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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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舞踏会前哨戦



 ――さっきから、

「ルミっちぃいいいい!! ひっさびさぁ! 超会いたかった! すっげー会いたかった!!!」

 ――眉間の皺が、

「ホント久しぶりだねー!! 冬服似合う!! あたしも漣に会いたかったよー!」

 ――消えない。




「ヤマト、落ち着け。いいから、マジで落ち着け」
「いや、冷静な方だろ俺。どう考えても冷静だろ。殴ってねえんだから」
「基準がおかしいからね、つーか俺が裾持ってなかったら殴りにいくだろお前」

 ここはうちの学校の駐車場。うちの校名入りのでっかいバスが一台、姉妹校のユリ高面子を乗せて戻ってきた。それが今日、12月23日。
 舞踏会は明日の24日、夜。当日に来たんじゃ楽しめないだろうということで、前日から乗り入れすることになった。舞踏会っつっても衣装はこっちで準備されてるし、一泊できればそれでいいわけだ。ちなみに宿舎は女子面子は扇谷邸、男子連中はうちで面倒見ることになった。全部で数十人、それが男女半々だからそれくらい泊めるスペースはある。
 今俺はコートの裾を流風に握られている。そんな俺の目の前では自分の彼女と、自称その従弟と言う男が、いちゃいちゃしてやがる後でこの男絶対殺す。

「いとこ同士なんてこんなもんだろ。ヤマトの霞ヶ浦くらい広い心なら許せるって」
「貶すならもっとタダイレクトな表現にしろよ流風」
「ちょっとは葉山を信用しろって。あいつ、こーゆーの絶対怒るタイプだろ」

 んなことは分かってる。そんなの重々承知だ。
 あいつの性格、どこまでも真っ直ぐなところも、わかってる。
 俺がイラつくのは葉山の性格じゃなくて、相手の! あの男の! 態度だっつってんだよ……!!
 仲のいいいとこ同士で、お互いに初恋の相手と公言し、今でもこの仲の良さだ。そりゃあ、葉山は、今俺と付き合ってんだから、どうこうなるなんて思っちゃいないが、目の前で自分以外の男といちゃいちゃされて気分いい男がいたら是非お話がしたいですねえ!

「……ヤマト、あのドレスもう見せたの?」
「……見せてねえよ、だから早いとこ引き離したいんだろ」
「だよなあ」

 明日の舞踏会のために、勝手にあいつのためにドレスを用意した。
 本当は当日見せようと思っていたのだが、俺も会場の様子見たりしなきゃいけないし、何かあっても嫌だから前日に見せようと思っていた。
 しかしこれからうちはユリ高の男子面子の宿舎になるわけで、空先生と安藤先生が引率してくれるとはいえ俺が不在というわけにもいかない。
 だから早いとこ驚かせてやりたいのだが、奴はバスから降りた途端あの調子だ。葉山がどうしてもバスまで迎えに行きたいというので一緒に来たが、こうなるのがわかってんだから来なきゃよかった。
 ちなみに流風は俺がドレス用意してんのも、もやもやしてんのも全部知ってる。その上でにやにやしてんだから俺が言うのもアレだが性格が悪い。

「あ、芹沢っ」

 従弟の男といちゃいちゃしていた俺の彼女は数か月ぶりに従弟と再会した喜びを顔いっぱいで表現してくれつつ、俺の方を向いて手招きする。
 それを見て流風が俺のコートの裾を放す。葉山に近づくと、葉山は満面の笑みで俺の腕をばしんと叩いた。

「これ、あたしの彼氏! 芹沢 大和ってゆーんだけど、よろしくね」

 ……そういうのを恥ずかしがらずに宣言してくださるところは、大変好みなんですが。
 相手の男はきょとんとした目で俺を見て、それからにっこり笑顔を見せた。

「ルミっちの彼氏っていうから、あっちの人かと思ってたんですけどこっちでしたか! ふーん、安心しました!」

 ……無論、あっちの人、と奴が視線を向けたのは流風だ。
 何の補足もなければ、安心しました、の意味も大幅に変わってくる。どういう意味だこのガキだ、という言葉をすんでのところで飲みこんで、

