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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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生徒会予備軍




 芹沢家の朝は早い。使用人は皆朝五時には仕事を始めているし、炎而の父である拓海も母の紗央もそれと同じくらいの時間には起床する。父のあの性格で寝起きの時間は割としっかりしているのが炎而としては未だに疑問である。逆に朝が弱いのは妹のみのりだ。あの高飛車な物言いの少女が実は朝が弱く、炎而が何度声を掛けてもギリギリまで起きられないなどみのりの学校の生徒は想像もできないだろう。
 かく言う炎而はと言うと、朝は苦手ではない。朝の五時過ぎには起きて、三十分ほどランニングに出るのが日課だ。父の指示で、週に二度剣道を習いに出かけている。その体力づくりもあって、走り込みは中学の頃から欠かさずに続けていた。今日も今日とてロードワークに勤しみ、たった今帰ってきたところだ。初秋の朝は少しずつ気温が下がっており、Tシャツで走るにはちょうどいい気温だった。汗ばんだ肌を首にかけたタオルで拭いながら門をくぐると、庭の掃き掃除をしていた使用人の女性に声をかけられた。

「おはようございます、炎而ぼっちゃん」
「ああ、おはよう」
「十分ほど前ですが、奥様が探しておられましたよ」
「母さんが? なんだろう」

 紗央が朝から炎而を探すことなどまずない。怒られるようなことなんてしていないし、わざわざ探すような緊急事態などそれはそれで何事なのか見当もつかない。首を捻る炎而に、使用人は笑って付け加えた。

「お電話だったようです」
「電話ぁ!? こんな時間に!?」

 まだ朝の六時前だ。そんな早朝からの電話など常識的ではない。学校の連絡網にしたって確か六時以降という決まりがあったはずだ。

「京都からのご連絡だったようで、後で折り返すと伝えたみたいですけど」
「京都、……なんだ、真紘か。ありがとう、折り返してみるよ」

 この非常識な時間の電話。母が自分を探すということ。相手はひとりしか考えられなかった。
 使用人に礼を言うと、炎而は小走りで母屋に向かった。




『遅ェんだよ馬鹿が』
「誰が馬鹿だ。こんな時間に掛けてくるのが非常識だ」
『こんな時間に掛けてんのにいねェ方が常識から外れてんだろ』
「なんでそう揚げ足取るんだよ、普段深夜にしか掛けてこないくせに」

 電話の向こうの相手は京都にいる。傲慢、不遜、傍若無人。およそ長所が見当たらない相手で、しかも炎而はその相手に会ったことは一度もない。写真も見たことはない。ただたまに電話をするだけの相手。親戚でもないので血も繋がっていない。
 相手は都筑 真紘という名前で、炎而と同い年だという。向こうももちろん、炎而と会ったことはない。親同士は知り合いだということで、炎而なり真紘の姿は見ているらしいが、子供の頃といっても赤ん坊の頃の一時だけで、それ以来顔は見ていない。親同士の交流だけにとどめているらしい。しかし何故か物心ついたころから電話での交流だけがあり、こうして今でも続いている。電話は必ず家にかかってくる。携帯電話の番号の交換も、メールアドレスの交換も、手紙のやり取りも、なぜか親によって禁止されている。疑問に思った時期もあるにはあったが、何せこのやり取りが始まったのが昔のことすぎて、今では当たり前にこうして電話でのやり取りを続けている。全く会いたくないわけではないが、直接会ってうまくやれる自信もない。話は全く合わないわけではないけれど、向こうはあの傲慢な性格である。炎而のごく身近に似たような人物がいるため、直接会話するのは骨が折れそうだとよく思うのだ。

「で? 何の用」
『特にない。珍しく早くに目ェ覚めたからな、することもねェし』
「特にないって、……そんなんで馬鹿呼ばわりされたらたまんないな」
『まーそう言うなって!』

