プロフィール

軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--) | スポンサー広告 |




 しとしとと控えめに雨の降る、夜だった。
 今日の授業は午前中に入っているだけだったので、午後の仕事はほどほどにして理央は学校を出た。紺色の大きなジャンプ傘を手に、駅に向かう。
 電車に揺られて二時間ほど。目的の駅で降りて、地図を頼りに歩くこと二十分。閑静な住宅街と団地を隔てる通り、その隅に交番があった。
 場所をもう一度地図と照らし合わせて確かめて、意を決して理央は交番に近づく。行かなければ。どうしても、会わなければ。 
 傘を閉じて中を窺うと、制服姿の男が俯いていた。座っているから身長はわからないが、それなりに肩幅のある相手だろう。

「……すいません、ここに桜井拓海という人は、」

 理央が声をかけると、男はびくりと肩を震わせた。それからゆっくり顔を上げる。……居眠りか。警察が居眠りできるのだからこの町はおそらく平和なのだろう。理央が呆れたのもその一瞬で、男は顔を上げてその瞳に理央の姿を捉えると、

「………さ、お……?」

 そう、呟いた。
 意図して呟いたというよりは、寝惚けて無意識に出てしまった言葉のようで、すぐに我に帰ると、ぐしゃぐしゃと頭を掻いて誤魔化していた。

「あ、えーっと、すいません! なんかすげーダメなとこ見せちゃったみたいで。あ、どうしました? 落し物? 道案内?」

 理央よりも年はずっと上だろう。顔つきから言っても、声から言っても。少なくとも五つくらい、流石に十も離れてはいないだろうから、目的の相手だったとしてもおかしくない。
 大らかそうで、優しそうで、緩んだネクタイが少しだらしなさそうで。紗央が手を焼いてしまいそうなタイプだな、と思った。
 どうぞ、と男の目の前の席を勧められ、遠慮なく座ることにする。

「人探しなんですけど」
「人? どなたを?」
「この交番にいるはずなんです。――桜井拓海という人を探してます」

 男の目が見開かれた。

「……俺ですけど、何か」

 ああ、やっぱり。この男が。
 
「……さっき、僕を見て“紗央”と言ったのは」
「いえ、……知り合いによく似てるなあ、と思って。まあそいつ女なんですけど、……本当、よく似てて」

 紗央がいつまでも離れられない男。
 新しく一歩を踏み出そうといつも頑張って、それでもいつもこの男の影に引っ張られている。何年かかっても、どうしても忘れられない相手なのだ。
 そしておそらくはこの男も、紗央を捨てた罪悪感に今も苛まれているのか。見たところ左手に指輪をしている様子は無い。だからと言って結婚しているかどうかなんていうのはわからないのだが。
 
「……鈴城 紗央ですか。長い黒髪に、青い瞳の」
「っ」

 拓海が息を呑むのが、理央にも目に見えて分かった。
 それからぐっと目を閉じて、その瞼の裏に思い出の女の姿を思い描いているのか、ふう、と大きく息をした。

「……長い黒髪に、青い瞳、目つきは、そうだな、あんたによく似てた。人形みたいに、ぞっとするくらい綺麗な女だ」
「……なら、話は通じそうですね」

 他人が話せばそれくらい誇張したような容姿なのだろう。身内の理央としては分かりかねたが、一般的に紗央が美人と形容されるのは知っている。だから安心して話を始めることができそうだった。
 とは言っても、事態を飲み込んでいるのは理央だけで、当然拓海は突然の来訪者に困惑の色を隠せない。突然現れた、思い出の女によく似た男。しかもその男がその女の名前を口にしたとなれば、戸惑いの程度も知れるというものだった。

「……僕の名前は、鈴城 理央といいます。貴方の知る鈴城 紗央の、父方の従弟です」
「いとこ、……なるほど、通りでな。……ああ、」

 ふと考え込む仕草をしてから、拓海は真っ直ぐ理央を見据えた。

「紗央にあの指輪をやったのは、あんたか」
「……やっぱりまだ持ってるんですね。六歳だか七歳の頃ですよ、あれ渡したの。貴方が知っている紗央が持っていたのなら、今もあいつは持ってる。馬鹿みたいに一途で真面目ですから」
「大事な人に貰ったっていうから、……俺はあんたが紗央を支えてくれるもんだと思ってた」

 そういう、理屈なのだろう。分からなくはない。
 幼い頃の約束。理央はしばらくの間忘れていた約束だったが、紗央は今でもそれを覚えているだろう。理央だって、今はどんな約束をしたか思い出せる。けれど、その約束を履行するには、もう時間が経ちすぎていた。

「……時効です。今僕が約束を果たしても、紗央には他に思うところがあるから、僕なんて用無しですよ」
「そんなことないだろ。あんなに大事にしてんだから」
「もうずっと持ち続けてるんです、捨てるに捨てられないんでしょう。……紗央は、僕なんかより貴方を待っているから」
「は?」

 きょとんとした顔で、拓海はいやいやと手を振った。
 その、どこかからかうような笑い方が、誰かに似ているような気がする。

「俺はあいつを怒らせたよ。何にも言わないで勝手に出てきた。怒りこそすれ、待ってるわけがない」
「紗央は今、貴方と同じ制服を着ています」

 今度は、拓海の表情が強張った。

「……単に貴方が憎いだけなら、ここまでするわけがない。紗央が料理好きだったのは知っているでしょう。他にいくらでもやりたいことがあっただろうに、それでも貴方を追った。貴方を探して、居場所も電話番号も突き止めて、でも一度も連絡を取ることができなかった。……紗央は、臆病だから」

