プロフィール

軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--) | スポンサー広告 |

ごめ、過ぎちゃった……



 自分らしくない、とは思いながらもお約束のイベントは一通りこなしておきたいと思った。
 テーブルの中央に小ぶりのケーキ。手作りにしよう、と思って作り方を教わりに行けたのは、彼が昨日から遠方に仕事で出かけてしまったからだ。今夜帰ってくるというから、今日の昼間は義理の伯母さんに作り方を習っていた。私は昔から料理や家事はちょっとどころじゃなく苦手だったものだから、どうにか食べられるものを作らなければ、と私も、教えてくれる彼女も躍起になって。
 本当はなるべく甘くないものを作りたかったけれど、「基本もできないくせに応用しようなんて甘いのよ!」と言われてしまった。ついでに「あんたが作ったら多分どんだけ砂糖いれても適度に苦くなるわよ」とも付け加えられた。流石にこれはちょっと酷いなと思ったけど否定は出来なかった。
 全部つきっきりで見てもらって作ったはずなのにどうしてか私の作ったケーキは不思議な味がして、「進歩した方よ」と励まされたけれど、何となく情けない。料理さえできたなら、最初から私の勝ちだったかもしれないのに!

「遅い、ですわね……」

 壁に掛かった時計を見上げて思う。もう少しで彼の誕生日が終わってしまう。メールや電話じゃ味気ないから、ちょっと驚かせたいと思っていたのに。学生なのに社会人として仕事もしている彼だから、邪魔することだけはできないけれど。
 プレゼントも用意していない。プレゼントは私です、なんてお決まりの台詞を言っても彼は爽やかに笑顔でスルーしてしまうだろうし、何よりそんなことを言うのはかなり気が引ける。あるのはただ、不思議な味のするケーキだけ。単なるイベントだから。もう終わったゲーム、その延長上に用意されたイベントに乗ってみようというだけ。このイベントにはケーキがきっと必要だから、だから用意した、それだけ。
 緩く波打つ髪を指に絡めて遊びながら、時が過ぎて彼が帰ってくるのを待つ。かちゃり、と鍵の回す音が聞こえたのはそれから間もない時だった。

「ただいまー」

 一日振りに聞く彼の声がどうしてかすごく懐かしいように聞こえて、私は席を立った。

「おかえりなさい、炎而様!」
「お、まだ風呂にも入ってなかったんだ? 珍しい」

 本当にきょとんとした顔で、私が何を考えて今までリビングにいたかなんて分からない様子。どうせ今日が自分の誕生日だったことも忘れているのだろう。それはとても彼らしいと思った。
 今日も疲れた、と疲れをあまり感じさせない笑顔で彼は言いながら、私の後を歩いてリビングに向かう。いつも座る自分の椅子の背に上着を掛けて、それでようやくテーブルの中央に見慣れないものがあることに気づいたようだった。

「まだ少し時間ありますわね。間に合ってよかったです」

 ケーキの皿を覆うラップを外すと、今日何かあったの、とこれもお決まりの台詞だ。彼と出会ってからもう数年になるけれど、毎年毎年彼はこうして自分の誕生日を忘れている。そこまで無頓着にならなくても、と思うくらいに。私や野島流風、他の友人の誕生日や何かは律儀に覚えているのに。

「今日、お誕生日でしょう?」
「あ、そっか、そういえば」
「祝日で覚えやすいのにどうしてそう忘れられるのか不思議ですわ」
「ひとつ年取るってだけでそんなに特別なものだと思えないからかな」
「人のことは盛大に祝うくせに」
「自分と他人は違うだろ? 誰かの誕生日を祝えるのは、その人が生まれてきてくれてよかったって思えてるからだと思うし」
「あ、……」

 私は、どうだろう。そうなのだろうか。少し違う気もする。
 深く考えようとして、蓋をする。深く考えようとするとぎゅっと胸の奥が苦しくなるようで、これ以上考えたくないと思ってしまう。
 私は、違う。頑張ったのはイベントだからだ。一緒に生活するようになって一番最初のイベントだから、外せなかった。それだけ。
 私が変に黙ってしまったのに気づいたのか、彼の方が「これは?」と話題を振ってくれた。

