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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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痛みを負う者




『無理だ』




 震える唇は音を伴わずにその言葉を紡いだ。
 ――本心だった。
 今の自分の手に負えるものではない。自分の力量くらい、ルカだってよくわかっていた。
 日が暮れて段々と暗くなっていく視界。周囲でヒサやシンゴがルカに声をかけていることは分かっていたが、どうしても今のルカには自分と目の前に横たわった盗賊の姿しか見えない。
 もう大分流れただろう血液が、色の薄い砂に染み込んで、インクをぶちまけたような模様を描く。傷口は砂に覆われてしまっている。どれだけ暗くなろうとも、ルカにはその傷口が鮮やかに見えるようだった。
 きっとこの場ではルカしか助けることのできる可能性を持つ者がいないのだろう。薬の類が用意してあったところで、深く抉られた傷を修復することは不可能だ。それは分かる。分かるけれど。

 心臓の音が段々大きくなるのが分かる。

「――無理して助けること、ないんじゃないですか」

 聞こえなかったはずのシンゴの声が、そこだけはっきり聞こえて、ルカはびくりと肩を震わせた。エイイチやイチにはとんでもない薄情者だと思われているかもしれないけれど、ルカは『砂漠にいるはずのない人間』であり、どこまでも普通で、他の誰かならともかく恨みさえある相手を助けることのできるほど大人ではない。それはシンゴだってきっと同じなのだ。だから、ルカにその道を示せるのはシンゴしかいなかった。
 放っておいたって死ぬような人間ではないと思う。それはここにいる皆同じような気がする。しかしそれは精神の話であって、人間である以上、ある程度の生命力を失えば必ず死に至る。
 ――シンゴは、無理することはないと言った。でも、ここで無理をしなかったら、一体どうなるのだろう。

「……ちょっと、離れてくれるか」

 肘まである服の袖を捲り上げて、静かにそう言う。ふたつ、みっつ、離れる音は聞こえるのに、シンゴはルカのすぐ近くにまだいるらしい。振り返ってみると、闇の中で不思議そうな瞳をしているのがわかった。

「あれだけ殺すって言ってたのに」
「見殺しにするのは捕虜になってる相手殺るのより卑怯だ」
「でも手を汚さなくていい」
「それは最低だろ」

 何かを得ようとするなら、痛みを負わなければならない。
 生きるために汚れなければならない。
 確かに腹の立つ相手だけれど、この人間の破滅を心から願っているのかと言えば、多分そうじゃないのだろうとルカは思う。一時の感情だ。一時の感情でなかったとしても、卑怯な真似で満足しようとは思わないし、第一満足なんてできないだろう。

「……下手すると暴発するかもしれない。そしたら俺だってどうなるかわかんないし、退いてろ」

 それ以上ルカは何も言わなかった。すると、ゆっくりと砂を踏む音が遠ざかった。シンゴも退いてくれたらしい。
 今までそう大きな失敗をしていないから余計に怖い。
 怖くて腕がかたかた震えているのがわかるのだ。単なる興味本位で始めたことのはず。それをこんなところで使うことになるなんて思ってもいなかった。
 何度深呼吸しても、それは荒い息になるばかりでちっとも落ち着かない。段々冷えていく砂漠の風が、時の経過を知らせる。あまり長い間こうしてはいられない。
 このまま放っておいてはいけない。相手が誰であっても、どんなに憎くても、ここに自分という存在がありながら見殺しにするのは、相手の生きる権利を奪ってしまうことになる。自分が直接手を下さなくても。ただ見ているだけでも。


『君は永遠に奪う人間にはならない』


 強い声。
 そうありたい。奪われたくないから、奪いたくない。
 痛みの分かる人間でありたい。
 痛みが分かるからこそ、痛みを与える人間にだけはなりたくない。
 今までいろいろなものを奪われてきた。それが偶然でも必然でも、ルカの世界には生きている自分以外のものは存在しないも同然の暗闇だった。
 そこに、シンゴとナオが灯りをくれたのだ。狭い世界にほんの小さな光。それで十分だ。
 自分もそうなれたらいいのに。誰かにささやかな何かを与えられる存在であったらいい。自分が自然にできることで、誰かに何かを与えてあげられたらいい。

 その強い思いはある。
 けれどそう簡単に、誰かに与えることとケレスを救ってやることは繋がらない。聖人になんてなれないのだ。相手が誰であれ無差別に救ってやろうと心から思うのは難しい。けれど願わないと。救いたいと思えなければ救えないのだから。

