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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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18-1  sickness


 顔にまで飛び散った見知らぬ男の血液を拭うこともできないまま、ルカは金髪の同い年くらいの青年に取り押さえられ、意識を失ったシンゴは体躯の大きな兵士らしい男数人がかりで引きずられ、屋敷へと連行された。
 いくら抗っても、金髪の青年は心底楽しそうに笑うばかりで、ちっとも離してくれそうにない。ルカより少し背が高いくらいだろうに、ルカが思うよりずっと彼の力は強かった。
 屋敷の門を潜り、兵士達を率いて歩く、いかにも偉そうな青年。上等なのだろう上着を着ているあの男が、もしかしたら例の権力者なのかもしれない。屋敷の幅広の廊下を歩かされ、しばらく行った突き当たりでシンゴと分かれることになってしまった。シンゴより大きな体の男達が、シンゴを抱えて屋敷のもっと奥へと進んでいく。

「ッ、何でシンゴだけ!! 俺も向こうに連れてけ!!」
「やー、何を勘違いしとりますのん。あんさんの方がこれからひっどーい目に遭うかもしれんのに」

 金髪の青年はからからと笑った。……そうだ、今一番偉いらしい男は、この金髪の男と共にルカの近くにいる。嗜虐的であるのがこいつらならば、別室に連れられたシンゴにそこまでの危害が加えられることはないのではないか。あの兵士達に何か指示でもしていたとすれば話は別だが、これまでルカが目に届く範囲で特別に指示をしていた様子はなかったような気がする。シンゴに危害が加えられないのなら、自分はきっと何をされても耐えられる。死ぬこと以外なら。

「あんまり緊張すんな。取って食おうってんじゃない」

 低い声が笑っていた。こちらにしてみれば正に生きるか死ぬかの死活問題だというのに、緊迫感なく笑う目の前の二人に憤りを覚えて、両手を後ろで縛られたまま、ルカは敵意剥き出しで睨みつける。そうしたからといって、優位に立つ二人が怯むわけもない。そうと分かっていても、睨まずにはいられなかった。

「おー、勇者やなあ」
「優秀優秀。そうでないと壊しがいがないからな」
「きゃあっ、ヤマトはんったら怖いっ」

 完璧に遊ばれている。ルカとこの二人では、事態の捉え方がかけ離れすぎているようだった。
 そのまままたしばらく歩かされ、大きな扉の部屋へと通される。背中を押され、転げるように部屋へ入ると、金髪の青年がヤマトと呼んでいた男が薄く笑った。

「ツヅキ、しばらく下がってろ」

 その言葉に、ツヅキと呼ばれた金髪の男はあからさまに不満の声を漏らした。

「えー、一人で楽しもうなんてずるいやないですかー」
「うるせえな、大した用じゃない。地下でも行ってこいつの相方の様子でも見て来いよ。そっちで遊んでろ」
「なんや気が引けるわぁ、なんてったって野蛮やし」

 野蛮? それは誰のことか。深く考えなくても分かる、シンゴのことだ。

「ッ、誰が野蛮だ、ふざけんな!! あんたらの管理が抜かってるから脱獄なんて許しちまうんだろ!? シンゴは俺を助けてくれただけなのに、っ」

 シンゴはルカを助けただけだ。あの大きな叫びは、どちらかというと苦しんでいるように聞こえたけれど、それでも。

「……ほら、お前が怒らせたんだ。俺が話しつけるから、取りあえず今は下がれよ、ツヅキ」

 諭すようにヤマトが言い、それでツヅキはようやく部屋を後にした。
 シンゴを悪く言うのなら出て行って欲しいとは思っていたが、せめてこの手を縛る縄を緩めて欲しいと思った。こうして、手を縛られて権力者の前に出されると、もう酷く懐かしい気のする、あの城での出来事を思い出す。
 ツヅキが出て行った後、ぱたんと扉が閉まると、ヤマトは一呼吸おいてルカを見た。

「確かに、奴が逃げ出したのは俺たちの責任だ。お前は被害者だな」
「当然だ!! 俺たちはただこの町を通ろうと思っただけで、あんたらの杜撰な管理に巻き込まれただけだ!!」
「だな。それに対しては俺も異論はない」
「ならどうして俺とシンゴを別にした! 意識はなかったけど、俺だって心配なんだ、様子見させてくれたって、」
「だから、お前と相方を離したのはさっきの件じゃない、別の理由だ。聞け」

 先程まではあんなにもふざけた声色をしていたくせに、今は至極真面目だ。
 その様子を見てはルカもそれ以上文句は言えず、黙り込んだ。ヤマトはそんなルカの反応に満足したのか、笑いながら仕事用なのだろう大きな机の上に腰掛ける。椅子ではなく机の上に座ってしまうあたし、外見と行動が一致しているな、と思った。

「砂漠に、ある植物があってな。あの辺の特効薬として知られてる。大抵の病気や怪我なんかは数日で完治させることのできる優れもんの薬草で、この国でも学者が研究の対象にしてる」

 リョウの所でもされたような話だった。その植物なら身をもって知っている。女王につけられた鞭の傷は、あの薬草のおかげで今では軽く痕が残っている程度だ。痛むことも、砂漠に来てすぐの時のように発熱することもない。

「もう分かってると思うが、俺はこの国の実質的支配者をやってる。その俺の立場から解説させてもらうが、その植物ってのは砂漠で遭難した奴のためにどの国も手をつけない、不干渉って取り決めをしてる。何てったって万能薬だからな。治りも普通の薬使うより余程早い。手ぇ出せるなら良からぬことに使いたくなるってもんだろ? だから国家間で不正はしないことになってる」
「……それがどうした」

