてみれば、カリ、とちぃの爪が床のコンクリートを小さく引っ掻いた。でも表情は変わらない。
 そういう面倒なところ、本当に好きだ。最高に美人で、賢くて、男なら一度はお相手願いたいと思うような女なのに、俺は大声で言って回りたいんだ、中身は普通に嫌な女なんだぞ、って。
 俺の前で必死で自分を覆い隠す彼女は愛おしいと思う。当然だろ? 俺の前で最高の自分であろうって頑張ってんだ。俺は何も隠すことなくそのままなのにさ。

「……冗談。ちぃ以上に可愛い声で俺の名前呼んでくれる女なんかいないよ」

 俺みたいに歪めとは言わないからさ、流風もこうやって心乱されるような誰かと出会えればいいのに。そしたら肩並べて、女ってほんっと面倒臭いよなー、とかバカみたいに笑いながら喋れんじゃね?
 ちぃの白くて小さい手の上に自分の手を乗せて軽く握ってやる。嬉しそうに、最高に可愛い顔ではにかむ彼女を見て、俺もにこりと笑顔を返した。



2010.06.24(Thu) | パロディ | cm(0) | tb(0) |

ホワイトメイズ  3
 ぼろぼろになって帰ってきた黎と、預かったみのりちゃんを寝かせて、あたしはリビングのソファーでやっと頭の整理をする。わけがわからなかった。昨夜連絡があってから半信半疑、ううん、九割は冗談だと思っていた。なのにそれがすべて本当で、あたしは大事な家族を二人も亡くしてしまった。黎だけでも帰ってきてくれたのが本当に、せめてもの救い。それであたしの心はなんとか保たれる。

「……空君……」

 背中を刺されていた。相当強い力だったんだと思う。どうしても抜けなかったのか包丁がそのまま空君の背中に刺さっていた。柄が食い込みそうなほど背中の肉に深く刃が沈みこんで、……あれで、空君はどれだけ生きたのだろう。即死だっておかしくない。でも空君だから、黎に何も言わずに死んだなんてことないだろうと思う。片割れと父親を失う黎だから、自分が死ぬ間際だって空君はちゃんと気にかけてくれたはずだ。瀬川 空は、そういう人だ。
 黎は何を聞いたのかな。あたしには聞けない。それは黎が、しっかり自分の心の整理をして、あたしに話せるようになったらきっと話してくれる。死は誰にでもいつか必ず訪れるから、それ自体は悲しくないことだって自分では思っているのに、この埋めきれない心の穴はどうしたらいいんだろう。何もわからないから。彼の痛みも、苦しみも、あたしには思いを馳せることすらできない。
 あたしのこと、少しでも考えてくれたかなあ。黎のことばっかりだったのかなあ。……寂しいなあ。
 音のないリビング。隅で眠っていたゴールデンレトリバーの権造が寂しそうに小さく鳴いてあたしに近づいてきた。その頭をわしゃわしゃ撫でてあげて、抱きしめる。家を買って数年して、「やっぱりマイホームには犬がいねぇとな!」と空君が言い出したから、みんなでペットショップに見に行った。一番元気で、やんちゃで、イタズラ好きの子犬を買って、また子供がひとり増えたみたいだってあたしは思ってた。黎と櫂は空君にそっくりで、明るいけど賢くて誰のことだってちゃんと考えられる。まあ、やんちゃが過ぎるところはあるけど、だから権造を飼い始めた時も怖がるなんてこと全然なかった。

「……お母さん」

 権造と一緒に過ごしていると、リビングの扉から小さく声が聞こえた。顔を上げると、やつれた顔の黎がいる。

「どうしたの? 眠れない?」

 近づいてその頬に手を当てる。黎は力無く笑ってみせた。

「あはは、それもあるんだけどね。……お母さんが、一番辛いかなって、思って」
「お母さんのことなんて心配しなくていいから。黎が一番疲れてる。……黎には元気でいて欲しいの」
「私は櫂も、お父さんも、ちゃんと見た。分かってる。何も分からないで家族が二人もハイ死にましたって言われるお母さんの方が辛いに決まってるよ」

 ――あたしは本当に、この子が空君の子供で嬉しいよ。
 思いやりがあって賢くて、本当に空君そっくりなんだもん。
 黎はあたしの隣に腰掛けて、あたしの服の袖をつまんでしばらく黙っていたけど、
 
「お父さんがね」

 そう、切り出した。
 すぐには聞き出せないと思っていたことだ。
 少し、緊張してしまう。

「……ルカのお父さんに刺されたの。気がついたら後ろからぐさっとやられてね、犯人はルカと一緒に逃げちゃって。私は、追いかけて殺してやる!って言ったんだけど、お父さんは、……やめてやれ、って」

 そこから少しずつ涙声になる。あたしにも何だかその風景が見えてくるようだった。

「慎吾だって父親だからルカのこと守らなきゃならないんだ、って。俺も黎の父ちゃんだから、黎を危ない目には遭わせられない、黎を守らなきゃいけない。でも櫂のことは守れなかったから、俺は櫂の父ちゃん失格だなあ、って、言って……」
「……お父さんらしいね」
「馬鹿だよお父さん、私のお父さんなら、櫂のお父さんでもあるのに。……それに、俺センセイだしなあ、って、言ってた」

 ……それは、本当に、空君が言いそうなことだった。
 俺はセンセイだから。
 センセイだから、教え子を恨んだり、呪ったり、ましてや手に掛けたり、そんなことは自分の命と秤にかけたってできなかったんだろう。死にたい人間なんかいない。空君だって本当は生きたかった。けど、教え子を殺して生きながらえるくらいなら死んだ方がましだって、空君は馬鹿みたいに真っ直ぐだから、何だって大事にする人だから、そう、思ったんだろう。そしてきっと、櫂をひとりにさせられないって思ってくれたんだろう。櫂は黎といつも一緒だったから、離れただけできっとすごく不安がっているだろう。
 ああ、最後まで、空君は空君だったんだ。

「……それでね、……奈央にも伝えてくれって」
「な、……何を?」

 自分の名前が出て驚く。
 空君は、あたしに何を言いたかったのかな?

「今度会う時も、歌っててくれなきゃ俺は見つけらんないからなって、言ってた。黎と櫂もそうだぞ、って。今度みんなで会ったら、俺がピアノで伴奏するからって、それで……」

 夏の青い空。
 熱をもった空気。
 ぬるいプール。
 誰もいない、プール。
 人目を盗んでプールで歌っていたあたしを見つけてくれた、空君。

 ――次に会えるのは、いつ?
 ――次に声を聞けるのは、いつ?
 ……もう会えないんだよね、声も聞けないんだよね、あたしがそっちに行くまでは。また新しくどこかで巡り会えるまでは。

 鼻をすすって泣き始めた黎の肩を抱いて、手に伝わる確かな温かさの代わりに本当に大事なものもいくつも失くしてしまったのだと実感が湧いてきた。
 一番大事で楽しい時間はもう永遠に訪れない。けれど彼は、あたしに残りの時間を楽しむことができる可能性を残してくれた。黎だけでも、こうして帰してくれた。

「……黎だけでも帰してくれて、空君は本当に立派なお父さんだよね……」 
「……お母さんは、悲しくないの……?」
「悲しいよ」

 でも、わがままを言ったら空君に申し訳ない。
 本当は空君にも、もちろん櫂にも会いたかった。
 わがままなんて言えないよ。いつもいつもわがままだったのはあたしの方だ。

