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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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君と生きる世界の香り 4



 黒のジャケットを羽織る。
 服装はできるだけ地味に。あんまり今時っぽくてもNGらしい。その判定は専ら佐久間がしてくれる。……つっても、いわゆる今時っぽい服なんて趣味じゃないから着ないのだが。髪を染めてるわけでも、耳に穴を空けているわけでもない。それにこのガタイなのだから、そういった服はあまり似合わないだろう。

「お帰りは何時頃になりますか」
「さあ? 多分夕飯食って帰るから、九時か十時か、お嬢様送んなきゃなんねぇからな」
「車を出しましょうか」
「いらない。……まあ、車で尾行していただく分には全く構いませんけどね」

 佐久間は苦笑いをした。
 俺も彼女も、そんなこと随分前から知っているのだ。俺たちが歩く少し後ろを、いつも同じ車がつけていることくらい。おぼっちゃんとお嬢様だからってそこまでナメないでいただきたい、というのが共通見解だ。

「何が心配なんだか。面倒だから見せ付けてやってるってのに、もう三年もよく飽きねぇな」
「心配はなさそうだから止めようか、ということにはなっていたらしいですよ」
「……ああ、なるほどね。狡い連中だな」

 つまり、他に恋愛対象がいるとなると困るということなのだろう。
 呆れるくらい単純な理由だった。

「心配しなくても、俺もあの子もそこまで盲目じゃないし、薄情でもない」

 しかし、そんなことくらい分かってるもんだと思ったけどな。
 俺は自分が思っていたよりずっと信用がないらしい。





「お久しぶりです、小夜子さん」
「お久し振りです。お元気そうで何よりです」

 毎月そうしているように、彼女の屋敷の前まで約束の時間に迎えに行って、彼女に笑顔を向ける。
 祈山邸は、うちの屋敷に比べれば小さいけれど、門構えも建物そのものも立派なものだ。むしろ、芹沢みたいに馬鹿でかい屋敷よりは、これくらいの方が落ち着くのかもしれない。

「大和さん、琴とか聞かれるんですか?」

 彼女の屋敷は、月見ヶ丘の駅から下り電車に乗って二駅ほど離れた小さな町にある。都会ではもちろんないし、田舎と言ってもいいのかもしれない。演奏会の会場に向かうため、駅へと足を進めながら、彼女は俺の顔を見上げながら問いかける。
 彼女の背は葉山よりも小さい。そんなに見上げて首が痛くならないのだろうか。

「まあ、聞かないことはないですね。子供の頃、嗜みとか言ってよく聞かされてましたから。弾いたことはないですよ、勿論」
「そうなんですか。琴の演奏会なんててっきり断られると思ってたので、意外です」
「伝統文化に対する価値観を養うとかなんじゃないですか? やっぱりクラシックとかに比べると馴染みがあるので聞きやすいのは確かです。どっちも眠くなりますけどね」

 正直に意見を伝えると、彼女は、その気持ちわかります、と返す。クラシックの演奏会とかじゃ寝そうにない雰囲気の子なのだが、お嬢様って言っても中身は普通の奴が多い。この子も、前にプラネタリウムに入った時すやすや寝てらしたし。
 そういう普通の面も、それなりに気に入っていたりする。

「小夜子さんは演奏はされるんですか?」

 多分習っているだろうな、という予測を立てておいて、今度はこちらが質問する。
 肩で綺麗に切りそろえられた黒髪をさらりと揺らして、彼女は肩を竦めた。

「小さい時からやってるんですけど、全然上達しなくて。聞く方が好きなんです」
「謙遜でしょう。琴がよく似合いそうですし」
「ほんとに下手なんですよ。ほとんど趣味みたいなものですから、自分が楽しめてればいいかなって思ってます。踊るのは自分でやるのも観るのもどちらも好きですし」

