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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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指を咥えて見てただけ




 毎年、その後姿を見ていた。
 黒いスーツに身を包んで、毎年、墓前に白い花を供えてくれる。
 声をはっきり聞いたことはなかったが、毎年、『ごめん』と唇が動いているのは見て取れた。
 桜の花びらが舞う中、毎年その人は、花を供えて、『ごめん』と呟いて去っていく。




「何故自分などをここへ」

 その相手が、今俺の目の前で、正座したまま頭を下げている。
 俺が上座、――俺の方が偉いんだから当然か。

「そんな謙られるとやりづらい。顔を上げてもらえますか、兄様」

 記憶がほとんどないとはいえ、一応家族なのだから。
 この立ち位置の差が問題なのだろう。下に敷く座布団をどけることにした。
 触れ合った記憶などほとんどない兄。馬鹿みたいにでかい地位と力と金が手に入るのに、そこから逃げて国家権力に身を沈めた男。そうしたからって綺麗でいるつもりなのか。

「近くでの勤務が決まったと伺ったので、ちゃんと兄様と話をしてみたいと思っただけですよ」
「あんな脅迫まがい誘拐まがいの方法で、ですか」
「僕がそう指示したわけではありません。けれど、そうでもしないと貴方はこの家の敷居を跨げない。違いますか」

 相手は苦い顔をした。反論できないのだろう。
 兄の名は何だったか。海を拓くと書いて、拓海。兄らしい名前だ。
 もっとも、俺なんかよりもあの青い瞳の女性の方が余程この人のことを知っているだろう。
 だからこそ話したいと思ったのだ。芹沢の長男と。

「……自分は芹沢を捨てた身です。家元に合わせる顔など持ち合わせておりません」
「僕の名前はお忘れですか。それほどまでに芹沢はどうでもよい存在だと」
「……大和様」
「あー、だからいいですって。そんなに僕と話すの怖いですか? 姉様と同じように呼び捨ててくださって構いません」

 気分が良かったのは否定しないけどな。自分によく似た顔の、でも確実に年上の人間が様を付けて呼んでくれるってのは結構優越感に浸れる。
 
「今更、何を話すことがある。俺は家を捨てて、妹と弟に全部押し付けた人間だ。大和だって俺とは顔も合わせたくないはずだ」
「誰がそんなこと言ったんです? 誰に吹き込まれました? 吐いてくださいよ、そいつの首切りますから」

 ぐっと兄様が息を詰めたのがわかる。目を見開いて、どういうことだと詰問したそうな顔。そう、そういう目で俺を見て欲しいんだ。
 今の俺は、あんたがなりたくなかった自分の姿だ。どうだ、見てて寒気がしてくるだろう?

「俺はなりたかったんですよ。兄様がこの家にいたら絶対なれなかったですからね。莫大な財産と、力と、必要ないくらいの地位。弟子と使用人を何人も引き連れて、偉そうな祖父さんに花を活けてくれって頭下げられんのが楽しくて仕方ないです」
「……それは、……よかったな」
「ええ。俺は単に嬉しいだけですよ。姉様が継ぐのを阻止するのなんて簡単ですからね。ひとこと、“長男の”俺が継ぐべきだと語気を強めればいい。そうすれば俺は今まで手に入らないと思ってたものが転がり込んでくる。棚ボタって奴ですか。ただ、――兄様は俺とは違うはずです」

 金にも、力にも、地位にも興味がないというのは理解できる。
 実際俺だってそこまで重要視しているわけじゃない。
 俺は転がり込んできたものを受け取るだけでいいが、俺がそれを受け取ることは、この人がそれを手放すことには繋がらないはずだ。
 家を捨てたとき、この人の頭の中に俺や姉様という存在はあったのだろうか。
 愚問だ。はっきりと言える。

「やはり貴方も芹沢の人間だ。――自分のことしか考えられない。今はどうか知りませんが、当時の貴方の頭の中には長男としての責任はおろか、俺や、姉様の存在もなかった。どこまでも自己中心的。家に縛られるのが嫌だったんですよね? つまり、――ココにいちゃ面白くない、とでも思ったんですか」

 それは、俺には、簡単に理解することのできる感覚。ココにいては面白くない。分かる。そう考えた兄様の気持ちが、容易に理解できる。

「家を出る前に警官の試験を受けたのは、公務員なら原則終身雇用だから? 国家の中にいれば家も手出しできないと? 甘いですね、警官なんて身辺調査あるに決まってるじゃないですか。芹沢はちゃんと裏で手を回していた。芹沢は貴方がこの家を出ることを認めたんですよ、戸籍もちゃんと桜井になるよう手を打ちましたしね。捨てたと思っていた家に捨てられていたのがわかりませんか」

 俺が一言一言を紡いでいく間、兄様は目を閉じてそれを聞いていた。
 すべてを言い渡し終えると、すっとその瞳が開く。細く開かれた瞳。
 それから兄様は足を崩して胡坐をかいた。薄い瞳でこちらを見るその姿からは、ぞくりとするくらい威厳が感じられる。
 流石は十八年間みっちりと芹沢で帝王学を叩き込まれただけある。

「だから何だ?」
「いいえ? 僕は確認したかったに過ぎません。やはり貴方も芹沢の人間だと」
「こんな不穏分子がいるとさぞかしやりにくいだろうなぁ、大和サマ? 俺はお前よりずっと年上で、お前と違って生まれた時から家元であるための教育を受けて、家を生かすために俺の花はお前より余程保守的だった」
「ええ、存じております」

