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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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あの青い薔薇は今日も咲く 8


 また学年がひとつ上がった春。
 もうすぐ五月になろうというのに、嫌に肌寒い深夜だった。

『ケレス、逢引しようか』

 表情が容易に想像できる声。少し高めで、軽く笑う、その声。
 時間なんて気にしない、いつでも自分の思うがままに進む、その声の主。
 ――陸が、戻ってきたらしかった。




「いっや、試験終わったのが今日ってか昨日でさ! 帰りの電車で寝こけて寝過ごして大変だったりして、まあいいんだけど、終わったから」

 誰もいない公園だった。先に着いていた陸はやって来たケレスを笑顔で手招いた。
 その声の調子からは疲れた様子など微塵も感じられなかったが、この一年あまり学校にも出ずに過ごし、それでいて単位も落としていないというのだからそれなりに努力をしていたのだろう。
 ただ、ケレスには当然わからないことがあった。

「お前、何の試験受けてたんだよ」

 一年間、聞く機会がなかった。千鶴も知らないようだった。一年間離れなければならないような試験なのか。
 陸はその問いをきょとんとした目で聞いて、それから首を傾げる。言ってなかったっけ? そう言い出しそうな表情だ。

「国家公務員Ⅰ種。所謂エリートって奴?」
「そんなもんにならなくても稼いで食ってけるだろ、お前なら」
「あ、何、モデルのこと言ってる? あんなの興味ないし、ただ金必要だったから荒稼ぎしたかったんだよ。やっぱ適当にマークして試験受けただけじゃ特待にはなれなかったからさ、学費って馬鹿になんないよなー。法学部まだ安いから助かったけど」
「お前学費自分で払ってたのか」
「あ、知らなかった? まあそっか、ちぃにも言ってないもんな」

 恋人にさえ話していないことを知っていてたまるか。そう思ったが、すぐに思い直す。陸は、千鶴にこそ話していないことが多すぎる。千鶴には大事なことは何一つ伝わらずに、だからこそ千鶴は動揺して、泣き出してしまう。全部陸の至らなさが引き起こしたことだ。

「言っとくけどさ、俺はただ自由奔放に生きていたくてちぃに話してないんじゃない。もちろんそういう部分もないとは言わないけど、知らなくていいことだから教えなかった」
「ならそうだと教えればいいだけだろうが」
「俺他人ってあんまり好きじゃないから、わざわざ他人を安心させるために自分のこと教えてやるなんて馬鹿馬鹿しいと思っちゃうんだよ」
「……俺も人のこと言えないが、お前も人として悪すぎるな」
「いいよそれでも。分かってるから」

 でも仕方ないんだ、と本当に悪気がないように陸は話す。これだけのことを分かっていて悪気がないわけがない。悪いと分かっていてやっている。自分のすることが、どれだけ千鶴を追い詰めるのかわかっているはずだ。

「高校の時、部活の夏合宿中に家が放火に遭って、父親と母親殺されたんだよ。うち親戚と疎遠だからそれから俺これでもかってほど孤独でさー。……言い訳だと思われるかもしれない。でもこれは事実で、そんなことでもなきゃ俺はこんなところでモデルで荒稼ぎなんてしようとも思わなかっただろうし、他にやりたいこともあったんだ。けど仕方ない、それで孤独慣れしたもんだから人間不信みたいになってんのも事実だし」
「それなら何で、」
「何でちぃと付き合ったか? そりゃあれでしょ、互いの利益一致」

 陸はブランコに腰掛けると、ゆらゆら揺れながら、笑っていた。

「ちぃだって、自分をより際立たせてみせる男ってことで俺を選んだにすぎないよ。俺のこと好きって言ってくれてる、それが全部嘘だとは思わないけど、俺の内面までを見て好きだって言ってんのかはわかんない。見てくれだろ、と思ってるよ俺は。それで、俺としては稼ぐためのステップ」

 ひとりで学費を支払っていくために金が必要だった、から、そのステップとして千鶴を使っているにすぎない。陸の理論は極めて単純で、千鶴の用意する理由よりもずっと冷たく聞こえた。

「でもさ、ちょっと変わってきたんだよな。……ちぃってさ、俺がどんだけ淡白な反応してもずっと待っててくれるんだよ、諦めないで、俺がちゃんと言葉返すまで。そういうのを見てると、俺も変わらなきゃいけないんだなと思って」
「……それで?」