 電話の向こうの相手はからからと笑う。よく響く低音といい、この物言いといい、真紘は炎而のよく知る――父にどこか似ているところがある。姿を想像しても、なぜか父の顔が浮かぶ。そりゃさすがに真紘に失礼だ、と思い直すのだがどうも一度浮かんだ面影は消えそうにない。
 何の用もないからと言って、あっそ、じゃあ切るわ、とあっさり終わらせるのも微妙なので、それから数分当たりさわりのない話をした。まずは家族のこと。向こうも妹がいる。そして父親も炎而の父に負けず劣らずの曲者だ。電話をすればその曲者エピソードをお互いに披露することになっている。あとは学校のこと。真紘はこの性格だが成績はそれなりらしい。しかしガリ勉というわけでも、学年トップというわけでもない。学力勝負をすれば炎而は自分が勝つ自信がある。
 そんな取り留めない話を続けていた途中、「あ」と真紘が言葉を切った。なんだよ、と問い返せば、電話の向こうの声はまた可笑しそうに笑う。

『そーだ炎而、俺年末そっち行くわ』
「……は!?」
『だァから、年末にそっち行くって。お前の学校何か変わったイベントあんだろ? それ見に行くからついて来いって親父に言われてさ』
「ちょ、ちょっと待った、それ一番重要だろ!! 電話する用事何もないとか嘘つくな!!」
『あ? 別にいちいち報告することじゃねェだろ、報告してお前が何つっても俺はそっち行くし』

 そりゃあそうだろうが、そういうこっちゃねえよ――という台詞はすんでのところで飲み込んだ。
 十年以上声だけを聴いてきた相手だ、その相手があと数か月で目の前に現れる。直接会っては対応が面倒そう、というのは事実だが、実際会えるとなればそれなりに楽しみでもある。

「そ、っか。もちろんうちに泊まるんだよな」
『ははっ、んなのまだ分かんねえよ。でもそーなるんじゃね?』
「初めて会うんだよな。俺の顔知ってるとかないよな?」
『ねえよ。お前は知らねェだろうが、芹沢からの郵便物って検閲すげえの!』
「そりゃうちもだって。都筑からなんか届いたってなると絶対父さん直々にチェックだし」
『だよなあ! うちもだ!!』

 舞踏会の時期には会える、ということは、そこを機にいろいろ解禁になるのだろう。これまで何故こんなにも隔たりを持たされていたのかはわからないが、今となってはどうでもいい。

「楽しみだな」
『多少な』

 お互いこれから学校があるということで、その日の電話はそこで終えた。




 朝食の席で父とは顔を合わせたが、何か伝えられる素振りはなかった。親同士で話は通っているはずだし、それならばこちらから特に言い出す必要もないだろうと炎而は電話の内容は特に告げずに家を出た。
 家は八時前には必ず着くように出る。課題などは家で済ませているが、面倒な授業に合わせて朝のうちに軽く予習をするためだ。
 校門に近づくと、数名の生徒が立って登校中の生徒たちに何やら声を掛けている。彼らの服装は、制服にたすき。ああ、そういえば。

