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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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尻切れトンボ


 目を開くと、どこかの家庭の食卓の風景が見えた。四人掛けのテーブル、きれいに整えられたランチョンマット、中央には牛乳のパックが一本。四枚のマットのうち三枚にはそれぞれ盛り付けられたサラダと、スクランブルエッグにウインナーが二本ずつ。こんがり焼けたトーストが二枚。シンプルな洋風の朝食。よく見慣れた風景。俺はこんな朝食を、よく知っている。俺がよく知る部屋よりずいぶん手狭だが、それでもこの空気は、馴染みのあるものだった。

『朝ごはんできたわよー』

 台所から少し大きめの声で誰かを呼ぶ女。この声も、ガキの頃から嫌というほど聞いてきた。後姿はまだ若々しく、長くて艶のある黒髪をひとつに束ねている。赤いエプロン、いつもしてるのと同じやつだ。振り返った女の両目は青く透き通っている。この女は、間違いなく、俺を産み育てた母親だ。間違いなく、母さんの姿。
 どうやらこの部屋はアパートらしく、隣の部屋からどたどたと騒がしい足音が聞こえてきた。複数。少なくとも二人。スクリーンが、リビングにやってくる人影を映し出す。

『ごめん母さん、手伝えなくて』
『朝早いんだから、ゆっくり休んでおけばいいのに』
『そういうわけにいかないだろ。母さんだって早く起きて俺たちの弁当まで作ってるんだし』

 俺のよく知る制服。俺も着ていた制服。その制服を纏って、俺の母さんを母さんと呼ぶ、長身の男。聞いたことのある声。聞きなれた声。
 でも、なぜ、どうして、こいつがここにいて、母さんを母と呼ぶのか。

『気持ちだけで十分よ。炎而が頑張ってくれるから生活できるんだもの』
『よせよ。雀の涙みたいなもんなんだから』
『それを馬鹿にすると罰が当たるのよ』

 それはどう見ても、幸せそうな親子の姿。楽しそうに笑う母と、その子供。けれどあれは俺じゃない。俺ではない。あいつがここにいるわけないじゃないか、だってあいつの実家は京都で、こっちに下宿はしていたけどそれもうちじゃない。だから、あいつが母さんとこんな風に生活してるなんて有り得ない。どう考えたって有り得ないだろ!?

『あー!! お兄ちゃんまたひとりで株上げようとして!』
『そんなんじゃないし。みのり、リボン曲がってる』
『そうやって世話焼きのいい兄貴演じるし!』
『焼かれる方に原因があると思うけど?』

 あとからやってきた、中学の制服をきた女、それはどう見ても俺の妹、みのりだ。ショートカットの黒髪に、左目だけがアイスブルーの色を湛えている。あいつは俺の妹なのに、どうして、ここでは炎而を兄と呼ぶのか。

『おはよう、みのり。早くご飯食べちゃいなさい』
『おはようお母さんっ、言われなくともぱぱっといただきます!』

 みのりと、母さんと、そして炎而がそれぞれ食卓に着く。四人掛けのテーブルの一角は、まだ無人のままだ。

『あたしだって高校入ったらちゃんとバイトして、お母さんにお金渡すんだもん! お兄ちゃんにできるんだからあたしにもできる!』
『そんなの無理にしてくれなくていいから、やりたいことやりなさいよ』
『いいの! あたしとお兄ちゃんで頑張ってお金稼いで、お父さんとお母さんに結婚式してもらうの! お母さんのウェディングドレス姿、絶対綺麗だよ! ね、お兄ちゃん』
『そうだなー、どんくらいかかるんだろう』
『あんたたちそんなこと考えてくれなくていいってば』

 親孝行な兄妹に、嬉しそうな母さん。俺の記憶では母さんはもう結婚式は済ませているはずだし、写真だって覚えている。確かに若い頃の母さんが着飾った姿は、見れなくもなかった。
 ならここにいる母さんは、一体何者なんだ。
 その直後、玄関の鍵が外からがちゃりと開き、扉が開いた。

『朝っぱらから随分楽しそうじゃねェか』
『お父さん! おかえりー! 今ね、お父さんとお母さんに結婚式してほしいねって話してたの。お母さんのドレス姿見たいねって』
『着なくても十分すぎるくらいだけどな』
『お父さんには勿体ないよねー』
『一言余計なんだよお前は。どこで覚えやがった』

 みのりといつもと同じように話すそいつは、どう見たって俺の父親の桜井拓海で、口ではそう言いつつも嬉しそうにぐしゃぐしゃとみのりの頭を撫でる。
 この時間に帰ってくるなんて、夜勤明けじゃないな。第一作業着姿だ。こいつは、何の仕事をして、この時間に帰ってくるのか。
 立ち上がって父さんの上着を受け取りながら、お疲れ様、と母さんが父さんを労う。

『帰り早くなるなら連絡くれれば朝ごはん用意したのに。今作るから待ってて』
『いや悪かった。思ったより道路が混んでなかったんでな、急いで帰ればこいつらの顔くらい見れるかと思って』
『ほんと、親馬鹿なんだから』

 母さんも、嬉しそうに笑う。父さんが言う、こいつら、という集合に、俺はおそらく入ってはいまい。
 さっきみのりの頭を撫でたから、次に父さんは炎而に近づいて、みのりと同じようにぐしゃぐしゃに頭を撫でる。炎而は身を捩って嫌がって、しかし最後が照れたような表情を見せると、