「悔しかったら背ぇ伸ばして出直せよ、葉山背ぇあるからな、バランス悪ぃぞ」

 とだけ言って葉山を引っ張ってその場を離脱した。
 慌てた声でついてくる葉山の声と、腹抱えて笑う流風、それと、さっきまでの俺のように騒いでる男がいた。
 るせェよ馬鹿、俺がどんだけこいつのこと好きだと思ってんだ、舐めんじゃねぇっての。




「もう、何よいきなりー。あんた漣と面識あったっけ?」
「ねえよそんなもん」
「なら何でよ。漣、明るいし可愛いし、いい子だよ? すぐ仲良くなれるって」
「……つーか、俺お前に話あるから、あいつの話題今から禁止」
「は!? 何、話って」

 葉山を引っ張って連れてきたのは、この時期舞踏会の衣装保管用に作られるプレハブ小屋。
 俺が注文したドレスもここで一緒に保管してもらっている。そのまま明日ロッカーに入れておいてもらう予定だ。

「あ、そうだ。あんた会場の飾りつけとか担当してるんでしょ? こんなとこで油売ってていいの?」
「よくねえよ、終わったらすぐ戻る」
「そっか。あんまり根詰めないでよ。あたしに手伝えることあったら手伝うから」

 流風じゃあるまいし、とは思うが、言わないでおく。揚げ足を取るようなシチュエーションではない。

「お前は明日一日俺の隣にいてくれれば、それでいい」
「そりゃあ一応彼氏持ちですからねー。いるよ、もちろん」
「じゃ、明日これ着て」

 俺が注文したものだけ、マネキンが着ている。
 そいつをずずいと目の前に出してやれば、一瞬葉山が息を呑んだ。

「あれ、支給のドレスってそんな豪華だったっけ」
「んなワケねえだろ。俺が作った。やる」
「は!? え、なに、マジで言ってんの? こんなの着れないよ? 似合わないしあんた笑い者だよ?」
「なんねえよ、似合うと思うから、お前に着てもらいたいんだ。……ダメなら作り直すが」
「作り直し!?」
「お前に作ったモンなんだから、お前が気に入るまで新しいの作る。明日までに何着でも作らせるぞ」

 ……まあ、実際はそんなことできるわけがないのだが。
 時間さえあればやるのだが、舞踏会はもう明日だ。作り直しができてもせいぜい一着だろう。
 それだけ気持ちを込めている。葉山に似合うと思って作っている。これを着て、俺の隣にいて欲しい。そういう俺の気持ちがわからないほど、こいつは馬鹿ではない。

「……もう、作り直しなんて勿体ないこと言わないでよね、ばか」

 諦めたように、呆れたように、葉山は笑った。

「こんな素敵なドレス、あたしには勿体ないわよ。着てもドレスが可哀想になっちゃうけど、それでもいいの?」
「なんねえよ。お前に似合うように作った。万が一にも人前に出られないほど似合わないってんなら、俺も明日は欠席する」
「ほんと、あんた馬鹿でしょ。やることは大金持ちのオッサンみたいなのに、考えてること小学生みたい」

 葉山がそっとドレスに触れる。
 値段なんかは関係ない。俺がある程度の金を自由に使える立場でなければ他の方法で表現する。今の俺は、これが一番だと思うからそうしている。馬鹿の一つ覚えと言われるのかもしれない。葉山に言われるのなら、俺はその言葉を褒め言葉と受け取ろうと思う。

「あ、でもあんた、他に女の子からお誘いあったりしないの? 女子バレー部の後輩ちゃんとか」
「彼女いんのにOK出すほど非常識じゃねえよ」
「あたし別に気にしないから踊りたいって子いるなら踊ってあげなよ。うちの舞踏会なんてキャンプファイヤーのダンスとおんなじじゃん」