「おはよう景央。いよいよ追い込みか」

 炎而はひとりの長身の男子生徒に声をかける。声をかけられた生徒は振り向いて、ぱあっとその表情を綻ばせた。

「おはよう芹沢! 信任投票ではあるが、手を抜くのは間違ってるからな」
「大変だな、次期会長も」
「やりたくてやってるんだ、苦ではないよ」

 今週の金曜の六限は全校生徒が体育館に集結しての生徒会選挙だ。といってもやりたがる人間がそんなにいるわけもなく、会長をはじめすべての役職は今回信任投票となるらしい。各役職にひとりずつしか立候補がいないのだから、余程悪名高くなければ決まりの選挙となる。それでも手を抜かないのだと宣言できるのならば、信任投票といえど会長を任せてやろうという気にもなる。
 すらりとした長身は炎而よりも数センチ高い。それでいてきっちりと着こなした黒の制服がよく似合う。肩から下げるたすきには『会長立候補』の文字。彼こそ、月見ヶ丘高校生徒会現任副会長、そしてこの度の選挙でおそらく会長となるだろう瀬川 景央だ。人当りがよく、怒ったところなど見たことがない。それでいて正義感が強く、筋の通らないことは言わないし、大嫌いだときた。熱血少年漫画の主人公みたいな男だが、それもそのはず元祖少年漫画主人公っぽさツキ高ナンバーワンを誇る瀬川 空教諭の愛息子である。先生が親だからといって驕っているわけでもないし、それどころか彼はおそらく親よりも賢い。将来の夢は医者ですと公言できるだけのことはある。

「これで全員か? ちょっと少ない気がするけど」
「いや、半々だ。今日は俺と二年書記、一年会計だけで、残りは明日になる。立候補者だけで二年で四人、一年三人いるんだ。それプラス応援者まで来たら校門がごったがえすだろ? 日を分けるよう指示があった」
「それが妥当だな。お前の応援って今年もあいつか?」
「残念ながら、その通りだ」

 景央はにこりと笑うと、坂を上って登校してくる生徒たちに向かって声を張り上げチラシを配る男子生徒に向かって声を掛けた。

「とーや、あんまりうるさいと得票率下がる」
「あー!? おっ前、この人気者起用しといてその言いぐさアリか!? お、エンジはよー」
「おはよう琴也。お前ライブの練習はいいのかよ」
「そーなんだよ、それなのに次期会長サマってばこの物言いよ? ライブ前のボーカル捕まえといてこの言い草はひどくない?」
「フォーマルなイベントで全校生徒の前に出れば普段とのギャップでモテること確実ですよね副会長先生、と大真面目にのたまったのはどこのどいつだ」
「いやんカゲってば耳年増なんだからぁ」

 身長の高い景央と並ぶと少し低いけれど、彼も炎而とそう背は変わらない。制服はきっちり着る景央とは対照的に、ネクタイやシャツのボタンは見苦しくない範囲で崩していてそれが彼のスタイルによく似合っている。軽音部で組んでいるバンドのボーカル、花形を飾るだけあって見た目はそこそこで、それなりに女子からの人気もあるらしい。炎而も去年から何度か彼のライブは聞いているが、歌唱力は非常に高く、これだけ歌えればさぞ楽しいだろうと何度思ったかしれない。景央が「とーや」と呼ぶ人物、それが鈴城 琴也だ。琴也の父親と景央の母親は双子の兄妹で、ふたりはいとこ同士にあたる。それにしたって性格が違いすぎるような気もするが、それを言ったら自分やみのりと椿もまたまるで違うということを思い出さないわけにはいかない。
 
「お、そーだこれやるよエンジい! うちのカゲに清き一票を」

 ぺらりと渡されたのはわら半紙に印刷された立候補者のPRポスターだ。立候補に向ける思いやら応援メッセージがいっぱいに載っている。
 正直、信任投票なのだからここまで金をかけなくても、とは思うのだが。

「こんな大層なモン貰わなくても投票するって。友達なんだしさ」
「いや芹沢。そんな理由で投票されては困る」
「そーよエンジ。だから俺たち頑張ってんの」
「信任投票なんて投票する側もされる側も手を抜こうと思えば抜き放題だ。だからこそ、本気をアピールするなら活動するしかない。幸い、今期は皆やる気のようだからしっかり期待に応えられると思うよ」
「カゲはガチでカタブツだからさ。選挙も真面目に投票してやってよ」

 景央の人となりは、今年同じクラスになってからよくわかっていたつもりだ。去年は違うクラスだったが、隣のクラスだったため英語や数学、体育の時間に一緒になることが多かった。真面目で堅くて、しかし理不尽ではないその性格。勉強にも生徒会活動にも真っ直ぐ向かう態度も、こういった仕事を任せるに相応しい人間だと思う。だからこそ琴也も自分の部活のライブがあっても景央を手伝うのだろう。そこにはいとこ同士という繋がりを超えて、景央の人間性のなせる業といっていいものだ。

