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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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月の眩暈と光源体  6



「いいなあ樹理、似合ってる」

 声をかけてやると樹理は照れくさそうに笑った。小さな体には大きすぎるランドセル。よく『ランドセルが歩いてる』なんて表現が使われるけど、なるほどその通りだと思った。
 ぴかぴかに光る黒いランドセルを背負って、普段あまり感情を表に出さない樹理もご機嫌のようだ。それは俺としても好ましい。

「小学校楽しみか?」
「うんっ」
「そっか、楽しいこといっぱいあるといいな」

 ひらがなもカタカナも難なく覚えてしまった樹理をどうするべきなのか困った時期があった。私立小に入れるのはほとんど親のエゴだ。それがどういうことなのかも理解していない子供に選択を強いたところでそれが後々正しかったと自分で思えるのかどうかは疑問だ。けれど、母親や俺と違って生まれつき要領がいいというのなら、俺がその判断を下してもいいのかもしれない。
 結局俺一人では決めきれず両親に相談してみたが、母さんが私立に入れた方がいいと言うのはわかりきっていたから大した参考にはならなかった。一応ヤマトを頼ってみたところ、「本当に賢かったら大学受験で東大だろうが京大だろうがMITだろうが入れるだろ」とあっさり言われ、それは自分でも驚くくらいあっさりと納得できる言葉だった。小学校ですべて決まるわけではないのだ。
 ということで、樹理は四月から公立の小学校に通うことになった。母さんはしばらく反対していたけど、これからどうなるかわからないし、一流の私立小なんかに入れて勉強だけに専念する形になるよりは、他に選択肢を多く用意してやりたかった。

「樹理」

 ご機嫌でランドセルを背負い、ぱたぱたと駆け回る樹理を呼びとめ、抱き上げて膝の上に乗せる。薄いグリーンの瞳がきょとんとしていた。

「ごめんな、お父さん入学式の日お仕事あるんだ」
「うん、……しってる」
「おじいちゃんとおばあちゃんと、一緒に行って帰ってこれるよな?」
「うん、だいじょうぶ」

 樹理の入学式は明後日だ。
 一応日取りが被らないことを願っていたのだが。新一年の担任になるわけではないから、入学式と被る分には交渉もできるだろうと思っていた。でも始業式では逃げるわけにいかない。今年は持ち上がりで三年の担任だから余計にだ。
 うちの親は年齢より若く見えるから問題ないのかもしれない。あとは樹理がどう思うかだけだったが、やっぱり聞き分けの良い子で助かる。

「仕事終わったらすぐ行くよ」
「ううん、おしごとして」

 急げば一緒に帰るくらいはできるかと思ったのだが、そこはきっぱりと断られてしまった。
 子供らしくないな、そう思うことも度々あるけれど、この子のこれまでを考えればそれも仕方ないことなのかもしれない。
 何度言って聞かせても、これはそう簡単には直らない。彼女が死の直前に樹理にかけた呪いだ。俺にはどうすることもできない。

「……ありがとうな。樹理がいい子で助かるよ」

 それ以外に言ってやれる言葉を持ち合わせていなくて、マニュアル通りにそう告げると、樹理は満足そうに笑って大きく頷いた。ランドセルの金属ががちゃがちゃ音を立てた。




 始業式が終わり、最初のホームルームを終え、クラスの生徒と他愛もない話をしてから職員室に戻ると、もう時計の針は正午を回っていた。樹理はもうとっくに帰宅した頃だろう。
 今朝はいつもより少しだけ早く起きて朝食の準備をし、樹理の着替えを手伝ってから実家まで送り届けた。ちゃんと大きい声で返事するんだぞ、と言い聞かせればしっかり頷いてくれる。よくできた子供だ。

「あ、流風くん流風くん!」

 明日の課題テストの印刷を済ませたらしい八朔が大量のプリントを抱えて印刷室から出てくると、俺に声をかけてきた。俺は昨日の入学式の後済ませたから一応終わっている。提出も済んでるし。

「ん? どーしたー?」
「さっきバスケ部の子たちが探してたよ? 仮入部云々とかで打ち合わせしたいのにーって騒いでた」
「あー、そっか。さんきゅ、教えてくれて」
「いえいえー」
 
 そういえばそんなことも言ってた気がする。クラスで話し込んでてすっかり忘れてた。
 八朔に手を挙げて合図してから、足早に職員室を出る。生徒はやはり部室だろうか。
 しかし生徒達は始業式の日まで部室で長々残る気にはならなかったらしい。職員室近辺をうろうろして俺を捜していたようだ。翌日からの注意事項を二、三伝えてやると、鞄を肩にかけて昇降口へ向かって行った。
 試験の提出も終わってるし、理系クラスの持ち上がりだからクラスの面子も知った顔ばかりだ。特にすることもないから今日はもう帰るか、と思ったところで、ポケットに入れていた携帯が震える。校内で電話に出るわけにはいかないから、職員用階段を下りて外に出、ディスプレイを確認するとヤマトからの着信だった。

「……迷惑ですねえ、仕事中なんですけど?」
『仕事中に携帯持ち歩くとはイケナイ先生だな』
「終わったんだよ! 今帰るとこ」
『ならちょうどいい。うちに来い』
「んな暇じゃねぇよ、実家に樹理迎えに行かなきゃなんないんだ」
『だからうちに来いっつってんだよ、ランドセル背負った王子様がお待ちだ』
「は?」
 
 意味が分からない。いや、樹理がヤマトのところにいるんだろうことはわかるけれど、今日は入学式で、父さん母さんと出かけたはずだろ?