 とまあこの反応だ。まるで立場が逆だろと思うのは気のせいなのだろうか。俺だって舞踏会の認識は葉山が考えてるのと大差ない。うちの舞踏会なんて、そんなもんだ。
 だからといって、このイベントがクリスマスイブの夜に行われることを考慮しないわけにはいかないだろう。ツキ高生にとって舞踏会は代々、そういうイベントなのだ。葉山は普通の女子だが、自分が家中にいるとあっけらかんとしすぎている。こんなことを考えている俺を見たら流風はまた爆笑するのだろうが。

「……そういうお前は。あの従弟」
「漣? まさか高校生にもなってあたし相手ってことはないでしょ。学校でも人気みたいだし、引く手数多じゃない? あたしと舞踏会で踊ろうなんて男はあんたくらいしかいないんだから、あんたが他の子と踊ってる間は大人しくおいしいごはん食べることにします」

 そしてこの認識だ。甘いだろ、甘すぎる。
 ごはんもデザートもおいしいんだよねー、などとこいつは呆けているが、正直今から気が気じゃない。あのふざけた従弟が、ちょっかいかけないわけねえだろうが。
 なんていうかもう全体的に危ない。俺の周辺にいる奴全体的に敵な気がしてきた。
 バスの前を離れてやっと消えた眉間の皺がまた戻ってくる。

「……芹沢、妬いてんの?」

 葉山が、俺の眉間に指をあててぐりぐりと回すように触れる。俺の目を覗き込むように背伸びをして、今度はいつものように屈託なく笑う。

「……別に。明日は俺の隣固定なんだから今日くらい好きにしてろよ」
「思ってもないですって顔で言わないでよねー」

 葉山の指が俺の眉間をさらにぐりぐりと回す。それから手を放すと、背伸びもやめてしっかり俺の目を見た。

「ドレスありがとう。ちょっと身の丈に合わないけど、でも嬉しい。……明日は一日、エスコートよろしくお願いします」

 そう言ってぺこりと頭を下げた。感謝されることは俺も素直に嬉しい。

「んなかしこまらなくても、俺が好きでやってんだから」
「そうかもしれないけど、あたしは同じだけのもの返せないから。だからちゃんと、ありがとう、受け取らせてもらいます、って言わないとあたしのものになんないもん。そうじゃなきゃ芹沢とあたしはずっと上と下の関係になっちゃうでしょ? 無理かもしれないけど、せっかく付き合ってるんだからできるだけ対等でいたいの。対等に意見言えないんじゃ喧嘩だってできないじゃない?」

 葉山の目は、いつも真っ直ぐだ。そんな風に考えてくれているとは思わなかった。
 金があってなんだってしてやれる立場だから、そりゃ俺は上に立っていることになるんだろう。束縛だってなんだって、しようと思えばいくらでもできる。けれどそれは対等な関係じゃない。支配関係は、対等なものじゃない。俺があげたものを、葉山は確かに受け取った。それは、後で何があっても俺のせいにしないためだ。身の丈に合わないだの似合わないだの男に貢がせてるだの、陰口を言われる可能性だってある。そこで、芹沢大和が勝手にやったことだから、葉山ルミの意思はそこにはないから、と逃げてしまうのなら、信頼関係なんてないに等しい。葉山はちゃんと今これを受け取って、明日はこのドレスを自分のものとして着る。その点に責任を負うのだという。それだってきっと、葉山からしたらキツい背伸びのようなものなのかもしれないけれど、今まで考えたこともなかったその選択肢を思いついた葉山を、とても愛しいと思う。