「言い方が悪かったよ。景央なら安心して任せられるって思ってる」
「そう言ってくれるとありがたい。とーやもせっかく手伝ってくれてることだしな」
「選挙終わったら俺のライブもよろしくな、エンジ」
「もちろん。あれ、そういや景央は一緒に行くって言ってなかったよな。樹理とか塩見とか一緒に行くけど、来るか?」
「いや、俺は遠慮しておく。聞きに行きたいのは山々なんだが、何せ選挙の次の日だからな。授業が終わったら顔合わせがある。終わり次第余裕があったら顔を出すよ」

 この堅さこそが人望を集めている。こんな彼だから、彼を慕う生徒は多いし、彼自身もその期待に応えようと頑張っているのだ。友人としてこの選挙は応援しなければ。まず炎而にできることは、今この場で行われている活動を邪魔しないこと。それに尽きると判断した。

「じゃあ俺は邪魔になるから教室行ってるわ。頑張れよふたりとも」
「おう、またなエンジ!」
「また後でな、芹沢」

 どうせ二人ともクラスメイトだ。始業前のチャイムで戻ってくるだろう。
 校舎へ向かって歩き始めた炎而の後ろで、琴也のPRが響く。「生徒会長に瀬川景央はいかがっすかー」などと売り込みの様相を呈してきたようで、景央が持っていたチラシの束で琴也の頭を叩いて笑いを誘っていた。ラジオのように、二人のやり取りは声だけで十分状況がわかる。これは得票率も信任投票とはいえかなり伸びるだろう。
 週末の選挙当日が少し楽しみになった。




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2013.04.23(Tue) | 擬似親子 | cm(0) | tb(0) |

おぼえがき2

瀬川 景央(せがわ かげひろ)
ツキ高生徒会長。1年の時は副会長。瀬川先生自慢の愛息子なのに長身で体格がいい。
周囲からは「けいちゃん」「けい先輩」とか呼ばれる。穏やかだけど正義感が強い、全校生徒の兄貴分を目指している。
小さい頃は体が弱く、すごく世話になった要君に憧れて、小児科医を目指している。
体作りのために水泳をやっており、水泳部にも所属しているが生徒会業務が多忙なため部長は辞退した。


空の子供が要君に憧れる展開がおいしい。
しかしこういう子はいざとなると面倒そうです。賢いからいろんなこと考えてそうです。
瀬川家には女の子も欲しいので妹も考える。エンジ君と同い年でいいかな。琴也とは親友。まあいとこ同士だしな。琴也って考えると真紘ポジションだけど真紘よりずっと出来はいい子だと思う。


慎吾反転も面白そうだからいろいろ考えてはいるのですが、難しい……。
普段流風を一番お姫様扱いしてるのは慎吾なので、その慎吾が女の子だと、きっと流風は王子様にしか見えないんだろうなあ。ツンデレ度が10倍増しそう。

2013.04.10(Wed) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

ごしゅじんさま と げぼく




 樹崎 ミナトの持つ革のキーケースには、いくつかの鍵がついている。職員室の机の鍵、英語科教員室の机の鍵、更衣室のロッカーの鍵、自分の住む部屋の鍵、そしてもう一つ。全部で5つだ。机の鍵はどれもメーカーが同じため見分けづらいが、赤いシールを貼っている方が職員室、青いシールが教科教員室、と分けて管理することにした。ロッカーの鍵はひとつだけ形が違うので、間違えることはない。残るふたつ、自分の部屋、そして彼女の部屋。同じマンションに住んでいるため、鍵の形はどちらも同じだ。それでもこちらは、シールで分けずともミナトはすぐに判別することができる。――いちばん右につけた鍵しか、使わないからだ。
 チン、と音を鳴らして、エレベーターが目的の階へ着く。月見ヶ丘の駅から上り電車に乗って三駅ほどの場所。駅からはほど近いマンションにミナトは住んでいた。扉が開き、四階に足を踏み入れる。革の鞄は左手に、右手でジャケットのポケットをまさぐり、いつものキーケースを取り出した。いつも使う、一番右の鍵を目当ての部屋の鍵穴に差し込み、回す。扉の向こうは電気がついていて、玄関にはヒールのある黒い靴が揃えられず脱ぎ散らかされている。それはいつものことだし、ミナトが帰宅するとそのヒールの靴を綺麗に揃えてから部屋に上がる。内側から鍵をかけることも忘れない。
 そこそこ広い3LDKの部屋。廊下を真っ直ぐ歩いてリビングの扉を開くと、香ばしい匂いとじゅうじゅうと小気味いい音が飛び込んでくる。

