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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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5――merchant and thief

 正直、あと半年くらい砂は食べたくない。
 と、シンゴは思った。
 ルカを黙らせてから一時間弱は歩いて、あの木の幹まで辿り着いた。
 木が一本しかないというのは、学のないシンゴからしてもおかしな話だとは思ったが、この砂漠に一本でも木があるということは、そこまで遠くない場所に水源があるだろうと推測できる。水源にはおそらく人がいるだろう。これだけの暑さで自分がこれだけ判断できていることにシンゴは正直自分で驚いていた。
 この気温でこの労働。喉は渇くし、シンゴだって普通の人間だから体力も奪われていく。人をひとり担いで砂の山を登るのは楽な話ではなかった。途中何度も足を取られて転んだし、しこたま砂を食うハメになった。砂はうまくない、ということを痛感した。
 これまで町を一日中働きまわっただけでも激しい全身疲労に襲われたのに、今回はそれ以上だ。倒れたときのルカほどではないが、呼吸も経験したことのないくらい荒くなっていた。
 木が生えている、ということは、地下水があるか、地下の土壌に水分が豊富に含まれているかのどちらかだ。確実に水を得ようとするなら穴を掘るのが一番なのだろう。しかし、それでは時間が掛かりすぎる。
 なので次にシンゴは、生い茂る緑の葉を手にした。枝から切り離してみると、そこそこに肉厚で、一時的な水分摂取が可能なように思えた。
 子供の頃から、木の実などを取って食べることには慣れている。これまで腹を下したことは一度もない。経験と勘に全てを託して、シンゴは葉を口にした。

「っ、くそー……、さっすがにもうルカさん起きてんだろうなー……」

 それからまた一時間ほど、シンゴは一人で歩き続けていた。あの葉に特別な成分が含まれていたのか、相当に体力を回復した気がするのだ。ルカはあの木の幹に寝かせてきたが、伝言を残さずともルカなら同じことを考えるだろうと見込んでいる。問題は、自分が戻るまでルカが無事に待っていてくれるかどうかだった。さっきあれだけ罵倒してしまったし、急にいなくなった自分に対して呆れて一人で行動を始めてしまっているかもしれない。その点はルカを信用するしかない。信用している。ルカの方だって、今は一人で行動する方が危ないということをわかっているはずだ。だから、自分は出来る限り早く、ルカの元に戻る。取りあえずは、傷の手当てをするための薬が要る。万が一に備えて、あの木の葉を大量にマントに包んで、まるで泥棒が風呂敷を担ぐような状態で砂の上を歩く。
 広大な砂の大地に、何度目かの絶望を抱き始めた頃、そう遠くないところに建物の連なる影が、陽炎の向こうで揺らめくのが見えた。



 シンゴは、救命行動というのは、人類共通の本能のようなもので、常に行われるべきものだと思っていた。倒れている人、溺れている人がいたら助ける。それはお互い様で、当然の行動だろう。実際シンゴは、そんな場面に出くわしたらそうしてきたつもりだった。
 なので、目の前の光景に、驚きを隠せなかった。
 ――どこへ行っても、薬を分けてくれるような気配が無い。
 確かにシンゴは金は持っていないが、シンゴの思う理論からするとかなりおかしい。
 それに、至る所でどうせ盗賊の一味だろうと言われるのだ。意地の悪そうな商人を中心に。ここでは自分は異人なのかもしれないが、それにしたって盗賊呼ばわりするなんて。そこまで落ちぶれちゃいないのに、とシンゴは思った。実際に盗賊にお目にかかったことがないから、今の自分がものすごく盗賊じみた格好をしている可能性も捨てきれはしなかったが。
 オアシスを中心に広がるこの町は意外と広く、シンゴは根気強く、一人ひとりに話をしていったがどの人にも相手にされないまま時間が過ぎ、少し一人で休もうと市場を縦断して路地裏に入ろうとしたところで、ひとりの青年とぶつかった。

「あ、悪いな」

 ぶつかった拍子にシンゴは手荷物の葉をすべて地面にばらまいてしまった。青年は、前見てなかったからさ、と悪びれる様子もなく言うと、屈んでシンゴと共に葉をかき集める作業を始めた。
 青年は見たところ、シンゴより少し年上に見えた。背には自信のあったシンゴだが、この青年も同じくらいあるだろう。服装も、今のシンゴと大差ない、本当に地味なものだった。
 あんまり見ているのも失礼か、とシンゴも手を動かし始めた時、青年が不思議そうに口を開いた。

「……なんだ、お前商人か。そんな風には見えないな」

 盗賊の次は商人なんて、真逆にも程がある。そこまでずる賢い顔はしていない、どころかシンゴは自分に賢さの要素が皆無であることを自覚していた。ルカならともかく、自分が商人に間違われるなんてことはあってはいけない。当然、シンゴは、いえ、と首を振った。