「……俺、お前のそういうとこ好きだわ」

 なので、俺も臆せず言うことにする。
 葉山がそうやって考えてくれるのは、俺と付き合っていくためなんだと思うから、俺も遠慮しないで思ったことはすぐ言おうと思う。

「それ、言うと思った」

 葉山は自信満々でそんなこと言いやがる。腕を軽く引き寄せてその額に軽く口付けると、火が出そうな勢いで葉山の顔が真っ赤に染まった。

「赤い顔じゃドレス映えねえからやめろよ」
「う、うるさあいっ」

 真っ赤な顔をした葉山は俺の胸をどんと叩くと慌ててプレハブを出て行った。その反応に満足して、俺もマネキンを元あった場所に戻すと、プレハブを出る。
 三年間通って初めてこのイベントを楽しみだと思った。自分が心底好きになって付き合った女は葉山が初めてだから、こんな性格してるくせに年相応な感情を抱いているらしい。
 自分の図々しさに嘆息しつつも悪い気はしない。取りあえず見せるものは見せたから、明日に向けて仕事をしなければ。

 ――明日が楽しみだ。

 足取りも心なしか、軽い。




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2012.12.21(Fri) | きづき/ゆらぎ | cm(0) | tb(0) |

ゆらぎ  4



 合唱部の発表が終って、クラスに戻って片づけに向けた仕事をしていると、クラスの男子が慌てて教室に戻ってきた。
 しどろもどろなので要領を得なかったけれど、「屋上で芹沢が」という言葉はわかったので、誰よりも早くあたしは屋上に向かった。なんとなく、わかっていた。そこで何が起きているのか。

「っ………」

 扉を開いた先はすごいことになっていた。五人の男子――全員うちのクラスだ――が折り重なるように倒れていて、もう少しも反応しないそいつらを、芹沢が殴り続けている。芹沢の右手からもぽたぽた血が滴って、いつか見た時のようにべろんと皮がめくれてしまっているのがわかった。こんな芹沢を、あたしは初めて見た。怖いとかなんだとか言われているけど、あたしにはいつでもちょっとやな奴で、でも優しかった。怖いなんてことは一度もなかったのに、その姿は本当に“怖い”としか言いようがなくて、不覚にもあたしは震えてしまっていた。血だらけのクラスメイト、血だらけの芹沢。どっちを見ても、怖かった。
 あたしがその光景を見てすぐに空先生と安藤先生が屋上にやって来た。二人は芹沢をすぐ取り押さえて、倒れたクラスメイトの安否を確認していた。倒れているクラスメイトたちの向こうに、倒れた空き缶があった。その中からこぼれていたものが、問題だった。空先生も安藤先生も顔を見合わせて苦い顔をしていた。
 芹沢はというと平然と先生に連れて行かれていた。これからのことなんてあんまり気にしてないみたいだった。
 そのクラスの男子は全員、あたしの発表会の時間にクラスの出し物をサボった奴らで、芹沢の行動といい、偶然とは思えなかった。喧嘩を売られたのかもしれないし、何かしらあったのだろうとは思うけれどそれが何かはあたしにはわからないし、何かあったとしても、それがどうしてあの行動につながったのかというのは、解せない。
 クラスの出し物の片づけを終えると、後夜祭までの数時間、空きができる。みんなそれぞれ友達と喋ったり、部活のメンバーに会いに行ったり、まあ後夜祭は参加自由だから帰るひともいる。あたしはもやもやした気持ちを抱えたまま、とぼとぼと階段を下りた。クラスの男子たちは一応救急車で運ばれた。表向きは喧嘩ということで処理したらしい。喫煙者が出たとなると問題だからだ。殴られた方の親も警察沙汰は御免だろうし、芹沢は金払う気満々だし。今までもきっとそうやってうやむやにしてきたのだろうと思う。文化祭で盛り上がった生徒がちょっとしたことで喧嘩になって、やりすぎた、というシナリオで処理したらしい。という話を、空先生からちらりと聞いた。あたしは一番最初に屋上に行って、現場を見てしまったから教えてくれたようだ。
 あいつらは救急車で病院に行ったけれど、芹沢がどうなったのかは知らない。気になるけどあまり聞き出せる話題ではなかったから。あの怪我だと、一緒に病院に行っただろう。後夜祭もあれじゃあ出られそうにないだろうし。水城、きっとすごく心配しながら怒るんだろうなあ。
 ゆっくり階段を降り切ったところで、図ったかのように携帯が震えた。みんな後夜祭に行くからか、下駄箱の近くには人の影は見当たらない。薄暗くて広い場所にひとりというのは、なんだか不気味だ。急いで画面を確認すると、それは、まさかの、芹沢からのメール。



