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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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ぼくのかみさま



 黒いスーツ姿の青年は、大きく息を吸った。
 丘の上だった。ひどく無機質な白い石達。それが生きていた誰かを表しているなんてにわかには信じがたい。この丘に眠る他の連中のことなんてどうだってよかったが、とにかく、青年の目当ての人物と白という色は簡単には結びつかないのだ。

「久々。思ったより早かったろ、俺来るの」

 青年は、にっと墓石に向かって笑って見せて、それなりに長い足で墓石を蹴った。
 死者への冒涜? そんなことは知ったことではない。なら生きている人間を馬鹿にすることは許されるというのか。勝手に死にやがって、この野郎。

「……ちゃんと俺来たからな、一年くらいあんたいなくてもどーにかなったっての! はッ、寧ろいちいち煩い小言挟んでくる奴いなくなってせいせいしてた!」

 そう、取り合えずどうにかはなった。汚いノートはもっと汚くなるまで見直した。取りこぼしなどひとつもないように。取りこぼしてたまるかと思っていた。これまで以上のことは教わることができない。これまで以上のことは自分で学ばなければ。それなら、せめて教わっていたはずのところは完璧でいないと話にならない。
 単身渡米して、本当はすぐにでも墓参りに行きたかったが、それもどうにか踏み止まった。勝手にくたばったような人間に、教師と生徒なんて距離を与えたくなかった。違うのは年齢だけで、ここにいるからは対等な立場でありたいと思った。

「……もう俺も卒業だよ、先月論文提出した。……肩書きならあんたと一緒だぜ、俺。ざまあみろ、あんたいなくてもここまで漕ぎつけたんだ」

 手には花束と、論文のコピーがある。
 同じ肩書きを手にしたというのに、この無気力感は何なのだろう。人一倍努力してここまで来たはずだった。努力だけなら地球上の他の誰にも負けない絶対の自信がある。すべては今日のため。対等な立場に立ちたかったから。
 なのに、ダメだった。
 時が止まっている。
 自分と相手との間の時間は、彼を失ったその時に止まったままで、永遠に自分は生徒のままなのだと青年は痛いほど自覚した。どんなに頑張ったって、生徒止まりだ。

「……っ、何なんだよ、俺と同じ立場になるのがそんなに嫌なのかよ……!」

 あの日にこれでもかというほど涙は流した。それから何年も涙腺を緩ませることなど自分が許さなかった。
 ダメだ、とまた青年は思う。
 あの日がまた蘇ってきたみたいだ。わけがわからなくて、ただ心に穴が空いたみたいで、どうしてかわからなくて、頭の中がぐちゃぐちゃで、瞳からは馬鹿みたいに涙ばっかり溢れてきて。

「日本にいる間はっ、あんたと同じ煙草の匂いするともう気がおかしくなりそうだったし、っ、もう何年も、何年もずっとあんたの字ばっか見てたから、だから、筆記体の字とか、っ、あんたそっくりに、なってるし……! あんたみたいな汚い字とか御免なんだよ、ざけんなよ、マジで……!!」

 文句ばかりが溢れてくる。
 文句を言えば言うほど、どれだけ彼の存在が自分の心の内を占めていたのか、嫌というほど思い知らされることがわかっていても、溢れる言葉を止めることはできなかった。
 本当に言いたいことはそんなことなんかじゃないということも、分かっていた。素直に気持ちを言えないのは、やっぱりあの頃から少しも成長できていないからだ。
 誰もいない丘の上で、この土地の言葉ではない言語で墓石に向かって何年も溜め込んでいた気持ちを吐露していく。やっと言えた言葉だってある。寂しいのは、反応が少しも返ってこないことだ。
 青年は腕時計を見た。そろそろ戻る時間だ。
 ひとつ舌打ちをして、持っていた白い花束と論文のコピーを乱暴に投げつけた。

「折角持ってきたんだからちゃんと読めよな! あと、白とか似合わねぇんだよ、ばぁか」

 ならどうして白なんて選んでしまったのか。彼が死んだ事を、この数年間一番認めたくなくて、けれど一番身にしみて実感していたからだろう。
 慣れたくなんてなかったのに、慣れてしまった。だからここに来て余計に会いたいと思ってしまう。恥ずかしいくらいに会いたいと泣き叫んだ、あの日を鮮明に思い出す。
 青年は踵を返して、ゆっくり墓石から離れていく。
 本当は何を言いに来たのか、ちゃんとわかっている。今言わないと、今度ここに来れるのはいつになるかわからないし、聞いてくれないような気もする。
 青年は足を止めた。
 ただ、言ったら最後のような気もした。対等になりたくてここまで来たのに、埋められない絶対的な距離を認めてしまう。認めたくない、けど、言わないままじゃ心が痛い。
 それから、結局、振り返ることにした。墓石に顔を向ける。
 また、大きく息を吸う。

「……ぁ、」

 声が掠れる。
 ぐっと拳に力を入れた。 

「……っ、ありがとう、ございました……!!」

 つまりは、ただ、最初から、それだけが言いたかった。
 何に対する感謝かなんて、言い出したらキリがない。あの頃の青年が、とにかくいろんな意味で彼を好きなのだと自覚したように、それと同じように、本当にたくさんの意味で。

「俺を生かしてくれて、……っ、本当に、ありがと、う、ございます……!!」

 最後は涙なんか見せないで、カッコよく背中見せて帰ろうと思っていた青年の目論見は失敗に終わる。青年を生かした彼はもうずっと前に死んでいる。そんな単純な事実が、青年の膝を折らせ、スーツの袖を濡らさせた。







また書いてて動揺しました。
秋臼さんが一通り終えたようなので、やっぱりちゃんと終わらせるなら墓参りでしょ☆という短絡的思考の元適当に仕上げました。適当なのでやっぱり適当なことになりました。

いやしかし、本当はすぐにだって墓参りしたかったと思うんだけど、短絡的な一時の感情で動くのはいけないと思ったんだろう。博士号取るまで絶対行くか馬鹿野郎とか毎日思ってたんだと思います。
な、なんかこのルートの流風はなかなか健気で私好きですよ?(何)
ラストは謝らせるのもよかったけど、謝ったって何にもならないからねぇ。どっかで「ケレス先生」って呼ばせたかったんだけどタイミングが掴めなかった。それも流風クオリティ。

本当は暗いのに飽きたから名前で呼ばせるような話書こうとしてたのに!
秋臼さん書いてください、私もえくるしむ自信ある。(何)

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2008.03.25(Tue) | Title | cm(0) | tb(0) |

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