「じゃあお前、これはどこで?」

 瑞々しい緑の葉を一片つまみ上げると、青年は問う。

「迷ったんです、砂漠で。迷ったっていうか遭難っていうか、ですけど。俺の大事な人は今すげえ怪我してて、この葉の木の下で待ってるんです。ほんと、動けないくらい酷くて。だから、ここで薬とか貰おうと思ってたけど、全然相手にされなくて……」
「これの木からここまで歩いたのか!?」
「あ、はい。……動けるの俺だけだし、俺がどうにかしなきゃ、あの人も死んじゃう。あの人も俺も、こんなわけわかんないところで死ぬわけにはいかないから」

 シンゴにとってはそれ以上もそれ以下もない理由だったが、青年は腑に落ちないらしくシンゴの顔を舐め回すように見つめる。ものすごく疑り深い目だったので、シンゴも対抗して目線を彼に集中させた。 

「……これが何か、知らないんだな? お前」
「は? はい。それ噛んでみたらちょっと元気出た気がするし、ほんとあの木見つけてよかったです。俺が町に着くまでに何かあったら困るからマントに包んでしこたま持って来ました」

 なるほどねえ。意味深に青年は言うと、摘んでいた葉もマントの中に落とし、再び口を開いた。

「ここの砂漠は本当に恐れられてるんだ。ここのオアシスはでかいから、必然的に町もでかくなる。だからここはともかくとしても、他の小さいオアシスの付近の集落なんかは一瞬でやられちまうような砂嵐が起きたりする。それに、この暑さも異常だろ? この辺じゃ、一人が怪我や暑さでやられたら、その一人のためにパーティー全員が犠牲にならないように、そいつは置いて先に進むって慣習があるんだ。ここの連中がお前を相手にしなかったのはそのせいだろう。それも知らないってことは、……砂漠なんかとは縁の無いところから来たな、お前」

 当然だ。これまであんなに熱い砂を触ったこともないし、こんなに暑い空気に体を晒したこともない。全員を犠牲にしないために一人を犠牲にするなんて、そんなこと聞いたこともないし、受け入れがたい。ルカを置いて先に進むなんて、できるわけがない。そもそも自分がここにいるのだって、先に進んでいるのではないのだ。必要なものが揃えばすぐに戻る。一時間以上歩いたって、シンゴは『進んだ』とは少しも思えていない。
 シンゴが複雑そうに黙り、それを見て青年は満足そうに笑う。裏があるような、まったくないような。それでも悪い人には見えなかったので、シンゴはさっきからの疑問をぶつけてみることにした。

「ここで散々盗賊云々って言われたんですけど、それって?」

 その言葉に、青年は今度は目を細めた。少し不愉快そうなその表情は、明らかに憂いを表していた。

「この砂漠には厄介な盗賊が出るんだ。しかもたった2人。強そうに見えるのは片方だけで、もう一人は押せば倒れるんじゃないかって容姿をしてるって噂だ。だが毎回どこに現れるか不特定な上に、表面上非合法の商人の積荷ばかりを狙う。妙な魔術みたいなのを使うとかも言われてるし、厄介の二文字で済ませられる相手じゃない。捕まえたら国の広場のど真ん中で公開一週間死刑だね、俺ならv」

 確かに盗賊という響きは物騒だし厄介だが、目の前の青年の発言も相当物騒で厄介なんじゃないだろうか、とシンゴは思ったが、ここで水を差すと困ったことになるかもしれないと本能が働き、無難な方向に話を戻した。

「表面上非合法、って、どういうことスか? あ、すいません、俺賢くなくて」
「いや? 誰だって言われなきゃわかんないだろうさ。――裏取引だとか密輸だとかを国が認めてる、いいや、国が依頼してる場合も少なくない。ってことだ。法律じゃダメってことにはなってる、けどその法を作ってる国が頼んでる。面白いだろ? この砂漠は下手しなくても死ぬかもしれない。そのリスクはあるけど、砂漠を突っ切れば迂回するよりずっと早く隣国に着ける。面倒な検問も砂漠にはない。運ぶ物がモノだから検問はないに越したことがないしな。国がそういうのを依頼するときは報酬は通常の何倍も高い。まあそれは報酬を何倍も払っても余りあるくらいこっちに、あ、いや、国に利益があるからなんだけど……、その代わり、当然確実性が求められる。国家関与だからな。なのに盗賊に襲われる、となると、商人も国も利潤ゼロ。な? 殺したくなるだろ?」

 話が死刑に戻ってる気がしないでもない。
 青年は明るく、国家関与の闇取引なんていつの時代もあるんだよ、と笑った。
 つまり、その二人の盗賊は、たった二人でありながら、一つの国家に損をもたらしている。盗賊は正義ではないが、もちろん非合法のものを運ぶ商人も正義ではないし、依頼する国があるならその国だって正義ではないだろう。今まで何の不都合もなく生きてきたシンゴには現実味も湧かないし、リアルな想像もできなかったが、こうも正義の不在を知らされるとは思っていなかった。

