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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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20――a condition



 発作を起こしたシンゴはツバキに鎮静剤か何かを打たれ、そのまま地下の寝台で眠ってしまった。このまま寝かせてやれ、とのヤマトの言葉に従って、ルカは先を歩くヤマトの背を追い、ヤマトの私室へと来ていた。地下を一緒に出たツヅキは、二、三ヤマトに耳打ちされて、屋敷から出て行ったようだった。仕事でも言い渡されたのか。無駄に豪勢なつくりの扉を開くと、だだっ広い部屋の内部が露になった。

「まあ、ゆっくりしろ。疲れてるなら説明は明日に回しても構わないが」

 ヤマトとしては一応ルカに気を配っているのだろう。それはわからないでもなかったが、ルカは首を横に振った。

「今すぐ全部話せ。……俺たちをどうするつもりなのか、シンゴはどうしたらいいのか、あの国の王がどうして今関係してくるのか」

 先刻、ルカに青い瞳の王について聞いた後、ヤマトは何の説明もすることなくシンゴの元に向かったのだ。何の脈絡があってその言葉を出したのか、今後のことよりもそのことの方が気にかかっていた。
 ヤマトは、ルカたちが自分の睨んだ通りの人間ならシンゴの処罰は免除すると言った。果たして、自分とシンゴはヤマトのお眼鏡にかなう人間だったのだろうか。

「座れ」

 庭を望む位置にある長いテーブル。一番庭に近い側にルカは腰掛け、ヤマトはルカに対面する形で席に着いた。窓の外では再び雪が舞っている。庭の植物の揺れ方から見て、風も強い。色とりどりの花が、強い風に揺られているのが分かった。もしかしたら、これから吹雪くのかもしれない。

「お前の連れに関してはまだ何とも言えない。医学には詳しくないが、ツバキがしばらく休ませろと言うんだから間違いないだろう」
「……砂漠にいたときから、様子がおかしかったんだ。調子悪そうで、よく頭痛してたみたいだった」
「最初から不安定だったのが、河渡って増長されたんだろう。無理もない、気持ちは分かる」

 わかるわけがない。国の頂点でのさばっている人間に、シンゴの痛みなどわからない。強くルカはそう思ったが、ルカ自身シンゴの心情をすべて理解しているわけではない。だから反論することはできなかった。
 失うものがひとつもない自分とは違う、シンゴは守るものがあった。なのにすべて捨ててしまった。不安定にならない方が不思議なのだろう。
 
「お前の今後の身の振り方について話すか。手短にな」

 仕切りなおすようにヤマトはわざわざ声のトーンを上げた。
 あまりシンゴのことについてうだうだ言っていても仕方ない。取り合えずは休ませておこう。ルカも割り切ってヤマトの話に合わせることにする。

「俺の?」
「ああ」

 ヤマトは椅子から身を乗り出すようにして、テーブルに肘をつき、静かに告げた。

「守って欲しい人がいる」

 その言葉は、あまりにもヤマトに似つかわしくない。金も力も何でもある人間だ、自分で守ればいい。何よりも簡単なはずだ。そう、思いはしたが口には出せなかった。ヤマトの声も、表情も真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えない。思わずルカは息を呑んだ。この男は、本気だ。

「お前、その見てくれで人の役に立ったこと、ほとんどないだろ? 力仕事も満足に出来ないだろうし、身売りなんかしてたんじゃ学もそう望めないな」
「っ、……うるさい」

 しかし反論はできなかった。ルカがしていた力仕事など、体の大きいシンゴに比べればもっと年下の子供でもできるような内容だった。

「だが、お前だから意味がある。現状を疎ましく思っているなら向学心くらいはあるだろう。それなりの思考力もあると見た」

 それはルカ自身を正しく評価してくれているからの言葉なのか、単に皮肉っているだけなのか、ルカには分かりかねた。この男の内面を察することができるほど、相手を知る会話をしていない。

「……だったら、何なんだよ」
「側近として俺に仕えろ。もちろん報酬は支払う。――この条件を飲めないなら先の話はできない」
「は!? 何だそれッ、卑怯だ!! 第一、守る守らないって話はどこ行った! まさかあんたを守れとか言うんじゃないよな!?」

 側近として仕えろというのなら、守る対象は明らかにヤマトということになる。けれど、力仕事もできない、学も無いと散々列挙してその結論はないだろうとルカは思った。一国の主なら、もっと屈強な男を側近につければいいだけの話だ。わざわざ使えない子供を雇う意味などない。

「ツヅキが戻ってくれば分かるんだが、」
「ヤーマトはーん! ツヅキ印の宅配便がお届けにあがったでー」

 ちらりとヤマトが扉に目を向けた瞬間に、けたたましい音をさせてツヅキがふたつの大きな袋を抱えて部屋へとなだれこんできた。袋の中身はわからないが、ツヅキはつかつかとテーブルに歩み寄ると、袋をどさりと置いた。片方は軽そうな音だったが、もう片方からは明らかに金属の音がする。