『おかえり父さん、お疲れ』

 そう、言うのだった。






「混乱なさってますわね」

 声を掛けられて振り向くと、そこにはテーブルでティーカップに口をつける椿の姿があった。俺の目の前で起きていることは、俺が何を言っても向こうには響かない。スクリーンで上映されているようなものだ。ここが現実でなく、夢のような世界だということは何となく察しがついている。夢に椿が出てくるなんて運悪すぎるだろ、俺。
 いつの間にかこの部屋は赤い絨毯が敷かれており、空間の真ん中にテーブルと向かい合わせで椅子が一脚ずつ。カップから口を離すと、椿はこちらを見て軽く会釈をした。

「お掛けになってはいかがです? ええと、……お名前は何と仰いましたかしら」
「は? 何言ってんだお前」
「そう言われましても、何十回と出てくるみのりさんや樹理さんと違って、貴方は一度しかお目にかかったことがありませんから」

 俺の名前がわからない、という椿は全く悪びれる様子がない。こうなるといよいよ意味がわからなくなってくる。俺は知っているのに、お前は知らないなんてことがどうして起こり得るんだ。
 仕方なくため息交じりに椅子に腰かけ、「真紘だ、桜井真紘」と伝えた。

「では、真紘様。真紘様は可笑しくて仕方ないと考えておいででしょうが、私に言わせていただければこちらの方が余程正常です」
「は? 正常って、これがか? 炎而がうちにいて、俺がいなくて、炎而がみのりの兄貴やってるこの映像が?」
「ええ。嫌と言うほど見ましたもの。まあこれは珍しい部類に入ると思いますけれど。みのりさんも炎而様も揃ってここまで成長なさっていることは珍しいですから」
「……お前が何言ってんのかさっぱりだ」

 目の前でこうも訳のわからんことを言われると、いろいろ通り越して苛立ってくるのは間違いではないだろう。
 椿は俺の言葉に苦笑すると、軽くまた頭を下げて、「申し訳ありません」と謝った。謝罪がほしかったわけではないのだが。
 こいつは俺の知ってる椿じゃない。俺の知ってる椿は俺のことを様付けでは呼んでいないし(ずっと昔はそう呼ばれていたが)、まず俺の名前を知らないというところからもうさっぱり分からない。

「お前、俺の知ってる椿じゃねえな。なんなんだお前」
「貴方とは出会わない、芹沢 椿ですわ」
「なんだそりゃ。病院行った方がいいぞ」
「特別扱いは言うことが乱暴ですわね」
「は? 何が特別だって?」

 椿は慣れた手つきでポットからお茶を注ぐ。椿といえば俺と一緒で茶を淹れただけでカップにヘドロが生じるという天才的な腕の持ち主だが、どうやら夢の中ではそんな心配は要らないらしい。
 カップの中から紅茶のいい香りが漂って、遠慮せずに俺はカップを手に取った。

「まずここはどこなんだ。わけがわからん」
「ここに貴方がいるのは不思議ですけれど、……おそらく、二の次にされたのでしょう」
「二の次? 誰に」
「それはもちろん、」

 椿はスクリーンに視線を移す。薄々感づいてはいたが、俺も同じようにスクリーンを見る。
 そこには楽しそうに食卓を囲む家族の姿。椿の視線は、父さんに注がれている。

「桜井拓海様にですわ」

 何故、どうして。そんなのはもう言い過ぎたので椿もわかっているだろう。おとなしく説明を待つことにする。
 カシャン、と何かが割れるような音がした。見ればスクリーンの画面が切り替わって、どこか大通りの映像になった。そこに映し出されていたのは、青信号の横断歩道に突っ込むワゴン車と、何の落ち度もなく横断歩道を歩いている小学生くらいの子供。見事に衝突して、子供が何メートルも弾き飛ばされた。ワゴン車はそのままのスピードで走り去り、しばらくして、子供に男が駆け寄った。子供の名前を何度も何度も叫びながら、血だまりの中に膝を突く。見たこともないほど慟哭するその男はやはり、父さんで、即死であったろう子供は、よく見れば炎而の顔によく似ていた。さっきは、普通にメシ食ってたのに。つーかさっきは高校の制服着てただろ。

「……なんだよ、これ」
「桜井様は、あの子供を助けるためだけに何度も何度も何年もの時間をやり直しています。あの方にとって、炎而という子供が無事幸せに成長することだけが生きる目的なんです」
「……は? え、ちょっと待てよ、何で父さんが、炎而なんだよ。おかしいだろ」
「先ほども申し上げましたが、私にしてみれば貴方の存在の方が不思議です。桜井様がいつも幸せを願っていたのは、炎而という子供、そして結婚なさった場合は紗央様と娘として生まれたみのりさん。紗央様とご結婚されても、みのりさんが生まれても、どの世界でも桜井様は炎而という名の子供のことを考えていらっしゃいました」