「っ、……か、……貸しだ、……貸しだからな、覚えとけよ!!」

 それでやっと繋がった。
 覚えたばかりの古代語を震えながら呟いていく。どうしても落ち着かない。集中できない。怖い。間違えているわけではないのに周囲を強い風が覆っていく。細かい砂が風に舞い上げられて、気が散りそうになる。ただでさえ落ち着かないのに。
 力の入らない左手で、服の下に提げている金時計をぎゅっと握った。
 彼女がよく口ずさんでいた旋律を頭の中で思い浮かべる。優しい音、流れるようなメロディー。自分が一番落ち着ける空間。
 命を奪われる恐怖に耐えられたんだから、誰かの命を背負う重みに耐えられないわけがない。それに、貸しなのだから貸せるように助けなくては。
 論理的ではなかったが、その思いで風は収まって辺りが静かになる。震えも収まって、これでやっと集中できる。相手の傷口を覆うように両手を翳して、もう一度、今度は強く言葉を紡ぐ。

「――っ、あんたなら、人の十倍早く治りそう、だよな……!」

 そのイメージでいくことにした。
 センタリアには、傷口に包帯を巻いてやるイメージでと言われていたが、こんな大きな体に包帯を巻くのはきっと大変だろう。こうして術をかけて手伝うことで、きっとこの男の体は勝手に治る。砂に流れ出した分を補い、ケレス自身の自然治癒力を少し強く引き出せれば、簡単だ。
 少しでもマイナスな思考を持てばどうなるかわからない。また震えが止まらなくなるかもしれない。けれど、今度はそんな考えは浮かばなかった。光がケレスの傷口を覆うのを慎重に眺めながら思う。
 
 多分、この男は。
 俺と違って、奪われちゃいけない人間なんだろう。

 だからって誰かの何かを奪うことが許されるわけではない。
 それでも、この男は何があっても自分の何かを奪われることも、失うこともないだろう。ケレスが命を失う時は、ケレス自身がそれを認めた時だけのような気がしていた。
 それに、孤高のように見えて、周囲にこれだけ人間がいるのだ。本質的に孤とは縁がないのかもしれない。それも「俺と違って」だ、とルカは思った。
 次に傷に目をやると、粗方塞がっているように見えた。前にセンタリアが自身の腕を傷つけて実践練習した時よりは当然長い時間がかかっていたが、その時よりずっと短く感じられる。
 もう少し念入りに術をかけ、今度こそ綺麗に傷口が塞がったことを確認して術を止めた。光が消えて、辺りが再び闇に包まれる。これで塞がったのが表面だけだったらどうしよう、と初めてマイナス思考が出た。その時はその時だろう。やれることはやったのだ。
 今の自分にできたことを精一杯できた。ちゃんと、明日の朝でも二日後の朝にでも、立って歩いてくれるだろうか。自分がしたことで、何か得てくれているだろうか。自分は何かを与えることができただろうか。


 そこで初めて、死んで欲しくない、と強く思った。


 貸しなんだから絶対死ぬなよ、そんなひとことでもかけてやろうと思ったのに、全身の力が膝から一気に抜けて、次の瞬間には冷えた砂に頬を擦り付けていた。







何が書きたかったのかっていうと、ルカの中のケレスさん観が書きたかっただけらしい。
ルカのケレスさん観は私のケレスさん観です。(何)
主人公を書いてる以上私がルカ視点になるのは仕方ないんですが、なんとなくケレスさんはそういう人なのかなあと思っていたりする。
でもって泣かせようとか最初思ってたのに、書いてたら「どこでだよ!!」というセルフツッコミをする事態に。体でかいから包帯巻きづらいってそれ理由になってねぇよ、とか思います。
泣くとしたら目覚ました後かもしれない。自分のしたことが初めて、多分相手の利益として形になったことがわかれば泣くと思う。礼なんてなくたってひとりで泣く。
これ助けられるのはリベリオンのルカだからで、ツキ高の流風だったら動揺しちゃってそれどこじゃないよね! と思います。

そして他の人を書く余裕がなかった。
ルカが他の人を気にしていられる余裕がないということは私にもその余裕はないということだ。(笑)



あれですかね、貸した分はラストで助けに来てくれる、と。(何)

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2008.07.31(Thu) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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