「お、ミナトおっかえりー」
「ただいま帰りました」

 部屋の中にはひとりの女性。肩より少し短いくらいの黒髪はゆるくパーマがかかっており、背は160半ばほどだ。アイボリーのニットに黒いパンツ姿で、IHコンロとにらめっこしている。部屋の主のミナトが帰ってきてジャケットを脱いでいても気にも留めないくらいには大和撫子とは縁のない女性だ。彼女がキッチンで動くさまを横目で見ながら、ミナトはグレーのジャケットを脱いでクローゼットに掛け、次いでネクタイを緩めた。

「ミナトぉ、日本酒にする? ウイスキーにする? それとも、ビ・イ・ル?」

 新妻のあの定型句のノリで彼女は酒を三種類にこにこと挙げる。色気も何もあったもんじゃないが、そんなことは出会ったころからわかりきっていることなので今さらどう思うことでもない。
 ネクタイを外してクローゼットにしまうと、スリッパの底を鳴らしてミナトはリビングに戻った。

「全部アルコールじゃないですか。選択の余地ないですよ」
「なにー? 焼酎もあるけど?」
「そういう問題じゃないです。お茶にしてくださいよ、お茶」
「なんだミナト、あたしの酒が飲めないっての? あーん?」
「うわ、現役警察官が飲酒強要っていいんですか」
「強要じゃねーよ、コイビト同士のスキンシップだろ? ほれ、嬉しいよなあミナトくん」

 どう聞いたって恐喝だ――とは、言えばおそらく更なるスキンシップが待っているはずなので飲み込んでおくことにした。ここは大人しく、彼女の提示する三択から選ぶべきだ。じゃあビールで、と返すと「わかってるねえ」と彼女は上機嫌で冷蔵庫を開けた。テーブルの定位置についたミナトの目の前に、ドン、とビールの500ml缶が置かれる。キンキンによく冷えたそれを握って、プルタブを開ける。ぐっと呷って喉に流し込むと、程よい苦みと炭酸が喉を刺激する。ビールもウイスキーも、二人の趣味があったものしか揃えていない。酒の趣味以外に合うところなどほとんどないというのが現状だ。
 彼女はコンロからフライパンを上げると、大皿に料理を盛り付けた。その大皿をテーブルの中央へ、フライパンには水を少し入れてシンクに置いておく。あとはまた冷蔵庫を開け、ザルに盛られた枝豆をまたテーブルの中央に置き、ついでに冷えたビールを二本自分の目の前に置いた。これで彼女としては夕飯の準備が整ったということらしい。毎度のことなのでもう突っ込む気にもならないが、お約束までスルーするのはツッコミ役として問題があると思うので、一応声をかける。

「みやびさん、主食ないってどうなんですかね」
「あん? あんだろビール」
「液体ですよ」
「原料は麦だろ」
「麦じゃないです麦芽です」
「おんなじよーなモンじゃん」