 “彼女”――祈山 小夜子は、聞き上手で話し上手だ。おまけに上品で、家庭的で、プラネタリウムでうっかり寝てしまうような抜けている一面もある。
 小夜子の家は、旧家だがそこまで規模は大きくない。日本舞踊の一流派を担っているという面で、俺と境遇が多少似通っているだろうか。彼女は俺の一つ年下で、俺が中三、彼女が中二の時に許婚として出会った。顔合わせの前は写真でしか見たことのない彼女だったが、写真の通り着物のよく似合う大和撫子。月に一度会うようになってから内面を知る機会も増えて、結婚相手としては申し分の無い、良い子だと思う。ドラマの中にあるような、空気のぎすぎすした仮面夫婦にもならないだろうし、彼女となら結婚して、家庭を築くことも容易であるように思う。家のための結婚でそれなりの幸せが得られるのは、それこそ幸せだと言うべきかもしれない。
 三年前からこうして毎月会っているのだから、つまり葉山とよりも付き合い自体は長いわけだが、俺が葉山と付き合い出した頃に、彼女もまた、共学化したばかりの学校で自分と同じように生徒会役員をしている男と付き合い始めたらしい。俺も小夜子も、互いの状況は認識している。俺たちはよくても、大人は良くないと感じているのだろう。十メートルほど後ろをずっと車がつけてきているのを思い出してうんざりする。
 俺が葉山と付き合っていること、小夜子が同じ学校の男と付き合っていること、それは大人たちも知っていることなのだろう。だからって、俺が逃げ出すとでも? 彼女が逃げ出すとでも? 俺たちはそんなことするほどガキじゃないし、家が嫌いなわけでもない。青春ドラマみたいに、『好きでこの家に生まれてきたんじゃない!』とか騒ぐなんてナンセンスだ。俺も彼女も自分の家が好きだし、俺は花が好きで、彼女は踊ることが好きで。この家に生まれたからそういう考えを持てる自分になったのだ、家のための結婚は自分のための結婚だ。

「彼女さんとは上手くいってるんですか?」

 こういった話もごく普通にする。気分的には、将来結婚する間柄というよりは、境遇を理解してくれる異性の親友に近い。
 突然振られると困る話題ではあるが、俺はそういう話を恥ずかしいと思うことはない人間だ。

「まあ、それなりに」
「来週お誕生日でしょう? 彼女さんからの愛あるサービスとか受けられないんですか?」
「期末直前だからどうだろう。俺は期待してるんですけどね」
「素敵な彼女さんなんでしょうね。いつかお会いしてみたいです」
「会わない方がいいと思いますよ。誰かれ構わず俺の悪口言いふらしますから。小夜子さんの俺への印象が悪くなると困ります」
「悪くなんてなりませんよ。私にこれだけ優しくして下さるんですから、彼女さんにはもっとずっと優しいはずです。そんな人悪く言われたって惚気にしか聞こえません」

 ……まあ、うん。 
 一番大切な奴には、そいつにとっては一番自然体で接していたい。他人から見れば一番大切にしているように見えたらいい。
 小夜子にそうやって思われているならそれでいい、のだろう。多分。
 優しい、という言葉は、俺みたいな奴にはとことん似合わないと思う。この場に葉山がいたら笑い転げていること請け合いだ。流風あたりも笑って馬鹿にするかもしれない。ただ、大切に思っていることも、そういう扱いをしていることも否定したりしない。

「小夜子さんは?」
「え、ええっと、何の話ですか?」

 あからさまにはぐらかそうとするその言動は、照れているからとしか思えない。
 きょろきょろと視線を泳がせながら俺の隣を歩く小夜子はどう見ても不審者だ。 

「副会長で、剣道の道場の跡取り息子でしたっけ? 俺も会ってみたいですよ、その男に」
「け、結構、生真面目で頑固な人ですから、大和さんみたいなタイプとはぶつかっちゃうかも、しれません」
「なるほど。小夜子さんには俺が不真面目に見えると」
「ち、違います違いますっ、侑くんとはタイプが違うなって思っただけで、深い意味はっ」

 ぱたぱたと彼女は顔の前で手を振って、自分から振ってきたくせに「もうこの話やめましょう!!」と語気を強くした。相当恥ずかしかったらしい。
 未来が見えていても、彼女は今を幸せに生きている。俺も他人からはそう見られているだろうか。そうだったらいいと思う。葉山から見た俺が、バカみたいに幸せに日々を送っているならそれで結構だ。実際、そうだと思うし。






「なんか、大和さんとお出かけするといつも高いお店に連れていってもらっちゃって申し訳ないです」

 夜十時を回った頃、彼女の家の最寄り駅に着いて、そこから屋敷に向かって歩く。
 演奏会は二時間弱といったところか。やはり自分で演奏する人間でなければ良さは理解できないのだろうと思う。つまるところが眠かった。
 それから、顔馴染みの日本料理の店に入って適当に夕食を済ませて出てきた。なんとも金持ちらしいデートコースだと思う。