『保健室で待ってる』




(……いた)

 芹沢がいた。電気もつけないで、沈みかけの夕日のオレンジ色だけが注ぐ暗い部屋の中でひとり、机の上に傷ついた右腕を伸ばしている。保健の先生は不在らしい。

「……せりざわ?」

 恐る恐る声を掛けて部屋に入ると、芹沢はこっちに視線を向けて、「おう」と言った。あまりにもそれがいつもどおりで、なんだかさみしくなる。
 芹沢の目の前に椅子を持ってきて腰かけて、次に何を言おうか考える。声をかけるのを、いちいち躊躇ってしまう。どれが普段の芹沢なのか、わからない。

「……消毒、してもらってないの? 先生は?」

 近くにあった椅子を引き寄せて、芹沢の目の前に座る。
 芹沢はため息交じりに、無事な左手でがしがしと頭を掻いた。

「救急車に着いて行った。消毒は自分でできるっつったらいい人払いになった」
「なんでできないこと言うわけ? ……やったことないから、下手でいいなら、あたしやったげるけど」

 芹沢の利き手は右だ。左で上手くやるのは難しいだろうと思う。スポーツやってるから多少やったことはあるかもしれないけど、それでも絶対誰かに手伝ってもらってただろうし。必要ないなら断ればいい話だ。

「……頼む」

 芹沢は珍しく小さい声で、そういう。

(……『待ってる』なんて、小間使いほしかっただけじゃない)

 そんなことも思うけど、それはそれで芹沢らしいとも思う。素直に人を頼れない人なのかもしれない。
 あたし自身は普段怪我なんてしないし、したとしても小さい擦り傷や切り傷くらいだから絆創膏で大概事足りてしまう。包帯なんて使ったことないし、うまくできるかわからないけれど、こんな怪我の芹沢を放置しておいておくなんてできない。
 脱脂綿を水で浸して傷口を拭いて、それから消毒をする。消毒液を染み込ませた脱脂綿が傷口に触れると、沁みるのか痛そうに芹沢が顔を歪める。自業自得だ。消毒した傷口はじくじくと泡になっていた。
 芹沢も、あたしも、しゃべらなかった。ただただ保健室は静かなばっかりで、校舎にいた生徒のほとんどは帰ったか体育館へ行ってしまったようで、この校舎でこの部屋だけが取り残されたみたい。
 待ってる、なんてメールが来たから、少しだけ期待してしまった。実際はこうして介抱する人がほしかっただけなのだろうけれど、この芹沢が一番にあたしを頼ってくれて、素直に嬉しいと思う。
 怖い気持ちも確かにある。あんな風に人をぼろぼろにできてしまう芹沢は、怖い。でも、傷ついたこの右手の持ち主が、雨の日にあたしにタオルを貸してくれて、傘に入れてくれて、夏祭りに椿の簪をくれて、大変だったうちのクラスの喫茶店を手伝ってくれて、あたしの合唱部の発表を聞きに来てくれた。
 あたしにはわかんないよ、芹沢。気が付いたらあんたでドキドキすることばっかりなんだもん。
 慣れない手つきで包帯を巻く。包帯の巻き方はやっぱり芹沢が詳しいから、ひとつふたつアドバイスを受けて、その通りにしたら、なんとか形になった。
 包帯を巻き終えた拳を何度か握ったり開いたりを繰り返して、芹沢も大丈夫そうだと判断したらしい。

