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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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Evening Emerald  2/2




 誰よりも理解していなかったのは自分だったのだ。
 これでは、今まで卑下していた自分と同年代の若者にも劣る始末。彼女に出会わなければ、母国で毎日のように報道されるような、子供に虐待を重ねる親になっていたかもしれない。もしかすると、先日院長からあの話を聞かなければ、幼い樹理でさえも自分とは関係ないものと放り出していたかもしれない。末恐ろしい話だ。
 彼女を馬鹿にしていたのはきっと、誰でもなく流風自身。いつまでも子供だと見くびっていたのだろう。本当にそうであれば、自分はまだ幼い彼女の気持ちと体を弄んだ上に子供まで産ませた最低の男に成り下がる。彼女の気持ちに何一つ気付かなかった自分を叱責し、強い後悔に襲われる。
 樹理は自分の命なのだ、と彼女は言った。
 ただ子供のように、家族が欲しいと喚いていただけではなかったのだ。
 自分より四つも年下の娘が理解していたことを、流風はちゃんと認識することさえできていなかった。
 



『ルカ? ケーキ食べないならもらっちゃうよ?』

 彼女の薄緑色の大きな瞳が突然覗き込んでくる。ぼんやりとしていた流風は、うわ、と軽く驚いた。その反応に彼女は嬉しそうに笑うと、自分が手にしていたフォークで、流風の分のケーキを一口いただいた。
 それを院長に窘められると、『だってルカの方がわたしのよりちょっと大きかった!』と膨れる。まったく、少しは成長してやったと思ったのに。そう思って流風はため息をつく。
 彼女の子供染みた性格が好きだった。それは実際子供であったからで、それじゃあ今は何も好きじゃないのかと言うと、当然ながらそういうわけではない。
 流風から『食べていいよ』と許しを貰うと、彼女は嬉々としてその皿を受け取り、流風の頬にクリームの甘ったるい香りの残る唇を寄せた。
 ともかく、彼女という人間は、何でも一番にならなければ自分のアイデンティティを保つことのできなかった流風にとってはどう見ても異質な存在であり、だからこそ惹かれる部分も多々あったのだ。
 暖炉のすぐ側で、綺麗に飾りつけられたツリーが炎の赤を反射している。少し離れた場所にあるゆりかごでは樹理が眠っている。

『ローラ』

 隣でケーキをぱくつく彼女に、流風は声を掛ける。
 金髪をさらりとゆらして、疑問符を浮かべる彼女にもうひとこと。

『おいで』

 いつもの子供っぽい笑顔で力いっぱいうなずくと、彼女はフォークを置いて流風の手を握った。





『寒いぃいい、雪降ってるよ? こんな寒いとこいたら先生に叱られるよ?』

 ステンドグラスの向こうに、牡丹雪が降る影が見える。
 寒い寒いと騒ぎながら、彼女は樹理を背負ったままの流風に遠慮なく正面から抱きついてくる。
 相変わらずムードの欠片も無い。そう思ってはいるものの、正直にそう告げればおそらく日本風に、『むーど? 何それ食べれるの?』に準じた回答をされるのは目に見えている。
 彼女と初めて会った、もう寂れてしまった教会は、色とりどりのステンドグラス越しに月の光を認めるくらいで他には何の明かりもない。危ないからどいて、と彼女に告げてから、孤児院から持ってきた燭台に蝋燭を立て、火を点ける。ぼんやりを彼女の顔が赤く浮かび上がるのがわかった。
 背中で眠る樹理を起こさないように背負い直し、『何か思うことは?』と問いかける。

『ひとりのとき、よく来てた。ルカはいっつもここにいたから』

 人のいない教会は、ひとりで本を読むのにはちょうど良かった。
 だからいつもここにいた。だから彼女もここに来るようになったのだろう。

『でも今はジュリも連れてくるの。ここでなら、わたしもジュリも、ルカを待ってていいような気がするから』

 彼女は時々、どきりとする台詞を言う。
 流風と彼女の間には、約束が存在しないのだ。恋人になったと胸を張って言えるわけでもないから、結婚する約束を交わしたわけでもない。なのに樹理が存在する。その不安定さが、彼女を大人にする手助けをしたのだろうか。
 彼女にとって樹理は約束でもなければ、流風を縛る切り札でもない。最初から、樹理は別れを意味していた。
 だから、彼女の寂しさを拭うには、

『……あったかいところで待ってていいよ』

 馬鹿みたいにわかりやすい、子供みたいな約束を新しく作るしかない。
 ポケットに手を突っ込んで、小さな箱を彼女に手渡してやる。きょとんとしていた彼女はそれを受け取ると、日本の女子なら、あるいは同年代の他の女子ならもう少し感づいてくれてもいいようなものを、これまた遠慮なしに開けてくれる。