 大皿に盛られたのは、砂肝とニンニクの芽を塩麹で炒めたものだ。酒のつまみには申し分ない。ついでに枝豆とくれば酒は進み放題だ。彼女はミナトの言い分など相変わらず少しも気にせずにリモコンをテレビに向け、適当なバラエティ番組に合わせる。
 彼女は佐伯 みやび。理事長の勧めで断り切れなかった見合いの場で出会った彼女とは、酒の趣味だけが合う。年はミナトの四つ上。彼女も上司の絡みがあるらしく、体裁を保つために付き合い始めたのだが、なんやかやで今まで続いているので相性はおそらく悪くないのだろうと思う。酒豪でヘビースモーカーで強烈に口が悪い。これが警察官なのだから随分前から世は末だったのだなと実感する毎日だ。黙っていれば見れなくもないのに、という言葉は彼女と付き合った男なら誰だって思うだろう。
 付き合い自体はもう五年になる。自分たちの年齢を考えればそろそろ結婚してもよい頃だろう。というか、結婚のための見合いだ。しかし以前彼女に結婚について聞いてみると、「樹崎みやびって、苗字と名前が同じ母音になるから嫌だ」と謎の拒否をされた。だからといって自分が佐伯ミナトになるつもりがあるかというとそうではないので、ならばこのままでもいいだろうとだらだらこの関係を続けている。

「あー、どっこも面白くねえなあ」

 缶ビールを右手に、左手でリモコンを操作するみやびは苦々しい顔をしてそう言った。最後に赤いボタンを押して、テレビの電源を切る。

「みやびさん、僕今度の日曜まるまるいないんで」
「おー、そっか。バスケ部?」
「そうです。遠征で」
「センセイも大変だねえ。遠征ってどこまで?」
「山梨ですよ」
「甲州ワインよろしく! あ、でもほうとうもいいよな、最悪信玄餅で手を打つ」
「聴覚ちゃんと機能してます? 仕事だって言ってるでしょう」

 大皿に盛りつけられた砂肝の炒め物を小皿に少し取り分けて、一口つまむ。味付けはよく言えば大胆、悪く言えば大雑把だが、慣れているのか味が悪かったことはない。反面、細々した料理が得意なのはミナトの方で、そこも自分たちはバランスがとれているなと思っている。今の関係に文句はない。この状態に慣れてしまうと、ステップアップが面倒で仕方ないのだ。
 日曜に行われるのは山梨の高校との試合だ。現地まで赴くなんてそうそうない機会だからか、生徒たちは面倒という気持ちより遠足気分の者が多い。それはそれでとやかく言うつもりはないが、野島恒輝が目を輝かせて「俺富士急ハイランド行きたい!」とか言い出したのはいただけなかった。レギュラー外してやるから勝手に行け、と言うと同級生の渡会穂高が大笑いし、当の本人は泣きそうな顔になっていた。バスケ馬鹿のくせにふざけるんじゃない、とミナトは思う。バレー部で外部コーチを務めている芹沢 大和に言わせれば、恒輝の父親の高校時代にそっくりだと言う。今の野島慎吾の姿を見ていても、それは容易に想像がつく。
 食事というよりも間食に近かった夕食を終えると、みやびがソファーに寝転がった。それを横目で見ながらミナトは食器を洗う。食事を作らなかった方が片づけをやるのは当たり前のことだと思っているし、わざわざ口に出してルール化せずともふたりはやってこれた。言葉にする必要がないというのも、一緒に暮らしていてやりやすい。
 この部屋を借りたのはミナトで、みやびとは半同棲の間柄だ。みやびはみやびで、このマンションの8階に自分の部屋がある。階が低くて楽だからとみやびがここに入り浸った形だが、部屋はひとりにしては持て余すしふたりでちょうどいいくらいだ。あまり回数は多くないが、喧嘩するとみやびは散々ミナトの部屋を荒らし、自分の部屋へ帰っていく。ミナトはこれで割と粘着質な自覚もあるので、その時は許すつもりも許したつもりもないのだが、大概部屋を出ていった数時間後にみやびが何事もなかったかのように戻ってきて居座っている。蒸し返すのも大人らしくないとミナトもわざわざ蒸し返すことはしない。けじめをつけない大人のつきあいはこうなるのだ。