 椿は俺に、事の顛末を話してくれた。この世界では話し相手もおらず暇なのだそうだ。
 桜井拓海は元々芹沢家の跡継ぎ息子、これは変わらない。父さんは窮屈さに我慢ができず、家を飛び出して桜井家に籍を移す。桜井家も名家ではあるが、名家での暮らしなんか飽き飽きしている父さんは奔放な生活をし、金が尽きると子供の誘拐を企てる。その標的になったのが京都のでっかい屋敷で暮らしていた、都筑家の跡取りの炎而だった。普通なら身代金払ってでも取り返すんだろうが、炎而は運が悪かった。その世界では炎而の父親は既に他界、炎而に家を継がせたくない奴らがこの事件をないことにした。つまり、跡取り息子の存在自体がないことになった。炎而は五歳だかそこらで実家に捨てられたわけだ。父さんは間違っても子供好きな性格ではない。金が手に入らないとなった時、やはり一度は炎而を山奥に捨てている。家に連絡しろと小銭を持たせ、公衆電話に置き去りにした。幼い炎而は実家に電話を掛けるが、そこではもう炎而はいないことになっている。途方に暮れて、それでも炎而はひとりで下山する。ガキの足で、長い時間をかけて、それでも泣き言ひとつ言わずに、ひとりで。
 父さんが炎而を見つけたのは、置き去りにしてから数時間後、麓でのんきにメシを食っている時だった。相当な山奥に置いてきたのに、子供がひとりで下山してくるなんて。さすがに責任を感じて炎而を保護して、都筑家に連絡を入れてみるものの、対応はやはり同じだった。
 父さんは仕方なしに炎而を引き取った。しばらくはただ一緒に生活していただけだったが、幼い炎而の記憶から実家や本当の両親が薄れていき、代わりに父さんが父親として刷り込まれた。それと同じ頃に、父さんも炎而の父親として生きていこうと決めたようで、ちゃんと炎而の戸籍を桜井に入れて、学校にも通わせるようになった。仕事もしっかり始めて、裕福とは縁遠かったけれど、父親として頑張って、どうにか炎而を真っ当に幸せにしてやろうと必死だったらしい。そのどこにも、俺は出てこない。桜井拓海にとって、息子は炎而ただ一人ということなのか。

「狭いアパートで、体格の大きなお二人が楽しそうに暮らしていらして、確かに外見も中身も似てはいませんでしたけれど、とても素敵な父子だと思っておりました」

 懐かしそうに、椿は目を伏せながらそう言う。
 父さんが何度も時間をやり直しているなんて、ファンタジーが過ぎる。けれど夢の中ならそんな戯言も悪くない。目が覚める様子もなし、話に乗っかってみることにした。

「そんな幸せそうな父子で、炎而が真っ当に幸せになったんなら父さんがこんなボランティアするわけないだろ。何があった」
「炎而様は、高校三年の時に家に入った強盗に殺されました。会ったこともない、母親と教えられた紗央様のお写真を守って。……どうしてこんないい子がこんな目に遭って死ななければならないのかと、どうしたらこの子を幸せに生かしてやれるのかと、どうして自分が守ってやれなかったのかと、それだけを考えてあの方が選択したのが、この繰り返しです。いつ終わるともしれない、ゴールがどこなのかどういうものなのかさえ誰もわからない、時間との追いかけっこ」
「繰り返しって、どこから」
「どこからでも。あの方は死神だか悪魔だかと契約を交わして、自分の寿命と引き換えに炎而という子供を救う道を選びました。彼が幸せになるためならなんでもしました。本当は一緒に暮らしたいけれど、それで彼が不幸になるのならと都筑の家から離さずに都筑炎而として幸せに育ってくれるならと、そこに至るまででも何年分をやり直したのか。けれど、どうやっても助からない。一緒にいても、離れても、遠くない未来に死んでしまう」

 それがもし本当なのだとしたら、父さんの頭の中には一体何年分の記憶と、何回分の炎而の死が記録されているのだろう。椿があまりにも沈痛な面持ちで言うものだから、なんとなく、感情移入してしまう。

「……でも、俺の知ってる炎而は、都筑炎而は、ちゃんと高校を出て、大学を出て、家を継いで、婚約をしてる。お前とだ、お前と同じ顔、同じ名前の芹沢 椿と」
「……だから貴方の生きる世界は不思議だと言っているでしょう。貴方のいる世界だから、そこは奇跡みたいなものに、私には思えます」
「俺がいるから?」

 今度は椿は悲しそうに笑った。目の前の椿は、俺の知る椿よりも随分大人びて見える。外見は高校生の頃のようだが、どうもずっとしっかりしているらしい。
 俺のよく知る芹沢 椿は、大人になろうと背伸びはしていたけれど、結局どこにも届いていなかった。お嬢様特有の思慮の浅さもあった。同じ外見でも中身が違うとこんなにも雰囲気が変わるものなのか。

「私は桜井様が繰り返した世界をずっと眺めておりました。あの方は本当にいろんな選択肢でのやり直しをされて、その結果、ほぼすべての世界でみのりさんは生まれるということが分かっています。桜井様と紗央様との子供ではなくとも、紗央様がご結婚されると、そこに生まれる最初の子供は必ず娘で、紗央様はみのりと名付けます。みのりさんは、桜井の娘ではなく紗央様の娘と考えた方が正しいでしょう。そして、桜井にみのりさんが生まれた場合、炎而様は必ず兄となる。幸せな生活ばかりではありませんでしたが、ずっと見ていた私にとっては、みのりさんの兄は炎而様、というのが普通の感覚です」
「こんな、どっからどー見てもあの二人の子供っつー俺が生まれないと。めでたい話だな」
「貴方が存在する世界は、貴方が知っている世界それひとつだけです。貴方の存在はこの流れの中で本当にイレギュラーで、だからこそ奇跡に等しい」

 樹理も、椿も、みのりも、父さんがやり直したどの世界でも、どんな形であれ存在する。存在しないのは俺だけで、俺の代わりにそこにいたのは炎而だということ。
 俺は一度しか存在しない。その一度を、父さんがどう思ったのか。

