プロフィール

軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--) | スポンサー広告 |

霧雨を乞う



 雨の降る夜、秋の日だった。
 夏が終わって間もなかったが、だからといってまだ夏だと言える気温ではなく、雨が降れば思わず震えるほどには寒い。しとしとと止む気配を見せず控えめに降り続ける雨は、容赦なく理央のスーツを濡らし、髪を濡らし、指先を冷やした。
 いつもは降水確率に関係なく鞄に入っている折り畳み傘を忘れたのだ。先日出かけた時に別のバッグに入れたのが原因だろう。
 ――そんなことも、もうどうでもよくなっていた。ここから自宅までの道を、どうやって時間をかけて辿るべきか、ぼんやりとした頭でそればかりを考える。いい案は浮かばない。

「理央」

 ぱしゃん、と水を踏む音。目の前に人影。
 気づけば自分の頭上の雨は止んでいた。俯いていた頭を上げて、影の主を見る。

「……響」

 片手に傘、もう片方の手には珍しくスーパーの袋が握られていた。何か急に入用のものでもできたのだろう。何を買ったのか、いつもなら軽く聞いているところだが、今の理央はそんな気分にもなれなかった。相手の苗字を呼んだだけで、緩慢な動きで再び頭を垂れる。そのまま歩き出そうとすると、片手を掴まれて、そう強くない力で引かれた。自然と足が要に着いていく形になる。元来た道。クリニックは、ついさっき通り過ぎたばかりなのに。

「もういい時間だ。何をしてた」

 理央が着いてくるのがわかったのか手を離し、傘を心持ち理央に傾けながら要が言う。理央は依然顔を俯けたままで、口を開いた。

「……どうしたら、このまま朝になるか、考えてた。……夜ってのは案外長いな」

 朝になって、奈央が仕事に出れば自分も部屋に帰れるだろうと思っていた。 
 今は、どんな顔をして会えばいいのか、わからない。連絡をしなければいつまでも奈央は部屋で待っているかもしれないのに、それさえ怖くてできなかった。
 そうして黙ったまま歩いて数分、要がクリニックの扉を開ける。暖かい、と理央は思った。

「今タオルを取ってくる。逃げるなよ」

 逃げるものか。どこへ逃げればいいのか。雨と闇に身を紛らわせればいいのか。せっかくそうしていたのに、お前はそんな俺と出くわしたんじゃないか。
 閉じた玄関の扉に背中を預けて、まだ理央は俯いていた。
 奈央の暖かさがする。なんだかすごく、居心地が悪い。
 要はすぐに戻ってきた。理央の頭に大判のタオルを被せ、すっかり濡れてしまった髪を粗く拭いていく。

「こんなに冷えてたら風邪引いて、奈央が」
「瀬川にプロポーズされたんだそうだ」

 奈央が心配する、ときっと続くはずだった言葉を、理央は遮った。
 分かっていた。要がきっとそう言うだろうことも、空がそうするだろうことも。
 理央の髪を拭く要の手が、一瞬だけ止まって再び動き出す。

「奈央が断るわけがない。わかってる。俺だって、断って欲しいわけじゃない。……なのにどうして、俺は、」

 おめでとう、も、よかったな、も、何一ついい言葉を言えずに電話を切ってしまったのか。どうしてその報せを拒絶したのか。

「……奈央が、俺に、どうしよう、って言った。断る気なんかないのに、どうしよう、って」

 自分は奈央にとって唯一といっていい肉親だ。だから少しでも意見を仰ごうとするのは仕方のないことで、それもわかっているつもりなのに。
 奈央は、自分が拒絶されたように感じただろうか。そうではないのに。ただ、自分の心が弱いだけだ。随分昔からそんなこと分かっていたのに、奈央の知らせを拒絶する自分の行動に、理央は抗うことができなかった。