「普通のレストランとかはデートで行かれるでしょう? 俺といる時くらいは金持ちらしくしてないと」
「それはお互い様ですね」

 金持ち同士、そういった家の人間同士で結婚するのだから、俺といる時はそういう関係でいなければ話にならない。なら電車でなく送迎の車を使ったらいいだろうといわれるのかもしれないけれど、電車くらい使ったっていいだろう。車に乗りなれると足が鈍っていく気がするのだ。
 俺も、彼女も、本当のプライベートではファミレスにも行くし、どこからどう見たって普通の高校生の生活をしている。ただ割り切るのが少しだけ上手いだけなのだと思う。

「後ろの人たち、よく飽きませんね」
「飽きられたらいずれ困るのは俺たちですよ」
「あ、そうですね。家のために働いてくださってるんだから大切にしないと」

 夜道に車で尾行というのはさすがに目立ちすぎると判断したのか、電柱二、三本分空けて誰かがついてきているようだった。ご苦労なことだ。
 月に一度会うようになってから、本当に欠かさず毎回ついてくるので、帰り道になると俺と彼女は、後ろで見守っているそいつにささやかなサービスをしてやることにしている。
 同じ速度で歩きながら、少しだけ隣との距離を詰めて、さり気なく手を握る。もう慣れたことだ。彼女も何も言わずにそれに応じてくれる。

「彼女さん、大和さんが私みたいなのと手繋いで怒ったりしません?」
「怒ってくれたら嬉しいですけどね。そういうのに無頓着な奴なので」

 後ろの奴にはこの会話は聞こえていないだろう。あまり声を大にしてする話ではない。
 こうして手を繋いで歩いている俺たちは周りからどう見られているんだろう。
 ちゃんと恋人同士のように見えるのだろうか。それとも兄妹?
 祈山邸の門まで来ると、彼女は手を放して、あ、と声を上げた。

「そうだ。大和さんに渡すものがあったんです」
「俺に?」

 はい、と小夜子は髪を揺らして笑い、白いハンドバッグをごそごそと漁ると、小さな袋を取り出した。淡い橙の電灯がぼんやりと浮かび上がらせるそれは、小夜子が自分でラッピングしたもののようだった。

「紅茶のクッキーです。誕生日にはまだ少し早いですけど、いいプレゼントが思いつかなくて。クッキーなら失敗もないし、食べてもらえたらいいなと思って」
「……ありがとうございます」

 桃色の小さなビニール袋には、袋に応じたサイズのクッキーが詰められている。
 何度も言うが、家庭科壊滅的な俺からすればこんなの作りたがる奴は気違いなんじゃないかと思うわけなんだが、好きでもない男に普通にプレゼントを考える方が労働なのも確かだろう。彼女の料理の上手さは俺もよく知るところだし、何の心配も要らない。

「じゃあ、また来月……あ、けど来月ってクリスマス時期年末時期ですね。大和さん予定たくさんあるんじゃないですか?」
「暇を持て余してますよ。内部進学ですから。それ以外の用事は小夜子さんの方が多いでしょう、きっと」
「そ、そんなことないんですよ! う、うち仏教ですからクリスマスパーティーとかイルミネーションとかプレゼント交換とかカウントダウンとかそんなことしないですから全然予定なんてないんですけど!!」
「全部口に出してますよ」

 そりゃなんとも楽しそうな年末ですこと。
 俺はどうだろう。まずは頼まれた舞踏会の仕事をして、舞踏会を見に行って。
 十八の誕生日を迎えた後の年末は、少し忙しくなりそうで、去年までの十二月を想像できない。
 来月は小夜子とは会わないかもしれない。でも年始には必ず挨拶に行く。
 再来月も、きっと来年の誕生日も小夜子とは会うだろうし、小夜子なら来年の誕生日もこうしてささやかに祝ってくれるだろうと思う。なんとなく、それは思い浮かべることができる。
 その分だけ、葉山といる自分を想像することが難しくなっていた。








みのりも書いてて楽しかったけどこっちも楽しいな、やっぱり。
大和が女々しくなっていく過程が気持ち悪くて楽しいです。

とりあえずもう眠いので寝ます。多分今度追記書き足すぜちくせう。眠い!
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2009.01.06(Tue) | 大和中心 | cm(0) | tb(0) |

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