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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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10――the knight


「っ、ほら、いくらバカの国だからってちんたらしてたら俺らまで捕まる! 逃げましょう、ルカさん!」

 金髪の男の枷を外して、焦ったようにシンゴが叫んだ。ルカもそれに頷く。大体まだ誰も気付いていないというのがおかしすぎる。ここまでの凶悪犯を二人も勾留しておいて、ここまで無関心なのは呆れを通り越して気味が悪い。次こそ罠だろう。地上に着いた瞬間に包囲されていそうだ。
 悪い方向に向かう考えを振り切って、ルカが一歩踏み出す。シンゴもその後に続いているようだったが、残りの二人の気配がない。ルカが振り向くと、細い方の男は、あの兄弟から預かって先ほど返してやったものを肩に掛け、金髪の男は、ご丁寧にも牢の中に置いてあった自身の武器を手にしていた。

「……何やってんだよ、あんたら。これ以上の厄介は御免だからな、とっとと帰」
「てめぇら二人で先に戻れ」

 ……またこの男は。またと言うほど知らないはずなのに、ため息ばかりが口から出てくる。

「ふざけんな! あんたら連れ帰って来いって言われて俺らはここまで来たんだ! また下手なことされて捕まられても困るんだよ!」
「普通にして捕まるわけがないでしょう、私達が」

 細い男はあっさりと言ってのけたが、まず最初誰が捕まったんだかよく記憶を巻き戻して考えて欲しいと強く思った。

「何言ってんだガキ、俺らはただ、素晴らしいもてなしに対する礼がしてぇだけだ」

 何言ってんだはこっちの台詞だ、と言おうとルカが一歩踏み出したところをシンゴが肩を掴んで制止し、ゆっくり首を横に振った。そんなシンゴの態度にもむっとしながら金髪の顔と、華奢な男の顔を見る。
 ――その目は、息が止まりそうになるほど真剣で、今下手なことを言えば自分も標的にされかねないことを知った。

「っ、ルカさん、隠れます!」
「え?」

 シンゴが小さく叫んだかと思うと、ルカを抱えて元の牢に飛び込んだ。すぐ後にたくさんの人間が地下へとやってくる音。痺れを切らしたのか、ようやく異変に気付いたのかはわからない。

「出向く手間が省けたようですね」
「ああ。つっても、まだ外に掃いて捨てるほどいやがるだろうよ」
「それは掃いて捨てれば宜しい」
「はっ、違いねぇ」
 
 二人が二言三言楽しそうに言葉を交わすのを、ルカはじっと見ていた。ルカの肩を引き寄せて自分の側から離そうとしないシンゴが、いつまでも剣の柄に手を掛けているのも、気になった。
 そうして何かに気を取られていないと、目の前で繰り広げられる惨劇に、心が支配されてしまいそうだ、と思った。




「っ、……まだ殺んのかよ、あんたら……!」
「だから先に戻れっつっただろ。見物料取るぞ」
「誰がこんなの見たいなんて思うんだよっ」

 地下から、死体の階段を上って、死体の庭を歩き、正面から堂々と城に侵入して、赤い絨毯を黒く染め上げた。
 もう目を逸らしても、どこを見たって死体がある状態で、耳を塞いでも鼓膜に張り付いたように叫び声が聞こえてくる。これはしばらく安心して眠れないかもな、と他人事のように思ってしまう。そんなルカの隣にはずっとシンゴがいて、まるで従者か何かのようだ、とルカは思った。

「……下手に逆らえませんから、黙っておきましょう、ルカさん」
「シンゴ、……」
「ルカさんが殺されたり酷いことされたら困るんですよ。ま、俺が守りますけど」
「何言ってんだ、自分くらい自分で守れる」
「ならいいんですけどね」

 シンゴの苦笑に少し苛立った。自分はシンゴより一つ年上だというのに、何だか弟のように守られている気がしてならない。というより、実際そうだ。

「……先に戻れるものなら戻りたいですけど、一緒に戻らないと多分あの兄弟信じませんからね。大人しく着いていきましょう。黙ってる分には何もしてこないと思います、俺らには」