「最後の方は、炎而様を生かすために炎而様とは何年も、そして何回分も会わない生活を続けていらっしゃいました。顔も見れないのに、抱きしめることもできないのに、どうしてこんな苦痛を何度も繰り返さなければならないのかと絶望しかけていた時に生まれたのが貴方のようです。みのりさんが生まれるシナリオは何度も繰り返しました。ですから、桜井様の驚きと喜びは計り知れないものでした。どう見ても自分と紗央様の子供、しかも男の子。桜井様は炎而様を育てるように貴方と接し、貴方を愛し、それでも炎而様を忘れることはなかった。貴方が存在しただけで、桜井様の希望になった。貴方が二十歳の誕生日を迎えたとき、桜井様は遠回しにこう仰ったでしょう、『存在している以上に確かなことなんてない』と」

 それは、二十歳の誕生日に煙草を吸っていた時に、遠回しに言われた言葉だ。あの時は理解できなかったけれど、今なら何となく理解できる。
 父さんにとっては、俺が生まれることのできる可能性そのものが希望。だからこそ俺は二の次にされたというのか。俺はいつか生まれる可能性を確認されただけ十分だと。それより前に、炎而が生きることができる世界を確定させてやるのが先だと。
 それならば、目の前の椿は一体誰なんだ。いつも存在するのなら、いつも炎而と出会う可能性があるはずだ。炎而のことを、炎而様、と呼ぶ椿。俺の知る椿よりいくらか大人びているその声。

「……お前は、どこの、椿なんだ」

 俺の問いかけに、椿は微笑んだ。とても悲しそうで、今にも消えそうな笑い方だった。

「私も、ある意味では奇跡です。奇跡の落とし物」
「……お前は、俺の知ってる椿じゃない」
「わかっています。私は、一番最初の世界の炎而様が、命を奪われることなく生き続ける世界の椿です」

 一番最初の世界。
 椿が話した、父さんが時間の繰り返しを決意した世界。
 その炎而が助からないから父さんは繰り返し炎而を助けようとしているのに、助かる世界があるなんて、それは、なんて残酷な話なんだろう。

「炎而様は瀕死の重傷を負いますが、奇跡的に一命を取り留めます。桜井様が最初に望んだ未来そのものが、私のいた世界です」
「それならなんでお前はここにいる。炎而が助かったのならそれで話は終わるだろ」
「炎而様は助かります。この世界にたどり着けば、確かに桜井様にもいいお話なのだろうと思います。……けれど、」

 俺は想像した。けれど、で始まる世界の話。父さんには幸せでも、椿には幸せでない未来。椿が、こうして数多の世界を眺めていなければならない世界。
 椿の声。俺の知っている椿以上に、炎而を慕ってやまないのがわかる。炎而が幾度も命を奪われるところを眺めることしかできず、そして、父さんにとってのハッピーエンドも、きっとこいつにとってはどうしようもないバッドエンドなのだろう。
 そんなの、考えられる可能性は限られてくる。

「お前、あいつと付き合ってたのか」
「……私は、お慕いしておりました。炎而様とも、親しくさせて頂いておりました」

 気が付くとさっきのスクリーンは切り替わって、一番最初に見た世界のものになっていた。炎而が登校しているシーン。学校の近くで待ち合わせをしているらしく、角にひとりで突っ立っている。しばらくしてやってきたのが、椿だった。なんてことない会話をしながら登校する二人の姿は、俺が知っているこいつらと何ら変わりない。

「生きてんなら、俺の知ってる炎而と変わらないだろ。なんで、」
「変わります」

 椿はそう言い切る。真っ直ぐ俺を射抜く黒い瞳が、怒りとも悲しみともとれない感情を見せる。
 
「一命を取り留めなければ、彼は自分が桜井様の子供でないことを知ることはありませんでした。彼は自分の出自を知りますが、都筑に戻る術もなければ、彼自身にその意思もありません。自分の生まれがどんなものだったとしても、自分の父親は桜井拓海しかいないのだと言い切ります」
「そりゃ言いそうだし、言うだろうな」

 真っ直ぐで真面目な炎而ならそう言うだろう。十年以上親子として暮らしたのなら、今さらどこへ行くわけにもいかないだろうとも思うが。

「けど、父さんは炎而に真っ当に幸せになってほしいんだろ」
「真っ当な幸せというものに明確な基準は存在しません。ただ桜井様は、炎而様が理不尽に命を奪われることに納得がいかないだけで、その後の幸せについては炎而様自身が幸せと思える道を歩ければ良いと考えていたようです」
「……なら、炎而がお前を選ばなかったということか」
「そうです」

 スクリーンがまた別の映像を映し出す。そこに映るのは、俺のよく知る世界。現在の炎而と椿だ。なんかいろいろあったようだが婚約をして、結婚式も目前。高校時代から知っているやつのことだから俺もそれなりに嬉しいし、何より水希の兄貴――俺の義理の兄になるからっていうのもある。椿は椿でガキの時から知ってる親戚なわけだし。……まあ、俺の目の前にいる椿は、俺といとこ同士に当たるなんてこともどうだっていいんだろうし、知りもしないだろう。

「……彼は、お優しい方ですから。家に見放された、血も繋がらない子供を、戸籍の面倒も何もかも見て本当の子供としてこれまで育ててきてくれた桜井様を見放す、というか、離れて暮らすことはまるで考えられなかったのでしょう。私には家がありますから、そこも考えてくださったのだと思います。桜井様はそんなことは望んでいないと反対したようですが、これだけは彼自身が譲らなかった」
「一生、あいつは父さんとふたりでいるってのか」
「彼は、高校を出てすぐ就職をして、職場で出会った女性と結婚します。お子さんも生まれて、もちろん桜井様と同居をなさいます。それを真っ当な幸せと呼ぶことには、誰も反論しないでしょう」

