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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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11――encroachment



 人ごみを歩けば道ができた。早朝、活動を始めた城下の人々が、自分たちが通るところの道を綺麗に空けてくれる。そりゃあそうだ、とシンゴは思う。彼らは城の惨状を直に見たわけではないが、シンゴやルカの前を歩く男の服の赤黒さを見れば誰だって道を空けるだろう。明らかに怯えている周囲の人々を全く意に介さず、無遠慮に真ん中を闊歩する目の前の男はやはり普通ではない。ああいう強さだけは身につけないようにしよう、とシンゴは強く思った。
 少しは大人になれているだろうか。自分も相当短気だが、こちらに来てからのルカは今までよりずっと気が短い。そんな彼がこれ以上無茶をしないように、上手く立ち回れているだろうか。今、ルカは牢に助けに入った時とは違う、幾分か晴れた表情をしている。目的のものを取り返したことと、自分が殺せなかったあの金髪を、あの騎士が負かした、というか食い止めたのが原因だろう。
 あれはシンゴからしてもそれなりに気分の良いものであったが、あれであの金髪は相当機嫌を損ねているのではないか。これでルカが下手なことを言ったりしたら、今度は時計を奪われるくらいでは済まないだろう。それだけは避けなければ。

「あれ、シキー。朝なのにすごい、混んでない道ができてるよ」
「げ、不味いぞ、隠れろッ」

 ふと耳に届いたのは少女の声。
 続いて慌てたような少年の声。

「え、どうして? あ、ほら、珍しいねー。赤い服着てる人がいるよ」
「ああああッ、さっき言ったばっかだろ、城の兵皆殺しにしやがったとんでもねぇのがまだこの辺うろついてるって!! つーかあの執政官サマもっ、んなこと“ははは”とか笑いながら話すんじゃねぇっての! あ゛ぁああああああ、だから近づくなって!!! それは赤い服じゃなくてかーえーりーちーだぁあああああああ!!!!

 ――小さいのがやかましい。
 シンゴの第一印象はそれだった。少年と少女が1人ずつ。シンゴと同じくらいの年に見えないこともないが、背が自分より低いのでどうしても年下に見えてしまう。少女は、目立つ薄紫の絹のローブを身に纏っており、珍しい装飾品もいくつか腕などにしているようだった。一方、少年はごく普通の兵士の格好で、あまり強そうには見えない。強気な瞳はしているが、そんなに力はないんじゃ? と図々しくもシンゴは思っていた。
 やがて少女は楽しそうにシンゴ達4人の前に姿を現し、少年もそれを追って図らずもその姿を晒すこととなった。

「………………はぁあああああああ」

 少年は額に手を当てて思いっきりため息をつくと、

「皆のものー、この方を誰だと心得るー。何かよくわかんねえけどすごいらしくてめちゃめちゃ胡散臭い占い師のアキ様であるぞー」

 ……なんだか酷い口上であった。
 なんというか、やる気が欠片も見られない。こんな紹介のされ方をしていると言うのに、アキと呼ばれた占い師は、綺麗なローブを揺らしてにこにこと笑っている。

「ほう、貴女が噂の」
「知ってるのか?」

 ルカは例の華奢な男の隣にいた。ルカが問いを投げかけると、男は頷く。

「ええ、珍し物好きのこの国の君主に保護されているという占い師でしょう。それなりに当たると聞きました」

 へえ、とルカは感心したように腕組をしてアキを見た。シンゴも同じ気分だった。あの、自分とそう年齢の変わらない少女が、不思議な力を持つとして国に保護されているなんて。追放された自分たちとは雲泥の差だ。

「気休め程度に話を聞いてみてはどうですか。鬼門程度は分かるかもしれませんよ」
「あんたらといるだけでどこ向いても危ないよ」

 あの金髪の方には今話しかけると不味いと思っているのか、はたまた話したくないのか、ルカはよくこちらの男に話しかけていた。多少の生意気も軽く受け流してくれるからだろう。賢明な判断だ、とシンゴは思う。情報は必要だが、命が脅かされては意味がない。
 やがて金髪の男が先に進んで近くの店を物色し始め、ルカと話していた男もそれに着いていったために、少年と少女の前にはシンゴとルカだけが残された。ぼさぼさしてっと置いてくからな、と金髪の怒声が聞こえ、態度デカすぎ、と呆れたようにルカがため息をついていた。