「……お父さんが、櫂を守れなかったってすごく後悔して、黎だけでも絶対に守ろうってすごく頑張ったんだ、ってあたしには分かるから。だから、この結果以上を求めるのはお父さんに対して失礼だよ。……黎を無事に帰してくれて、たくさん言葉も残してくれた。確かに意味がわからないし理不尽だけど、最後まで空君らしかったんだって、わかる。あたしのことも考えてくれてたんだって、わかるから、……悲しくないよ……」

 言いながらあたしは涙していた。 
 ひとりでそれだけのものを背負って、空君はどんなに不安だっただろう。強くても完璧な人じゃないから、空君は普通の人だから、きっと怖くて震えただろう。それでも、あたしや子供たちや教え子のことを気にかけてくれていた。
 そんな空君が、孤独や恐怖と戦っている間に隣にいてあげられなかったことが、とても悔しい。隣にいて、声をかけてあげたかった。少しでもその恐怖を取り除いてあげたかった。できることなら代わりたいし、あたしも一緒に死んであげられたら、と思う。
 でも、できないんだよね。
 空君は空君の全部をかけて、黎をあたしのところに帰してくれたんだよね。

 あたしは、最愛の人に心からの感謝を贈りながら、世界で一番大事な娘を抱きしめた。



2010.06.23(Wed) | ホワイトメイズ | cm(0) | tb(0) |

ホワイトメイズ  回想2



「慎吾ってさ、奥さんとどうやって出会ったわけ?」

 慎吾と空から少し離れた場所で、ルカと黎は寄り添って眠っていた。今日一日でいろいろなことがありすぎたのだ、危険だとしても多少休ませなければならないだろうという意見は慎吾と空とで一致した。
 つい数時間前に、放送があった。芹沢の苗字を聞き取った瞬間、ぞわっと悪寒が走った。

 ――流風先輩が俺を、殺しに来る。

 そんな暗鬼に駆られるばかりではいけない。空との会話に集中することにする。

「ん、えっと、ひとつ年上で、バスケ部のマネージャーで、怪我して運動できなくなって、それで」
「なるほど。通りで水城流風そっくりなわけだ」

 ――先輩が、俺を、殺しに来る。

「それは関係ないじゃないですか。まあ、確かに似てるかもしれませんけど」
「ははっ、そーかもな。あー、しっかし年上かー。俺年上とか年下とかあんまり興味なかったからなー」
「先生は自分の奥さん以外興味ないんでしょうが」
「そうなんだよな! やっぱ奥さんが一番だ」

 だからだろう、扇谷の名前が先に呼ばれて目を伏せた空は、芹沢という単語を聞いて肩を落とした。子供を死なせる親などいるものか。空は、椿ではなく大和が死んだのだろうことをきっと悟ったのだ。価値観の合いそうな二人だっただけに、悲しみもあろう。
 ――そのヤマト先輩は、流風先輩に殺された。
 ――流風先輩がヤマト先輩を殺した。
 ――俺を殺すと言った。
 
「……よし、そろそろ移動した方がいいかもな。あと三十分くらいでここ、禁止エリアだ」

 空先生とすごく話が合うかもしれなかったヤマト先輩を流風先輩が殺した俺に4番のゼッケンをくれた流風先輩が殺した一人でアメリカに旅立って行った流風先輩が殺した子供を連れて帰ってきた流風先輩が殺した俺がずっとずっと今でも憧れている流風先輩が殺したあのヤマト先輩を流風先輩が殺した俺にしか練習頼めないって言ってた流風先輩が殺した俺に面倒ばっかかけてよくぶっ倒れてた流風先輩が殺した強い声で言ってた

『慎吾だって誰だって殺すんだよ』

 そう言った、言った、言った、言った!!!!
 一番側にいたはずの俺が、流風先輩に殺される、流風先輩でさえ俺を殺そうとするのに、


「黎、ルカ。移動するから起きろよ。もーちょいしたら作戦をじ」





 この、ぎらぎらした瞳で静かに怒る男が、俺を、俺たちを殺さないわけがないじゃないか。





 しこりが大きくなりすぎて違和感もなくなる。確信に変わっていった。空は自分を殺すつもりなのだと確信した。慎吾の手は自然とデイパックの中の武器、刺身包丁に伸び、眠る黎の肩を優しく揺する空の背中に、いつもダンクを決めるように、それを根元まで突き刺していた。
 ぐ、と呻いて空の首がこちらを向く。驚いた様子はなさそうだった。
 
「あ、……あ、俺、」

 なんだよ、驚いてないってことは承知の上だったんじゃないか、そういうリスクがあるって。自分も俺を殺すつもりだったから、逆のことされても驚かないんだよな!? 俺のこと、そういう奴じゃないって見くびってたんだよな!?
 空の体はぐらりと前のめって、目を覚ましたばかりなのだろう黎に凭れかかる。お父さん!? と慌てる黎の声。早く逃げないと、空にも殺されてしまう。
 慎吾は勢いよく立ち上がると、自分のデイパックではなく空のデイパックを掴んで、寝惚け眼のルカの手を強く引いて駆け出した。





「ちょッ、父さん、何で!? どうしたんだよ!!」
「……ごめん、ルカ、」

 走り疲れて、悪い足場の中をとぼとぼと歩き始め、ルカにそんな素朴な質問をされても、慎吾には手を握ってやる程度のことしかできなかった。
 
「……俺、あの人たちみたいに特別な人間じゃないんだ」
「は?」

 ルカは一番状況を理解していないのだろう。空と黎は今頃どうしているだろうか、もう空は息絶えてしまっただろうか、まだ痛みに苦しんでいるだろうか。
 背中を貫通するかと思うほど、力を込めて突き刺したのだ。その感触は今も手の中に残っている。ルカの手を引くのは、まだ綺麗な左手だ。

「……あの人たちって、誰のことなのか知らないけどさ、……芹沢さんって人はただガキっぽくて偉そうなオッサンだし、空先生はもっともっとガキっぽい良い先生だ。水城先生は、……年齢不詳でクールなのに熱血で、やっぱちょっと子供っぽい。で、……みんな、」

 ルカは一呼吸置くと、緊張で冷たくなった慎吾の手を軽く握り返した。

「自分の子供が大事なだけだ。……父さんと同じだろ」

 歩みを止めた慎吾の背中に頭を預けるようにして、ルカもその足を止める。

「なのに、普通なのは自分だけみたいな言い方すんな!! あの人たちはずっと子供といて、親やってきたんだよ! 俺に野島慎吾しか見せなかったあんたの方が普通からかけ離れてる! あんたは最近やっと俺の父親になったんだ、やる気あんなら勝手に早々挫折してんなふざけんじゃねぇよ!!」
「ルカ、」
「……見たんだろ、芹沢さんか椿さんか、どっちか殺されるとこ。……空先生、殺したって、俺は父さんのこと責めたり、気に病んだり、ぜってーしねぇよ、そんなこと……。……ただ最後まで俺の父親でいてくれれば、それで」
「……無理しなくていいのに」