「……分かったよ、行きゃいいんだろ、行けば」
『随分な言い方だな。樹理に会うのが面倒だと。パパはお仕事が大好きってか?』
「ざけんな、行くっつってんだろ」

 携帯の向こうで、昨日聞いたあのがちゃがちゃという金属音が聞こえた。





「あ、ほら樹理くん、お父さん来たよ」

 着物姿の葉山が遠くから俺を指差す。樹理は朝着せた入学式用の服ではなく普段着を着て、なのにランドセルを背負っている。自慢したかったのだろうか。

「悪いな葉山。面倒見させて」
「それは構わないんだけど、樹理くん実家で寂しいならうちで預かるよ? 椿もいるしさ」
「? なんでいきなり」

 縁側に腰掛けると、葉山はひとつ息をついた。
 ヤマトは今ちょうど用事があるとかで席を外している。すぐ戻ってくるらしいが、呼びつけた本人がいないとは少し調子が狂う。

「樹理くん、入学式終わって水城の実家帰って着替えて、それから歩いてここまで来たの。あたしも大和もびっくりしちゃって。ちゃんと電話で連絡は入れておいたから大丈夫だと思うけど、何かあったらフォローよろしく」
「え、あ、いや、フォローは当然だ、けど、あそこから歩いてって……。俺はてっきりヤマトが連れ出したもんだとばっかり」
「さすがに入学式の日まで拉致ろうとは思わないわよ。なのに自分から来てくれて。小学一年生の足じゃかなりかかるし、樹理くん見かけも綺麗だから下手に歩かせると危ないんじゃない? ツキ高からうちは近いし、帰りに樹理くん連れて帰るって選択肢もあると思うんだけど。あたしは大抵家にいるし」

 と、言われても。今までこんなことなかったからどう対応したものやら。
 ここまでひとりで歩いてきたことを褒めるべきなのか怒るべきなのか。いや、ここは怒らなければならないのだろう。父さん母さんも多分めちゃめちゃ心配したと思うし。

「樹理」

 呼ぶと樹理はこちらを向いててくてくと歩いてくる。
 実家からここまでは俺だって歩いて十五分二十分軽く掛かる距離だ。それを小学校に上がったばかりの子供が歩いてくるなんて。
 でも、何て言えばいい? 困らせたらダメだろ、とでも言うのか? それはまるで彼女の遺言のようで、こう言ってしまったらまた樹理を縛ってしまうことにならないだろうか。

「椿と遊びたかったのか?」

 小さな手を握って問いかけると、樹理はふるふると首を振る。

「じゃあ、おじさんたちにランドセル見せたかった?」

 また首を振る。

「……ごめんなさい」

 それから樹理は、寂しそうにそれだけ呟いた。

「……早く帰って来るって言ってたのになかなか来ないから会いにきたんだよなー、樹理?」

 廊下の向こうからヤマトの声がした。椿を抱いたヤマトは笑って樹理に向かってそう言うと、俺の側まで来て俺の頭をぶん殴る。

「いって!! 何だよヤマトッ」
「ばーか、早く帰るって言ったんなら早く帰ってやれ、何暢気にセンセイしてんだよ」
「それは樹理が、」
「5歳児の言う事ありがたがってんじゃねぇよ、馬鹿かお前は」
「……なんだよ、……俺の帰りが遅いから」
「それ以外に何があるんだよ、樹理がお前より俺らを好きなんて有り得るわけないだろうが」

 そうなのか、と聞こうとして樹理を見ると、樹理はふいと視線を逸らして俺から離れていった。
 喋るつもりはなかったのにバラされてしまって不機嫌なのか。

「……生憎と俺、強がりは言う立場なもんで、汲んでやれねぇんだよ」
「だから馬鹿なんだよ、流石に子育てはどこぞのセンセイも教えてくれねぇぞ」
「……わかってるよ」

 今日はまだ日が高い。
 今日あったこと、学校のこと聞かせてもらわないと。
 帰り道、手をつないでゆっくり。ランドセルの揺れる音を聞きながら。






ツンデレの子供はツンデレ。がコンセプトです。
なので紗央の子供のみのりもツンデレです。
しかし黎さんはヤンデレなわけではありません。


こんな樹理が好きなんです。
こんな流風が好きなんです。
クラナドの岡崎ほどじゃなくてもこの時期の流風さんは一番カッコイイ気がしてます。
でもあとでちゃんと怒った方がいいぞ、流風!!

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2009.03.15(Sun) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

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