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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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手を差し伸べるのが自分であれたら。



「……僕、お父さんには一生言うことないだろうなと思ってたんだけど、」

 風呂上りの温まった腰にひやりとした湿布を丁寧に貼り付けると、樹理は深く深くふかーく息をついてから、

「お父さんも老いるんだよ」

 とぼそりと呟いた。

「……お前いい度胸だな、樹理くらいでかい息子いんだから老いるに決まってんだろ!」
「いやそうでなくて」
「そうでなくて何だよ! お前生まれた時点で大人の階段上りきった清清しい気分だったよ悪いか!!」
「そんなことも聞いてないって」

 呆れた顔でまたため息をつく息子を睨みながら流風は起き上がった。バスケ部の指導中にあろうことか腰を痛めたのだ。自分としても年齢を実感せざるを得ない。自他共に認めるアイドルばりの若さを誇っていたために、ショックも普通の人の倍以上だ。

「腰を痛めると老いてしまうのですか?」
「椿、腰ってのはいろんな意味で年齢を実感する部分なんだ……」
「よくわかりません」
「年取れば嫌でも分かるって」

 子供ならこれくらい可愛らしくいてほしいものである。ひとりで育ってくれて大変ありがたい気持ちはあるけれども、要らんことまで言わなくてよいというのが流風の本音で、樹理はつまり真っ直ぐお節介な子供に育ったようだ。
 樹理が冷湿布を冷蔵庫に戻しに行ってすぐ、ドアベルが鳴った。この音はロビーからの音ではない。玄関前に誰かいるのだろう。僕が行くよ、と率先して樹理が玄関へと向かう。ドアの開く音、それから廊下を歩く足音で、誰が来たのかは大体見当がついた。

「よう、嬢ちゃん」
「子供の前でやめてもらえますか、通報しますよ」
「悪人なら俺に任せとけ、これでも本職でな」
「ああもう頭痛くなるんで帰らないならせめて黙っててください」

 手に何やら紙袋を持った桜井 拓海だった。拓海の後ろをついてきた樹理は今日何度目かになるため息を再び。椿はいつも通りの笑顔で、お久しぶりです、と礼儀正しく頭を下げた。

「紗央がクッキー焼いたんだが、癖で大量に作りやがってな。とてもうちだけじゃ消化しきれん」
「はあ、じゃあそれ置いて帰ってもらえますか」
「なんだよ、俺と嬢ちゃんの仲じゃねぇか」
「大した仲じゃないですからね、帰ってもらうのも当然かと」

 冗談が通じねぇな、と苦笑しながら拓海は椿の頭をくしゃくしゃと撫で、その手に紙袋を握らせる。
 
「これ持って部屋戻れ。子供は一緒に遊んでろ」

 どうやらその紙袋は子供を追い払う道具だったらしい。樹理にしろ椿にしろ、空気の読めない子供ではないから、部屋へ戻れと言われれば何か用事があるのだと察することくらいできるのだが、おそらく紗央がクッキーを焼きすぎたのも事実のようだ。聞き分けのいい子供たちは揃って階段を上がっていく。その背中を見送ってから、拓海は流風に向き直った。

「せっかくだから酒でも飲みながら話すか」
「その酒とやらは誰が出すんでしょうかね」
「俺は客人だ」
「いいえ、単なる荒らしです」

 まだ痛む腰を摩りながら、流風は立ち上がって冷蔵庫へと向かった。






「随分いいもの飲んでんじゃねぇか」
「ほとんど飲みませんよ。料理に使うくらいで、毎日子供の世話と仕事とでそうそう飲んでる暇もないですしね」
「健康的だな」
「ええ、部活で腰は痛めましたけどね」
「そりゃご愁傷様」

 冷蔵庫にあったのは栓を開けていない白ワインのボトルだった。飲む暇がないというのは嘘だが、ひとりで飲んでもあまり面白くないので普段あまりアルコールを飲むことはない。最近は来客や宿泊客が多いからか、いつもに比べれば飲んでいる方だ。料理に使うためのワインでも、一応美味しく飲めるものを選んでいてよかった、とグラスに口をつけながら流風は思った。一応つまみのつもりで、これも冷蔵庫にあったカマンベールチーズを出した。安物は選んでいないはずだが、おそらく拓海は銘柄や値段などはあまり気にしないだろう。いくら芹沢の長男といっても、家を出てからの方が長い。大和にしても、いやにジャンクフードを好んだりしていたし、不味いものにはいろいろうるさかったが安くて美味いものには文句は言わないし、それに一般家庭育ちのルミの手料理なんてどんな高級料理を出されるよりも喜んでいた。多分、そういう家系なのだろう。