 背中に押し付けられた頭がふるふると震えていることには気付いていた。無理をしている。ルカは馬鹿ではない。だから全て察したのかもしれない。
 ショックも受けているだろう。責めたい気持ちも、信じられない気持ちもたくさんあるに違いない。それでもルカはすべて飲み込んで、こうして慎吾の手を握っている。 

「……ほんと、ルカには迷惑かけっぱなしだな」
「ホントだよ、馬鹿親父」
「ちゃんとお前が野島流風だと思える野島慎吾にならなきゃな」
「そうだ、苗字ナメんな」

 最後に、ごめんな、と呟くと、ふくらはぎを強く蹴られると同時に、謝んじゃねぇよ、と強い声が響いた。



2010.06.22(Tue) | ホワイトメイズ | cm(0) | tb(0) |

ホワイトメイズ  回想1



「……どう、したんだよ。気分でも悪くなった?」

 一応心配そうな顔を作ってこちらを覗き込む、息子のルカにまともな表情を返すことができず、慎吾は乾いた笑いを漏らした。平気、と辛うじて返せば、ならいいけど、と満足はしていない様子でルカが再び歩を進める。慎吾もその後に続いた。
 何度だって再生される。全てがスローモーションのようだった。



 ルカが先を歩き、慎吾は用心深くその後ろを歩く。四方八方を警戒しながら山の中を歩き、ぱぁん、と乾いた音が聞こえたのはつい五分ほど前のこと。何だ!? と動揺するルカを制止し、慎吾自身も草に身を隠して音源を探った。段々と暗くなる視界ではどういう事態になっているのかもわからない。ただ、本当に殺し合いが行なわれているのだと実感できる。
 誰と誰が、どうしてそうなったのか、確執あるメンバーなんてあの面子の中にいたのだろうか。慎吾の中で様々な疑念が渦を巻いた。
 その時だった。たった一言だけ、慎吾の耳に綺麗に入ってきたのだ。

『だから俺は、樹理と生きるためならお前だって慎吾だって誰だって殺すんだよ』

 その一言はあまりにも衝撃的で、その一言で全てが理解できてしまった。たくさんの情報が一気に雪崩れ込んできて、飲み込むのは容易ではない。

 あそこにいるのは流風先輩とヤマト先輩だ。
 やられたのはヤマト先輩。
 やったのは、――流風先輩。
 流風先輩は決めたんだ。子供と生きるために他人を殺すことを決めたんだ。
 その対象には俺も入っているんだ。
 
 すべてを理解して、ゲームを理解した。
 流風にそんな決意をさせるようなゲームだ、他に頼れる人間なんていないのかもしれない。
 ルカを守れるのは自分だけなのかもしれない。
 だってあの流風が、慎吾でも殺すと明言したのだ。その声には説得力があった。何よりも殺意を感じてしまった。
 自分はそれでも流風の敵になれるだろうか。本気で追いかけた人に、刃を向けることなどできるのだろうか。何を理解しても、その点にだけは結論が出ない。

「あっれ、そこにいんのルカ!? ルカだよねー!?」
「ばッか黎! でかい声出すなっつーの!」
「ほらお父さん! だってルカだよ、ルカ! てことはルカ父もいんだよ?」
「マジか! 慎吾いんのかー!?」
「「親子してでかい声出さないで下さい!!」」

 突然かけられたひょうきんな大声に、ついルカと一緒になって言い返してしまう。
 声からして、それは瀬川 空と、娘の黎。嬉しくてつい、なんてすまなそうに揃って謝る様子は普段と何ら変わりない。この人たちだけ日常生活みたいだ、と慎吾は思った。
 段々と暗がりに目が慣れてくる。空と黎にはこちらを攻撃する意思など皆無のようだ。ルカがそう判断したのか二人に近づいたので、慎吾も一応は警戒しながら空に近づいた。

「さっき銃声したよな。お前らか?」
「いえ、あれは、」

 ルカセンパイトヤマトセンパイガ

「……よく、わかんなかったです」
「ならよかった。無事で何より!」

 ルカは黎とこれまでとこれからのことについて談義している様子だった。ならば慎吾は大人として空との会話を続けることが最善だろう。
 空は、慎吾が思っていたよりずっと明るく振舞っていた。
 最初にあの教室で目を覚まし、モニターで、黎の双子の兄弟である櫂の惨殺シーンを見せられた時は、慎吾も目を逸らしたくなるほど絶叫していたというのに。どう切り替えればそうも明るくなれるのだろう。気になるところではあるが、こうして二人とも明るく振舞っていてくれているのだ、わざわざ水を差すことはできなかった。

「あのさ、慎吾」
「はい、何スか?」
「俺たちさ、あの本拠地爆破しようと思ってんだ」
 
 アレ、と空が指差した先には、小さく敵の本拠地、最初に集められた場所が見える。
 『爆破』なんて空ならいつもふざけて使いそうな言葉ではあるが、暗闇で覗き見た空の瞳は静かに怒りを湛えていて、声も少しも笑っていない。ああ、怒っているんだ。多くは話さなくとも、空が息子の死に対して誰よりも怒りを抱いているのだということはよく分かった。

「黎のバッグに入ってたのが火薬だったんだ。やろうと思ってできないことはない」

 自分がどんな表情をしているのか慎吾には自覚がなかったが、おそらくは困った表情なのだろう。空が諭すように続ける。その言葉に、それにさ、と加わって、空は苦笑を浮かべた。

「やっぱそうしなきゃ俺も納まりつかないんだよな。大事な子供、あんな風に、蹴散らすみたいにあっさり殺されてさ。俺も悔しいし悲しいし痛いけど、黎はもっとだろうし、櫂は、想像もできない」

 ぐっと拳を握る音。ぎり、と痛いくらい歯を噛む音もする。
 空が木の幹に背中を預けて座り込むと、慎吾もその隣に腰を下ろした。

「……もちろん、黎には危ないことさせられないから、実際やるとしたら俺の単独行動にはなるんだけどな。五十メートルって制約がムカつくぜ」
「……確かに、そうですね。爆破っつったら五十ぎりぎりまで離れても危ないかもしれない」

 空が遠まわしに協力を要請していることがわかる。
 人数は極力多い方がいいだろう。それに、空や慎吾に万が一のことがあっても、ルカがいれば黎は安全である可能性が高い。
 自分ならどうするだろう。子供を殺されて、こう前向きでいられるだろうか。二人いるから一人殺されてもいいなんて答えはナンセンスだ。一人も二人も同じく心が痛い。ルカがもしああやって殺されていたら、こんな冷静には考えられなかったに違いない。
 モニターに映った、生気を失ったどんよりとした櫂の瞳が忘れられない。あの時の空の表情も、声も、涙も、忘れることなどできない。
 やはりこの人は自分よりずっと大人なのだ、と慎吾は思う。それならば、協力してやるべきなのではないだろうか。

「いいじゃん、俺だって櫂さんあんな風に殺されて、このまま生きて帰れって言われたって嫌だよ」

 黎との話を粗方終えたのか、ルカが慎吾の側に来てひとこと言う。そうなのだろう。空がそうであるように、空の子供の黎と櫂も、子供たちの中心であった人物だ。
 それでも、どこか拭いきれない不安がある。しこりを抱えたまま、慎吾は頷くことしかできなかった。