「……ちなみに、非合法の積荷って……?」

 聞かない方がいいだろうと思っているのに、好奇心に抗えずについ聞いてしまう。
 青年は快く答えた。

「他がどうかは知らないけど、ここ近辺の商人の間じゃ絹だな。絹は仕方ないよなー。ありゃ密輸する気もわかる。国家関係はさすがに俺も年相応の青年だし? 存じませんねえ」

 かなり不思議なはぐらかし方だったのだが、シンゴはさほど気にしなかった。というよりも、どこを気にすべきなのかシンゴの頭には判断がつかなかったのだ。

「で、最重要事項だけど。ここら辺じゃ、この葉が一番の薬なんだ。つーか万能薬なんだよな、これ。どんな怪我なんだか知らないけど、塗るとかすればどんな酷い怪我も数日で治る優れもんだ」
「は!? な、何ですかそれッ、徒労ってコトですか!?」
「いやいやいや、まあ聞け。この葉は俺が全部買わせてもらう」
「ちょっ、それじゃあ俺に干からびて死ねって言ってんスか!!」
「ちーがーう。誰が掻っ攫うっつったんだよ。金は払う。お前本当にこれ以外何も持ってないみたいだし、水と食料は最低限必要だろうが。それと、戻るときこの蜂を使え」

 青年は折りたたまれた麻布のをシンゴにそっと手渡した。受け取ったシンゴがそれを広げると、足に綿をつけられた蜂が三匹、横たわっていた。

「そいつは今は麻酔で眠ってるが、砂をかければ起きて活動する。その蜂、この葉の木に向かって飛ぶ習性があるらしい。かなり鈍足で、体力さえあれば追えない速度じゃない。俺が実証しようと思ってたんだが、実験の手間が省けた。いやあ有難い。二匹は予備だから好きに使え。針は抜いてあるから安心だ」

 青年は、にっと笑うと、シンゴの承諾も得ないままに、自分の麻袋に葉を詰め始めた。それらを手早くすべて詰め終えると、袋を担いで、今度は懐からまた袋を取り出す。袋はパンパン、聞こえる音から推測するに、金貨か何かだろう。

「代金だ。取っておけよ」

 シンゴのいた国と、今いるここでの貨幣価値の差異がどれくらいのものかは分からないがともかく、シンゴが受け取ったものは、シンゴが今までに手にしたことがある額の何倍も何十倍も何百倍でもあることは間違いなかった。

「大事な人とやらが待ってんだろ。食料買って早いとこ戻ってやれ。この辺は寒暑の温度差が激しいから、ろくに治療もしないで夜の冷気に当たったらいくらなんでも危険だ。暗くなると蜂も見えにくくなるから戻りにくくなる」
「あ、っ、有難うございます!! 何から何まで、本当に!」
「いーや、俺の方がいい買い物させてもらったよ。本当、前方不注意しとくもんだな」

 さあ行けよ、と青年の爽やかな笑顔に後押しされ、何度も頭を下げるとシンゴは駆け出した。走りながら肩に掛けるマントが幾度もずり落ちてきたが、気にしている時間的余裕はない。夕刻は刻一刻と近づいていた。




「……ホント、あんたって最低ね、ヤマト」

 走り去るシンゴの背を見送る青年の後ろから、二人のやりとりの一部始終を見ていた女が声を掛けた。

「賢いって言ってほしいな。飛んで火に入る夏の虫並みのアホだな、あいつ」
「買い取り価格は通常の四分の一。その量に対して金貨あれだけなんて普通考えられない。訴えられても知らないから」
「訴えるなんてあるわけないだろー。一番取り締まりの厳しい植物だぜ、コレ。非合法だとかそうじゃないとかいう問題じゃない。次会ったら死刑にしないとな、あの男」

 しかし、と青年は思う。
 この第三オアシスは、あの木から最も離れた所に位置している。単に近場が分からなかっただけなのだろうが、それにしてもあの距離を動物を使わずに歩いて渡るのは並みの人間の体力、精神力では不可能だ。

「……相っ当ワケアリだぜ、あれは」

 青年は喉を鳴らして笑うと、あー面白ぇ、と呟き、袋を担ぎなおした。

「行くぞ、ルミ。夜には会議だろ?」

 さて、どんな死刑にしてやろうか。
 シンゴを相手にしていた時とは違う、爽やかな笑みで、青年は人ごみの中を歩いていく。その背を、女は慌てたように追ったのだった。





点呼どん、をめでたう。(遅)


ちょっと存在だけ出した、灼熱の追剥ブラザーズ。
ヤマトはあと最後まで出てきません。(多分)
でも書いてて楽しかったです。


付け加えます。
何だか設定が意味不明になってきました。
ルカはこの後ただの知識キャラになるんじゃないかと思います。
創兵君を何故か神官にしたくて仕方ないんですけどどうしてでしょう。
出すなら絶対神官、と思いつつ、神官って何するんだろう、と思う。
譲歩して神官でなくても、教会の人がいいなあ。
大和の近くに風哉くんいたらいいなあ、とか思いつつ、風哉くんもカタカナにすると難しいよね。
あー、しかし眠いかもしれない!
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2007.06.14(Thu) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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