 それは、この椿には辛い現実だったのだろう。炎而と別れて、きっとこいつは家のため他の誰かと結婚する。炎而も炎而で、家庭を築いていく。一生独身でいてくれたのなら椿もいくらか救われたかもしれないが、それは叶わなかった。それどころか、父さんにとっては椿のその後はどうだっていい話で、相手が誰であろうが炎而が結婚して家庭を持ってくれたということだけを見て満足したのだろう。

「……貴方の世界に生きる私が羨ましい。炎而様に出会って、自分でもわからないうちに恋をして、炎而様に手を引かれて、結婚の約束をして。炎而様から心から愛の言葉を頂けて。貴方の世界の炎而様が、そこに生きる私を本当に大事にしてくれるのを見て、泣きたいほどに胸が痛みました。私だって同じ芹沢 椿なのに、どうして同じように私のことは愛してくださらなかったのかと。わかっています、貴方の世界にいるのは都筑炎而で、私がお慕いしていたのは桜井炎而であること。でも、羨まずにはいられません。だからここでずっと見てしまう。炎而様が生き延びる世界があるように、私の想いも遂げることができる世界があるのではないかと、いつまでも、探してしまう」
 
 俺はよくわかっていないが、俺の知る椿と炎而は、俺の知らないところでいろんなことがあったようだ。
 俺が知っているのは、二人がいつも一緒にいたことくらい。気が付きゃ一緒に暮らしていて、気が付きゃ婚約していた。確かに長い時間をかけたのだろうが、それでも、自然に見えた。それは高校の頃から言われていたこと。とてもよく、似合いの二人だと。
 俺からすれば絶対願い下げな椿を受け入れて愛せるのは、あの性格の都筑炎而以外にはいないだろう。けれどそれは、椿が椿だからじゃなく、あの性格であの生き方をしてきた、あの芹沢椿だからだ。

「……俺の知ってるあいつらを羨むなんて無駄もいいとこだと思うけどな。確かに、お前と炎而の外見には変わりないが、中身は大いに違ってると思うぞ。椿だって、お前の方がずっと大人らしくて落ち着いてる、俺の知ってる炎而はあれで結構変なとこ抜けてたからな。……お前が欲しいのは桜井炎而なんだろ。父さんがどうしても欲しくて、でもたどり着けない世界にお前がいるんだから、お前にとってのそんな世界だってあるに決まってる」

 あるに決まっている、そう思う。父さんの望む世界に生きる椿がいるなら。たった一度しか生まれない、俺がいるなら。それを観測できるかどうかは別の問題だが、観測してしまったらきっと、幸せになれないのは自分だけなんだともっと惨めになるかもしれない。だからこいつのハッピーエンド探しは、あまりいいものじゃないんじゃないかとも、思う。それを止める権利は俺にはないから、そこまでは言わないけれど。
 椿は俺の話を、少しだけ目を丸くして聞き、それからまた、笑顔を作った。少しだけ割り切ったような、諦めたような表情。

「……存在自体がハッピーエンドの象徴みたいな人に言われても、惨めなだけなんですけどね」
「ひとこと余計なのは変わんねえのかよ、お前ら」
「いいえ、安心したんです」

 聞き返すより早く、椿が続きを紡ぐ。

「……桜井様は、炎而様を育てるように貴方を育てたのだと、分かりましたから」

 





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2013.01.25(Fri) | 擬似親子 | cm(0) | tb(0) |

わるいおとながすき



 穂積先生のかっこいいところを、クラスのみんなも、部活のみんなも、あまり知らない。


 政経の担当をしている渡会穂積先生は、とても飄々とした人。よく言えばフランク、悪く言えば不真面目? そんな人だから、生徒からはよく懐かれる。ユリ高に勤めて五年になるけどまだ担任を任されたことはない。でも部活の顧問はやっている。私の所属する、弓道部の顧問の先生だ。弓道部でも先生の評価は変わらない。軽くてしゃべりやすい、若い先生。世界史の奥出先生とは同い年同士とは思えないほど、対極にいるようなふたりだ。
 穂積先生と初めて会ったのは、私が中学に入学したばかりの頃。ユリ高に勤め始めたばかりの先生が、帰るのが遅くなってうちの旅館を利用したのだ。終電を逃しそうなユリ高の先生を泊めてあげるのは、うちも風間のところもやっている。でもどの先生も大体綺麗で新しい風間旅館を選ぶので、うちに来る人なんて本当に珍しかった。次はもうきっと来ないだろうと思って、お父さんお母さんも張り切って過剰なくらいのサービスをしていた。
 穂積先生はまだ若いのに、鞄とか、小物がすごくきれいで洒落ている。多分上等な革でできているんだろうそれは、使い込んでいるらしくこなれた感じがして、見た目に似合わず大人なんだなという印象を受けたのを覚えている。 
 その日、先生の布団を敷きに部屋を訪れると、テレビも点いていない静かな部屋で、先生はひとりで本を読んでいた。よく見るとそれは、誰でも知っているような流行りの少年漫画だったので、漫画好きなのかなと思って声をかけた。