2010.06.22(Tue) | ホワイトメイズ | cm(0) | tb(0) |

ホワイトメイズ  2

 この行事、移動教室の最終解散の場所は学校だ。大型のバスが行きも帰りも乗せてくれる。俺と母さん、椿の母さんだとか、瑶子おばさんも変な連絡の真偽が気になるのかやってきていた。
 大型バスが何台もやってきて、遊び疲れた顔の生徒を下ろしていく。バスが何台来て、何台去っていこうと、その中にみのりや椿の姿は見えない。いよいよ本当に何かあったんじゃないだろうかと俺も不安になってきた頃、バスの集団にかなり遅れて、一回り小さいバスがやって来た。
 バスはさっきまでの集団と同じように校門を入ってすぐのところで停車し、生徒を下ろす。一番先に下りてきたのが……与一郎とかいったか、妙にテンションが高く、そいつだけを見るなら他のバスに乗っていた生徒たちと大差ない。異様だったのは与一郎の後だ。

 みんな、死んだような目をしている。

 あの樹理が、誰かに対して敵意剥き出しの瞳をしている。水城先生そっくりの野島流風もそうだ。椿は足取りおぼつかない様子で、都筑がしっかりとその肩を支えていた。みのりは一番最後、俯き加減の黎と一緒にバスを降りてくる。その姿を見てほっと一瞬だけ安心する。
 しかし、一抹の不安がよぎる。
 一部の先生の姿が見えない。
 父さんの姿も、見えない。櫂の姿も、見えない。
 どくどくと心臓が早鐘を打つ。違う、そんなはずない。そんなはずは、ない。

「……お、にい、ちゃ」

 ふらふらとバスを降り、ふらふらと俺へと近づいてくるみのりは、たどたどしく途切れ途切れに俺を呼ぶ。俺の目の前まで来ると、青い左目と黒い右目が一瞬で涙を溢れさせた。

「お、おとうさんが、おとうさんがぁ……!」

 ――マズい。
 みのりは糸がぷつりと切れたかのように泣き始め、つられてか黎も涙し始めた。そうなるともうダメだった。その場に留まっている面子は、昨日連絡を受けた人間なのだろう。あの連絡が嘘ではないことを誰もが悟り、……当然、一番に壊れてしまうのは母さんだと予想はついていた。
 それだけで十分衝撃だったのに、俺や母さんにとどめを刺したのは、みのりたちを乗せたバスの次にやってきた小さなトラックだった。
 
 見ちゃいけない。
 これを母さんに、見せちゃいけない。

 なのに俺は手も足も動かすことが出来ずに、俺たちの目の前に運ばれ「確認」を求められたその棺の中身を、見てしまった。みのりは一瞬息を止め、それから泣いた。
 胸に穴の空いた父さんの姿が見えた。
 母さんはきょとんとその中を見ていたが、「タク?」とひとつ呼びかけて、それから、表情が、どんどん強ばって、――悲鳴を上げた。みのりの泣き声よりも大きかった。暴れて止まらない母さんを見てみのりが戸惑い、また涙する。そんなみのりの腕を強く引いたのは、奈央おばさんだった。

「みのりちゃんは黎と一緒にうちにおいで! 真紘くんは紗央ちゃんお願いね、男の子だからちゃんとお母さん支えてあげられるよね!?」

 思わず頷いたが、そんなことできる自信はなかった。俺だって手も足も震えてる。けどこれ以上母さんにコレを見せているわけにはいかない。母さんを棺から引き剥がすと、引きずってでも家に帰ろうと心に決めた。
 視界の隅にちらりと見えたのは、奈央おばさんと黎の前にふたつ並んだ白い棺。
 ――ふたつ。
 その片方に誰が入っていて、もう片方が誰なのかなんて俺はもう考えない。そんなこと、絶対に考えない。 




 父さんは本当に、母さんのことを愛していたと思う。
 俺よりもみのりよりも、誰よりも母さんを愛していて、父さんの中で母さんは家族じゃなくて永遠に恋人で。いくつ年が離れていようがそんなのは関係なかった。父さんは俺たちにも隠すことなく、母さんが一番だと公言していた。
 家族を捨てた父さんが見つけた一番綺麗なもの。そして欲しいと強く願ったもの。
 思い出にしか縋れなかった母さんが、ずっと欲しいと強く願っていたもの。



 リビングには嗚咽だけが響いている。
 母さんはテーブルに突っ伏し、俺は部屋の隅でぼんやり突っ立っていた。幾度も呟かれる、ごめんなさい、の言葉。痛々しくて聞いていられない言葉。


「……………ったから」

「欲しいなんて、言ったから」

「あたしが、子供欲しいなんて、言ったから」

「要らないから」

「そんなわがまま言わないから」

「もう、言わないから」


 ここにみのりがいなくてよかったと心底思った。
 あ、いや、……否定されてるのは、母さんが望んでしまった最初の子供だけで、みのりに罪はない。
 要らない、ごめんなさい、それを繰り返して、だんだんと心が切り刻まれていく。
 そうだよな、俺なんか要らなかった。俺を望まなければ、母さんは父さんとずっと二人で暮らせたんだろう。こんな別れをすることもなく、ずっとだ。それが叶わないのならせめて、死ぬのが父さんでなく俺だったらよかったのに。産んだことをこの年になって悔やまれるくらいなら、死んだ方がきっと有意義だ。
 俺が死んでもきっと父さんが母さんのフォローをしてくれる。でも、父さんが死んだら俺は母さんに何もしてやれない。母さんにとっての父さんは、本当に唯一無二なのだ。他の何でも替えがきかない。そりゃ何でもそうだろうと思われるのかもしれないが、母さんは、父さんさえいれば生きていける。そういう意味での唯一無二。
 父さんは、母さんにとっての“世界”そのもの。母さんという世界の“器”を満たしていたのが父さんの存在だった。それを失った悲しみは、俺なんかじゃ想像もつかない。

「母さん、もう寝た方がいい」

「子供なんて要らなかったのに」

「体壊すぞ」

「タクがいればそれでよかったのに」

「今日はゆっくり休めよ」

 声をかけても母さんは俺の声なんてまるで聞こえていないかのように独り言を続ける。いや多分、本当に聞こえていないんだろう。俺は母さんの中でいなくていい存在だから、俺の声なんてあってないようなもんなんだ。
 でも休ませないと。今の母さんの精神状態じゃ、下手すりゃ自殺しかねない。それは俺も嫌だし、みのりにこれ以上辛い思いもさせたくない。この一線だけは守らないと。父さんがいない以上、俺が守らないと。
 時計の針は残酷に時を刻んでいく。ぶつぶつ独り言を言う母さんに、俺は声を掛け続けた。もう休め、寝ないと体壊すから。……もう壊れている母さんにこんな言葉ほど微妙なものはない。やがて日付が変わる時刻になる。ふらふらしながら母さんが椅子から立ち上がったが、すぐに膝の力が抜けて崩れ落ちる。慌てて駆け寄ってその体を支えると、母さんの青い瞳が大きく見開かれた。心底驚いているみたいに。

