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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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われなべにとじぶた



「これ」

 いつものように先生を玄関に入れると、先生はすぐ皿を突き出してきた。

「何ですか、これ」
「ここの隣の家に住んでるやかましい女が押し付けてきたもんだ」
「ああ」

 合点がいった。この前のレモンパイの皿だろう。
 直接返してくれると助かるんですけど、と試しに言ってみると、こっちに返すのも直接返すのも変わんねぇだろうが、と返された。ここは姉さんの家じゃないんだけど、仕方ない。
 先生を先に部屋に通して、俺はキッチンに皿を置いた。
 ――食べたんだろうか。食べたんだろうな。
 そっと皿の縁に触れて、それからすぐに部屋に戻った。




 レモンパイは今でも姉さんの一番得意な料理だ。
 料理を始めたのは確か小学校五年だか六年の頃だったか。バレンタインにあげるお菓子作りが発端だ。姉さんが闘志を燃やす対象といったら、そりゃあまあ、うちの兄さん以外に有り得ない。兄さんは今でもそうだけど、バレンタインに貰う数は少ないけどその中に本命が混じっているのが厄介なのだ。義理ばっかり死ぬほど貰うより姉さんにとっては性質が悪いだろう。だから姉さんは、周りの女子とどうしても差をつけたかった。他の女子がみんな、溶かしたチョコレートをどんな型に流そうか、ラッピングはどうしようかと考えている中、姉さんは『すべて手作り』にこだわった。
 そこで引っ張られたのが俺だ。服を思いっきり引っ張られて姉さんの部屋に連れていかれ、大人向けの料理雑誌をしこたま見せられた。どれがいいと思う? けーいちはあまいの大丈夫かな? あんた弟なんだからお兄ちゃんの好みくらいしってなさいよ! と疑問質問最後は罵倒で締められた。兄さんのために作るならいっそお菓子じゃなくてもいいと考えていたあたり、姉さんはその頃から全然変わってない。姉さんがこんなに必死になるんじゃ俺も適当やるわけにいかなくて、雑誌を何ページもめくった。正直、兄さんは何を貰ったって同じ反応をするだろうと思ってたけど。不安そうに俺を見る淡い青の瞳を裏切ることはできなかった。
 そんな時にたまたま目に留まったのがレモンパイだった。表面には少し焦げ目のついたふわふわのメレンゲ、中のカスタードはレモン果汁をたっぷり使うから甘酸っぱくて独特の味がする。アップルパイやパンプキンパイだとありがちだし、市販を疑われるかもしれないけれど、レモンパイなんてなかなかお目にかからない。作ることができればかなり周りに差をつけられるだろう。で、他の子が市販のミルクチョコレートを溶かしてハートだの星の型に流している時に姉さんは小麦粉と格闘してパイ生地を作った。




「あいつのチャイム癖なんとかしてやめさせろよ」

 部屋に戻ると先生が唐突にそう言ってきた。話を聞けば、どうもチャイム魔人のようにチャイムをぴぽぴぽ鳴らしまくったらしい。

「あのパイ姉さんが作った時、俺たち二人とも外にいたんで外で食事取ったら兄さんに電話かかってきたんですよ」

 それなら一言声かけなさいよね!! という姉さんの怒鳴り声が兄さんの携帯から漏れていた。あまりの大声に兄さんは苦笑して電話を耳から離して、姉さんの怒りが静まるのを待っていた。まったく、ややこしい人だ。

「勝手に作ったくせに、せっかく作ったのに! って怒って、で、捨て台詞が“いいわよ、犬の餌にでもしてくれる!”です」

 姉さんなら多分本気で犬にでもくれてやろうとしただろうと思う。奈央が先生に持っていくのを提案してくれて本当によかった。あのパイは犬に食わせてやるには少し気持ちが入りすぎている。

「……それを聞いて言うのも何だが、あいつは機嫌良かろうと悪かろうとチャイムああやって鳴らすだろ」
「子どもの頃からですから直りませんよ、多分。機嫌良いと若干リズミカルになります」
「俺は一生聞かねえな、それは」

 それには同意だ。
 やれやれと先生がため息をつき、俺は数学の問題集を開く。





 前日が運よく日曜で、朝から気合いを入れて姉さんはパイを作った。俺も兄さんも、鈴城家に立ち入ることを許されなかった。にこにこ笑いながら奈央が締め出すのだ。お姉ちゃんすごく頑張ってるから、待っててあげて。と。どっちが姉だかわかんないな、と兄さんと話した覚えがある。
 そして当日、姉さんはいつも学校に行く時間よりずっと早くうちに電話を寄越して、早く学校に行こうと言い出した。まるで遠足に行く子どものようだ。早く学校に着いて、兄さんに自慢したかったんだろうと思う。それから教室に徐々に人が増えれば、姉さんの頑張りを褒めてくれる奴もたくさんいるはずだ。小学生が持ち歩くには不似合いのケーキボックスをしっかり手に持って姉さんは歩き出した。
 それからすぐだった。大きなトラックが狭い道を無理に曲がってきたせいで、避けようと体を壁に寄せた時、トラックの側面がケーキボックスに触れて、姉さんの手からボックスを奪った。タイヤに踏まれこそしなかったが、ボックスは側面から地面に落ちた。排気ガスを噴き出しながら、何事もなかったかのように去っていくトラックに俺は殺意さえ抱いたが、姉さんの悲しみはそれ以上だっただろう。せめて箱を抱えて避けたらよかったのに、と俺は思った。
 俺がトラックを追いかけようとすると、奈央が俺の服の裾を引っ張って、にこりと笑顔を作った。奈央がどうしてそんな表情をするのか俺にはさっぱりわからなかったが、今思えば、そんなことをしたってどうにもならないし、姉さんが惨めになるばかりだということを奈央は知っていたんだろうと思う。
 あたしたち先に学校行ってるね、と奈央が兄さんと姉さんに声をかけた。そうしな、と兄さんが言う。俺は奈央に手を引かれて歩き出した。姉さんは膝をついて泣きじゃくっていた。
 ――兄さんはどう慰めるんだろう。
 兄さんは不器用だ。どうするんだろう、と俺は思った。気になって一度振り向くと、角がつぶれてしまったケーキボックスの蓋を慎重に開いている兄さんが見えた。中身はきっとぐちゃぐちゃになってしまっているんだろう。