 話が読めずに低く問う。ヤマトは更に続けた。

「先日、ちょっと用事があって砂漠の町に出向いたんだが、そこで俺と同じくらいの年の男がその植物をしこたまもってうろついてた。別に、そいつが遭難してて、その木に辿り着いて、その町に来るまで自分の命をもたせるために持ってきた、ってんなら正当だろう。しかし、そいつを売り物にした時点で犯罪だ」

 そこまで言われれば、いくら学のないルカでもわかる。
 シンゴがあの日言っていた、不思議な青年というのが、この男なのだ。 
 国家機密レベルの話を軽くしたのもうなずける。この男がその人間なら。

「ッは、ましてや他国の首領相手に売ったら尚更……ってか? そうだよな、砂漠の国内法だけじゃなく、国家間の取り決めっていうなら国際法にも反してることになるからな。……っ、ざけんな!!! シンゴがあの砂漠の人間でないことくらい分かるだろ!! そんなルール知らなくて当然だ!」
「だが、砂漠にいる限りは当然のルールだ。隣国の奴ら、商人の奴ら、みんなルールを知ってる。町の人間だってルールについては知ってるから、あの植物を持ってうろついてるお前の相方を悪どい商人か盗賊だと思って相手にしなかったんだろう。普通、お前らみたいに砂漠のさの字も知らないような人間は突然降ってきたみたいに砂漠に来ることなんて在りえない。知らなかったから、教えなかったから悪いんじゃない、そもそも無知のお前らが砂漠にいたことが悪いんだよ。……まあ、だからってそんな根本的なこと責めてもな。あれがお前なりあいつの命を救うものには違いない。しかしどうすりゃいいのかあいつには分からなかったんだろう。売買すりゃ買った方も処罰されるから町の人間は冷たいし。それを分かってやった俺が買い取ってやったんだ。俺はお前の命の恩人だぞ?」

 なのにそう罵倒されると辛いねぇ、とヤマトは肩を竦めて見せた。
 冗談じゃない。そんな論理に騙されるとでも思っているのか。

「それは結果論だろ……! あんたは分かっててシンゴを騙して利用したんだ!! 売買すればどっちも処罰とか言っといて、制裁する立場なら何したっていいのか!?」

 何も知らない馬鹿な奴がいるとでも思ったのだろうか。分かっていたならシンゴだってそんなことはしなかっただろう。善人ぶって助けたことにしたいのか。感謝でもされたいのか。死んでもするものか。ただこの男は、私利私欲のためにただルカを救おうとしたシンゴを利用したのだ。――これでシンゴが処罰なんて、許せるわけがない。

「悪いな、それでも俺は人の上に立つ者として奴を罰さなきゃならない。密輸なんてとんでもねぇことする奴がいたもんだなぁオイ、ってな」
「本当に悪いのはそっちだろ!! シンゴを罰するなんて絶対に俺は許さないからな……!!」

 腕の自由が利かないまま、ルカはヤマトに近づいて、これまでの態度を崩さずに睨みつける。……砂漠だけでなく、こちらにも食えない人間が多い。ヤマトもまた、涼しい顔を崩そうとはしなかった。

「あんまり喚くとお前から殺すぞ? それともあれか? 餓えた兵士に喰い殺されるのが好みってか? あっちに比べてお前細すぎんだろ。意図的に肉体労働控えてた証拠だ。……ま、その調子だと稼ぎはたかが知れてるんだろうけどな」
「ッ、うるさい!!」
「あいつについての文句は尤もだ。俺にしては珍しく聞き入れてやる。だが、処罰云々は後回しだ。あいつを別室に移したのにはもう一つ理由がある」
「まだあんのかよ……!!」

 もう一つある、ということは、それはシンゴ自身に何か問題があることを意味している。この男は、砂漠でのほんのわずかな時間しかシンゴと触れ合うことはしていないのだ。その時の問題が密輸云々の話。そして今度は、――やはり先程の? 関係ないと言っていたくせに。

「……さっきのあの男の件なら、正当防衛だろ。俺はシンゴの仲間だ。あいつは俺を助けようとしただけで、」
「それは分かってる。こっちが処刑し損ねたのを代行してくれたんだ、感謝したいくらいさ。その点に関しては、な」
「……じゃあ、何が、」

 いよいよ分からなくなってきた。あの男を殺したことが問題なのではないのか。分からない。何のためにシンゴは隔離されたのか。もう一切の毒気を抜かれたルカは、ただヤマトの言葉を待った。

「細かいことを説明すると長くなるからな、簡潔に言う」
「……ああ」
「あの男、……お前の相方な、」

 一拍置いて、ヤマトの声が広い部屋に響いた。

「気が、ふれている」
「―――は?」

 ルカは、今にも笑い出しそうだった。シンゴの気がふれているなんて。ルカに言うならまだしも、シンゴなんて有り得ない。むしろそんな発言をするヤマトの方が余程気がふれている。

「シンゴはいつだって冷静だった。……俺を守る、って、そう言ってくれて、あいつがずっと冷静だったから、俺はここまで来れたんだ」
「……冷静な奴が突然目の前の背中に切りかかって、首落とすか? ――大体、お前襲ったあの男はお前を殺したりしなかっただろうよ。いや、殺せるわけがない」

 誰もが知る事実を告げるかのように、ヤマトの話は淡々と進んだ。


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2008.06.17(Tue) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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