「……なんで、あんたみたいのがいるのよ」

「片方だけ青い目なんて馬鹿みたい」

「そのくせ外見はタクにそっくりなんて、そんな都合のいい人間生まれるはずないじゃない」

「消えなさいよ」

「夢なんだから早く消えなさいよ!!」

 母さんが呪いの言葉を吐き出す。
 流石に俺も辛くなって何も言い返すことができない。俺の存在は母さんにとってただの悪夢だ。でも、俺だって望んで生まれてきたわけじゃないのに、どうして俺を産んだ当の本人に存在を否定されなければならないのか。生まれる感情は怒りでなく、悲しみ。
 そうだよな、なんで、俺なんか欲しがったんだろうなあ、母さん。
 俺の手を振り払い、一人で立ち上がると母さんはよろめきながら寝室へ向かった。俺はその背を眺めて、強く扉が閉まる音を聞いて、リビングでしばらく一人で泣いた。



2010.06.21(Mon) | ホワイトメイズ | cm(0) | tb(0) |

なんというか


ゆきちゃんととも兄さんがいちゃいちゃするルートを見てほろりと来ました。
ゆきちゃん可愛すぎだろちくしょう……!!!!
学パロの瑶子さんにはぜひともゆきちゃんのようなキャラになっていただいて、爽やかに下ネタだのエロトークだのを繰り広げて欲しい。でもゆきちゃんは可愛いから結婚できるよ絶対! 可愛いしいい女だし男前だし!!!
こう、学パロの未来軸っていうか、擦れちゃってる瑶子さんとかいいなあ、書いてみたい。妻子持ちに首突っ込んで本気で後悔してるとことか是非書きたい。そいでこの瑶子さんは酒豪の上に喫煙者だ。社会人になってから吸い始めました的な感じがする。
学パロの生徒時代の瑶子さんは琴也に絡んで織夏をあたふたさせてそうな気がします。
そういうの見てるからより理央は離れそうな気がする! なんだこいつら!
紗央はどうしようかなあ。叡一くんに彼女いるって知ってるんだろうか。知ったら何か置いてけぼりにされてるような気がするんじゃなかろうか。


さて、そろそろ寝るか……。
明日は会計室に置いてきぼりにされるんだ☆

2010.06.12(Sat) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

ホワイトメイズ  1


 家に誰もいないから。
 そう言って母さんが俺を家に呼び寄せた。実家に着いたのは夜だったのに、確かにみのりも父さんも家にはいない。聞けばみのりは夏の林間学校だか臨海学校で、父さんは何故かその付き添いで出かけたらしい。まさしく家には母さん一人だったわけだ。俺が家を出てしばらく経つが、数日間ひとりきりになることなど母さんはなかったはずだ。俺をわざわざ呼び戻すのも頷ける。
 数日戻るくらいなら別に構わなかった。そりゃあ、家を出る原因が母さんだったから、気まずい気持ちがないってわけじゃない。でも何日も母さんを一人にする方が気が引ける。あんまり寂しがらせるとキノコでも生えてきそうだからな、この人。それに俺はサークルやってるわけでも彼女がいるわけでもない。強いて言うならバイトしてるくらいだ。食事の心配をしなくていいんだから、数日の気まずさくらい我慢しよう。



 その連絡は、三日後に届いた。



 その時俺は部屋の窓を開け放して煙草を吸っていた。父さんが吸っていたものと同じ銘柄だ(多分)。母さんこのこと知ってんのかなあ、とぼんやり考えながら、曇った夜空を見上げていた。煙が雲に向かって上っていくのを目で追っていると、階下で電話のコールが聞こえた。はーい、なんて返事したって電話の向こうには聞こえちゃいないのに、母さんは上の階にいる俺に聞こえるくらいの声で返事をすると、電話を取ったらしい。コール音が止む。
 壁の時計をちらりと見ると、午後九時。そろそろ風呂にでも入るか。いや、明日みのりや父さんが帰ってくるんだから適当に荷物まとめとくべきか。といっても持ってきた荷物なんて大学で使う教科書とノートが数冊くらいで、その他はほとんどない。多分帰る時に大量の食糧をもたされるから、その辺の覚悟だけしておけばいいだろうか。
 携帯灰皿に吸い殻を押しつけると風呂に入る準備をするため窓を閉めた。
 がしゃん、と、ばたん、という大きな音が聞こえたのは、その直後だった。明らかに誰かが倒れた音だ。この家には今俺と母さんしかいない。ということは――。

「母さん!?」

 急いで階段を駆け下り、リビングへ飛び込むと、受話器の子機が床で寝ていた。母さんは力なく座り込んでいて、……よく見ると微かに震えている。その肩を軽く揺すってみても、だらりと力が入っていない。俺の右目と同じ青い瞳は虚ろで何も映していない。何というか、ぞっとする光景だった。

「……に決まってる」

 ぽつりと母さんが何か呟いた。聞き取れなかった俺は思わず「え?」と聞き返す。

「うそ、に、きまってる」

 自分に言い聞かせるような口調だった。強い口調。自分を必死で納得させようとしているような、そんな声色だ。
 何のことなのかよく分からない俺は、取りあえず床に転がる子機を拾い上げた。電話が原因なのは間違いない、けど電話が何を母さんに知らせたのだろう。俺が子機を手にした瞬間、計ったかのように再びコールが響いた。流石に今のタイミングは俺もぎょっとしてしまう。母さんは体を小さくして震えている。俺が出るより他ないらしい。
 通話ボタンを押して、桜井です、と名乗る前に相手の言葉が耳に飛び込んだ。

『紗央ちん!?』

 それもまあ、聞き慣れた声。紗央――もとい母さんをそんな風に呼ぶのはこの人しかいない。

「いえ、俺です。真紘です」
『あ、ヒロ君か……』

 少しだけほっとしたような、そうでもないような、複雑な声。その声の底にある感情が何なのか、俺には見当がつかない。
 そのまま少しだけ沈黙が訪れた。電話の相手――瑶子おばさんとの会話で沈黙ができるなんて初めてかもしれない。おばさん自身にとってもきっとこんなことは珍しいだろう。
 電話の向こうのおばさんが話し始める。こういうのを多分、重い口を開く、って表現するんだ。

『もう、ヒロ君は知ってるの?』

 何か、よくない情報がもたらされたのだろう。だから母さんが取り乱した。おばさんは俺がまだ何も知らないことを考えて慎重にそう聞いたのだろうが、どちらにせよ意味ありげな言い方になってしまう。おばさんがいくら賢くたってこればかりは仕方ない。

「いえ、よく分からないです。ただ、この電話の前にも一本電話が来て、母さんがそれ取ってから異様に取り乱してるんで何かあったんだろうとは思ってました」
『そっか……。ヒロ君は賢いね』

 このタイミングでそれは褒め言葉なのか?
 多少の疑問を抱きつつも、それで? と俺はおばさんに続きを促す。

『紗央ちんは多分ちゃんと状況教えられないと思うから、私が説明するね。動じるなとは言わないよ、けど紗央ちんほどは取り乱さないで欲しいの』
「説明される内容によるじゃないですか、そんなの……」

 でも、母さんが取り乱すことで、俺も平常心ではいられないかもしれないことなんて、みのりか父さんのことしか有り得ない。二人のどちらかか、もしくは二人ともに何かあったのだろう。それでも俺は一応男だし、ある程度のことには動じずにいられる自信があった。

『……亡くなったんだって、拓海さん』

「……は?」

 ……何かあったって、何が?
 亡くなったって、誰が? ……父さんが? は?
 嘘に決まってる、って、それのことか?