「……さんきゅ、葉山。助かった」
「別にいいよ。お粗末様でした」

 ありがとうを言うなら、あたしの方だ。この手の傷を、あたしが全く関係ないとは言わせないんだから。
 手当に使った道具を片づけながら、「あたしの方こそ、ありがとう」と呟く。恥ずかしくて、顔を見ることはできなかった。

「あ? なんで」
「合唱部、聞きに来てくれたでしょ。……だから、ありがと」

 芹沢が、いつからいてくれたのかはわからないけれど、芹沢はちゃんと来てくれた。
 本当はすこし悔いが残る。それを口にしたら、泣いてしまいそうだった。

「……綺麗に丸くおさめようとしてんじゃねえよ。俺はあんなんじゃ全然納得できねえし」
「っ、でも、最後歌えたし、芹沢にも一曲だけだけど聞いてもらえたし、満足だよ」
「嘘つくな」
「嘘じゃないよ!!」

 嘘じゃない。一曲だけでも舞台に立てた、って本当に救われた気持ちだった。息上がっちゃって、とても聞かせられるような代物じゃなかったけれど、頑張ってきた証を最後に少しだけでも出せて本当に本当によかった。芹沢がそれを聞いてくれていたのなら、もっと嬉しい。
 開演時間なのに教室から出られなくて、あの時間ずっと泣きそうだった。あたしが手を伸ばしたことだから頑張らなきゃ、って、そうして蓋をした。
 泣いて叫んでどうにかなるなら時間を戻してほしい。でもそれはできないことでしょう? 芹沢がいくらお金持ちだからってそれはできない。だから自分の心と折り合いをつけるしかない。
 自分に言い聞かせるように頭の中で何度もそう念じて、ぎゅっと目を閉じると、目じりから涙が染み出すのがわかった。悔しいけど、悲しいけど、でも、一曲だけでも歌えたんだから。そのたった一曲をあんたが聞いてくれたんだからそれでいいって言ってんじゃん馬鹿。ほんっと馬鹿!!
 あたしが泣いてるのがわかったのか、芹沢の空気がなんとなくおろおろし始めて、それがわかったらあたしも余計にとまらなくなって、声を噛み殺している間にぼろぼろと涙が零れるようになってしまっていた。こんなはずじゃなかったのに、正直すごく恥ずかしい。

「わ、悪い、泣かすつもりはなかった」
「わ、かってるよ、あたしも、ごめん」
「……流風に憧れるのは結構だが、なんでも抱え込むとこまで真似すんなよな」

 芹沢が、少し照れたようにそう言いながら、怪我をした右手であたしの左手を握る。包帯のざらざらした感触がわかる。そのまま手を離されて、包帯で拭うように目元に触れられた。一瞬驚いたけれど、目を開けるとすぐ傍で芹沢が笑っていた。

「……葉山が好きだ」
「……うん」

 その台詞はあまりに自然で、なんかもう、ドキドキすることも忘れていた。あんまり自然にそう言うから、涙交じりに笑うことしかできなかった。
 その言葉を期待してここに来たくせに。

「だから、流風連れてかなかった、悪い」
「……いいよ、水城にも聞いてほしかったけど、元々はあんた誘うためだったし」
「は!?」
「何かと流風流風って言うから、水城一緒じゃないと来てくれないのかと思って」

 芹沢は聞かれてもいないのに何だかんだとやたら水城を引き合いに出す。
 親友だからなんだろうとは思っていたし、文化祭ひとりで行動する人とも思えなかったから、水城とセットで誘えば来てくれると思ってた。
 実際はひとりで来てくれたんだからそれだけで十分嬉しかったんだけど。

「………あいつら殴ってくれてありがと。ちょっとスカッとした」
「腹立ったらセーブ効かなかった。迷惑かけたな」
「別に。あたしはちょっと話聞かれただけだし、あたしに関係してるなんて誰も思ってないよ」
「ならよかった」