 胡坐をかく兄の前で正座をする自分。傍から見れば立場が逆転しているようだろう。
 負けるつもりはない。けれど、ここまでこの人が芹沢の直系であることを強く意識するとは思わなかった。人が変わりすぎだ。

「じゃあ俺も言ってやろう。お前は確約が欲しい。俺が芹沢に戻るなんて万一言い出してみろ、お前は俺に勝つ自信がないんだよ。末っ子として生まれて、生ぬるい学生生活送って、たまたま手に入った地位に滑り込んだだけで、そんなお前は完璧な教育を受けた俺にはそりゃあ勝てないだろうさ。復縁を決めるのは家元の仕事か? お前の仕事か? お前を取り巻く相変わらずうっぜぇジジイどもが決めんじゃねぇのか? 俺が手放したそれを手にして、お前は何か変わったのか? あぁ、大和サマよ? 末っ子の意地だろ、その地位も金も力も全部。まさか芹沢の血が流れてるくせに日本の伝統を守っていくとか適当なこと言わねぇよなぁ? お前は俺のいる世界で生きていくのにこの地位が欲しかったんだよな? 俺が今更戻ってきたら、お前はお前の基盤なくしちまうもんなぁ? あーあー、俺は何もしなくてもできるようなモンに興味なかったんだよ。俺にとってお前が手にしたモンは約束されてたからな。なあ、大和サマ分かってんのか? 家元面して偉そうにしてるが結局お前は俺が怖いだけなんだろ? 気付いてないだけでそうなんだろう、なあ?」

 で、そう豹変して俺を怒らせて、やっぱり小物だと笑いたいわけか。
 悪いが俺はそんな安い手に引っかかるほど馬鹿じゃないんでね、あんたと違って。

「ご期待に沿えず申し訳ありません。確かに兄様は生まれた時から教育を受けていたのでしょう、家元や母様、その他大勢の人に囲まれて。――ですから俺は、一人でこの地位を手に入れたんですよ。教育が足りないからと反対されることもなく、誰にも目をかけられなかった俺は文字通り一人でこの地位を手に入れた。約束されていたものに面白さを感じず放り投げた貴方とは違う。……人としての器がね」

 俺はひとつも感情が波立つことはなかった。これは事実だ。器が違う。小物はどっちだ、あんただよ兄様。
 それでも、二度と敷居を跨ぐなとか、そういうことを言うつもりはない。俺は感謝しているくらいだし、少しも恨んじゃいないのだから。
 俺が言い終わると、兄様はぷっと吹き出して、それから豪快に笑った。

「言うなあ、お前。もっと短気かと思えば、いやあ大したもんだ。器が違うな、確かに」
「正しいことを言われて怒るほど暇ではないので。まあ、それでも、上手くいかないと花を折っていた貴方とは違います」
「なるほどな。俺が家を出た頃なんて年端もいかねぇクソガキだったくせにそういうところは覚えてると」
「例え商売の道具であったとしても、ああいう風に花を扱う人間は大嫌いでしたから」

 本当にガキの頃、折られた花が何本も兄様の部屋に転がっているのを見たことがあった。殺意さえ湧いたのを覚えている。弟子の中でもそういう人間がたまにいるが、そういう奴を見かける度に、俺とは違うとよく思うのだ。
 兄を恐れていたことは認めよう。
 この人が万一戻ってきたら、今度は俺はどうすればいいのか、どう生きればいいのかわからなくなる。俺のアイデンティティは兄が握っていたのだ。
 ――絶対に言わないが、家を出てこの人は変わったのだ。
 家を出た当時のままなら、母の墓前に花を供えたり、まさか『ごめん』なんて言うはずがない。俺は毎年、その後姿を見ていたのだ。

「頼まれても戻らねぇよ。女房の方が大事だな。芹沢なんて腐って滅びりゃいいんだ」
「どこのガキですか、貴方」
「うるせぇよ。――話、終わったなら帰る。拉致られたんだから送らせて構わないな?」
「兄様の言う事を聞くかどうかはわかりませんが」

 まあ、俺の名前を出せば十中八九送っていくだろう。
 障子戸を開けて、廊下に出て行く兄様の背を見送る。

「ああ、大和」

 兄様が頭をひょっこり出して、声を掛ける。何ですか、と返すと、

「家元面してるだけじゃ全然怖くねぇんだよ。もっと貫禄つけろ、若いのにナメ
られるぞ」
「……余計なお世話です」

 ぴしゃりと障子が閉められた。

「……はあ」

 そこで俺も足を崩す。
 本当に、食えない兄だ。俺とよく似てる。






豹変タっくんの長台詞が超楽しかったです。
きっとこいつら驚くくらい兄弟だと思うので、タっくん昔はそういう性格してそう。
でも末っ子の大和と違って、長男だから大和よりずっと奔放で、気性も荒そうだ。
家出てからはいろいろと変わったと思います。紗央とも出会ったしな。
父親も母親も周りの人間もみんなタっくんにつきっきりで、お姉さんしか大和の相手してくれなかったからお姉さんはすごく大事に思ってる。
でもってだからこそタっくんの置かれてる状況を羨んだりもしてそうです。


いろいろあって変わったタっくんだから、バトロワしたら他の人は殺せても大和にだけは殺されなきゃならないと思ってそうです。
最初そっち書こうと思ったけど現代の方が楽しそうだったので却下。


さて、そろそろ予備校行きますぜい
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2008.09.13(Sat) | Title | cm(0) | tb(0) |

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