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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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6――encounter


 日が暮れようとしていた。四方を砂に囲まれ、これまでは方角も分からなかったのだが、太陽の沈む方向でルカはようやく東西南北を知ることができた。
 紫色に染まっていく空を見ながら、すぐ後ろの木に生える緑の歯を噛んだ。それから、マントを体にかけて膝を抱く。
 温度差が激しい。日が出ている間はあんなにも灼けつくように暑く、日が沈むと今度は鳥肌が立つほどに寒い。暑さよりも、この寒暑の差の方がこの土地では怖いのではないだろうか。
 それでも、下手に動けない。さすがにシンゴもそこまで馬鹿ではないようで、これだけの木があれば地下水(おそらくは太い水脈)があり、ということはその地下水が地表に出ている部分がそう遠くないところにあるだろうということに気付いたのだろう。
 シンゴがこうも長時間戻らないことに不安を覚えないわけではない。でも、あれだけ力強く、ルカさんを死なせないために俺がいる、と豪語した男だ。それに、シンゴは筋の通らないこともしなければ嘘もつかない。何よりも、ここまで巻き込んでおきながら信じて待たないなんて不義理にも程がある。

「……早く戻って来いよ、シンゴ……」

 掌にちょうど収まるサイズの懐中時計を、金属が温かく感じるまで握り締めて呟いたとき、耳元で虫の羽音がして振り向いた。これまでは風の吹く音と、風で砂が流れる音しか聞こえていなかったのだ。首を反対に捻った瞬間に、妙なものを足につけているらしい虫が木目掛けて飛んでいく。そのすぐ後に、砂を踏む足音が聞こえ、ルカは立ち上がった。

「ルぅうううううううカぁあああああああさぁああああああん!!!!」

 もう数時間聞いていなかった声。大きな荷物を背負っているためか、足元がふらついている。たまに倒れるが、すぐさま起き上がって先ほどよりも早足でルカに向かって砂を踏みしめている。

「待ちました!? 待ちましたよね、ほんっとにすみません、遅くなって!!! これでも頑張ったんスけどね、何せ荷物も荷物ですし、この砂だしで!!」

 息も絶え絶えにルカの元へと辿りつくと、シンゴは背負っていた大きな荷物を砂の上に下ろす。重さのためか、砂が舞った気がした。
 下ろされた荷物を覗き込むと、果物と水、それから塩気のあるものがやたらと詰め込まれていた。相当大きな集落か何かまで辿り着けたのだろう。この木の力があっただろうとはいえ、シンゴの体力と、一貫した精神力の為しえる業だろうとルカは思う。
 シンゴは嬉しそうに、町ですごくいい人に出会った、と事の始まりから終わりまでを説明し、

「この木の葉がここらじゃ一番効く万能薬らしいです! 俺塗りますからっ」

 と、何故か手をわきわきさせながらルカの服の背を捲りあげた。ルカは黙ってそれに従ったが、うわ、とシンゴが小さく声を上げたので、つくづく嫌な役を押し付けてしまっているな、と強く思った。

「……痛みますか?」
「ああ、かなり」

 今更強がっても仕方ない。ルカは正直に喋ってしまうことにした。

「そうですよね……。あ、でももっと腫れてるかと思ってました。少し引いたのかな」

 背の高いシンゴは、木から葉を数枚ぶちぶちと千切ると、肉厚のその葉をぎゅっと絞って内出血や痣になっているルカの背中に満遍なく垂らした。痛みが多少引いているとはいえ、背中に走る刺激に砂を掴んで耐えながら、

「……人間の本能ってのは、まるで当てにならないらしい」

 と口にした。ルカからは見えないが、シンゴは何のことかわからずきょとんとしているだろう。その様子があまりにも自然に想像できたので、ルカは口元に笑みを浮かべながら先を続けた。

「暑いところで服を脱ぐとか、そういう、生存に関する本能は結果的に悲劇を招くことが本当に多い。腹が減ったからってそこら辺にあるもん食って死んでみろ、元も子もない。迷った森で下手に歩き回ってみるのも逆効果だし、……海で遭難して喉が渇いても海水を飲んだらアウトなんだそうだ」
「海の水って飲めないんですか? 水なのに」