 電話の向こうの拓海が、自分のことを忘れていたら。
 電話の向こうから、知らない女の声がしたら。もしかしたら、小さな子供の声かもしれない。
 自分を拒絶するように、桜井拓海が新しいものを作っていたら。そう想像しただけで、紗央は耐えられなかったに違いない。何度も番号を押して、電源を切って。声を聞きたい気持ちと、絶望したくないという感情を秤にかけて、結局紗央は一度も拓海と連絡を取ることができなかったのだ。臆病だったから。だから何の見返りもない喫茶店の手伝いをして、本当に自分がやりたかったことを補っている。もちろん、仕事が本当に嫌いなわけではないのだろう。理央から見て、性格的にも紗央に警察の仕事は向いている気がしていた。

「っ、……危ねぇ真似しやがって……!」

 拓海からしてみればその感想も当然のものなのだ。
 こんな職業とは一生縁がないだろうと思っていたお嬢様。お菓子作りが好きで、人形のようで、そんなお嬢様が自分を追って警官への道を歩むなんて、拓海は望みもしなかったろうし、想像さえしなかっただろう。

「紗央の支えだった従妹……、僕の妹が、六月に結婚するんです。……紗央は、僕達より三ヶ月だけ年上だから、お姉さんだから、だからしっかりしてないと、って今までやってきた面もあるんです。ちゃんと守らないと、って。けれどそれもなくなる。妹を守ってくれる人間はちゃんと他にいるから。支えがなくなった紗央を、僕じゃ支えてやれません。支えてやりたい、って、今はそう思う。どうして今まで紗央を一人きりにしていたのか、昔の自分を叱責してやりたい。けど、今そう思ったってどうしようもない」
「俺だって支えてやれるわけないだろう。時間が経ちすぎてる」

 分かっていない。
 自分だって今まで紗央との思い出に支えられて生きてきたくせに、自分と同じ感情を相手に適用してみようとは思わないのか。

「今、紗央がしっかり生きていられるのは貴方との思い出があるからです。貴方と同じ制服を着て、使命感にも支えられている。……それもいつまで持つかわからない。紗央は、一旦後ろ向きに考え出すとなかなか抜け出せなくなる」
「他に男でも作ったらいい。……あれだけの美人、近づきがたくはあるが放っておく男ばかりじゃないだろう」

 ここまでくると理央もいい加減頭に来て、強く机を叩いて立ち上がった。

「無意識に名前呼ぶくらい気になってるくせに、関係ないっていうんですか、もう時効だって!? あんたとの記憶があるから紗央は一歩もそこから動けないのに!? あんたが黙ってどっかに消えたせいで、あんたのことずっと好きでいた紗央は警察にまで追っかけにいって、結局あんたと連絡を取ることが怖くて、それでも動けない紗央を放っておくのかあんたは!! 紗央は全然強くない、夜中泣きじゃくって電話してくる時もある、けど、もう俺にはあんたを頼る以外に何もできないんだ……!!」

 寂しい、と泣いて電話を寄越す紗央に、何と声を掛ければよかったというのか。
 今行くと? 迎えに行くと? その言葉に苦しめられた紗央に、またそんな言葉を吐くことは、できない。
 ただ泣きじゃくる紗央の声を、電話越しに聞いていることしかできなかった。そんな自分を無力だと思う。だからせめて、一目でも会わせてやりたいと思うのだ。

「もう、紗央にはあんたしかいないんだよ……! 警察に入ったのも、ボランティアでパティシエやってんのも、全部あんたのためだ、あんたにまた会いたくて、会って驚かせたいって思ってるからだ、俺の入る余地なんてない。……もしまだ紗央を少しでも気にかけてるなら、会ってやって欲しい。六月の第二週の日曜、午後三時頃月見ヶ丘町の教会に、いる」

 理央にただひとつできる贖罪は、紗央の中のこの男との記憶を思い出だけで終わらせてやらないことだ。
 奈央に対して願うのと同じくらい、紗央にだって幸せになって欲しいと思うから。

「――月見ヶ丘……」
「ええ。――ちゃんと俺、言いましたからね。それじゃあ失礼します」
 
 荷物を手に、交番から一歩踏み出すと、待て、と声が掛かった。
 振り向くと、苦しそうな表情の拓海が額に手を当てて低い声を出す。

「……紗央は、恨んでるか。俺を」
「……さあ。本人に聞いてください」
「手厳しいな」

 そこまで教えてやるほどやさしくはない。自分の目で確かめればいい。紗央のことだから怒るに決まっていることは解っているのだろう。
 今度こそ交番を出る。やることはやった。あの男なら、絶対来る。
 許して欲しい。こんなことしかできないけれど、幸せになって欲しい。理央は十分すぎるほど、妹と従姉から幸せを貰った。

 雨の夜が更けていく。






見つけたので上げてみる。



紗央が警官になったのは最初こそ追っかけてやろうと思ってのことだったんだろうけど、あとは書いてある通りで、続けているのは惰性に近いものかもしれない。
本当はお菓子作る人になりたかったんだろうなあ。料理人とかね。
でもって理央は本当に自分のこれからとか度外視なんだろうなあと思う。それはそれで哀れだな。


タっくんちょっと書いてて楽しかった。このロリコンめ。
大和とルミの結婚式話も見つけた。大和ってもしかして、……気持ち悪い?(もしかしなくても)
超絶ロマンチストな気がしてきたあいつ。ノリはほぼウサギさんな気がします。


さてバイトだー!

スポンサーサイト

2008.07.30(Wed) | 初恋シュプール | cm(0) | tb(0) |

この記事へのトラックバックURL
http://hechima1222.blog88.fc2.com/tb.php/173-d9901436
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
Name
E-Mail
URL
Title

password
管理者にだけ表示を許可
/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。