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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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ある日の出来事



「………え、っと……?」

 グラスに冷たい水を注がれ、差し出される。しかしルカはそれを口にするべきなのか、どうすればいいのか、まったく見当がつかなかった。
 もともと自分は市場で買い物をしていたはずだ。エイイチの店に用事があるというケレスに、買出し要員として連れ出され、イチと一緒に市場を回っていたはずだった。ところが人ごみでイチとはぐれ、仕方なく一人でエイイチの店まで戻ろうとしたところでこの人物と出会った。そして彼の住まいまで案内され、この状況。

「狭いだろ? けど壁近い方が落ち着くんだよなあ」
「……意外と地味なこと言うんだな」
「派手なこと言うような顔じゃないから」
「顔の問題じゃない気が……」

 どうも少し論点がずれている。
 あのケレスに対して啖呵を切った(というのだろうか?)とは思えない質素さだ。
 人物だけでなく部屋そのものもこの上なく質素だ。執政官の地位にあるというのだから、もっと派手な生活をしているのかと思っていたし、第一城に住まうのが普通なのではないかと考えていた。だから彼がこんな生活をしているということを知るのは、かなり目新しい発見だった。

「……いいのか? 俺、一応あの盗賊の仲間ってことになると思うんだけど」
「? 何かまずいことでも?」

 不味いだろう。
 と即心中で突っ込んでみたが、相手に気にした様子は全く見受けられない。
 まずいことだらけだ。本来なら、脱獄の手助けをした自分たちも捕らえられて然るべきなのだろうし、それにケレスはかなりあの時のことを根に持っているのだ。体も本調子の今出くわしたら、姿を認識した瞬間に切りかかってもおかしくない。ここがどんな場所かなんていうのは、ケレスにとっては二の次三の次だろうし。

「いいよ、別に俺と会ったってこととか、ここの場所とか、金髪の彼に話しても。あれはあの時だから互角っぽくて盛り上がっただけで、今じゃ俺は相手にもならないだろうけど」

 それはそうかもしれない。
 ケレスが手負いの状態で互角、それならばケレスが万全なら。
 
「ミンチだな、あんた」
「まあ、ただでは殺されてやれないんだけどさ。俺は人を超えた強さなんて要らないんだ。この剣をこの腕で振るって、この体ひとつでできることを精一杯やれればそれでいい」
「騎士様執政官様のくせに、言う事が農民染みてるな」
「んー、俺にはそっちの方が合ってたのかもしれない」

 皮肉ったつもりだったのに大真面目に返されては、返答のしようもない。
 身の置き所がわからずにルカは仕方なく水の注がれたグラスを手にした。

「――君の話を聞きたかったんだ」
「……俺の?」

 水を一口飲んで喉を潤し、テーブルにグラスを戻す。
 相手はテーブルを挟んでルカの目の前に腰掛けており、ちらりとルカを見て笑ってみせた。

「細かいこと根掘り葉掘り聞く気はないんだけど。……二人旅? あのもう一人の大柄な子と」

 旅、といえばそうなのだろう。どれほどの距離を歩く旅になるのかはわからないが。けれど、旅、というのは少し寂しい気がしていた。

「いや、……帰る途中なんだ」

 確かにルカは外の世界に憧れてはいた。毎日毎日同じ、汚らしい仕事を繰り返して、狭すぎる自分の世界が大嫌いだった。だから今、こうして外で自分の知らない世界を目にできるのはそれなりに嬉しいことではある。
 それでも、あんなことさえなければルカはあの国から出なかっただろう。毎日同じ生活でも、それでも、あの狭い世界でも構わないんじゃないか、と思えていた。彼女がいる世界なら、どんな環境だろうと耐えられる。そう思っていた。
 だから自分とシンゴは今、居場所へ帰る途中なのだ。ルカはあの国に自分を置くべき理由を取り返す。またつまらない生活が繰り返そうとも、それでも、いい。

「家路の途中で盗賊さんと出くわすなんて災難だったね」
「本当にな。けど、砂漠なんて教科書程度の知識しかなかったから、……あいつらに会わなかったら多分、生きてない」
「そっか、まあ、あの二人と一緒にいるなら砂漠で干からびて死ぬことはないだろうし」

 ひとつ頷く。癪だがそれは事実だ。
 それに、あの盗賊と出会って、なんて運が悪い、最悪だ、とも思っていたけれど、毎日自分が何かを得ていることを実感するのだ。 

「一回あの金髪に大事なモン奪られてさ、脱獄手伝った時に本気で殺してやろうかと思った。……でもできなかったから、あの時あいつを退けたあんたに感謝してるんだ。俺の代わりにやってくれた、って思ってる」

 今のルカの存在理由。彼女と同じ世界を生きていることを証明してくれる、時を刻むもの。これを換金してしまえば、あの国など出ることは容易かったけれど、これがあったから、ルカはあの国で過ごそうと決めたのだ。これを奪ったケレスは本当に許せなかったし、奪うことを許した自分にも腹が立った。
 ルカの言葉を真摯な瞳で聞いていた相手は、自分もグラスに水を注いで、一気に飲み干した。