「……それで、椿に何か?」

 この男が流風に接触する時は、芹沢の人間として椿の話をする。そう頻繁に芹沢邸を訪れることができない流風にとっては、芹沢の代弁者としての拓海の存在はとても助かっている。だが、いい話を持ってくるとは限らない。そこだけが問題だった。

「前置きは要らねぇな」
「貴方の前置きなんてあってないようなもんじゃないですか」

 軽口は叩くが、砕けた話ならこんな断りは入れない。あまりよくない話らしい。聞く前に喉にワインを一口流し込む。

「椿が中学に上がるまでにあの馬鹿がどうにもならなかったら、椿を正式に引き取ってくれ」

 流風はグラスに残ったワインを飲み干すと、はあ、と返事ともため息とも取れない声を出す。
 椿を正式に引き取るということは、法律上正式に親子になるということだ。流風としても、その点に別に問題はない。今の関係に法律が後押しをくれるだけだ。
 
「……それじゃあ、ヤマトはどうなるんだ」
「椿が手元にいなければあいつも自由に死ねる」
「俺はヤマトを殺したくなんかない」
「生きてないなら死んだ方がいい」

 拓海の声は淡々としている。
 拓海の言うことは、わかる。どんな事情があるのかもある程度理解はしているつもりだ。でも、流風の心はそれに追いつかない。

「確かに大和には時間が必要だったんだろう、……だが流石に生きてない人間を何年もトップに据えとくわけには行かねぇんだ。俺が継がない以上、芹沢も新しい当主を考えなきゃならん」
「なら椿に継がせればいい、……花を習いたいと俺に言ってきた、花に興味もある、それに直系だ」
「しかし教育を受けてない。それに娘である上にどうしようもない父親と、一般家庭生まれの母親との間に生まれた。分が悪い」

 ルミのことを蔑んでいるわけではないのだ。ルミが一般家庭の人間だったことは紛れもない事実。
 どうすればいい、どう答えたらいい、どう答えれば大和は、そして自分の心は納得するのだろう。どうすれば大和も椿も幸せに生きてくれるだろう。
 自分が大和に貰ったものを、どうやって返せばいいのだろう。

「……椿から父親を奪うことになる」
「嬢ちゃんがいる」

 流風にも、自分が椿の父親になっているという自覚はできている。何年も自分が育てた娘だ、椿の父親になることが嫌だという訳ではない。そうではない。

「ヤマトから椿を奪うのは、残った時間を奪うのと同じことだ……!」

 大和にとってルミは、幸せな過去であり幸せな現在。なら椿は、大和の幸せな未来の象徴。大和が芹沢家で生きる理由。椿が『芹沢椿』だからこそ、大和は芹沢家で生きることができる。
 過去を、現在を、そして未来を奪われたら、大和は本当に命を絶つしかなくなってしまう。あんなに広い屋敷でも、大和の居場所はどこにもなくなってしまう。
 しかし、搾り出したような流風の悲痛な声を、拓海は相変わらず淡々と切り捨てる。

「生きる気があるならとっくに戻ってきてるはずだ。……あの馬鹿にとって、椿は永遠に二番手だ。下がらないが、繰り上がることもない。椿の存在は大和を死なせなかっただけだ、生かすことはできない」
「ッ、椿は父親を待ってるのに、」
「待ってるなら尚更、早くお前が父親になってやれ。芹沢の娘じゃなく、普通の家庭の子供として育ててやれ。椿自身、大和よりもお前に傾いてる愛情の方がでかいだろう」

 声が詰まった。それは、椿自身も言っていたことだ。俺に寄せる気持ちは大きいのだと。
 それでも、見捨てるつもりはないとも言っていた。小学五年生が、だ。

「椿のことを考えても、父親があんな状態の芹沢にいるより、普通の家庭で普通の娘として育った方が幸せだ。恋愛ひとつするのにも、大和が苦労したようにはならないだろう」
「その苦労があったから椿がいるんだろ……」
「その苦労を受け入れられるのは大和本人だけだ。娘にまで同じ経験させたいとは思わねぇよ、俺だってそうだ。嬢ちゃんだって、恋人に先立たれる経験を樹理にもさせたいとは思わねぇだろ」
「俺と大和じゃ考え方も立場も違う!」
「一緒だ。ガキを育てなきゃならねぇ立場に考え方もクソもねぇんだよ、義務なんだから」