「み、みのりは!? みのりは無事なんですか!?」
『その辺は情報が詳しく入ってないからまだ分からないの。学校に入った情報がね、亡くなった人たちのことだけだったから』

 人、たち?
 その複数形はおかしいじゃないか。複数形を使うってことは、ひとりじゃないってことだ。

「人たちって、父さんだけじゃ、ないってこと、ですか」
『……入った連絡じゃ、大和くんとか、瀬川くんとか、いろんな名前があったんだけどね、子供の名前は櫂君のしか見当たらなかった』
「か、……櫂、が?」

 子供の名前は櫂しか見当たらなかった。ということは、他は大人、親の名前ってことだ。大和ってのはきっと芹沢大和、椿の親父さんで、瀬川ってのは瀬川 空、櫂と黎の親父さんだ。
 なんで、どうして父さんが? 父さんだけじゃなく叔父さんや空先生まで? おまけに櫂もなんて、そんなの――。

「……あの、俺にはイタズラとしか思えないんですけど」

 そう思う。当然だろ、親だけ死んだなんて出来すぎてる。ついでみたいに死んだという櫂なんて主犯格だとしか思えない。帰ってくる前にサプライズってところか? 瀬川家の父子が共謀して、他の親巻き込んで、家で待ってる母さんや俺たちを驚かそうって魂胆か。確かにそれならうちの父さんも、叔父さんも乗りそうだ。辻褄が合う。そうだ、そうとしか考えられない。
 
『私もそうだと思ったんだ。理央くんもまだ半信半疑でね。けど今日理央くん研究日で、学校から連絡くれたの安藤くんなんだよ。今連絡回してくれてるのは安藤くんみたい。……切羽詰まってるみたいだったし、仕事も忙しいのにそんなイタズラに乗るかなあ、とか考えちゃう』
「でも、そんな図ったかのようにみんな死んだとか、そっちの方がおかしいじゃないですか」
『……死ぬとかいなくなるとか、紗央ちんが拓海さんからは一番聞きたくない冗談だと思う。拓海さんもその辺は分かってると思うんだよ。紗央ちんのことすごく大事にしてる拓海さんがそんな冗談、言うとは思えないんだよね……」
「それは……」
 
 確かに、そうだ。
 そういう冗談は母さんは大嫌いだし、もしも話でも父さんは自分が死んだ時のことなんて話さなかった。俺が聞いたことないだけかもしれないけど、とにかくそうだった。
 
『瀬川くんとか大和くんだけなら私もイタズラだろうなって思ったと思う。けどねヒロ君、君のお父さんに関しては私はどうしてもそう思えないんだ』
「……だからって、どう確かめりゃいいんですか……」
『うん、私もそう思って拓海さんの携帯に電話したんだけど、どうも圏外にいるみたい。理央くんも向こうに参加してる人にいろいろ確認取ってるみたいだけど、なかなか繋がらないみたい。……ごめんね、色々言ったけど結局明日になってみなきゃわからないよね』
「取りあえず俺は母さん落ち着かせて寝かせるんで」
『そうして。……ヒロ君のお母さんはすごーく芯が強いんだけど、諸刃の剣って感じなの。お父さんがいないと強くなれない人なの。……ま、これで明日冗談だったらぶん殴ればいいんだよ。私もまだその可能性捨ててないしねー』

 おばさんは明るくそう締めくくった。俺が変に気にかけて、母さんに要らぬ心配をかけさせないようにしたのかもしれない。
 とにかく、状況がわからない以上俺たちは明日を待ってみるしかない。何か起きたにせよ、何もないにせよ、それまで俺たちには為す術がないのだから。
 脱力したままの母さんを立ち上がらせ、父さんがそう簡単に死ぬかよ、と自分でも地に足のついていないような、確信の持てないふわふわした言葉を母さんに言って聞かせた。母さんを寝室のベッドに寝かせ、電気を消してその部屋を出る。
 扉を閉めると音がなくなったように感じられた。なんだか背筋がぞっとして、俺は風呂場へと足早に向かったのだった。


2010.06.11(Fri) | ホワイトメイズ | cm(0) | tb(0) |

ふう。
9時出勤もそろそろ終わります。
毎日ポメラでバトロワIF書いてるけどなかなか続かない。でも楽しい。


ああ眠い。

2010.06.10(Thu) | 未分類 | cm(0) | tb(0) |

一応一通り。

「素晴らしき日々」の大筋は終わりました。あとはCG回収とか別ルートのエンド見たりとか。
まだいろいろ腑に落ちない部分もあるので全部埋めるのが楽しみです。
琴美さんの話のくだりは正直、あれ紗央じゃね? と思いました。
不連続存在ってサブタイはもうそのままなんですね。なるほど。
自分を自分だと認識できる一番の要素は記憶の連続性だって話とか、ヴィトゲンシュタインを引用していろいろ使ってる感じがいい。あと砂浜のたとえ話はよかった。
人生ってパズルのピースみたいなもんかなあ、とかね。目に見えるものはすべて世界でしかないとかね。認識できるものはすべて自分の世界だから、世界の外側なんて存在しないとかね。
とりあえず私ゆきちゃんが幸せになる話が見たいです!!!!!!!!


買ったばっかのポメラ使ってバトロワパロもちまちま書いてます。
ああいかん、もう眠い。


2010.06.07(Mon) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

ねむい!

あれ……なんでだろう私、羽咲ちゃんあんまり好きじゃないんだが……。
正直とも兄さんとゆき姉さんの絡みを本気で期待していたんだが……。
あれ、なんでだろう、目から水が……。
ともあれ、とも兄さんのラストは素晴らしいと思いました。いや感動した。カッコイイ。


そしてついうっかりポメラ買いました。
パソコンつけなくてもワープロだけできるって素敵ですよね!


タっくんはヒーロー気取りばっかのうちのキャラでは珍しく悪役キャラですな。本人も自覚してる。
今やってる学パロは違うと思うけど、とりあえず本筋では紗央に関しては自分はヒーローだと思ってるから困る。
真紘の学年が結構詰まってきたので、前やったバトロワIFの続編みたいの書いてみたいなあとか思う。
子供らが帰ってきたとこからスタート。いや真紘が書きたいだけなんです私。あと欲を言えばルカ樹理。
タっくんが真紘にいろいろ教えてあげるのは真紘が成人してからな気がするので、……あれ、そうか、真紘はもう大学生か。うわなんかより楽しくなりそう。
ああそうか、理央が当たらなかったのは琴也が高校生じゃないからか。
みのりが死んだような目してて、紗央は多分狂ってしまうと思うので、元から狂気ポテンシャルある真紘とかどうしたらいいんでしょうね。そしたらきっと夜に街中で人ぶん殴ったりしちゃうんだと思う!
あんなタっくんでも真紘の憧れの人だったりするのでなんか楽しそうです。鬱な話は考えるの楽しいよ☆