「彼を倒せなかった俺が言うのも何だけど、……どうして殺せなかった? 人を殺すのは思ってるよりずっと簡単であっけない。腰のそれを、」
 
 相手はルカの腰元を指差し、

「振り上げて、」

 それから剣を握るジェスチャーをしたまま腕を上げ、

「下ろすだけ」

 しゅっと軽く下ろした。
 心は単純にいかなくとも、体の動作だけを見ればこれほど簡単なものはない。それはルカも承知のことだった。 

「やろうと思えばできる、と今でも思ってる。やらなかっただけだ、って。……けど、あの金髪には、俺にはできなかった、って言われた」
「殺そうとした相手に言われたら複雑だな」
「そうそう。すげえムカついたけど、……声が聞こえる気がするから、だから、躊躇しちまうのかも、しれない」

 腰の剣にそっと触れて呟いたルカの言葉に、相手は首を傾げた。

「もっとずっとガキん時の俺の声。死にたくない、って叫ぶ声。あいつはこんな風に死に対してビビったりしないんだろうけど、多分、その声が俺に剣を振り下ろさせなかった」

 死にたくない。
 あの男はそんな風に見苦しく執着などしないのだろう。
 それはきっと潔いことで、きっと格好いいことなのだ。自分だってそうあれたらいいのかもしれない。

「俺が殺される恐怖を感じる。俺がそれを与えられている以上、与える側も必ず存在する。力があれば、俺が与える側になることも可能なんだろう」
「けど、そんな力は君が持つべきものじゃない」

 相手ははっきりと言った。
 
「倒すべき時に、倒さない機会を得たんだ。大事なものは奪り返したんだろう? なら、あとは守るだけだ。――君は、傷つけられることの怖さを知っている。だから君は永遠に奪う人間にはならない」

 淡々と、しかし力強く告げる相手の声が、深くルカの胸に染み入っていく。 
 永遠に、奪う人間には、ならない。
 傷つけられたくないから、傷つけない。

「……っは、何者だよ、あんた……」

 感動しているのか、動揺しているのかわからない。
 わからないけれど、ルカの瞳からはぼろぼろと涙が零れていた。
 わかるのは、少しだけ嬉しい気がする。それだけだった。

「……俺は剣も抜かずに人を傷つけてばかりだ。君が羨ましい」

 とても、人を傷つけそうな人間には見えないのに。
 その腰の刃物が仕事をする時は、倒すべき相手を倒す時だけなのだろう。

「大事な物を金髪の彼に奪られたんだろ? どんなものか、見せてもらってもいいか?」
「……あんたは奪ったりしないだろうしな。いいよ」

 手の甲でぐっと涙を拭うと、首から提げた金時計を外して相手に差し出す。
 大事にいつも服の下に隠していたため、その金色を目にするのは久しぶりのような気がした。
 相手はそれを手のひらに載せると、ふっと目を細めた。時計の裏には薔薇の花が刻印されている。薔薇の花はあの王家の紋章だ。

「……奪われたらいけないな、こんな綺麗なもの。確かに盗賊さんが目をつけるだけの価値はありそうだ」

 薔薇の花を指で撫でてから、相手はルカに時計を返す。
 何か様子が可笑しい気がして、何か知っているのかと聞きたかったが、仕切りなおすような相手の声に遮られてしまった。

「さて、もういい時間だけど、今更自己紹介をしよう。俺はケイだ。この国の執政官をしてる」
「ここ、あんたの家なのか?」
「仕事柄いろいろ町を歩き回るから、小さい部屋ならいくつも持ってる」

 それなら納得だった。金時計を首に提げ直して、ケイの目を見ると、ルカは右手を差し出した。

「俺は、」
「ルカ、だったっけ?」

 あからさまに驚いてしまう。
 あの城での虐殺騒ぎの時、名乗っただろうか。自分が忘れているだけなのかもしれない。
 ルカが多少動揺していることを察したのか、ケイは軽く笑って見せた。

「もう一人の子が名前呼んでたから。覚えてただけだ」
「何だ……。驚かすのやめてくれよ」

 悪い悪い、と笑いながらケイも自分の右手を差し出し、握手を交わした。
 それからすぐにルカは部屋を出た。
 そろそろ砂漠は出るんだ、と出る直前にケイには伝えてみたが、その言葉をちゃんと聞いたのか聞いていないのか、また会った時にはよろしく、と返され、そこだけが腑に落ちない感じではあったが、総じて考えれば心の中がすっきりした対談だった。

(……変な人、だったな)

 心証はいい相手だが、どんな話をしてもケレスは不機嫌になるだろう。
 エイイチの店へと急ぎながら、この話はしばらく封印しておこう、とルカは思った。






ちょっと楽しかった。
書く度にアンドゥーが別人になってる感があって楽しい。


嫌々本編を見直してみたら、盗賊の二人助けた後からはルカが前みたいに殺せる殺せるって息巻いてない感じがするなあと思って。
ヤマトのところでのこれからのルカの仕事も、守るために自分を犠牲にする仕事なので、何か砂漠であってもいいかなあと。


あー、予備校だ。めんどい。
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2008.07.17(Thu) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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