「折角ですから作ったんです。一緒に生活し始めて一番最初のイベントですもの、逃す手はありませんわ」
「………もしや手作りですか椿サン……」
「去年や一昨年を思い出してもらっては困ります。今年はちゃんと紗央おばさまに付き添っていただいて作ったんですから」
「へー……。何か意外だな、いつもの調子でとんでもないの作るのかと思ったのに」
「それは、……お料理を、おばさまに習おうと思って、それの第一作です」

 そんなこと思っていなかったのに、口から変にリアリティのある嘘が零れた。どうしてちゃんと作ろうと思ったんだろう。この家に来てから、自分の至らなさに色々気づいたから? 家事が何一つできないことを再認識したから? それだけなんだろうか?

「……食べて、いただけますか?」

 正直それだけが不安だった。これまでなら有無を言わせないところなのだけれど、今日はなんだか緊張してしまってそんな余裕もなくなっていた。
 彼は、私が調理実習でも失敗できる人間だということを知っている。教えてもらったからと言って確実に上手くいっているものとは限らない。

「食べるよ。椿も成長したんだなー、ってことで」
「貴方の成長を祝う日でしょう? 逆ですわ」
「成長祝われるような年じゃないよ」
 
 フォークを差し出すと彼は普通にそれを受け取り、普通にケーキに刺して、一口食べた。

「……なんていうか、不思議な味がするんだけど」
「教わった通りに作ったはずなんですけれど、おかしいですわね」
「けどすごい進歩だよな。不味くないし」

 不味くない、と言われるのは多分女相手には最悪の言葉だろうが、私も自分をよくわかっているつもりだから心は痛まない。多分、少しも。もしかしたら少し複雑かもしれない。でも、彼の言っていることはよく理解できる。
 彼がいなければきっと、こんな台詞を言われることも、そう言われることが実は複雑な気分になるのだということも、私は知らずにいた。

「――お誕生日おめでとうございます、炎而様」

 貴方といると、新しいことにいくつも出会うんです。
 いつか私も知らない私と出会うんじゃないかと思うくらい。
 それは嫌じゃない。寧ろ、好ましいと思う。
 それなら私は、彼と出会えたことをきっと後悔はしていないのだろうと思う。まだよく、わからないけれど。

「俺のために頑張ってくれてありがとうな、椿」
「いえ、外せないイベントですもの。当然ですわ」

 こうして感謝の言葉をかけられるのも心地いい。
 こうして穏やかな時間を過ごすのも、心地いい。
 本当にちゃんと料理を習ってみよう。もう少しくらいなら上手に作れるようになるかもしれない。
 そんな風に考えられる私にまた出会った。






同居したのが3月始めか4月、で一番最初のイベントがエンジ君の誕生日。と思ったら過ぎてしまった。すいません。
これがきっかけで料理を習い始めるといい。
これまでは毎年手作りのケーキとか作っても例の劇薬みたいなもんだから単なる嫌がらせだったのが、ちゃんと食べられるものを作ろう、と思ったのがこのお嬢様の進歩。何この子成長するのね。
好きだとかなんだとかそういうのじゃないけど、エンジ君と一緒にいるのにすごく慣れた感じ? 人として当然好きなんだろうけど、恋愛云々ではあるわけがない、と自分で決め付けていると思われるこの子。一番大人ぶってるくせに中身は一番子供だから、いろんなことに気づくのは一番最後でいいよ。


ごめん遅れた!! でも書いた!! 本当は間に合わせたかった!!

ということで日付をいじります。(笑)

スポンサーサイト

2008.05.05(Mon) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

この記事へのトラックバックURL
http://hechima1222.blog88.fc2.com/tb.php/119-9ebc5627
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
Name
E-Mail
URL
Title

password
管理者にだけ表示を許可
/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。