 胡散臭い、とケレスは思った。
 この爽やかさは胡散臭い。本当にそう思っているのかかなり疑わしい。

「――ねえケレス、分かってるよな、お前は」
「……何を」
「ちぃがお前といるってことは、俺を待ってるってこと。あんまり興味なかったから全然手ぇ付けてなかったんだけど、お気に召した? ……ちぃがこれまでお前に何を捧げたとしても、お前といるってことは俺を待ってるってことなんだ。どれだけお前といるのが心地よかったとしても、お前といるってことは俺を待ってることをアピールする手段なんだろ?」

 陸はいつもの爽やかな笑みを湛えたまま、揺れていた。
 ケレスはその陸の様子を見ているだけで、何もすることはできなかった。そもそも自分がここにいることがおかしいのだ。千鶴と関係を持ったことも、全てが偶然の産物で、本来なら自分はこんなことに巻き込まれるべきではなかった。

「あの下らない雑誌の記事も今朝思い出して初めてちゃんと眺めたよ。随分前に買っておいてはあったからさ。それでもちぃは俺を待ってるみたいだ。こんなろくでもない俺なのに? 何一つ喋らないで、他の男使って気ぃ引こうとしてるのわかってて連絡ひとつ寄越さない俺なのに? そう思ったら、ああ俺もこの子に報いなきゃなと思ったんだよ。――そんなに俺だけ愛してくれてるなら、俺だって愛してやらなきゃ、なあケレス?」

 彼女が今まで陸のことでどれだけ心を痛めて、そしてケレスにどんな表情を見せたのか、知っていてもケレスは口にしない。そんなこと陸にだっておそらく分かっているのだ。
 陸が持ち出す根本的な理論は、おそらく。

「……振ってもいないし、別れてもいない。そういうことか」

 千鶴が振られたように感じただけで、別れが訪れたように思っただけで。
 そんなの屁理屈以外の何物でもない。仕事での繋がりが深いのに仕事を辞めると告げられて、真相を知りたいと言えばお前には関係ないだろうと突っぱねられ、それを振られたと解釈しない方がおめでたいだろうに。

「言っただろ、知らなくていいことだから教えなかった。ちぃには関係ないから教えなかった。あの頃はちぃの事別にそこまで好きじゃなかったってのは認めるよ。けどさ、よくあるだろ?」

 陸はブランコから下りると、ケレスの目と鼻の先にまで顔を寄せて、酷く歪んだ顔で、笑って見せた。

「離れて気付く大事なモノ、ってさ」

 その笑顔はあまりにも板についていて、捉えどころのなかった陸の本質は、きっとこうなんだろうとケレスは思った。陸の発言全てが嘘だろうとは思わない。けれど、全てが真実であるわけがない。
 やがて陸は表情をふっと緩ませて、口を開く。

「お前といる方がきっと幸せなんだろうと思う。俺が見たことのあるちぃって、完璧にいい女として着飾ったちぃだけなんだよ。お前の前では違うだろ? どうしようもない女の顔、見せてるだろ? きっとそういう顔、これから一生ちぃは俺には見せないと思う」
「……それは、お前もじゃねぇのか」

 口にはしたが、おそらく陸はそんなこととっくに分かっている。

「言っただろ、俺たちが付き合ってんのは互いの利益が一致してるからだ。ちぃは、俺の隣を歩く完璧な女としての自分が大好きなんだよ。そして俺も。そんな完璧な女に引けを取らない、あまつさえ手玉に取ってみせる自分が大好きだ」

 ――本来なら。
 自分から縁を切った女が他の男と一緒にいて、嫉妬のひとつでもして、こうして話を持ちかけるという流れが適切なのだろう。
 けれど、陸の場合は違う。嫉妬などという感情と、この男は縁がない。あったとしてもそれは恋愛感情からくるものではなく、自分を一番引き立たせるであろう相手が自分とは違う誰かに寄り添っていたから。
 全ては自分のため。究極のエゴイストでナルシスト。手に負えない男だ、とケレスは思った。

「………返せよ」

 馬鹿なんじゃないのか。返すも何も、最初から何一つ奪ってはいないのに。
 その思いは言葉にせず、少しだけ口の端を上げることで伝えた。






陸さんに「逢引しようか」って言わせたかっただけ。
3行で目的は果たしたのに長くなった。しかも面白くない。なんだこれは。
もうちょっと最低にしたかったのに(日本語変)、大してならなかった。
もうちょい続く。しかし酷いなあ。

青薔薇ルートの流風が書きたかったりする。99%すごいいい子で従順で子犬かなんかみたいなんだけど、1%はすごい悪い子、みたいなとんでもねぇクソガキをね。いや無理ですが。

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2008.06.03(Tue) | Title | cm(0) | tb(0) |

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