「今日さあ」
「はい」
「天使みたいな子が道聞きにきたんだあ」
「みやびさんからそんな可愛い言葉が出るとは」
「るせえ」
「小さい子ですか?」
「いいや、高校生」

 みやびはソファーでごろごろしながら、自分のスマートフォンを操作している。ミナトは洗い終えた食器をふきんで拭きながらその話を聞く。食器自体はそうたくさん使っていたわけではないから、すぐに仕事は終わってしまった。流しの電気を消して、L字型のソファーの空いている席に腰かける。
 みやびはこんな口の悪さで、警察官だ。勤務地は半年前から月見ヶ丘の駅前だ。場所柄、ツキ高生を目にすることも多いためガラの悪い生徒を見かけるとちょいちょいミナトにネタとして話してくれる。

「商店街の方から来てさ、パン屋の袋抱えてて、駅どこですかとか言いやんの。目の前だっつーの」
「ずいぶん抜けた子ですね」
「ハーフっぽくて、金髪に緑の目なんだよ。いやあ可愛くてびっくりした。しかもオマエんとこの制服。これで頭もいいのかよ爆ぜろと思ったね」
「自分が頭悪いからって僻まないでくださいよ」
「オマエは一言多いんだよ! あんまり可愛いから写真撮らせろっつって、所長にツーショット撮ってもらった。どーよこれ」

 満面の笑みで差し出された、彼女の真っ赤なスマートフォンを手に取る。画面いっぱいに映し出される、天使と呼ばれた少女と、相変わらず子供じみた笑顔のみやび。少女はミナトも見知った顔だった。この界隈にそれだけ目立つ見た目の少女など、そうそういるはずはない。手にした紙袋から除くバゲットが彼女の日本人離れした容姿を際立たせているが、惜しくも隣に写っている人物が写真の完成度を落としている気がする。

「この子、極度の方向音痴なんですよ。校内でもよく迷うみたいで、お目付け役みたいのがいます」
「ふーん、女?」
「いえ、男子です」
「そいつは役得だな。女同士だと面倒くせえ僻みだのなんだのあるけど、男ならスキンシップ取りたい放題だし噂なんて勲章みたいなモンだろ」
「男がみんなみやびさんみたいなオヤジ思考してると思わないでください」
「あー? そいつ鼻高々じゃねえの」
「芹沢の嫡男ですよ、生まれつき天狗鼻なのにそれ以上伸びるわけないです」
「ミナトはほんっとに芹沢嫌いな! まああたしも大和は金持ちでうぜえし嫌いだわ」

 ルミは可愛いんだけどなー、と話すみやびは本気になったら両刀なのではないだろうかとミナトはよく考える。それくらいみやびは女性によく好かれるし、女性に対しては好意的に接する。それ口説いてんだろ、と思うこともしばしばである。現にミナトとの間に恋人同士らしい会話はほとんどないし(年齢的な面ももちろんあるだろうが)、みやび自身ミナトのことは下僕と公言して憚らない。突っ込むのも訂正させるのも面倒になってきた最近は、もうそれでいいやとミナトが折れているので何の衝突も起きない。

「そっか、芹沢の嫡男って、あのブアイソ当主にも奥方サマにも大和にもぜんっぜん似てねえ子な」
「よく覚えてましたね、顔つきまで」
「まあ似てなくて正解だと思うけどな。あんなのが何人もいてたまるかってんだ」
「みやびさんの金持ち嫌いも相当ですよね」
「あたしは金持ちが嫌なんじゃなくてあいつらが嫌いなんだ」

 ミナトは芹沢の次男である大和の妻、ルミと幼馴染のため、ルミの愚痴を聞きによく芹沢邸に出入りしている。当主や当主夫人、嫡男を見るのはその時のことだ。芹沢の当主と次男の兄弟はよく似ている。それをみやびはよく『鼻持ちならない』と発言してはルミの共感を得ていた。ルミもさばさばした性格だから、みやびとは相性が良いのだろう。