「使える部下を持って幸せやなぁ、ヤマトはん?」
「だから得体が知れなくても手放せねぇんだよなぁ、罪作りな奴め」
「嫌やわぁ、そないに褒められたら照れますってー」

 お決まりのやり取りなのか、暖かい空気というよりはむしろ冷めた空気が辺りに流れた気がして、ルカは軽く目を逸らした。こんな気色悪いやり取りをいつもやっているのか。ならあまり雇われたくない。

「さて、見てみろ。お前の服だ」

 ヤマトは、袋の中身を開けて一つずつテーブルに並べていく。
 重そうな音を立てた袋の中からは、真紅を基調とした兵士服。それを見て先ほどの金属音も納得できた。
 そしてもう一つの袋からは、何やらいろいろなものが出てくる。どこかの本で見たことのあるような服だ。羽織物に近い形で、丈は長い。この地域の気候のためか生地自体はそれなりに厚いものだ。色は薄いオレンジが一枚、淡い桃色が一枚。それと、妙なベルトのようなもの。色合いからいって男が身につけるものとは縁遠いように思われた。
 そして最後に広げられたのは、ルカの髪の色によく似た、長髪の鬘。ここまで見ればルカにもさすがに話が読めてきていた。

「……俺に、女装しろって?」
「ご名答。普通の野郎がするには見苦しいし屈辱的だが、お前がやるならそれなりに似合うだろうし、今までの仕事に比べれば耐えられるだろう?」
「……ふざけんな……」

 今までの仕事。思い出すだけで吐き気がする。誰にでも見下されるしごとだし、“仕事”と称するにも卑しすぎると言われたこともあった。自分が掃き溜めになっているような気分になるのだ。それに比べれば確かに遥かにマシではある。でも。

「……俺にだって、自尊心くらいはあるんだが」

 人として、男としてのプライドくらいは持ち合わせている。生きるために甘んじてあの仕事をしていたからといって、屈したわけではない。
 だから、権力が相手だったからといって、自分が卑しい身分の者だったからといって易々と屈しては、いけない。ここは元いた国ではないのだ。縛られる必要など皆無のはず。
 そこまでを言葉にすることはなかったが、ルカの心情を汲み取ったのかツヅキがはははは、と笑いを交えながら口を開く。

「そらそうやわ。いっくら細くて女顔やゆーても男! 事情がどうであれ男らしゅうないことは俺かてしたくないわぁ」
「俺は何もプライドを捨てろと言ってるんじゃない」

 ヤマトの反論は正当性を欠いているように思えた。

「単に、これを身につけて俺の傍にいればそれでいい。言葉遣いを変えろとか、女の振りをしろとか、そういうことじゃない。もちろん側近として仕えてもらうからには訓練も受けてもらうし、お前には特別俺が直に相手してやってもいい。こっちはそのための兵士服だ。俺は、“男のお前に、これを身につけて欲しい”それだけだ」

 それは、あまりにも意図が理解できない相談だった。
 側近としておきたいのなら兵士にすれば良い。女が必要ならどこかの女を引っ張ってくればいい話だ。わざわざ女装させて傍におく必要などどこにもない。
 ヤマトの申し出は、あくまでもルカが男であることが主軸で、女が必要なわけではなさそうだ。それは、考えれば考えるほどルカを困惑させる。ヤマトはそのルカの困惑具合を見てか、薄く笑った。

「――婚約者がいる。……しかしそいつは俺とは身分が違う、普通の村の娘だ」

 どくん、と胸が鳴るのがわかった。
 
「俺はこういう地位に居る人間だ、見合いも何度もしているが、そいつがいるから全て蹴っている。それに二十になれば正式にそいつを妻に迎える予定だ。だからだな、俺の成人が近づいて、周りの有力者が焦りだしている」
「自分の娘をここに嫁がせて、将来自分が権力握りたいってわけか。それにはあんたの恋人が邪魔で、有力者サマたちがよってたかってその子をいじめ始めると」

 ヤマトはひとつ頷いた。それくらいなら察することができる。簡単な構図だった。

「けど、そんな奴らあんたの権力でどうにでもなるんじゃないのか」
「ここは今のところ合議だって知ってるか? 使い勝手はいい制度だが、ひとりが恣意的に権力を振るうことは許されない。加えて俺はまだガキ扱いだ。少なくともあと二年、成人するまでは身動きが取れない。暗殺でもすれば話は別だが、昔話の正統性は旧家がいなければ成り立たない。俺はあんな話信じちゃいないが、家を守る意思はあるんでね」
「それじゃ八方塞だろ……。そこに何で俺を入れるんだ。俺が入ったからって改善できるような状況だとは思えない」