 囁くような会話を終え、悠々と前を歩く二人についていく。何階分かの階段を上がり、踊り場が一層広くなる。玉座が近い。この踊り場の向こうにまた十数段の階段があり、その上はもう玉座だ。
 この二人の目的は、ここの一番上にいる人間、王か君主を殺して黙らせること。それが礼というやつなのだろう。
 その玉座から人影がこちらに向かって歩いてくる。前の二人が構えを取った。ああ、またか。と凄惨なシーンをなるべく見ないように俯いてルカは思ったのだが、どうやらその人影はこれまでと雰囲気が違うようだった。
 かつん、かつん、と階段を二、三段下りる音が聞こえ、そこで止まる。
 顔を上げる。上等な外套を身にまとった、青年。背はルカよりは高いがシンゴほどではなさそうだ。身に纏うものが、高位の人間だと推測させる。……目の前の人間が城中の兵士を殺している事実は知っているはずだ。その相手を目の前にしても動揺を見せない瞳、これもまた上等であろう腰の剣、……もしかすると高位といっても兵士の長か何かなのかもしれない。

「……これ以上進むと君たちも帰れなくなる。うちの君主サマは気が短いから、城燃やすことまで視野に入れてるみたいだ。最後にはどんな兵器持ち出すことやら」
 
 やれやれと言ったように青年は呟く。

「尻拭い誰がやると思ってるんだか。……とにかく、城を燃やされるのは避けたいから、ここらで満足して引き下がってくれると嬉しいんだけど」

 おそらく高位であろう人間の割には謙っているというか、何と言うか。
 少し迫力に欠ける気がする。が、この状況で迫力に欠ける言動をできるというところが、普通と違うということなのかもしれない。

「断る。この城の主のアホ面歪ませてやらねぇと気が済まねぇ」

 そうか、とやはり呟くように言いながら、青年はとん、とん、と一段ずつ階段を下り、四人のいる踊り場に近づく。多分この人は、自分やシンゴに危害を加えることはないだろうと思う。それでも自然とルカは息を呑んだ。

「なら、ここで止める。全滅はちょっと体力が厳しいから無理だとしても、一人倒せば戦意喪失くらいの効果はあるだろうし」
「その哀れな一人ってのは誰だ? 言っとくが、後ろのガキ殺ったところで何にもならねぇぞ。戦意喪失どころか荷物が減って助かる」

 またこの男は適当なことを、と当然のようにルカは思う。だが、シンゴがルカの様子を察してルカが動くのを阻む。……分かっている、今は動かない方がいい。
 顔を上げた瞬間、青年と目が合った。心底驚いているような、そんな表情。会ったこともない相手に突然そんな顔をされる覚えはないというのに。

「君は……」

 君は?
 目が合った瞬間に青年が口にした言葉だったので、きっと自分が“君”に当たるのだろうとルカは推測する。が、この青年と面識は一切ない。向こうが一方的にこっちを知っている? 有り得ない。ルカもシンゴもこの地に来て長くない。この城になんてついさっき足を踏み入れたばかりなのだ。
 青年は頭を振って、いや、と言いなおす。

「後ろの二人は見たところ非戦闘員だ。剣は持ってるみたいだけど、護身用だろう。振り回すことはできても斬ることはない。……非戦闘員を傷つけるなんて、騎士の誓いに反する」

 この言葉でようやく、彼が騎士の位にいることを知る。
 ルカとシンゴを非戦闘員と見抜くのはいいのだが、そう簡単に斬れないなどと言ってほしくはないとルカは思う。できる、やらなければならないときには、できる。生きるためにならできる、きっと。
 ルカがそう思ってきゅっと拳を握った瞬間に、騎士はとんでもないことを口にした。

「倒すのは、そうだな、……金髪の貴方だ」
「何……?」

 空気が一瞬にして凍りついたような気がする。
 この国の人間だからやっぱりどっか抜けてんだろうか、それとも作戦なのかまるで見当がつかない。

「命知らずな方ですねえ。この闘争本能の塊に喧嘩を売るとは。まあ、やれるのなら是非実行して頂きたい」

 細い男は悠長に、そして楽しそうに笑っていた。台詞こそ同じことを考えていたが、ルカはとても笑う気にはなれなかった。金髪の男の背中から、とんでもない殺意が見え隠れしているのがわかるのだ。この騎士は、多分人間であったこともわからなくなるのではないだろうか。

「現実的に考えて、だ。流石に人間以外のモノと戦ったことがないからそっちは倒せるか分からない。けど貴方は、貴方という人間が武器を持って戦うんだろう? なら俺にも勝ち目はある。そこまで弱くはないつもりだし」