 なんか告白しましたされましたとは縁遠い雰囲気になっちゃったけど、なんとなく分かってたしこれでいいのかも。
 あたしの頬に触れていた手を離して、芹沢は立ち上がる。

「帰ってちゃんと病院で診てもらいなよ」
「は? 何言ってんだ、これから体育館だろ」

 芹沢は、何を当然のことを、とでも言いたげに目を丸くしていた。驚きたいのはこっちだ。ていうかこの馬鹿何言ってんだろう。

「そんな怪我で出るの!? 後夜祭に!?」
「お前の憧れの王子様がこんな理由で出場辞退なんて、怒り狂うの目に見えてんだろうが」
「そりゃそうだけど、でも手動かせないでしょ?」
「十分程度ならいけんだろ。部活も引退してるし――っと」

 保健室の扉の前で、芹沢の携帯が鳴った。左手で難なく通話を始めると、漏れて聞こえる通話の相手はどうやら水城のようだった。遅いから急かしにきたのかも。

「あー悪ぃ悪ぃ、今行く。つーか伊賀奇平気かよ?」
『本番前にヘバるなんて許さねえっつーの、俺が。で? ヤマトお前怪我へーきなの?』
「何、バレてんの? 怪我は平気。今可愛い彼女に手当してもらったとこなんで」
『どさくさに紛れて惚気てんじゃねえよ。なんだ、じゃあ葉山もそこにいるんだ?』
「いるよ、もちろん」

 近くに立っていたから、会話がほとんど聞こえた。なんかもう全部バレてるんだと思うと今更ものすごくはずかしい。死にたい。
 真っ赤になった顔にぱたぱたと手で風を送っていると、芹沢があたしに携帯を差し出した。替われということらしい。
 恐る恐る携帯に耳を近づける。

『おめでとう、ヤマトの彼女サン?』
「ちゃ、茶化すのやめてよ水城っ」
『なんで。いーじゃん、俺ヤマトのことめっちゃ応援してたし。似合いだと思うし、何よりあのヤマトがベタ惚れだからなあ』
「は、はずかしいからそういうこと言わないでー!!」
『なるほど、これがリア充爆発しろ、って奴か。……それはそうとさ、葉山』

 水城の声色が変わった。ちょっと真剣そう。

『俺たちと後夜祭出ないか? 伊賀奇とツインボーカルで』
「……へ? え、あ、あたしが!? 無理! 無理無理ぜったい無理!!」
『実行委員には俺とヤマトと生徒会長サマでごり押ししてメンバー追加認めさせるし、曲も葉山も知ってるメジャーなのしかやらないからさ。ハモれとか言ってるわけじゃないから、やろうよ一緒に』

 慌てて芹沢の顔を見ると、流風と空先生が言い出したんだ、と呟いていた。
 戸惑って、でも嬉しくて、涙が出そう。

『よし、決まりな。せんせーも本番前の合わせくらいは一緒にやってくれるって言うから。早く音楽室来いよ』

 それだけ言って電話は切れた。電話を芹沢に返す。

「流風も空先生もやたらお前のこと気にしてたからな。あいつらの厚意と思って受け取れよ」
「で、でも、芹沢に、伊賀奇に、水城に、空先生に、ケレス先生って、壮大な五人組なんだけど……。あたしが中に入ったら大変な顰蹙じゃないかなあ……」
「あ? お前に文句なんか言わせるわけねぇだろ、俺がいんだから」

 芹沢がにっと笑って、左手であたしの肩を押す。芹沢の言葉は、聞いていて安心する。嘘じゃないってわかる。
 嬉しいやら恥ずかしいやらわけがわかんなくなってるけど、芹沢も水城も、あたしのことたくさん心配してくれてるんだ。それは本当に本当に嬉しい。

「うっし、じゃあ歌姫様の凱旋と参りますか!」
「やめてよねそういう恥ずかしいこと言うの」

 保健室を出る。数十分前ここに来た時とは、随分空気が変わったように感じる。
 胸のドキドキがまだおさまらない。タイミング逃して言えなかった、あたしも好き、って言葉が言えるのは一体いつになるだろう。