眠い。でもプリント目通さないとな……。嗚呼。

2010.06.04(Fri) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

て の ひら



 あたしの部屋はいつも暗くてじめじめしている。でもそんな環境が好きで、あたしはいつもベッドの隅に座って、朝が終わり昼が終わり夜が終わるのを待ってる。
 友達、も、いないっていうか、別に要らないし、学校行かなくても、一人でも生きていけるかなあとか、思ったり。
 従妹の奈央にはそれじゃダメだよって言われるけど、部屋から、家から一歩踏み出すのはあたしにはすごく怖いことなのだ。
 ……でも、今日は学校、行かないと。
 置時計の針を見て時間を把握する。雨戸もカーテンも閉めきったこの部屋じゃ、朝か昼か夜かなんて時計なしじゃ判断できない。
 今は朝の七時だ。二週間ぶりに制服を着てみる。
 ……今のクラスには、理央も奈央もいるから、平気。大丈夫。
 そう念じてからじゃないと家なんかとても出られなかった。去年は、理央と叡一がいるから平気、って念じてた。本当は学校なんて行きたくないけど、でも、……お父さんとお母さんに心配かけるわけには、いかないし。
 お父さんは宝飾店の社長をしていて、お母さんはその付き添いで家にいないことが多い。家はそれなりに広いけど、お手伝いさんなんかはいない。家事なら自分ひとりでそれなりにできるから。従兄弟の理央と奈央のお父さんはあたしのお父さんの弟で、副社長。だからやっぱり家にいないことが多いみたい。あたしが学校に行くのはお父さんやお母さんが家にいる時。ちゃんと朝に家を出て、ちゃんと授業出て、帰ってくる。両親はあたしがどんな中学時代送ったかなんて知らないし、卒業式欠席したことだって知らないんだろう。
 奈央からもらった時間割を見ながら教科書を詰めて、朝ごはんは食べずに、軽く親に挨拶だけして家を出た。朝ごはんなんか食べたら、緊張で学校で吐いてしまう。家から学校へ向かう、一歩ずつ緊張が高まって、いつもいつも苦しい。何度やっても、慣れない。




 教室に着くと、同じクラスの照井さんと水城……双子みたいだしあたしには見分けつかない、とにかく照井さんと水城の片割れが仲良さそうに話していた。
 おはようっ、と明るく声をかけられたけど、あたしは小さい声で返すことしかできない。何をするにも手探りで、息苦しい。
 席について教科書をしまっていると扉から誰か入って来て、「失礼しまーす」と声をかけた。顔を上げてみれば、今は違うクラスの叡一があたしの席に近づきながらひらひらと手を振った。

「おはよ、紗央ちゃん。今日は来たんだ」
「来たくなかったけど」
「それでも来てくれて嬉しいよ。お昼一緒に食べようか?」
「いい。持ってきてないもの」
「なんで? お腹空かないの?」
「空かないの」

 食べたら何かの拍子で戻してしまう。だから学校では水分も極力取らないようにしている。
 不健康極まりないね、と叡一が言うから、うるさいっ、と反論しておいた。
 やっぱり知ってる人が近くにいると安心する。少しだけ気が楽になる。

「おいアンザイ、朝っぱらから人の女にちょっかい出すたぁいい度胸じゃねェか」

 やっと少し緊張が解れてきたのに、また新しくかかってきた声にびくりと反応してしまう。低い声。その人はあたしの隣の席の人。
 叡一はその人を見るなり爽やかな笑顔になった。

「うわあ、僕の苗字わざわざ倍の文字数で覚えてくれてるんだ。おはよう芹沢くん」

 芹沢拓海。 
 あたしの隣の席の人。なんだか怖い人。あたしが登校するといつも話しかけてくるけど、何を考えてるのかさっぱりわからないし、しまいには「俺の女」とか言い出すし、わからないっていうか怖い。中学の時みたいにまたいじめられるんじゃないだろうかと気が気じゃない。
 苗字を間違って覚えられている叡一だけど、嫌そうな顔はしない。作り笑顔にも見えるけど、どうなのかしら。

「紗央ちゃん、何かあったら大声で助け呼ぶんだよ」
「おいてめェ、俺を何だと思ってる」
「高貴なのは名前だけの野蛮なケダモノなんて僕も誰も思ってないって」

 そ、率直……!
 最後に叡一はにっこり笑って、あたしだけに「帰りは一緒に帰ろうか」と告げて手を振り、そのまま教室を出て行った。
 隣の席の芹沢はぎろりと叡一が出て行った後の扉を睨み、それからあたしを見て、席に着いた。
 ……居たたまれない。居心地が悪い。




 昼休みはいつも、旧校舎の地下に繋がる階段に座って、膝を抱えてぼんやりしているのが好き。
 暗くて冷たくて、自分の部屋の空気に似ている。
 冷たい壁に頭を預けて、そのままチャイムが鳴るのを待つ。遠くで騒がしい声が聞こえるけど、その音は自分とはまるで関係ないから、だから、外と遮断されてる感じがして、好き。
 朝からの緊張もあって少しうとうとしてきた頃、足音が近づいてくるのがわかった。――いつもはこんな場所、誰も来ないのに!

「……やっと見っけた」
「……せ、」

 せりざわ、だ。
 緊張がぐっと高まって、吐きそうになる。
 逃げようかと思ったけどすぐ立ち上がれそうになくて、膝を抱える力をぐっと強めた。

「……いつもすぐ逃げんだもんなァ、苦労したぜ、ったく」
 
 だれも探してくれなんて言ってないじゃない、ほっといてよ……!!

 芹沢は腕で額を拭うとあたしの隣に腰掛けた。
 隣に人のいる感覚にぞわっと背筋が寒くなる。
 嫌だ、いやだ、怖い。

「なんで逃げんだよ」
「………に、げてない」
「なんでアンザイはよくて俺はダメなんだよ」
「だ、だめ、とか、ないわよ、別に」
「あんだろ」
「ないっ」
「なら俺と付き合え、紗央」
「い、意味わかんないッ!!!」

 意味がわからない。
 そうやってふざけて、目のこととかなんだとか、好き勝手暴言吐いて遊びたいだけ。見え透いてる、そんなの応じられるわけない、だから学校なんか来たくなかったのに!!
 二年になって初めて登校した始業式の日に、すき、とか言われた。この人はそこからもう意味がわからない。何なの? もしかして学年みんなグルになってあたしのことからかってるの?

「……なんで。アンザイと付き合ってんの」
「ちがうっ」
「じゃあなんで」

 怖いから、怖いからよ。
 あんたに限らずみんな怖いんだから、学校来るだけで精一杯なんだから、あたしのこともう困らせないで……!
 ぎゅうっと頭を抱えて相手を見ないようにする。次は怒られるんじゃないか、怒鳴られるんじゃないか、蹴られるんじゃないか、殴られるんじゃないか、びくびくしていたけど相手は何もしてくる気配がない。けどあたしの前から立ち去る様子もなくて、もうどうしたらいいかわからない。
 恐る恐る視線を隣に向けてみると、芹沢はただじっと、あたしを見ているだけだった。それが怖くてまたぎゅっと目を瞑る。怖くて、どうしたらいいか混乱して、じわりと涙が滲んできた。頑張って学校来てるだけでいいじゃない、なんでそれじゃいけないの? なんでこんな目に遭わなきゃいけないの?
 誰かの手があたしの頬に触れたのはそんなことを鬱々と考えている時だった。誰か、って、芹沢しかいるはずないじゃない。
 
「っ」

 そのまま芹沢の手があたしの髪を梳く。
 さっき以上に強く目を瞑る。

「………くそっ」

 あたしの肩の震えが伝わったのか、なんなのか、芹沢は小さく舌打ちをして立ち上がり、階段を駆け上がった。
 全身の力が抜ける。力が抜けて、震えは大きくなった。
 何? なに、なんなの?