 室内で戦ったことなんてないからなあ、と呟いてから、騎士は剣を抜いて金髪の男に飛びかかった。刀と刀のぶつかる鈍く耳に痛い金属音が響く。ほう、と感心したように見物する、仲間のはずの男が異様に浮いて見えた。
 ぎりぎりと刀身を合わせながら、そもそも、と騎士は続ける。

「薬、ちゃんと抜けてないでしょう? この国、上から下まで雑な人ばっかりだから、そう簡単に抜ける量じゃないだろうと思ってたんだけど」
「てめぇみてぇな雑魚国の雑魚騎士の相手なんざこれくらいで十分だろうがッ」

 薬、と聞いて、そういえばさっき自分も考えたじゃないか、とルカは地下に入ったときのことを思い出した。
 あの男を無力化させるには象の致死量くらい必要なんじゃないだろうかと考えたことをすっかり忘れていた。実際のところどうなのかと、声はかけずにシンゴと共に高みの見物をしている男に近づいてみる。

「ああ、私の倍以上は飲まされていたと思いますよ。飲まされた直後は少しも動かなかったのでようやく召されたかと喜んだものでしたが」
「鬼だな」
「鬼っスね」
「あれを黙らせるには象の致死量分程の毒は必要でしょう。まったく、この国はどこまでも抜けている」

 突っ込みどころはそこなのかとルカとシンゴは改めてこの人物の素晴らしきマイペースさに敬服し、ふと気付いたルカが更に口を開く。

「あんたは抜けたのか? 薬」
「いえ、できるなら横になりたいくらいです」
「それでもあれだけ殺せるんだから、あんたって見た目の割に結構体力あるんだな」

 それは率直な感想だったが、 

「私はほとんど動いていませんよ?」
「……は?」

 とあっさり返され、ルカは面食らった。

「私が手を下すまでもなく死んでいきましたからね。あの騎士が標的をあちらに絞ったのも的確でしょう。薬も抜けないままあれだけ動きましたから、体力の消耗も激しそうですねえ」
「そんな冷静に……。んっとに鬼だな、あんた」

 金髪の男と騎士はその間も対峙していたが、こんな話を聞いた後ではどうしたって金髪が劣勢に見えてしまう。実際にもうそうなのかもしれないが。 
 ず、と金髪の足が後ろにずれた時に、舌打ちの音が聞こえた気がした。それを合図にしたのか、騎士は間合いを取る。

「この国の執政官が逃がすと言ってるんだ。兵をこれだけ殺されて、俺はおそらく貴方を殺せる状況にあるのに、一つも咎めることなくほぼ無傷で帰してやると言ってる。……今の貴方は万全じゃないから俺には勝てない。戦でもないのに力のない人を殺すのはやっぱりしたくないからな。……でも、これ以上進むと言うなら容赦はしない。さあ、早く引き下がれ!」

 体調が万全なら、きっともうあの騎士は単なる肉塊になっているだろう。
 この金髪が法外に強いのは分かる。もう嫌というほど見た。牢に入れられ、薬を盛られて体力を消耗している上で城中の兵士を殺して回った。そんなこと、普通の人間にできるものではない。
 ただの子供であるルカだってそれがわかるのだ。この騎士にだってわからないわけはない。だからこそ、わからないわけのない騎士が本気でそう言う今、騎士の申し出を断ればどうなるか全く分からない。騎士が、勝てない、と断言している。勝ち負けがどの段階で決まるのかは定かでないが、勝てないのだから、その言葉が本当なのなら金髪が劣勢で終わることだけは確かだ。
 数秒の沈黙のあと、金髪は騎士に背を向け、

「次会ったら殺すぞ」

 と吐き捨てた。

「じゃあ会わないように遠征するかな。薬抜けてない割に力あるもんだからもしかしてやられんじゃないかってすごいビビってた、内心」

 さっきまであれほど強気だったというのに、素がこれとは。ルカの横を通り過ぎる金髪の苦い顔が目に入った。
 少し気分が良くなる。さっきこの男を殺し損ねた分をこの騎士が取り返してくれたような、そんな気分。
 踵を返す金髪の後に、傍観を決め込んでいた男も続き、その後にルカもシンゴと続く。最後にちらりと例の騎士を見ると、彼は、

「っ……?」

 背筋が寒くなるほど真っ直ぐな眼差しで、間違いなくルカを射抜いていた。




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2007.10.01(Mon) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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