 ルカとシンゴのいた国は内陸のために海がない。代わりに湖や川はあったので、ルカたちが口にする魚は大体淡水魚だった。海など、本や教科書の中でしか見たことがない。

「海水ってのは塩水なんだ。塩気のあるもの食べると喉渇くだろ?」
「あ、なるほど」
「本能ってのは自然を前にすると驚くほど無力だ。だから人間は知識を身につけなきゃならなかった。自然に太刀打ちするには理性と知恵が必要だったんだな」

 背中全体に薬を塗り終えるのがわかると、ルカは服を整えて振り返る。
 複雑そうな表情を浮かべたシンゴが立ち尽くしている。何か言い出すかと思ってルカはしばらくシンゴの様子を眺めていたが、やはり何の結論も出なかったらしく、シンゴらしいまっすぐな目でルカをじっと見つめ、口を開いた。

「意味わかんないっス」
「率直だなお前は。まあ、俺も何言いたいのかよくわかんないんだけどさ。……本能は確かに役に立たないんだ。けど、誰かと一緒にいると安心する、っていう、そういう本能だけは役立つ。誰かといる方が極限状態にあっても一人のときよりずっと生存率が上がるらしいんだ」
「へー……。あ、それって俺がいた方がいいってことですよね!? 大丈夫っスよ、もう飽きるほどいますから! 今更鬱陶しいから消えろとかナシですからねー!」
「んなこと言い出すほど薄情じゃない。信用してる。だから何も言わないで消えるのだけはやめろよな」

 子供のような笑顔でシンゴは「はい!」と言い切ると、麻袋の中からリンゴを一つ取り出し、ルカに投げ渡した。

「俺も、一人じゃ何もできないから。だから帰るまで、お前の力を貸して欲しい」
「勿論ですよ。お姫様連れてとっとと帰りましょうね!」

 服の袖でリンゴを軽く拭くと一口齧る。甘酸っぱい味が口の中に広がった。久々にまともに何かを食べた気がする、とルカは思った。
 シンゴの言葉には頷いておいたが、手がかりはおろか、次にどちらに歩を進めればいいのかも分からない。帰るのはいつになるのか、それまで彼女は無事だろうか、町に残したままのシンゴの弟や妹は。
 全ては己の無力さが引き起こしたことだ。もう少し、しっかり考える冷静さと余裕があれば、あるいは――

「あ、ルカさんっ」

 ルカが半ば放心状態で現状を憂いていた時、シンゴが二つ目のリンゴに手を伸ばしながら声を掛けた。その声にはっとしてシンゴを見るが、シンゴは今までルカが何を考えていたのか気付くこともなかったようにその実を齧っている。

「町で会ったその人がですね、不法な積荷の中に絹があるって言ってたんですけど、絹持ち込むのってそんな悪いことなんですかね」
「絹?」

 シンゴはたまに突拍子もないことを言い出す。しかし、今まで少し話がややこしくなると聞き流していたようなシンゴにしては進歩だろう。
 シンゴのペースの半分くらいのスピードで赤い実を齧りながら、絹と積荷について考えてみる。どこかで読んだことはなかっただろうか。

「……ああ、そうか。絹自体が悪いんじゃなくて、絹を持ち込む行為が悪いんだ、多分」
「え、それって絹が悪いんじゃないんですか?」
「まあ絹が悪いっちゃ悪いんだけど……。あのな、どこの国でも環境は平等じゃないから、絹を多く作れる国と、少ししか作れない国ってのはあるだろ? そうなると当然、たくさん作れた方が価格は安くなるし、少なければ高くなる。それは分かるな?」
「あ、はい」
「で、そんな安い絹が、高い絹しか作れない国にたくさん入ってきたら、高い絹は売れなくなる。品質は変わらないんだから誰だって安い方買うに決まってるんだし。だからそのまま安い絹が国中に広まったら、その国で絹作る奴はいなくなる。けど、国として、絹を作るって産業が廃れちゃうのも困るんだ。それなら、安い絹が多く入ってこないように国が規制をかけるのが手っ取り早いよな。輸入禁止でなく、規制。ゼロにしたらそれはそれで高いのなんか買えないって奴が暴動起こすだろう」

 そこまで喋ってようやく一つリンゴを食べ終えると、ルカは木の幹に体を預けた。
 シンゴは何回も頭の中で絹と国と消費者の関係を考えているようで、しばーらくしてから、

「じゃあ、不法な商人っていうのは、量が規制されてるのに運んじゃうわけですか」
「そういうこと。自分の国の値段よりも高く、現地の価格より多少安く売れば確実に利益は出るわけだから。気持ちはわからなくもないな」