『それ、好きなんですか? 学校でもすごく流行ってるんですよ』

 私の言葉に、先生はあまり興味なさそうに「ふーん」と答え、ぱらぱらページを最後までめくるとテーブルに置いた。

『生徒から没収したんだけどさ、よくわかんねえのな。初めて見たわこんなん』

 それが私の中では未だに衝撃的なやりとりで、穂積先生がこういったサブカルチャーの流行にすごく疎いのだと悟った瞬間だった。学校でも、そのことを知らない生徒は多い。城崎先生なんかはとても詳しくて生徒と盛り上がっているし、奥出先生も一応世間話程度にはついていけるみたい。でも穂積先生は、五年経った今でもその手の話は遠巻きに見てるだけ。学生時代に漫画なんてたくさん読んでそうだけど、そうじゃないんだなと私にはわかった。学生時代どころか、これまでの人生でまるで興味がなかったんだなということもわかった。穂積先生は、見た目と中身のギャップがすごい。



 穂積先生は週に一度くらいの頻度でうちに泊まるようになった。浴場の掃除とか、廊下の雑巾がけとかも手伝ってくれる。私たちは先生に、ゆっくりしてくれていいのに、と言うのに、先生は「やったことないから楽しい」とか言いだして、本当に楽しそうに手伝ってくれる。そうこうして一年弱が経った頃、いつも世話になってるからお礼がしたい、と先生は私に弓を教えてくれた。
 日曜日のユリ高、誰もいない弓道場に入れてもらった中学生の頃の私は変にどきどきしてしまっていた。先生と出会って、いつかここに入って先生の授業を受けたいと思うようになっていた、憧れの学校。その場所に足を踏み入れているなんて。冬に入りたての道場は底冷えしてすごく寒い。先生は肩をすくめながら隅にあったストーブを点け、それから「ちょっと待っててな」と言い残してその場を離れた。学校だし、なんかいろいろとあるんだろうと思いながら所在なく道場を見て回って先生が来るのを待っていると、数分して先生が戻ってきた。
 きちんと道着を着て、いつもよりずっと凛と締まって見える。先生は背が高くて肩もしっかりしているから、きちんと着るとすごく綺麗だった。しっかり着付けもできていて着こなしていることにも驚いたし、とても似合っていたことにも驚いた。コメントができないでいる私に、先生はばつが悪そうに笑っていた。

『俺が道着着るとみんな腹抱えて笑うんだけどさ、はるちゃんは笑わねえのな』

 みんなが笑う理由がわからないです。こんなに綺麗に着てくれたらきっと袴だって嬉しいと思う。
 そんなこと言えなかったけど、私の表情で先生は何か察してくれたらしい。
 それから先生は、実際に弓を引いて見せてくれた。
 先生の表情は、今まで一度も見たことがないくらい真剣で、真っ直ぐで、鋭くて。
 先生の腕が弓を引き絞って、その矢の先を的の中心に定める。放たれた矢は微かな曲線を描いて、吸い込まれるように的の中心に刺さっていった。
 私は感動してしまって、子供みたいに、馬鹿みたいにすごいすごいとはしゃいだ。先生は満更でもなさそうだった。

『はるちゃんは純粋でいいねえ。射会以外で人前で弓引くの好きじゃねえんだけど、はるちゃんなら今までになくやりやすい』

 その時は意味がわからなかったけど、その後私がユリ高に入学して弓道部に入学してからも先生はよくそう言うので真意を聞いた。
 なんてことはない、道着のことと背景は同じらしい。生徒や、母校の弓道部の知り合いは先生が弓を引くと、その真面目な表情を茶化したり笑ったりする人が多いようで、気が散るから普段試合以外では人前で弓を引くことはほとんどないのだと言う。私しか道場にいない時はよく引いているから、私としては実感があまりなかったけれど、先生が私を他の生徒と違うところに置いていてくれている気がして、嬉しかった。
 穂積先生のそんな面を、クラスのみんなも、部活のみんなも、きっと知らない。確かに飄々としていて軽くて、そういう部分ももちろんあるけれど、たまにどこか真剣な表情を見せる。それは道場でしか見たことはないけれど、まるでそれしかないみたいに、縋るように、先生は弓を引く。それを見せてもらえるのが私だけなんて、そんなの、勘違いするに決まってる。そんなの、好きになってくださいと言っているようなものじゃない?




「おー、はるちゃん。おはよ」

 約束の時間、うちの玄関先。朝いちばんに聞く先生の声。まだ少し眠そうだけど、朝ご飯はちゃんと食べてくれたのは知ってる。私はあんまり喉通らなかったけど。

「おはようございます、穂積先生」
「いつも思うけど私服かわいーよね。大学デビュー準備ばっちりじゃん」
「そんなことないです。私なんかぜんぜん」

 穂積先生と出かけるのは初めてのことではない。文化祭の買い出しだとか、何かと休日に二人で出かけるようなこともあったりした。もちろん弓道部の合宿とかで私服を見せる機会もある。先生が私服が可愛いと言うのは、頑張って可愛い服ばかり着ているからだと思う。もちろん、あまりひらひらしたものは動きにくいし印象も悪くなりそうだから、媚びすぎない程度には頑張っている。今日は上を茶色、スカートを白できちんとまとめてみた。
 嬉しいと思う反面、先生みたいな大人の男の人には、私の悪あがきなんて全部お見通しなんだろうな、とも思う。ガキのくせに背伸びして、とか、思ってるのかな。

「一応制服にしといた方がよかったかねえ。ま、俺は眼福なんでいいけどね」

 行こうか、と先生が駅へ向かって先を歩く。私も、その後を追いかける。
 一緒に歩いてたら、教師と生徒には見えないかな。そのまま大学に入ったら、恋人同士に見られたりするかな。仲のいい先輩後輩くらいにしか見えないかな。
 先生と出かけると、いつもドキドキする。私だけだってわかってる。私と先生は、絶対そんなことにはならない。私は、頑張っても隠しきれないくらい先生のことが好きだけど、でも、先生には変な噂があることも、知っている。

