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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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君と生きる世界の香り 6




「……大和様、何故あのようなことを、」

 袴を脱いで普段着に着替え、上にはつい数時間前葉山に貰った黒のセーターを着る。
 後ろにいる佐久間の顔は見えないが、おそらく苦い顔をしていることだろう。
 俺のせいで計画がぶち壊しだ。姉様も今頃話を聞いて部屋で驚いていることだろうと思う。

「……今は敬語とか使わなくていいから」

 やっぱりでかいな、このセーター。
 そう思いながら佐久間の横を通りぬけ、リビングへ向かう。ソファーに腰を下ろすと、やはり苦い顔をしていた佐久間が更に俺に言葉を投げかける。

「大和君、……家はあいつが継ぐって、同意してただろ? その方が楽でいいって」

 あいつ、というのは姉様のことだ。
 そう、同意していた。その方が楽だと思っていた。確かにそう言った。けれど、そんなことは恐らく許されないだろうというのも、わかっていた。


『長男のいる旧家が女を当主にするなど有り得ない。家督は私が継ぐ』


 未だ男尊女卑が色濃く残る旧家だ。俺のこの発言を、どれだけのご老体が待ち望んだか。
 花は好きだ。この家も嫌いじゃない。姉様のことも好きだ。だから、この道をとることが最善だった。

「……姉様は、自分が当主になってお前を認めさせたかっただけなんだろうけど、お前は所詮外の人間だし、女ひとりでできることなんて限られてる。そしたら、ご老体の目の届かないようなところで自分の教室開いてお前と二人で暮らした方が余程幸せだろうよ。昔から言うだろうが、男は出世、女は結婚ってな。姉様もそこまで馬鹿じゃない、どっかの放蕩息子と違って、俺が裏切ったわけじゃないことくらいわかってくれてるはずだ」
「……けど、それで君はどうするんだ」
「さっき父様に言った通りだよ。これから四年間は姉様に甘えさせてもらう。大学行って、卒業したら結婚して、正式に家督を継ぐ」

 そのためのこれまでだ。そのために今までこうして生きてきた。
 下手な自己犠牲じゃないんだ、信じて欲しい。これはただ、俺が俺であるために必要なことなんだ。芹沢の末っ子として生まれ、誰にも目をかけられず、姉様に守られてばかりで育った俺が芹沢に対してしてやりたい最大の報復と恩返し。

「姉様は俺の母親代わりをしてくれた。実際いい母親になると思う。ここにいちゃそれもままならないだろうし」
「……本当に家を継ぐようなことになれば、これまでのような自由もなくなる」
「それはこれまで姉様もしてきたことだ」
「俺はまだこうしてこの家であいつの近くにいられるからいい。でも君は」

 くだらない心配をしないで欲しい。
 何年前からしてる決意だと思ってるんだ。佐久間がこの家に来た頃からずっとだ。ずっと、大人になったらこうしようと思っていた。
 大和だって芹沢の人間なんだから、と、俺が蔑ろにされる度に姉様は父様に逆らおうとしていた。けど、俺はそんなのいらなかったんだ。

「――あいつにはまだ他の男と会うチャンスなんていくらでもある。姉様はお前じゃなきゃダメだろ、多分」
 
 姉様が頑張ろうとする度、俺を認めさせようとしてくれる度に、俺は姉様の着物の裾を引っ張ったものだった。


 『ぼ、僕は、姉様がいてくれるなら、それでいいんです』


 そう言って引き止めて。姉様だけでも自分の側にいてくれるなら、それだけで十分だと思っていた。他の人間なんて俺には関係ないじゃないかと思っていた。
 そんな内気でどうしようもなく弱かった俺がここまで図太くなれたのは、