「いーのか? ついていかなくて」

 少年――さっきアキにはシキと呼ばれていたか――は、少し離れたところで店を物色している2人を、親指で示して言う。

「いいんだよ。あいつらが店恐喝して回ろうと俺たちには関係ないから」
「関係ないって言っても、仲間じゃないのかよ? 別に仲間だったからって、あの執政官サマがお咎めナシっつったんだ、捕まえたりしないぞ?」
「俺と、コイツが、あれと、あれの仲間に見えるのか? どう見たって人質だろ」

 確かに? シンゴとルカを見比べてシキは納得したように頷いて言った。もちろん実際は命の恩人という奴だ、とシンゴは思っていたが、向こうの2人が最強の地獄耳だったときのことを考えて口にするのはやめておいた。

「まあ、早く着いていくに越したことは――、って」

 言いながらルカが前の2人を追おうとすると、アキがじっとルカの胸元を見ていることに気付く。
 アキの目線、その先、ルカの服の下には多分あの時計がある。金髪から取り返した時に首に掛けなおしていたはずだ。

「見せて?」

 全く躊躇なくアキはその言葉を口にする。
 そう言われて、ルカは一度シンゴを見てから、少し困ったように笑うと、首の金鎖を外した。

「いいんですか? ルカさん」
「あいつら、っていうかあいつとは違うだろ。護衛がつくような凄腕の占い師なら占ってもらった方が得だし」

 朝の光を浴びて眩しく輝く金時計をアキに手渡す。へー、と脇から珍しそうにシキも顔を出して眺めていた。
 綺麗、と小さく呟いてアキは金時計をしげしげと見つめる。ルカの後ろから、シンゴも一緒になってその様子を見ていた。
 時計の輝きは変わらない。それは金髪に奪われた時のままで、つまりは、ルカが彼女から受け取ったときとも、変わらないということなのだろう。

「……歌の上手なお姫様だね。……大丈夫、君の探しものは無事だよ。君がここで生きてるように、彼女もそこで時を紡いでる」

 ルカが面食らったようにいつもより目を大きくしていた。はい、とにこにこ笑いながらアキに時計を返されても、一つも声を上げない。だから、シンゴが自分が先に喜ぶことにした。

「や、ったじゃないスか!! お姫様、ちゃんと生きてるって! ちゃんと無事だって! ルカさんっ、疑ってるわけじゃないでしょう!?」

 わかっている。
 きっとルカは、何度も疑った。世間と隔離された城という場所で生きてきたお姫様。可愛くて、何も知らなくて、彼女が一人で生きていくなんて絶望的だと思っていただろう。シンゴだってそう思っていたのだ。
 だから、シンゴと同じように、ルカだって本当に嬉しいはずだ。こんな、右も左も分からない場所に飛ばされて、大切なものを一度失って、取り返して、ぼろぼろになっている今だから、これは本当に嬉しい言葉として心に入ってくる。

「……本当に、ちゃんと、無事で?」
「うん。すぐじゃなくても、きっと会えるよ」
「……本当にっ、城から離れてても、無事なんだな!?」

 取り乱してアキの肩に手を置き、ルカは切羽詰ったように問いかける。
 間髪入れずにアキが無邪気にうん、とまた頷いて、そこでようやくルカはシンゴを見た。

「いっやー、先のことわかんなくてもこれ信じなきゃ始まらないでしょう、ねえルカさん!」

 シンゴの言葉に、ルカが笑顔で大きく頷いた。
 久々にちゃんとした笑顔見たかもな。
 そう思うくらいにルカの笑顔は全く曇りがなくて、純粋に可愛いな、と思えるものだった。
 このままこの気持ちを忘れないでいてほしい。このままどうか折れないで。
 ルカも同じ気持ちなのか、その笑顔のままアキに、ありがとう、と礼を言うと足早に前の2人を追って駆け出した。
 