(………“生徒キラー”)

 男子が先生を茶化して呼ぶとき、そう言ったりする。最初はただの悪ふざけだと思っていた。よくある、若い先生を茶化して遊ぶやりとりの一環なんだと思っていた。
 でも、卒業した生徒会の先輩が、日曜に先生と一緒にいるところを、ある日たまたま見てしまった。少し離れた駅のショッピングモールで、楽しそうに一緒にアイス食べながら歩いていた。先輩、彼氏いたはずなのにな。全然考えられないことではなかったから、思ったよりもショックは大きくなかった。先輩、綺麗な人だったし。ショックを受けるどころか、先生は生徒もそういう対象で見てくれるのかと希望すら抱いた。
 それが打ち砕かれたのは、それから三か月ほどが経った日のこと。弓道部のOGの先輩が道場に遊びにきてくれた時のことだった。先輩は先生に話があるからと道場に残って、現部員はみんな帰宅。私はたまたま道場にサブバッグを忘れてしまって、取りに戻ると、倉庫の奥で物音がするので見に行った。そこから先はお約束で、微かに開いていた扉の隙間から覗き見ると、倉庫の隅で先生と先輩が、キス、していた。先輩、彼氏と結婚考えてるって言ってたのにな。
 そこまで考えて私はわかった。先生は生徒を対象にしてるんじゃなくて、彼氏持ちの子としか遊べないんじゃないかって。先生のこと好きな生徒は私だけじゃなく他にもいるし、卒業式の度に先生が告白されてるのも知ってる。でもその子と付き合ったって噂は聞いたことがない。だから、先生は、自分のことを一途に思ってる子とは、付き合えないんだ。先生が遊びなのか本気なのかはわからないけど、彼氏持ちの子じゃなきゃ、先生の目にはきっと、映らない。
 じゃあ私はダメなんだ、と悲しくなったのはもう随分前だ。私は先生のことばっかり、ずっと前から好きだ。先生が何とも思わないなら、どれだけ頑張って背伸びしようとも自由だしやりたい放題だ、と前向きに考えるようになってからはだいぶ違うけど、それまでは沈み込んだ時期もあった。
 だって、先生の趣味がそうでも、私の前でだけ弓を引いてくれることに変わりはないんだから。私が特別なら、もしかすることだってあるかもしれない。

「せんせい」
「ん? どした?」
「明日から英語教えてくれます? 先生の母校の英語、すっごく難しいんですよ。一回見てみた方がいいです」
「あーじゃあ俺無理だわ。俺現役じゃぜってー受かってねえもん」
「もう、そんなのが聞きたいんじゃないです!」
「いやいや、マジな話さ、うちの英語のレベルならちゃんと英語の先生に教わんなさい? 茜せんせーという力強すぎるのがいるでしょ」

 そんなのわかってる。穂積先生は専門じゃないってことくらい、承知の上だ。

「……穂積先生がいいです」

 いつも笑われて茶化されてばっかりでも、性格の割に娯楽に興味がなくても、弓道にしか真剣になれなくても、生徒キラーでも彼氏持ちキラーでも、なんでもいい。私はそういう先生をずっと見てきたから。だから、私は、穂積先生がいい。
 先生はすぐに、声をあげて笑った。

「ませてんねえ、はるちゃん! いやはや、教師冥利に尽きるというか、政経担当で残念っつーか。お役に立てるよう頑張りますよ」
「はいっ、頼りにしてます! 先生英語もできるの知ってるんですからね」
「できるってほどじゃないっての。あんま褒めるとつけあがるからね俺」
 
 笑う先生に小走りで追いついて、隣を歩く。 
 どうなりたいなんて、高くは望まない。先生とこうして一緒にいられるだけで、可愛がってもらえるだけで、今は充分なんだから。




2013.01.08(Tue) | ユリ高 | cm(0) | tb(0) |

擬似親子ルート考察

大人のピタゴラスイッチがおもしろすぎて困った。録画しといてよかったー。
帰り道で秋臼さんと疑似親子ルート考えたのでまとめ。
水朝たん放置してるけど、誘拐犯バレした後の拓海・炎而コンビ。
いろいろ考えたけど、みのりと叡一くんのところは紗央がまだ生きてるし、叡一くんもみのりもお互いを大事に思ってることを隠してない。樹理はあの通りアホの子で、ケレスさんはいろいろ考えてくれてるけどあんまり表面化してなくてすれ違ってるっていうか樹理がきちんと受け止められてない感じ。
タっくんと炎而くんは、表面化しないけどお互いがお互いのこと考えてくれてるってちゃんとわかってる、本当の親子として過ごしてるから構築されてる関係性も本当の親子のものにすごく近いと思う。