「………こわかった……っ」

 

 あたしがいくら怖い思いをしたって、誰も気にしない。
 だってここは旧校舎、誰も気づくわけないじゃない。




 五時間目が始まるチャイムが鳴るまでずっとあたしは膝を抱えて過ごした。





2010.06.02(Wed) | パロディ | cm(0) | tb(0) |

春色ソナタ



 夏が近い。
 中間試験が終わって、答案が続々と返却される。俺は野島と席近いから奴の成績も見えたり見えなかったりするわけで、……まあ、点数なんか見えなくたって顔見ればどんな結果だったかは一目瞭然だし、それにそもそも授業態度だとかで大体見当はつく。もうすぐ三年が引退する。俺と野島は二年でレギュラー張ってんだ、成績もそれなりに取ってなきゃ、部活だけだと思われちまう。それじゃ本末転倒だ、学校ってバスケするだけの場所じゃないし。
 数学の試験の返却が終わって、休憩時間。やっと悪夢の時間が終わったとばかりに伸びをする野島に近づいて、頭を軽く小突く。

「お前、いい加減自分の成績見直せよ。補習の常連になるような成績だとレギュラー外されんぞ」

 野島は、俺のことが嫌いだ。見てりゃわかる。
 入学してすぐ、仮入部で一緒になった時なんて俺のこと女子と勘違いしてたくせに。
 俺は間違ったことなんて言ってない。なのに野島はいつだって俺を心底嫌って、すげえ目で睨んでくる。

「お前に言われなくても分かってる!」
「嘘つけ。去年から変わり映えしない成績のくせに」
「うるせぇよ!! 俺はマジでバスケで生きてくつもりだからいいんだよ!!」

 夢物語。

 夢物語。

 俺にはとても考えられない。

 そんなこと口が裂けたって言えない。

 まだまだガキのくせに、勉強すらろくにできない、俺のガードだってろくろく抜けないくせに、身長でかいだけがとりえのくせに、なんでそんなデカい口叩けるんだ。

「―――ッ」

 ぎりぎりと拳を握り締めて、何と返してやろうかと考えていると、

「流風ぁ、んな怖いカオしてんなって」

 俺が一番嫌いな能天気極まりない声が聞こえた。

「いーじゃん勉強できなくたってさあ。できなくて困んのお前じゃなくて野島だし? レギュラーだって実力さえありゃ簡単には外されないだろ? 俺と同じ顔が怖ぁい顔してんのがヤなの、女の子寄って来なくなるって、そんなんじゃ」
「俺はお前と違ってそんなのに興味無い!」
「あらそお? ならいーけどさ、俺の席の目の前でごちゃごちゃすんのやめて。喧嘩なら他所でやれよ」

 俺と同じ顔をしている男は、そう言い捨てると欠伸交じりに席を立った。次の授業はもうすぐ始まるのに教室を出て行く。どうせサボるつもりなのだろう。
 ――そういうところが嫌いだ。大嫌いだ。
 努力しないくせに適当にうまく生きている奴が嫌いだ。野島もそうだ、夢に実力が見合ってないくせに、理想だけは高い、イライラする、そんな奴ら、大嫌いだ。




 陸は元々真面目な奴だった。俺もそうだけど、髪の色を変えるまでは俺達の見分けなんてほとんど誰もつかなくて、成績だって大体同じくらいで。
 普段は休日でも一緒にいることが多かったけど、たまたま陸がひとりで出かけた日にモデルにスカウトされて、そっから、何か変わった気がする。勉強もスポーツも、いつも以上に手を抜くようになったし、それでいいやって言うようになった。ちゃんとやれば俺よりいい成績とか取れるくせに。千鶴に出会ったのもその頃だ。同じ場所に立ってたのに、陸は勝手に一歩下がった。まるで、俺に場所を譲るかのように。それが気に食わない。陸がそんなことするから、俺はここにいなきゃいけない気がして、維持することばっか考えてる。

「水城」
「……んだよ」

 今日は部活も定休日だ。けど悶々とした気持ちを抱えてどうしようもなかった俺は汗臭い部室で一人でぼーっとしていた。
 いつもなら自主練でもしてる。そうでなきゃ帰って勉強するとか。でも今日は、ぼーっとしたままだ。
 俺の居場所を突き止めたのかたまたまなのかやって来たのはマネージャーの桜だった。いつも無愛想で、不機嫌そうな顔をしている。

「先生が探してた」
「誰」
「鳥尾先生」
「ふうん」

 俺は机に突っ伏す。
 桜は扉に寄りかかった。

「いないだろうなと思って屋上行ったら陸がいた」
「あいつはいつものことだろ」
「……怒ってる?」
「何に対して」
「昼間、野島と陸と言い争ってた」
「別に、それもいつものことだし」

 いつものことだ。
 俺がイライラしてんのも、俺が野島みたいに馬鹿みたいに理想ばかり語れないのも、陸みたいに手を抜いて満足できないのも、いつものこと。
 
「陸が言ってた」
「なんて」
「流風は理想すら語らない。今しか生きるつもりがない。今をどう生きるかで必死すぎて俺からすれば滑稽だって」
「…………」
「バスケにしたってどこかの一位になるわけでもない、勉強はできるけど学年一位ってわけでもない。中途半端だって」
「…………それを俺に報告するってことは、桜もそう思ってるってことだ」
「思ってる」

 桜は思ったことはしっかり言う奴だ。マネージャーとしても、ダメ出しを先輩相手にでもずばずばするから重宝される一方、同性からは距離を置かれているらしい。見た目の所為もあるだろう。不憫な奴だと俺はよく思っているけど、本人はそんなこと意に介さないらしい。

「水城がどうなりたくてどうしたいのか私にはわからない」
「それじゃあお前は」
「私は一生バスケしたい。だから野島がバスケ諦めない限りサポートする」
「殊勝だなあ」
「もちろん、水城もバスケちゃんとやるなら、同じようにサポートする」

 その言葉に、俺の心は動かない。
 だから中途半端って言われる。反論できないのは自覚しているからだ。
 俺はバスケを一生やるつもりはない。かといって学者を目指したいかというとそうでもない。なら俺は、どうしたいんだろう。
 一歩先の見えない俺を、陸は少し後ろから眺めて笑ってるんだろう。がむしゃらにひた走ろうとする野島は、一寸先がどうなっていようと関係ないんだろう。
 俺は足場がなきゃ何も出来ない。
 桜の言葉に俺は返事をすることなんてできないから、軽く頭を振ると顔を上げて桜と目を合わせた。

「で? 冬二センセイは何で呼んでんの?」
「大事な用事なんだって」
「何、大事な用って」
「そこまで聞かなかった」

 わざとらしくため息をついて立ち上がる。桜の横を通って部室を出るために扉に手を掛けたが、桜は部室から動く様子はないようだった。

「……お前さ、野島好きならもーちょい優しくしてやれよ」
「甘い。ああいうタイプは優しくするとつけ上がる」
「……ま、否定はしないけど」

 桜が少しだけ笑った。こいつ、野島の母親じゃあるまいしどうしてそういう表情するかな。
 そんな桜に俺は苦笑を返した。野島は何よりもこいつに苦労すりゃいいんだ。そう思いながら、職員室へと向かった。


2010.06.01(Tue) | パロディ | cm(0) | tb(0) |

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