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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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もう迷わない君へ



 その子は家の裏に。
 よく晴れた日には草の上に寝転んで陽だまりで昼寝を楽しんだ裏庭。
 星の綺麗な夜、泣きながらやわらかな草の生える土を掘り返した。
 あたしが幼い頃大好きだった、綺麗な赤い靴。生まれてくるのが娘なら、いつか履かせてあげたいと大事に取っておいたそれを、娘と共に土に埋めた。

 






 その頃から、朝日を見ることはなくなった。








「ダメね、そんなはした金じゃお話にならないわ」 

 紺碧のドレスに腕を通し、その上に白いストールを羽織ってから髪をばさりと整えて、元いたベッドの端に腰掛ける。ドレスと揃えた青いハイヒールを座ったまま履いて、足を組むと目の前の男は激昂した。
 何に対して怒っているのか分かりかねる。さっきのあたしの発言が対象なのだとしたらお門違いもいいところだ。

「あたしが欲しいんでしょう? 一晩だけじゃなく、朝も昼も夜もあたしを手元に置いて支配したいんでしょう? それなら対価はしっかり支払わなきゃ」
「これだけ払うと言うのにまだ足りないと!? っは、限度というものを覚えた方がいいぞ」

 そうね、貧しい牧場の一人娘だった頃のあたしなら、すぐに転がってしまったかもしれない。あたしの手には勿体無いほどの財産。一生かかってもあの頃のあたしには使いきれなかっただろうし、そんな額、一生必要なかっただろう。でも、今こうして自分を売って生きているあたしは、そう簡単に転がってやれるほど安くない。ちょっと世界を知りすぎてしまった。
 レースで出来た扇子を開いて仰ぎながら、男に侮蔑の視線を送る。

「あたしを娶ろうってのにそんなこと言うの? あたしが強欲なんじゃないわ、――貴方の払いじゃ店から出られないのよ、お分かり?」
「これはお前個人に支払う金、もちろん店には手切れ金を払うさ」
「だからね、――あたしにこれしか払えない貴方に、あたしを店から出すことなんて一生を労働に捧げたとしても不可能だって言ってるの。ましてや浴びるように酒を飲んでギャンブルに興じ、果ては夜毎女を買ってるような生活じゃ無理もいいとこ」

 こんな男よりも資産があって、あたしを欲しいという男はこの街だけでもゴマンといる。自分がまだ若いとは思わないけれど、それでもまだしばらくは店の稼ぎ頭としてやっていく自信がある。今日はたまたま、この男が一番高い金を出してあたしの一晩を買ったというだけだ。普段から考えれば今日は運が無いくらい。赤字なんじゃないかと不安さえ覚える。
 
「本当にあたしを欲しいっていうなら、見合うだけの金を積むか、――あたしが店から逃げてでも一緒になりたいと思えるような魅力的な男になることね」

 まあ、今からじゃ遅いだろうけど。
 目の前に積まれた金の中から、今夜の支払いだけを手に取るとそれを鞄に入れ、立ち上がる。まだ男はあたしをいろんな感情の篭った瞳で見ていたけれど、これだけ言われたら次に出る言葉などないだろう。これまで何人もこの手の男を相手にしたけれど、どう言ってもしばらくするとまたあたしを指名するのだ。意地なのか、倍以上の金を一晩にかけてくる。店としては儲かるから問題ないし、あたしも払うものを払ってくれるのなら嫌ではない。それに商売だから選り好みなどしていられないというのもある。客が気にしないのにこちらが気にするなんてナンセンスだ。

「もちろん、夜だけならここまで支払わなくても付き合ってあげるわよ。妻だろうが奴隷だろうが何にだってなってあげる。夜なら、ね」

 夜だけ生きることができる生き物なのだ、あたしは。
 朝日を見たらきっと、その眩しさに灰になってしまうに違いない。幼い頃眠る前に母が読んでくれた吸血鬼の話みたい。他人の大事なものを奪い取ることでしかきっと、あたしは生きられない。
 窓の外はまだ暗い。ドレスの裾の埃を払い落とすと、あたしは立ち上がって、男はそのままに部屋の外に出た。






「よう、おかえり。お疲れさん」
「ただいま。水もらえる?」

 店に戻るとあたしは真っ先に奥の支配人室へと向かった。支配人室と言っても、仕事場というよりは部屋になっていて、この店の支配人はここで生活をしている。そしてこの部屋は、――見るたびぞっとするほど汚い。ちょっとこういう部屋になる人間の神経はあたしには理解できないものだ。
 支配人である男から水の入ったグラスを受け取って、窓際にある、唯一の安全地帯であるベッドに腰掛けた。男はそれなりに大きな机について、作業をしている。
 水を飲み終えたグラスを窓枠に置き、あたしは男に鞄を投げる。

「今日の稼ぎ。店の分取ったら返してちょうだい」
「毎日頑張るねぇ、さすが碧眼の魔女」

 鞄を受け取り、中身を確認しながら男が言う。
 碧眼の魔女だなんて、気色悪くてぞくぞくする。

「何それ。子供っぽい通り名は嫌いなの」
「店の若い連中が言い出してたもんでな。ここらじゃ珍しい青い瞳に、求婚してくる男を尽く蹴散らす麗しき魔女様だってよ」

 この店では稼ぎが一番いいあたしがトップで、下には若い子が十人程度。僻みとかいろんなものが混じっての、半ば悪口というわけだ。それでも、目が青いことも求婚を断り続けていることも事実だからそれをわざわざ話題にしてくれているというのはあたしに一目置いている証拠。光栄だ。もとい、気にする価値もない。