 そうかそうか、あれはそういうことか。とシンゴはしきりに感心していたが、今その情報が必要なのだろうか、とルカは思ってしまう。今必要なのは間違いなくその情報ではないと思われるのだが。

「……つーかお前、ほかの事聞いてこいよ」

 なので、率直にそう言ってみた。シンゴはきょとんとしていたがやがて、

「盗賊だか追剥だかが出るらしいっての聞きました」

 と、満面の笑みで答えた。
 そこはそこまで笑顔を作るべきところではないと思ったが、言わないことにした。

「あの人、俺たちとあんまり年変わんない感じの男だったんですけど、何かいろんなこと教えてくれました。その盗賊だか追剥、二人組で、人間離れしてるそうです。あ、でも平気ですよ! そいつら、非合法の積荷ばっか狙ってるらしくて、たまに国家関与のも襲ったりするらしいですけど、個人なんて狙いませんって」

 最後のはシンゴの憶測だろう。……それにしても、国家関与だなんて、一般人が知っていていいことじゃない。非合法の積荷を砂漠を通って運ぶ商人がいるという事実は一般人も知っていたとしても、その積荷に国家が関与しているなんていうのは、国家としても、商人としても、ひた隠しにすべきことだ。
 それを、見ず知らずの人間に喋ってしまうなんて、シンゴがいうその人物は一体何者なんだろう。

「……普通、こんな砂漠個人じゃ通らない。そいつらも個人には遭遇したことないだろうから、襲われない保障なんてないな」
「あ、あははははは、怖いこと言わないでくださいよー! 第一、俺たち何も持ってないんですし、……あ、さっき交換してもらった金の残りはありますけど、盗賊からしたらそう大したもんじゃないと思います! ルカさんが襲われるってんならルカさん美人ですし分からなくもないけど、そんなの俺絶対守りますし!!」
「そんなことに躍起になるな、馬鹿」

 ……確かに、シンゴの言う通りだ。
 自分達は何も持っていない。広大な砂漠に迷い込んだ子供でしかない。襲われる要素などない。
 けれど。そう思っているのは自分だけなのかもしれない。言いようのない不安に襲われて、膝を抱えた。

「……ぁ、あ、そうだルカさんっ、これ返しますね!!」

 マントに包まったまま膝を抱いて小さくなるルカに、シンゴは無理に明るい声を出して、随分前に使った気のするナイフを渡した。

「返しそびれちゃったんですよねー、すいません。……俺たち、弱いかもしれないですけど、無力じゃないですよ。死ぬ気になればなんだってできます! 死にませんけどね!!」

 シンゴは、ルカの不安を吹き飛ばすのが抜群に上手い。
 普段は本当に馬鹿な発言を繰り返すのに、持ち前の明るさがいつもルカを励ます。
 その点に関しては、シンゴに本当に感謝していた。

「……強いなー、お前は。憧れるよ」

 ルカが言うと、シンゴは普段見せないような複雑な表情をして苦笑した。その表情があまりにも今までのシンゴとかけ離れていて大人びていたので、気分でも悪いのか、と問おうとして、口を噤んだ。
 巨大な何か、が、夜でも人目で分かる、やけに大きく、一際暗い影を砂上に落としていた。





いろいろ削りたい部分があったのに、眠くてやる気にならなかった。
付け加えたいところも同じく無理だった。
まあ、中継ぎだからこんな感じでいいのかなあと思う。
慎吾については、「えー、お前それマジでご都合だろー!!」って設定が待ち構えています。自分相当想像力ないな。みたいな。


流風の知識はどっから来てるんだろう。
明らかに近現代科学とか交じってる気がする。
絹の話とか、あれ、日本だしね?(笑)
西陣織ネクタイ事件の授業を受けて、何となく貿易関連で使えそうな気がする、と思った。
コメとかオレンジとか、日本ってそういうの多いな。


次、出します。
が、無理です。
その次とか全然想像できない。
流風がようやっと自分が反逆者であることを自覚するお話。
慎吾が半端なくアホな話。
もう流石に眠い。寝る!!

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2007.06.26(Tue) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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