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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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あの青い薔薇は今日も咲く 7


 それから、彼女は学校へ来ることをも控えるようになったようだった。当然か、とも思う。それとは対照的に、あんな写真が出回っても普通に登校できる自分の神経はどうなっているのだろう。キャンパスを歩けば学生がいろんな期待を込めたような視線でケレスを見たが、キャンパスにいる学生など九割以上が見知らぬ人間だ。そんな人間達に振り回されるほど繊細な人間ではないし、サークルやら学科内ではケレスを英雄と茶化して笑い話にしてくれる人間もいる。もちろん、男女問わず敵視してくれるような何ともありがたい人間も存在はするけれど。
 大きく動いた気がする一年がようやく終わろうとしていた十二月のことだった。クリスマスイヴを三日後に控え、年内の講義は最後となるその日、講義の終わった後帰宅するためにキャンパスをひとりで歩いていた時のこと。

「…………」

 中に何も入ってなさそうなくらい薄いバッグを軽そうに肩に掛けた、それは陸の姿だった。もう半年以上姿を見ることのなかった陸。その陸が学校に来ていたからと言って、特別修羅場を想像することはなく、しかし特に声をかけようと思うでもなくケレスは黙って歩を進めた。

「ケレスー!!」

 少し高めの声。もちろんそれは、ケレスに気づいたらしい陸の声だった。
 顔を上げてそちらを見ると、少し離れたところで陸が嬉しそうに大きく手を振っていた。

「もうちょっと待ってろよー!」

 にっと笑って右手で銃の形をつくり、ばぁん、とケレスに向かって撃つ素振りをして陸は去っていった。まるで子供だ。
 ――千鶴について、恐ろしいくらい何の言及もなかった。
 彼はそういう人間だと思っていたし、実際にそうなのだろう。あんな写真が堂々と出回って、陸だってそれを知らないはずはないだろうにこうして学校に来ている。
 もうちょっと、ということは、もうちょっとすれば陸はやってくるのだろう。




 学校には出てこないくせに、千鶴は仕事はきっちりこなしているらしかった。もちろんいろいろ問い詰められたりはするのだろうが、友達です、と言い張っている。実際のところ千鶴とケレスは単なる先輩後輩の間柄で、千鶴には陸という存在があるのだから間違いではない。ただ、今は少し疎遠なだけで。
 学校に出ず、仕事をしているくせに、暇になれば彼女はケレスの部屋を訪れた。ケレスが大学の構内で陸に出会ったその日も、夜中に彼女はやってきた。
 中から鍵を開けてやって、玄関に入ってきた千鶴に、今日陸に会った、とひとこと言ってやろうと思ったが、先に千鶴が口を開いたのでそっちを先に聞くことにする。

「明日も仕事で朝早いから、今日はすぐ帰るの」
「なら寄ってないで早く帰りゃいいだろ」
「私が顔出さないと不安かなぁ、と思って」
「寝言は寝て言えよ」

 照れなくていいのにー、と千鶴は茶化して笑い、それから、こほん、と小さく咳払いをした。

「三日後は暇ですかっ」
「あ? ……あー、バイト入ってたな」
「……え、何それ、イヴに引っ越しする可哀想な人がいるってこと?」
「大家族の引っ越しだそうだ」
「あ、なんだ、てっきり恋人のいないさみしーい人が腹いせに引っ越しするのかと」

 それじゃあ夜は暇? 千鶴は続けてそう問う。
 朝から始める仕事だから、夜遅くまではかからないだろうと思う。……が。

「お前の方が忙しいんじゃないのか」
「え? あ、夜には仕事終わるから平気」
「……つっても、出掛ける気はないぞ」

 彼女はきっとそれを期待しているのだろう。
 おそらくは去年まで陸とそうして過ごしていたように、夜景を見ながら高いものを食べて、ツリーを見て。そんな人ごみに出掛ける気は少しもない。ただでさえ肉体労働をしたあとのことだ。彼女からブーイングが来るかと思いきや、意外にも彼女は笑顔だった。
 すこし、困ったような笑顔だった。

「いいの、それで。ここでゆっくりできたら、それでいいの。料理くらいは作らせてね」
「……何か悪いもんでも食ったのか、お前」
「何それひどーい! ……でも、いいんだ。そう言われても仕方ないもんね。私だってびっくりしてる」

 今までに比べてなんとなく彼女はしおらしく、いやに謙虚だ。
 ケレスをあの人ごみの中買い物に連れ出した彼女はどこに行ったのかと思えてしまうほど、今日の彼女はいつもと違う気がした。
 じゃあまた連絡するから、と言い残して彼女がドアを開ける。送る、とケレスが申し出ると、やっぱり謙虚に彼女は首を振った。

「あのね」

 部屋を出る直前、ぽつりと彼女が漏らす。

「クリスマスに自分から誘うなんて、初めてなの。断られたらどうしよう、って緊張しちゃった」

 だってケレス君からなんて絶対誘ってくれないでしょう? 彼女は笑う。
 その顔がほんの少し紅潮して見えるのは、寒さのせいなのかその緊張のせいなのか。
 最初にこの部屋に来た時の性格の悪い表情からは比べ物にならないくらい、今の彼女は子供っぽい。何事だよ、と思いながらも、じっと見上げてくる千鶴の唇に触れるだけのキスをしてやる。

「……普通のキスって初めてかもね、ケレス君」
「人を変態みたいに言うな」

 えへへ、と笑って唇までマフラーで覆うと、今度こそ彼女は出て行った。かつかつとブーツのヒールの音が徐々に遠くなっていく。
 ――今日、陸に会った。
 たったそれだけの言葉は、伝えるタイミングを失ってしまった。