「ありがとうな。ルカさん元気にしてくれて」

 シンゴもまたアキに礼を告げるとルカの後を追うために足を踏み出したが、マントをアキに掴まれて止まらざるを得なかった。
 何してんだよ、とシキが窘めたが、アキはそのままマントを掴んで離さなかった。
 今までは道を空けていてくれた人々も、あの2人がいなければ実害はないと判断したのかめいめいに動き出して通りには活気が戻っている。止めるからには何か用なのだろう。シンゴはアキが何か話すのか、動き出すのかを待った。

「……辛い旅になるね」

 喧騒の中でぽつりとそう呟く声が聞こえる。
 シンゴもまた、さっきアキの言葉を聞いたときのルカのように、目を見開いた。
 でも、驚かない。心に浮かぶ言葉は、(ああ、やっぱりな)。

「まあ、そりゃあ荷物持ちだとかいろいろだし! 第一、全然環境違うんだから辛くて当然! 俺もルカさんも!」

 一応払拭するように言ってみたが、アキはその手を放さない。
 凄腕の占い師とやらには何でもお見通しなのか。ふう、と息をついてシンゴはくるっと振り向いてマントから手を離させた。

「なあ、2人とも」

 アキとシキの2人がシンゴに目を合わせる。
 
「童話とかでお姫様を助け出す白馬の王子様ってのがいるだろ? あいつはさ、自分の城でお姫様の噂聞いて、単独で馬に跨ってお姫様のとこに向かったと思うか?」
「なんだよそれ。メルヘンすぎてついてけねぇよ」
「そうか? ……俺はさ、王子様ってそんなすげぇ奴じゃないと思うんだ。多分王子様は最後まであんまり疲れてないと思う。一番最後にお姫様を助けるために力温存して、そのためにそれまでは忠臣が働くんだよ。お姫様にとっては、王子様が自分を助けてくれることだけが重要で、助けてくれるまでのプロセスってそんな関係ないと思うし」

 今まではそんな風に思っていなかった。王子様は万能で、だから敵がどんなに強い魔女だろうと戦えるのだと思っていた。
 これは俺じゃなきゃわかんないんだろうな、と、きょとんとしたシキの目を見てシンゴは思った。分からない人にはなんのこっちゃという話なのだろう。

「その忠臣としては、自分の仕事を王子様だけが認めてくれてれば、それでいい。忠臣は忠臣だから、王子様に尽すんだよ。王子様が幸せになってくれれば、それでいい。俺はそういうのになりたいんだ。……ルカさんはさ、見た目も中身も文句なく王子様なんだよ。何も知らなくて、わかってなくて、すげえ弱くて、でも、俺にとって今一番大事な人なんだ」

 全部知った気でいて、何も知らない。
 全部分かった気でいて、何も分かっちゃいない。
 強がって強がって、本当は全然強くなんてないくせに、強いことを履き違えている。
 それでいいとシンゴは思う。思わなきゃいけない。 
 それでこそ王子様だ。
 長い旅の間の、どこかで気付いてくれればいい。
 強いことをわかって、それで、自信満々でお姫様を助け出せばいい。それで、最後に幸せになればいい。王子様はそういう星の下に生まれるのだ。
 そのためにならいくらでも踏み台になる覚悟はある。そのために町を捨てた。弟や妹を見捨ててきた。
 家族より、自分を選んだから。この自分だけは貫き通さないと。

「つーことで、辛いっつっても辛くねぇよ。好きでやってんだし! じゃあ俺も置いてかれんの嫌だし、行くわ。ほんっとありがとうな!」

 それ以上いたら、自分が何を言い出すかわからなかった。
 それでいいと思っているんだから、それでいいんだ。そこで止めておかないと、とんでもないことを言い出しそうで、シンゴはそこから去ることを選んだ。
 そこにいたら嫌な気分になりそうだから、言うだけ言ってルカを追ったのに、『辛い旅になるね』とシンゴに呟いたアキの小さな一言がいつまでも耳から離れない。
 心拍数もすごく上がっている気がする。どくどくと、生きている音が耳元で聞こえるような錯覚。疲れてるんだな、と自分に言い聞かせて、シンゴは足を速めた。