 逆に、女装なんかして側にいればあらぬ噂を立てられる。リスクの方が大きいはずだ。

「――ある程度のリスクは覚悟している。家に関しては、俺自身は執着はそこまでではないが先祖の手前簡単に放り出すことはできない。あいつをこの屋敷に軟禁してる、俺が外からあいつを守るためにできるのはそこまでなんだ。だが、そのお陰であいつは外の空気を吸うことさえ満足にできない」
「屋敷に軟禁、って、そんなのよく承諾したな」

 ちらりとツバキの姿が浮かんだが、彼女は娘だとヤマト自身が公言していたし、あの子ではないのだろう。
 ヤマトの瞳が、多少の後悔で揺らいでいるように見えた。
 屋敷に軟禁すれば外から苛められることもないし、粗方の問題は片付いているのではないかとも思えたが、合議という性質上、そうでなくとも一国のトップの屋敷となれば有力者が多々出入りする。普通の村の娘が相手なら、親族の間でも評判はよくないだろう。
 ただでさえリスクばかり背負っているのに、これ以上どうにかしようというのか。

「男色の噂立てられるくらいなら安いもんっちゅーこっちゃ。お分かりで? ルカはん」
「……ああ」

 上手くいくとは到底思えないのだが、ようやく意図だけは把握した。
 悲しいくらいに身分の違う相手。自分のせいでその相手が傷つくなんて、もしルカ自身がヤマトの立場であったとしても耐えられないだろう。“男”で“側近”なのに女装している人間が側にいれば、十中八九妾の代用だと思われるだろう。ヤマトに男色の噂は立てられるだろうし、子孫を残してくれないことには国が続かないから見合いの回数だって今とは段違いに増えるだろう。ヤマトが本当に守ろうとしている女はもう飽きられたものとして見られるに違いない。その間、彼女を苛めるような年寄連中の目は彼女から逸らされる。気にも留めないかもしれない。誹謗中傷を受ける可能性はヤマトだって承知の上だ。本当なら自分で守りたいところを、一番屈辱的な方法で、最悪の事態を回避しようとしている。
 成人まであと二年ともなれば周りが焦るのも道理だ。年寄と同じくらい、ヤマトも焦っているのだろう。

「俺が冬の神の末裔としてこの国の指導者たる正統性を持っているなら、俺が生贄として欲する春の女神はあいつだけだ。そのためにはどんな苦労も恥辱も厭わない。今、俺に床に頭を擦り付けて哀願しろというなら喜んでそうしよう。それであいつが少しでも救われるなら、俺はどんなものを捨てたって構わない」

 聞いているだけでルカの方が赤面してしまいそうな口上だったが、ヤマトが表情を少しも崩さないところからすると、ヤマトはもう長いことこの信念を抱いて生きてきたのだろう。
 ――人を愛するためには、ここまでの覚悟が必要なのか。

「この図体でこの口上! はっずかしいやろー! ていうかっ、ええなあルカはん! このヤマトはんに絶対命令権もらえるやなんて!」
「いいぞー、ツヅキの言う事聞けってんならそれを聞いてやろう」

 ヤマトの口調は明るく、軽い。心が揺らいでいないのだろう。これでどうしろというのか。ルカは迷った。

「……要らない」

 ほんのわずか考えて、出た結論はそれだった。
 ヤマトは数分前のように薄く笑い、ツヅキは拍子抜けだといった表情でルカを見た。

「誠実には誠実で対応すべきだ。あんたは本気だと思う。だから俺だって本気であんたの話を聞かないと。土下座させてそれでいう事聞いてやるなんて、……フェアじゃない」

 力関係で屈服するとかさせるとか、もう嫌だった。
 相手が望むなら、誠実なら、こちらも最大限期待に副えるよう努力したらいい。こちらの人としての権利を害さないのなら、それでいいと思う。そもそもヤマトはこれさえ飲めば他に条件はつけずに雇うと言っている。女の服を纏うことも、今までの仕事に比べてしまえば確かに遥かにマシなのだ。

「……いいよ、あんたの女、守ってやるよ」

 ――それは、ルカ自身ができなかったことだから。
 だから、すべて失う覚悟をして、どんなことをしても大事なものを守ろうとすることのできるヤマトは、ルカにとって正直羨ましい。
 
 ……シンゴは?

 ふと頭を過ぎったシンゴの存在に、その時ルカは、原因のわからないぞくりとしたものを背に感じたのだった。







理論はめちゃめちゃですが、ようやくフラグを立てました。
ヤマトの生き方そのものがフラグみたいなもんなので、ここは下書き楽しかったんだろうなあ私!


これもラスト書きたいなあ。(笑)
リベリオンのヤマトは本気で馬鹿なんじゃないだろうか。こういうの好きだけどね!!
ルカよりも誰よりも屈辱を受けてるのは実際はヤマト、っていう。
楽しいです。
ヤマトとシンゴって境遇的に絶対分かり合えないけど、いろいろ似通ってるなあ。
成功する人と失敗する人みたいな。


親子の絡み書きたいなー。うん。
そろそろバイトだ……。(鬱)
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2008.09.24(Wed) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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