『え、忘年会?』

 その三日後、夜に彼女と会う約束をした当日。引っ越し作業の仕事は終わったものの、時期も時期だし独り者の集団で忘年会に行こうという流れになっていた。ケレスは独り者と断定するにも恋人がいるとするにも疑問符がつく。彼女との約束があるのはわかっていたが、先輩がどうやら失恋直後らしく自棄になっているのか自分は約束があるんで、などと抜けられる雰囲気ではなかったのだ。
 その旨を電話で千鶴に告げると、そっか、とわりとあっさりした返答が返ってきた。

『まだ仕事の、その、事務所にいるの?』
「あ? ああ」
『どれくらいで出発?』
「さあ。気分次第だろ」
『そうなんだ。じゃあ今から急いで行くからそれまで待ってて。すぐ終わるから』

 それきり通話は切れ、それから三十分弱。もう日も暮れた頃に、本当に彼女は現れたのだ。例の車で乗り付けた彼女は、大き目の紙袋を手に車から降りた。

「間に合ったんだ、よかった」
「普通わざわざ来るか? しかも仕事だったんだろ」
「私いつも出来がいいから早めに終わったんですー。じゃあ邪魔にならないうちに、はい、これ」

 彼女は白いコートに身を固めて、手にしていた紙袋をずいっとケレスに差し出した。黙って受け取ってみると、それは結構な重量がある。隙間から中を覗いてみると、どうやら衣類のようだった。

「コート、似合いそうなの見つけたから。クリスマスプレゼント。それだけだから」

 忘年会行ってらっしゃい、と笑顔で告げると、彼女は足早に車へと戻る。
 それがこの間見た困ったような笑顔のように見えて、ケレスは紙袋を持ったまま彼女の後を追って、素早く助手席に乗り込んだ。

「こんなもん貰っても、俺は何も用意してない」

 そんな考え自体少しもなかった。
 今、陸と疎遠な状態にある千鶴に、だから返す、とも言えなかったのだが。
 千鶴は何を期待していたのか。光るアクセサリーのひとつでも与えればよかったのか。
 千鶴の反応は、違うものだった。

「……いいの。何もいらないの」
「何をするにしても完璧で、他人から見て一番綺麗な自分が好きなのにか。崩れてるぞ、お前」
「……そうなの、わかんないんだけど、崩れてるの」

 ハンドルに手をかけて、また困ったように千鶴は笑った。

「去年まではね、ホテルの最上階のレストランで、陸君と一緒にフレンチを食べて、私は手編みのセーターをあげて、陸君はネックレスをくれて、それから夜景の見えるバーに行って、帰りは綺麗なツリーの前でキスするの。それが一番綺麗で、一番望ましい形で、それが一番いいんだと思ってた。……でも、何でだろう。今は違うの。これでいい、って思えるの。ケレス君は私が何かあげるとしても、何か用意してくれるような人じゃないってわかってるのに、これでいい、って。それに、ケレス君には手編みのセーターなんてあげようと思えなかった。何でだろう、最近おかしいみたい。……どうしよう」

 ハンドルを握る手の力は強まったようだ。
 何なんだろうね、と軽く言ってみせる彼女の表情は、困ったようなものから泣きそうなものへと変わっていく。
 彼女の「どうしよう」が何度も響いていた。どうしよう、というのは、一体何を?
 彼女に言わなければいけない言葉を思い出して、ケレスは思案する。
 言った方がいいだろうし、言うべきなのだろう。けれど、これを言ったら彼女はつい先日の、雑誌に写真が載ってしまったあの時のように壊れてしまうかもしれない。
 ――そんな状態を好ましいと思ってしまうのも事実だ。

「……この前、大学で陸に会った」

 千鶴の目が見開かれた。

「……もうちょっと待ってろ、って言ってた」

 もうちょっと待ってろということ、もうちょっとで戻ってくるということ。

「あ、……ぁ、ど、しよう、……どうしよう、私、どうしよう……!!」

 もう飽きるほど見た彼女の泣き顔がまたすぐ近くにある。どうしよう、と何度も何度も呟いて、見開いた目からぼろぼろと大粒の涙を零していた。
 もう十分追い詰められているのに、不安定になった彼女を見ると、どうしてももう一押ししてしまいたくなる。警鐘さえ鳴らない。気分は高まるのに、いやに冷たい声で彼女に告げる。

「……よかったな、思惑通りに事が進んで」

 陸のあの動じた様子のない声。態度。
 千鶴の計画したようには進んでいないことを知っていた。
 それでも、そんなことを知るわけもない千鶴を更に追い詰めるには十分すぎる。
 痛いくらいの泣き声が、路傍に停められた車内に響いていた。






時期はずれ。
もう疲れた。
でももうすぐ終わる。


超スピード展開で出てきた陸さん。陸さんてば一番悪い人です。最低ですこの人。
修羅場とか大好きですよ私!
なんかやっぱり皆川純子のTRUTHは千鶴さんぽい。
最初は嫌な感じだけど異様に可愛くなる人を書きたかったらしいが上手く玉砕してます。


貢ぐ、っていう感覚じゃなくて、その人がそういう人なら見返りを期待しなくてもいいや、と思えるようになったんでしょう。けど元鞘になったらなったで陸さんに対してはこれまでの自分を捨てられないと思うのでまたかわいそうですね。
もう寝ます。すいませんでした秋臼さん。私死ねばいいのに。

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2008.04.20(Sun) | Title | cm(0) | tb(0) |

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