「そういうことは変な言い回しを使わないで本人に言うものだわ」
「じゃ、教育係としてよろしく」
「勝手に面倒押し付けないでくれる?」 
「お前雇ってる俺の方が余程面倒押し付けられてる気がするんだがな」
「はぁ? 何言ってるのよ、あたしが店替えたらタクの店なんて三分で潰れるんだから! 誰が稼いでやってると思ってんの?」

 男の名前は拓海という。一応あたしの恩人になる人だけどそんなこと思いたくないので普段は考えないようにしている。ガタイはいいし、裏の仕事には向くのかもしれないけど、この男整理整頓はできないし事務作業にはとんと向かない。こんなところで娼館やってんのだって何かの間違いなんじゃないかと疑りたくなる。というか、普段から疑っている。
 すみませんでした今後もうちの店でよろしくお願いします、とタクが鞄を投げて返してきた。中身を確認してみれば、いつもより取られていない気がする。大体店の取り分は一晩の稼ぎの三割程度のはずなのだけれど、今日は多分、二割くらいしか取られていない。

「今日も魔女様は求婚断ってきたんだろ? 労いで大サービス」
「あたしの稼ぎの一割って大きいと思うけど? いいのかしら、経営者がそんなことで」
「俺に全額貢ぎたいってんならそれでも構わないけどな」
「そんなこと死んだって思わないわ。……その前に、何で求婚断ったこと知ってるのよ」

 タクは今日のあたしの稼ぎと店の取り分を帳簿につけると、ペンを置いてぐっと伸びをした。それから大きく欠伸をして席を立つとこちらに歩いてきて、あたしの左隣に腰掛ける。 

「俺の情報網を甘く見んじゃねぇよ、あの男が方々回って金工面してたことくらいお見通しだ。気まぐれでOKしなくてよかったな、元の生活に戻るところだったぞ」
「間違ってもOKなんかしないわよ。自分捨ててまで一人の男に尽くすなんて御免なの。いくら金を積まれてもね」

 人間に生活を支配されるなんてもう嫌だ。
 自分の身を誰かに傷つけられて、心まで傷つけられて、それでも人間と一緒にいたいなんて思わない。傷つくなら自分から進んで傷つきに行く。誰かに汚されるよりは痛くない。
 そう強く思ったあたしが、生まれた土地を飛び出して転がるように辿り着いたのがこの街だった。薄汚い田舎娘のあたしを拾ったのがこの男。自分を吐露できる相手がいるとすれば、今のあたしにはこの男しかいない。
 隣に座るタクの膝に跨ると、タクは露骨に嫌そうな顔をした。

「でも、タクがどうしてもっていうなら仕方ないからお金だけで靡いてあげる」
「お前なんか絶対嫌だね」
「何でよ、あたし料理は上手いしこんな部屋だって毎日ちゃちゃっと掃除してあげるわよ」
「お前みたいな猫、嫁になんかしたら毎日どこ引っかかれるか分かったもんじゃないからな」

 にやりといやらしく笑うと、タクはあたしの首筋に軽く口付ける。なのであたしは頭を下げて、相手の右の耳たぶに噛み付いた。

「おかげさまで、引っ掻くのも上手になったのよ?」

 そのまま耳元で囁けば、言うねぇ、という言葉と共に笑い声。
 こんなとんでもないジョークが通じるのもこの男だからだ。この男があたしを拾い、あたしの一番最初の客だから。

「いつまでもあの頃のままだなんて思わないことね」
 
 もうしばらくすれば夜が明けてしまう。その前には眠らないと明日に差し支える。タクから離れると小さな鞄を肩にかけ、その言葉を吐き捨てて扉へ向かう。

「こりゃ失礼しました。魔女様の仰せのままに」
「分かればいいの」

 また明日よろしくな、とひらひら手を振るタクを閉まる扉の隙間に見て、あたしは店を後にした。








本筋の警察官コンビが大変なことになりました。(笑)



首飾り云々の話を書きたかったんだけど、そこを書くには大和に少し情報を与えないといけないし、紗央のバックグラウンドももうちょっと明らかにしておきたいなと思って。
誰か人を出さないと紗央の方の話も進まないな、と思ったのでタっくん引っ張ってきた。なんかよくわかんないけどこっちのが好きだ。
恋愛関係になくて、金と契約だけで繋がってるドライな感じもいいなと思ってる。あとは一握りの恩ですかね。
せっかくタっくんを出したので、紗央は結局、タっくんを慕ってる後輩の女の子に殺されればいいと思う。別に恋愛関係だったわけじゃないのに実に不本意。とりあえずはその女殺すためにこの世に留まったんだと思えば。
現代設定の紗央と比べて考え方がドライなのに根本が同じだから、聖櫃戦争の紗央の方がツンデレっぽいしデレ度が異常な気がします。


まいるど氏、旅行来れるっぽくて一安心です。車は2台でいいのかなー。
つーか日記メンバーに足さないとな。

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2009.08.06(Thu) | 聖櫃戦争 | cm(0) | tb(0) |

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