『……ゆびわ?』
『安くないから大事にしろよ』

 指輪を女に渡すのは初めての経験じゃない。日本で遊んでいた頃は、女と付き合えばそれを渡すことがほとんど当然のようなものだったし、露店で売られている安いそれは与えても与えられても何の感慨も呼び起こしはしなかった。 
 数年前の自分なら、四つも年下の相手に対してこれだけの価値のものを与える気になっただろうか。
 箱を彼女の手から取って、中の指輪を摘む。中央の石は暗がりでもまだその色を認めることができた。彼女の瞳と同じ、若草色。
 四つも年下の相手、だからではなく、彼女だから与えたいと思ったもの。
 今はまだその価値をわかってもらえなくても、精一杯大人になった彼女に尊敬と感謝の意を込めて与えるもの。
 彼女の左手を取って、その細い薬指に指輪を嵌めてやる。買った自分でも驚くほどそれは彼女の指にぴたりとはまった。多少の誤差はあるだろうと睨んでいたのだが、うまくいったらしい。
 子供は光り物が好きだ。案の定彼女は指に嵌められた指輪の中央に興味がいって仕方ないらしい。流風は苦笑した。
 自分が一番でなければアイデンティティを保てなかった自分がいる。その自分を否定することはできないし、今だってそう思っている。その一方で、故郷を発ってこの国に来たのは、目指したいものがあったからだ。立ちすくんで身動きが取れない、どうしようもない人間に光を射してやれるような、そういう人間に憧れていた。憧れていた人を目指す、ひとつの側面としてこの国に来た、その自分も否定するわけにはいかない。

『……風邪引くから、今度からはあったかいところで待ってろよ』

 樹理を背中から下ろして、外を歩く時に雪がかからないよう巻いたマフラーを外す。それでもその頬は冷たくなっていたが、変わらないすやすやとした寝息を立てていた。
 興味を石に奪われていた彼女は、長い時間をかけてようやく言葉の意味に気付いてくれたらしく、肩を竦めて機嫌を窺うように流風を見、それからやはり嬉しそうに微笑む。

『今風邪引いちゃうよ、こんな寒いところにいたら』

 彼女は子供だから、“一番”がたくさんいて、どうも本当の一番にはなれそうにもない。彼女は親も身寄りもない孤独な子だから、自分が光になってやろうとしたのかもしれないけれど、実際は彼女の方が光となって流風を支えてくれていた。
 だから、今流風がこうして彼女や樹理と一緒にいるのは、

『……俺がいるから平気だろ、多分』

 抱きしめてやりたいと思うからだ。
 樹理を抱いたまま彼女の額に自分の額を合わせると、やはり冷え切っている。
 蝋燭の明かりに照らされて、若草色の石がきらりと光る中、流風は彼女と二度目のキスを交わした。 








それでも流風は最後の最期には疑われてしまったと。彼女が子供のままなら疑われずにすみそうだったのに、大人になって疑うことを覚えてしまった。
だから彼女はまだ小さい樹理に『お父さんが何をしても恨まないで』ってまるで流風が樹理を置いていくことを示唆するようなことを言ってしまって、それが未来話のきっと最後まで続く流風と樹理の確執になるんだと思う。
いいね、この中二っぽい展開!(すべてこの言葉で済ますのはどうかと思うが)
流風としては指輪をあげた時点でその時できる最高の決意をしたつもりなんだろうけどね。
若草色の宝石はペリドットです。イブニングエメラルドって呼んでたらしいことがウィキに載ってたのでそのまま使用。ついでに石言葉が夫婦の幸福とくれば、博識でキザい流風さんがこんな都合のいい石使わずにいるかというお話です。


本当は、「これがアメリカに来た理由だったから」で締めようと2年くらい前から思ってたわけですが、突き詰めて考えたら流風みたいな人間(しかも若造)が誰かを救えるなんてそう簡単にあるわけないぞ、と。
設定も突き詰めたら絶対流風の方が救われてるだろう、ということで考え直しました。
流風って本当に校則とかには従わないくせに自分のルールには従う子でして、何でも一番じゃなきゃ自分でいられない、っていうのが元々あって、それに新しく加わったのが、誰かの助けになるようなことがしたい、っていうので。きっと卒業式の日に加わったんですよ、これ!
それこそ小さい子供の頭を撫でてあげられるような、ひとつの指標になるような、そういう人になりたいとか生き方をしてみたい、っていうのがきっとあったんだろうが貴様にゃ無理だ這いつくばっても絶対無理だ、っつーわけで。
自分で決めたルールにも縛られないで、「今自分がそうしたいから」が基盤になりました。でも馬鹿ではないので衝動的なわけではないです。後先考えた上で確かに自分がそうしたいと思ったから、彼女とも樹理ともいるわけで、彼女が母親としてそれだけの決意をしている以上自分が目を逸らしているわけにもいかないとやっと気付いたから指輪を贈る訳で。
それでも最後にゃ疑われるんだから何の意味も無いというオチでありまして(笑)


こんなくだらない話を書きながらクラナドを見て不覚にも泣いた。
「なんという……」ばかり言ってました。
前半の許可もらうとこだけでもう十分でした。大和は絶対あんなあっさりいかないな、と思いました。
どんだけ出来の悪い娘でも大和はそう簡単に手放さないぞ!
駆け落ちルートなら尚更だよね、弟も黙っちゃいないよね。


でもって、樹理への誕生日プレゼントはなんだったのかと言うと、もちろんキザい流風さんはそこまで考えているわけでありまして、当然その答えは「お父さんとお母さん」になるわけでありますが、いくらキザくても相手がガキじゃそこまで理解してないだろ、という、ね!
やっぱりモノをあげて満足するだけじゃダメなんだって。言葉必要だろ。
そう思うと大和さんって完璧なんだなと思います。いえ、私が大和好きなだけだと思いますが。


さて、もう寝ます。うん、もう眠いわさすがに。
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2009.01.09(Fri) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

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