「姉様は俺だけのもんじゃないんだから」


 この男を、姉様がとても大切そうに見ていたからだった。





 元々姉様は、長男が家を飛び出した時点で十二歳、その時には次に家を継ぐことを心に決めていた。高校を卒業し、大学へは行かずに家へ入り、いずれ芹沢を継いで行くために稽古や展覧会の準備に追われていた。
 その頃、たまたま夜にひとりで外を散歩していた時に出会ったのが佐久間だった、らしい。高校の頃一度だけクラスが同じになったことがある、同級生。ついでに言えば佐久間の家は料亭を営んでいて、小さな店ではあるが、一応跡継ぎということになっていたらしい。その修行が辛くて、父親と大喧嘩の末、家を飛び出したらしい。理由だけ聞けばうちの長男と大差ない。
 そこを姉様が拾ってやって、しばらくうちにいたらどうか、と提案してやったのだ。うちは料理は壊滅的な家系だ。俺や姉様の飯を作る人間がいるだけで芹沢としては十分助かったし、家出息子がこれだけ伝統的な家で働けるとなれば親も文句ひとつ言わなかったようだ。
 怖いようにも見えなかったから俺は佐久間にすぐ懐いて、姉様とばかり一緒にいないで俺とも遊んで欲しいと思っていたけれど、いつも一人だった俺を構ってくれる人が増えたのだから、それだけで嬉しかった。
 すべてに気がついたのは小学六年に上がる頃だった。ちょうど色恋沙汰に敏感になる年頃だったから、ああこいつらは好き合って二人でいるんだと理解した。妬みはしなかった。ほんの少しの寂しさを覚え、これからは姉様は守られる立場にいるんだ、と、思った。
 小学生の俺でも分かるような関係だった。老人共が察さないわけがない。解雇やら追放やら、世話になってるくせに手を出すとは、とか、不穏な言葉が飛び交い出した。


「僕の世話をして下さっているんです。僕のことをよく知る姉様と親密になるのは当然でしょう」


 簡単に言えば、庇ったことになるのかもしれない。けれど俺にとってはそれ以上の意味があって、この時のことがなければきっと家を継ごうと本気で思ったりしなかっただろう。この家を継ぐことになっては、姉様は幸せになれない。なら俺が継がねば。俺こそが芹沢の『長男』だから、どうしても。 
 青春時代をすべて芹沢に費やし、俺に費やし、これからもその身すべてを捧げようとする姉様を救わないと。俺にくれた自由と同じだけの自由を。
 姉様はあれで強かな人だ。自分が家を継げばすべての決定権を手にすることができるし、それで佐久間をうちに引き入れたりするつもりだったのだろう。そんなの、ご老体が許すはずが無いのに。




「俺に何だかんだ言ってる暇あったら姉様慰めてやれよ。で、芹沢は俺が継ぐって言っといて」

 セーターの襟ぐりに顎を埋めて言い放つと、佐久間は何か言いたげな様子で俺を見、それから「わかりました」とだけ答えて背を向ける。
 もう少し嬉しそうな顔しやがれってんだ、誰のためだと思ってんだ。そんな言葉のひとつも言いたくなる。最高のプレゼントだろうが、これ以上嬉しいものなんてないだろ?

「……彼女より、あいつを取るのか? それでいいと?」
「俺は俺というひとりの人間であると同時に芹沢の一員だ。家の存続を考えて何が悪い」
「……そう、か」
 
 諦めたように佐久間は呟いて、今度こそ本当に離れを後にした。
 ソファーに腰掛けたままの状態で、横に倒れる。ぼすん、と鈍い音がする。

「………あと二年、か……」

 大学を卒業したら、決められているように結婚をして、家を継ごう。
 そのために、二十歳まで葉山との関係が続いていたら、その時は迷わずに別れることにする。
 あと二年、続けばいい。続いてほしい。
 それが俺の一生で一番光る時間になるはずだから。
 





第一部終わり。
次がルミ視点で、最後大和視点で終わり、と。
ルミ視点長くなりそう。


そもそもこんなエピソードしてるから長くなるんだ。
しかもどうでもいいじゃないか、と。


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2009.03.08(Sun) | 大和中心 | cm(0) | tb(0) |

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