2012.12.13(Thu) | きづき/ゆらぎ | cm(0) | tb(0) |

有能な相棒

休みの日に、録画してた黒バスアニメをちょっとずつ見てます。突っ込みどころありすぎて大量に摂取すると体に悪いのでwwwあれ見てると相棒とかコンビ書きたくなります。
妹は主人公総受けが好物らしい。今んとこ私は全体的にどうでもいい。
ただ謝罪したいのは、青火意味わからんとかいってごめんなさい。私多分青火みたいな関係ってすごく好きです。
緑間と高尾は飽和してるのでwww でも高尾かっこいいwww
流風と慎吾の組み合わせはなんか違う気がする。慎吾から流風への気持ちは憧れだけど、流風は慎吾に対して嫉妬と恐ればっかり抱いてる。流風の性格がいけないんだけどな……。


だからちょっと慎吾の相棒を考えてる。流風に慎吾がいたように、慎吾も全幅の信頼を寄せるパートナーがいたっていいと思う。ちょっと恋愛要素入れたくて、流風だけ反転の世界で考えてます。反転流風と千咲さんのボイスは最近もう沢城で固定になってきた。ミラ様っていうか葉風っていうか。反転流風は葉風ちゃんイメージです。


朝岡 譲(あさおか ゆずる)
本当は字面的に護(まもる)にしたかったんだけど、名前を上2文字で呼ばせたくて、「まも」だとどうしても某宮野を思い出すので変更。女の子みたいだけど、バスケ部主要メンバーからは「ゆず」って呼ばれてるといい。
身長180、慎吾よりちょい低いくらい。大差はない。目つき悪い。いつもにらんでるみたいに見える。
成績はそこそこ、慎吾がああいう奴なので真っ当にバスケ部のブレーンやってんのはこいつ。だから実は苦労人。
何か話を書くなら、反転流風と付き合っててほしい。


慎吾はモロに流風目当てでツキ高に入って、猛アタックで一緒に練習とかするようになってる。
譲は中学時代バスケ部だったけどそこまでマジでバスケするつもりはなくて、普通に勉強でツキ高入った。流風のことは「そーいや中学の頃有名なのがどっかにいるって言ってたな」くらいで、興味もなんもない。
惰性でバスケ部入って、体格同じくらいの慎吾とよく組んでて、性格上中学の頃も自分がメインになるっていうよりサポートに回ることが多くて、相手の本質を見抜くのが早いといい。慎吾は天才なんだな、ってすぐわかる。反対に流風は確かにすごいけど、慎吾とは違うってわかる。
慎吾は流風のこと好きなくせにバスケできるだけで幸せで別に何にも動いたりすることはなくて、ただの気まぐれで流風に「彼氏いないんスか? いないんなら俺りっこーほしようかなーと思って」とか言ったらとんとん拍子で付き合うことになっちゃったりして気まずい可哀想。まあ慎吾には隠すんだろうが。
別に流風のことは嫌いじゃない。自分と似た者同士で、慎吾を羨ましく思ってるところは共感できるし、顔は可愛いからな。
しかし反転流風はケレス先生がガチで好き(無自覚)というのが個人的オフィシャル。相棒に対しても流風に対してもいろんなもの相手に気まずくてやってらんないゆずが可哀想でおいしいです。
たまに反転流風書きたくなるんだよなあ。


超絶どうでもいいんですけど、金持ちのボンボンだったくせにいろんな不幸がめぐりめぐって降りかかったアルヴィンが同棲してたプレザさんってどれくらい女神なのか情報が少なすぎてわからん。
いやぼっちゃんだから甘えたなんだろうなとは思うんだけど現在の性格からの逆算ができない。
というのをTOX2見ながら思いました。すばらしいブラコンゲーだと思います。
アルヴィンは前作衣装が基本です。ガイアスさんはカラバリの初号機カラー&三角帽子を常にお召しになっています。
ルドガーさん可愛いよルドガーさん。

2012.12.07(Fri) | 設定 | cm(0) | tb(0) |

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