「……何だったんだあいつ。王子様って、忠臣って」
「あはは、シキじゃ無理だよねー」
「分かったような口利くなっ」

 はあ、とため息をついてシキはアキの手を引いた。
 何しろ城の兵士はほぼ全滅なのだ(厄介な君主は生きているようだったが)。
 国で保護しているアキに何かあったとしても城は対応できる状況にない。なら自分が取りあえずしっかりしなければならない。
 まあ、アキが誘拐されて身代金を要求されるにしても、要求先の城が壊滅的ダメージを受けているのだからどちらにしろ変わらないのだが。
 それでも用心に越したことはない。人ごみを避ければ危険は減るだろう。
 そうして通りを歩き、次の角を曲がろうとしたところで、ちょうど食堂から出てきた男とぶつかった。

「うわ、すんませ、…………」

 黙りこんだシキの後ろからアキが、おはようケイ、と挨拶をする。
 例のおとぼけ執政官の登場であった。

「……何やってんですか。城で一番偉いのあんたでしょう」
「いや、あまりにもやること多いからまずは腹ごしらえかなと」
「死体片付けるくらいはやったんですか」
「だからあまりにも多いから」
「あんたしばらく城に人入れない気かよ」
「俺あそこで寝てるわけじゃないし」
「そういう問題かッ!」
 
 どこか危機感が抜けているというか、何と言うか。
 凶悪犯をお咎めナシと言い出したり、そもそも逃がしたり。
 ケイの実力があればきっと勝てただろうに。最初からケイが出向いていた方がよかったのかもしれない。脱獄くらい誰だって予想していた。

「まったく、あんたがあんなの逃がすからさっき鉢合わせたじゃないですか。でかいの赤いのなんのって」
「珍しかったよね、金髪に金時計」
「だからそういう問題じゃないって」
「金時計、持ってたのか。どっちが?」

 変なところに食いつくな、と思いながら、顔が綺麗な方、とシキが応える。

「……じゃあやっぱりか」
「……知り合い?」
「いや? そういうわけでもない」

 言い終えるとケイはひらひらと手を振りながら歩き出し、シキとアキもそれを見送ろうとしたが明らかに方向が城と逆なためにシキがマントを掴んで制止する。
 自宅方向でもない。明らかに逃亡目的である。

「どーこ逃げるんですかー、執政官サマー。つーか逃げようとするなんて珍しい。いつも何だかんだ言って地味ーに仕事してるくせに」
「くせにって何だ、くせにって。……俺だって命が惜しいんだ」
「あー」

 勤勉な高官にそう言わしめる事態。それはひとつしか考えられない。

「逃がしたあいつら、送る予定だったんですよねぇ、あの国に。いくら積まれたんだか」
「ヤマト君はうちの君主様操るの上手いからなぁ」
「あんたが逃がしたってバレたらどうなるんすかねぇ」
「バレてないわけないだろ、あの国馬鹿みたいに頭いい連中揃ってんだから」
「ケイさん、それ矛盾」

 バラバラか、釜茹でか、多分向こうの国の権力者は相当お怒りだろう。大分不利益を被って、何をしても捕まえたいと思っていたはずだ。この国だって同じ気持ちだったんだから当然だ。ただ、相当の不利益を被った上でまたかなりの金を積んで囚人を送らせようとするなんて、これは損得の問題でなく単なる怨恨だ。
 残虐の限りを尽して殺される予定だった囚人を逃がされ、憎悪の向く先はおそらく。

「……ま、芸のひとつも披露すれば3分くらいは長く生きられますって」
「全然フォローじゃないからな、それ」
「フォローしてるつもりないですし」

 がくっと肩を落とすケイを見てシキが笑い、空気を読んでいるんだか読んでいないんだか分からないアキが、ケイ何の芸するの? と楽しそうにとどめを刺した。



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2007.10.01(Mon) | rebellion | cm(0) | tb(0) |

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