「寂しいのか」
「そんな女々しくない」
「そうか?」
「そうだ」

 寂しくなんか、ない。
 自分だけが置いていかれる気はするけれど。
 いつかこうなると知っていたんだから、寂しくなんか、ない。

「……けど、瀬川じゃなくて、お前とか、他の男が相手なら、俺ももう少し違った感情を持ったんだと思う」

 それならきっと、おめでとう、とか、よかったな、とか、ありふれた祝いの言葉を言ってやれたのに。奈央ほどでなくとも、空も理央には近すぎて、二人が共に近くからいなくなるようで、

「……だから、寂しいんだろう」

 要の諭すような声音に、今度は返事をすることができずに、再び項垂れた。
 ふう、と呆れたような嘆息が聞こえ、ばさりとタオルが取られる。

「風邪引いたら奈央が心配する。風呂に入れ」
「……そうやって心配する奈央も、もういなくなるんだな」
「必要なら心配してやる」
「結構だ」

 冷えた手をまた引かれて、靴を脱いでスリッパも履かずに廊下を歩く。
 まだ少し濡れている髪が額に付いて冷たさを理央に齎した。
 要の自室はクリニックの二階部分で、となればもちろん浴室も二階にあるのだが、その階段のすぐ手前まで来て理央は突然立ち止まった。

「……寂しい」

 もう二度と言うまい、と理央は思った。
 二度と言わない。誰の前でも言わない。
 要が返すだろう言葉も、それなりに付き合いのある理央には想像できたから、きっと自分はそう返して欲しくて零したのだろうから。

「……そうか」

 淡白な言葉。きっとこれでいい。
 慰めてほしいのだとすすり泣く自分をどこかで感じていたとしても、そんなことは声に出さない。その冷たさが欲しかったのだろう。心臓に氷柱を優しく付きたてたような、そんな冷たい痛みが欲しかったのだ。
 自分が可愛いばかりに妹の幸せも祝ってやれない自分を罰する、痛みが欲しかった。
 ――けれど。
 
「………寂しい」

 冷たさがほしいのに、痛みがほしいのに、なのに今、この手を離せない自分をどうか許して欲しい。
 言葉にはせずに心でそう呟くと、理央はまた、頭を垂れた。






いや、5月企画のリベンジじゃないんだけど、ずっとこんな感じのが書きたくてしょうがなくて、挫折しました。(誰の目にも明らか)



なんていうか、前クリチューだと奈央とくっつくの流風なんで、流風相手だと理央は別にそこまで嫉妬したりってことないんだけど、空だといつもこうやってひっかかるんだよね。
何でだろう何でだろうと思ってたら、奈央ほどじゃなくても空だって理央とすごく近いところにいるからだった。奈央を持ってかれるのももちろん嫌なんだけど、一番の友達の空も誰かに持ってかれる、っていう感じがするんだろうな。空のことも好きだから、奈央に対して若干嫉妬してる部分もあるのかもしれない。どっちにしたって女々しいよお前。

エゴイストパロも途中まで書いてたんだけど、こっちのが書きやすそうだったからシフトチェンジ。
好きなんです、要君と理央。
理央がいろいろちゃんと愚痴れるのは要君の前でだけだと思うから余計にね!!
ちょっと慰めてほしいとか心の中で思っちゃったりしてるけど、要君そんなに優しくないっていうのが好きなんだけどダメですか、もっとユーモラスでカッコよくて探偵ぽくないと……!!


しかし、咎狗プレイ後だからもっと理央可愛く書けるかと思いきや現実はそんなに甘くなかった。
理央はお約束でこの後風邪引くと思います。

まあいいや、書いててたのしかった。
秋臼さんすいませんでした。トシマに住もうと思います。(笑)
スポンサーサイト

2008.05.30(Fri) | Title | cm(0) | tb(0) |

この記事へのトラックバックURL
http://hechima1222.blog88.fc2.com/tb.php/124-d109b268
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
Name
E-Mail
URL
Title

password
管理者にだけ表示を許可
/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。