「あれの相手するルミを思うと、あたしは恵まれた下僕を手に入れたなあと思うね」

 例の下僕発言だ。それも恵まれた下僕とはどんな形容だ。
 折れてはいるし諦めてもいるけれど、ミナトはため息をつくことは忘れない。一般のマンションの一室よりも、この部屋は若干、二酸化炭素濃度が高い。




2013.04.09(Tue) | 擬似親子 | cm(0) | tb(0) |

仕上がらなかった

ミナトとみやびさんの話を書いてました。
みやびさんは男勝りっていうか口調は男だと思って書いてます。そういう姐さん系がいてもいいかなと。
今はミナトとくっつけて書いてますが、もともとIF世界でタっくんの奥さんと思って作った人です。ケンカップルwwwww タっくんとみやびさんとか知性のかけらもないwwww
しかしこういう女性が、要くんとか貴久先生みたいな人に片想いするのがおいしいよなと思うわけです。ミナトちょう下僕。がんばれ。


黒バス嫌われ系の小説を読んでて、うちでやったらどうなるかなとちょっと考えた。
流風はどうでもいい。慎吾はうざいけどそういうシチュエーションにはならなそう。現実的なのがルミかなと思ってる! ルミ嫌われとかおいしい。
ルミの設定としては、大和とか流風とも付き合ってなくて、ただ単に仲がいいってだけで嫉妬されて罠にかけられ、ありもしない噂流されていじめられるとか。周辺にいるうちのキャラは割と状況に流されやすいのでころっとひっかかっちゃいそうです。大和とか流風とか慎吾とかマジ使えねえwww
生徒の中に仲間がいないってなって、じゃあ味方になってくれそうな子いるかなと考えたら、なんとなく慎吾以外の生徒会かなと思った。嵩皓ちゃんは流されるとかそういう次元ではないだろう。ルミを誰も信用しない状況を、「「はァ?」」って見てるのが風哉くんと至貴くんだったらマジ俺得胸熱。
慎吾のくせに仲良しの先輩ひとり信用できねえとかマジでクズだわ死ねよ、みたいな台詞言ってほしいwww
大和とか流風もガンガン見下してほしい。そういうのとってもおいしいと思います。
ユリ高だったらはるちゃんがガチだと思うんだけど、はるちゃんに関しては何があってもゆきとほっちゃんが守ってくれると思うので割と不安ではない。


点呼どんがサイコパスパロをいつか書いてくれると信じています、勝手に。
だってああいうの得意そうだし……。


嫌われ系の小説割と楽しいんで読んでるんですが、ついでにマナー記事も読んでみたら、赤とか緑の聡明キャラが何でも鵜呑みにするのはちょっと展開おかしい、とか書いてあって、確かにwwwと思う。
青黄紫は好きなように動くとして、トップ二人が鵜呑みにするのは可笑しいよな。普通の中学生じゃないんだし。聡い子たちだからこそ、この二人は味方ではないにしてもずっと中立であるのがキャラとして正しいと思う。
とか思ってたら緑+赤けっこう好きかもしれない私。赤も緑もあんま興味なかったんだけど……。
まあいいや。チャリアカー組は高緑の方が好きです。けどこいつらは友情の方が何よりもおいしいと思うんだよな。ていうかやっぱりなんでも友情がおいしいよ。桃井とカントクが度を越えて愛されてれば満足です。
しかし青黄より黄青のが好きだなとか思った最近。うたプリみたけど安定の諏訪部。諏訪部すげえ。HOTDから私の中の諏訪部の評価がうなぎ上りに。
動くれいちゃんが見られるなんて……! れいちゃんかわいい。はるちゃんかわいい。よしもう寝る。


2013.04.06(Sat) | しゃべり隊 | cm(0) | tb(0) |

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