『ちょっと崩れてるけど、まだ平気だよ』

 兄さんはそう言って笑っていた。笑って、箱がそれ以上変形しないようにそっと姉さんに見せた。当然姉さんが泣き止むはずはない。

『腕、上がんなくて抱えて避けられなかったんだよな』

 そこで俺は足を止めた。
 俺が止まったから奈央も止まった。
 なんで腕上がんなかったんだ? そう思った。

『よくわかんないけど、そんなになるまで頑張ったんなら絶対みんな食べてくれるよ』

 兄さんは不器用だけど、俺よりもずっと、ちゃんと、周囲の変化を見ている。
 姉さんの腕が上がらないのに気付いていた。だからこれは仕方ないこと。
 兄さんは姉さんが何を作っていたのか知らなかったけれど、あれを作ったことによって姉さんの腕が上がらなくなったと判断したんだろう。そりゃそうだ、昨日姉さんは一日中家から出なかったから。
 姉さんは、全部ひとりで生地を練ったりレモンを絞ったりしていた。小学生には重労働だ。だから姉さんは、筋肉痛で箱を抱えたくても抱えられなかったのだ。
 姉さんが顔を上げた。腕が痛いなんて一言も言わなかったのに、兄さんが見抜いたから。

『そ、そんなのっ、もういいわよ! 別に自慢したいわけじゃないんだし! けーいちにあげる!!』

 兄さんはあっという間に、姉さんの本音を引き出した。これが意図的ならどれだけ腹黒いんだって話だけど、兄さんは間違いなく素でこれをやってのける。それが俺には、多少なりともショックだったのだ。 
 俺はパイ選びにつきあって、雑誌を何ページをめくって見たから、生地作りが腕力を使うことはわかっていたのに、どうして姉さんは箱を抱えなかったのかと思ってしまった。
 俺と兄さんじゃ全然違う。一歳の差は思ったよりずっと大きい。





「そうだ、姉さんが“金髪に、自分の見た目自覚しろ、って言われたんだけどこれはあたしに対して全面戦争挑んでるって解釈でOK?”って俺が殴られそうになりました」
「ガキ向けの読解ドリルから始めた方がいいんじゃねぇのか。つーかよくそんな読解力の女と付き合っていられるな」
「兄さんもいい具合に抜けてるんで」
「それは否定しないが」

 読解に欠ける姉さんと、深読みしない兄さんは合っているんだろうと思う。
 普通、先生が姉さんに言ったような文脈で全面戦争を想像する方が難しい。
 まあ姉さんはそんじょそこらの柔な男よりは余程強いだろうから、万一があってもただで倒されるような女ではない。けれど先生が心配してくれるように、一応気にした方がいいんだろうというくらいのビジュアルではある。

「先生、姉さんみたいなビジュアルが好きなんですか?」
「性格と態度と読解力にでかい欠点がなければな。悪くないとは思う」

 これが、性格も態度も読解力も、兄さんが相手なら抜群にいいのだからおかしな話だと思う。先生が言ったあの台詞も、兄さんが同じように言ったなら、姉さんは。

「先生が性格も態度も読解力も抜群に悪い女が好みだったらよかったのに」

 それなら、レモンパイくらい兄さんが掻っ攫って言っても何も特別には思わないのに。

「あいつだけは願い下げだな」

 先生がそう言ってしまうから、俺はどうしたって割れ鍋に綴じ蓋を思い出してしまうのだ。






しばらく書かない間に理央がものすごく嫉妬の激しい人間になってしまいました。
どんだけ紗央好きなのこの子。
しかし実際、ケレス先生とか他の男が紗央のことを心底気に入ってくれてたり好きになってくれたり付き合ったりしてるなら理央もここまで嫉妬しないんだろうと思います。
紗央はアンドゥーに対して一途すぎるがゆえに欠点ばっかりで、その欠点ばっかりなのを素で受け入れてくれるのがアンドゥーだったらいい。別にくっついてないけどね、幼馴染止まりだけどね……!
アンドゥーは紗央さんをあくまで家族みたいに思ってたらいいな。誰かその事実を突きつけてやって弱ってる紗央さんを掻っ攫えばいいと思う。弱った紗央さんはきっと可愛いと思います。歪んでますか。
すいません秋臼さんのツボったんでこんなんになりました。ケレス先生がこの気ぃ強い女に現実突きつけて芯から壊して掻っ攫ってくれたら私すごい楽しい、とか思いながら書いてました。最近鬱ストーリーに餓えてるんです。誰かそういうの書いてください。この部屋寒いです。
あ、でも昔話書くのも楽しかったです。いくら書いてもアンドゥーから恋愛感情が見いだせなくて、それがまた楽しいです。


そしてみなさん、いつもの時間は14時です、確か。(笑)
喉痛いが喋るだけでもいいだろうってことで予約しときますよ。
明日も説明会か……。そろそろ面倒になってきました。


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2009.02.05(Thu) | ご近所物語 | cm(0) | tb(0) |

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