そこで誘拐犯バレ。
水朝たんは性格悪いから余すことなく嫌味ったらしく暴露してくれるって信じてる。
お前が父親だと思って一緒に暮らしてる男は赤の他人で、その上子供だったお前を身代金目当てで誘拐したクズだ、くらい言ってほしい。
炎而くんはタっくん以外の人にバラされても真偽の確認ができないし、それが本当だとしても「は? だから何?」ってなるということなので、まあきっとタっくんのこと馬鹿にされたら言い返してくれるくらいにはファザコンだろうと思ってます。
炎而くんは表面に出さないけど動揺はしているらしいので、ご本人に確認しに行く。多分炎而くんはタっくんに直接言われるまでそんなこと信じないんだろうな。しかしタっくんとしては墓場まで持ってくつもりだったネタを炎而くんからバラされて、珍しくすっげー狼狽えるといい。おいしい。
ちなみにタっくんはマジでずっと黙っておくつもりだったと思う。本当に墓場まで持ってく秘密にするつもりだった。
炎而くんは賢い子だから、どうして、とかは察してくれるだろうし、そもそも水朝たんが身代金ってバラしてくれてるからいろいろお察しいただけると思う。
でもって炎而くんの望み通り一発殴られると思うよ! タっくんは言い訳とかはできないし、攫ったことは事実だし何も言えない。殴られたらいろいろ覚悟決めるんじゃないかな。そいで、見つかんないようにずっと隠してきた炎而くん名義の通帳かなんか渡しそう。


安月給だけどいつかのために炎而くん名義で口座作って毎月ちゃんといくらか貯めてそう。つもりつもってある程度まとまったお金になってて、それ見たらさすがに炎而くんでも驚くといい。タっくんに貯蓄するという言葉が存在したのが私にも驚きです。ちなみに本筋では金のことは紗央に全部任せてます。自分で管理できない。
犯罪者なんかと一緒には暮らせないだろうから、好きなとこ行きゃいいとか言い出すよお約束で。もしくはタっくんが出ていくかどっちか。
そんなアホなこと炎而くんは許さんと思うので、「俺が修学旅行行ってる3日4日でも部屋の維持できない奴が何言うとんじゃー!!」くらいのことは言ってくれると思う。修学旅行とか言い出したら、ちゃんと修学旅行も行かせてもらったしこうして高校も行けてるし、果ては大学とか言い出してるし、そりゃ金はないけど全然不自由しなかったな、って改めて思い出すんだと思う。


炎而くんにとっては、何言われたって何があったってこれまで育ててきたのはタっくんだし、タっくんしか知らないし、今更どっか行けとか言われたって無理だし父親はお前しかいないっつーのこのドアホが、くらいな気持ち。(推測)
このルートの炎而くんはほんとにタっくんの馬鹿みたいな愛情だけで育った感があるね。聞き分けがいいとか賢いのは元からだけどさ。他から見れば過剰なくらいだったかもしれないけど、炎而くんからしてみれば、母親がいないから二人分のつもりなんだろうと思ってたんだと思うんだよ。
赤の他人の子供、しかも攫ってきた子で実家では死んだことになってる子だからだなんて欠片も思ってない。
そりゃ顔とか性格とかまるで似てないよな、と思ったことがないわけではないと思うけど。
身代金目当てってことは金が欲しかったってことで、自分がここにいるってことは金は手に入らなかったわけで、その上自分は家に捨てられたからここにいるわけで、タっくんが何をしたかったのかまるでわからなくなりそうです。何一つ得してない。捨てりゃよかったじゃないか、金が手に入らなかったら用済みだろ、って言いそう。


タっくんだってわかってます。実際使えないってわかったら炎而くん一回捨ててるしな。
そういうの全部言いそう。自分が炎而くんから親も家も金も全部奪った。だからできるだけ与えてやりたかった。でも自分の力では限界があるし、同じだけのものはあげられないし、だけど真っ当に幸せになってほしくて育ててきた。
タっくんが炎而くんいないと生活できないのはもちろんだけど、多分炎而くんもタっくんのいないところでの生活なんて落ち着かないんじゃないかな。旅行とかは別として。
わざわざ家を出る意味もわかんないし、離れなきゃならない意味もわかんないし、奪ったから与えるとか言ってる奴は結局損ばっかしてるし、そういうの考え始めたら炎而くん泣いてくれるって感じでいいんですかね。
炎而くんが泣くことって育ててきた中であんまりないから、この年齢の炎而くんを泣かすようなこと言ってんだなって反省するといい。で、とっさに手が出て抱きしめてやったらいい。


この世界のタっくんにとって炎而くんの存在って本当にすべてで、目に入れても痛くないし食べちゃいたいくらい可愛いというレベル。勝手に育ってくれたのにすごくいい子で、こんなタっくんでも父親だって思ってくれてる。本当に本当に大切で、炎而くんが苦しむようなことは家から捨てられたことで最後にしてやる、くらいの気概で育ててきた。もちろん手放したくないし、自分の子供だと思ってるし、そうやって育ててきたし。
ちゃんと真っ当に幸せになってほしいから、だから誘拐犯なんかとは離れた方がいいって思ったのに炎而くんに泣かれちゃ全部ご破算ですね!
お前が桜井炎而だってのは法律が認めてるから、お前はちゃんと桜井炎而だって言ってあげて、お前は俺の自慢の息子だくらい言い出しそう。でもって最後に「愛してる」ってぎゅってしてあげそう。


本当に、自分の何を犠牲にしてでも全力で守って幸せにしてあげたいって相手が炎而くん。
暑苦しいけど、自分のしたことに責任を負っているだけ本筋よりずっとまともだし、そういった面では近代戦のタっくんの性質に近いかもしれない。近代戦のタっくんはやってることキチガイじみてるけど、責任負った上での戦争だからな。
本筋で炎而くんと再会して、炎而くんが車に轢かれそうになるとかほんとおいしいから秋臼さん書いてください。
ちょっと前に会ったばっかなのに「炎而!!」って名前呼んで叫んで体張って助けてくれるとかおいしすぎ。


取りあえず満足した。寝る。

2013.01.04(Fri) | 擬似親子 | cm(0) | tb(0) |

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