 流風が黙ると、拓海はグラスの中のワインを飲み干し、ボトルをグラスに傾けて新しく液体を注ぎいれる。
 
「なあ嬢ちゃん、これでも俺が一応働いたんだ、条件呑んでくれねぇか。そりゃあもちろん芹沢は椿を引き取るって言ってる、でもそれじゃさっき言ったように椿が可哀想だろ? ならいっそ今の生活を続けさせることが一番いいとは思わねぇか」

 直系を手放させるよう、拓海が働きかけているのだという。やはりそうか、という思いがよぎる。
 長男とはいえ、勝手に一族を飛び出した拓海が意見を主張し、それを通すのは簡単なことではないはずだ。その上、大和の代わりに家を継ぐ気もないとなれば意見など言える立場にないことは明らか。
 それでも、拓海はこうして流風に椿を頼みに来ている。簡単なことではないことを、拓海は成そうとしている。
 
「……嫌なんじゃないんだ、椿がずっと手元にいてくれるなら、俺は嬉しい」

 でも、与えられた自分が大和から何かを奪うなんて、気持ちが許さないのだ。

「どうして椿じゃダメなんだ、全部無きゃダメなんてわがままが過ぎる! どうして椿ひとり愛してやるために戻ってこれねぇんだよ、ヤマト……!」

 樹理を連れてこの国に帰ってきた日のことをまだ流風は鮮明に覚えている。雪の日だ。両親にも結局言い出すことができずにその日を迎え、行く当ては芹沢邸しかなかった。事情を知っていた大和と、知らされずに驚いていたルミと、穏やかに眠る椿。幸せそうな家族だと思った、自分は樹理に永遠にこの暖かさを教えてやることはできないのだと。 
 自分は大和に受け入れてもらったからこうして今も樹理を育て、生きることができている。なのにどうしてその大和から今度は大事なものを奪わなければならないのだろう。ルミがいなければ椿は生まれなかったのと同じように、大和がいなくても椿が生まれることは有り得なかったのに。どうして椿のために戻ってきてくれないのか、居場所ならいくらでも作ってやる、けれど、世界がそれを許してくれない。
 大和のことを考えても、椿のことを考えても涙腺が緩む。滲んだ涙を拭う流風を、拓海はグラスに口をつけながらただ眺めているだけだった。

「……もちろん、椿が中学に上がるまでにどうにかなるならそれでいいんだ」
「……けど、二年なんてあっという間だ」

 これまで椿を育ててきた時間もあっという間に過ぎたというのに、その三分の一の時間なんて、きっと星が流れるように一瞬の出来事だ。

「……いいよ、わかった。……それまでにヤマトが戻ってこなかったら、俺が椿を引き取る。堂々と保護者会も参加して、運動会も出て、休日にはデートして、結婚式には一緒にバージンロード逆走する」
「ああ、そうしてやれ。バージンロード逆走すんのも大和よりお前の方が映えるだろ」
「褒められると照れる」

 精一杯の笑顔はどうしたって乾いたものになってしまう。
 全部、大和がルミとしたかったことだ。椿を奪うことで、自分は大和に何を与えてやれるだろうか。答えは出ない。
 何が大和にとって本当に幸せなことになるのだろう。死なないでいる状態から切り離してやることは、本当に大和の幸せに繋がるのだろうか。
 それで本当に、椿は幸せになれるのだろうか。それは不幸にならないだけではないのだろうか。死なないでいるだけの大和と、変わらないんじゃないだろうか。
 
「……なんか、ダメですね、俺、樹理よりも椿とかヤマトのことに頭使っちゃって」
「そんなだから可愛くねぇガキに育つんだよ、樹理は」
「はは、ごもっともです」

 一口に片付けられるものか。
 順序などつけられない。大和のように一番を永久欠番にしておくことは、流風にはできなかった。流風にとって、今の自分を支えるものすべてが一番。
 どうすれば自分も幸せでいられるのか。ワインの白い水面が揺らめいても、答えは出ない。




樹理を久々に見かけました。元気にしてるみたいで何よりです。(何)
聖櫃戦争とか書いた後だと、未来話の流風はやけに大人びて見えます。実際大人なんですけど。
樹理といても、微妙だけどある程度はお父さんできてるように見えるし。


黙ったままの大和を見てると、恋人が死んでもこうして普通に生きているのがすごく薄情に思えてくるんだろうと思います、流風さん。全部無きゃダメなんてわがままだ、ってこれまで思ってなかったのにふと出てきたんだろうな。望み始めたらキリがない。流風だって家族で生きたかった。
次はどうしようかな。そろそろ大和を動かさないと本気でみずきつばきが出来上がってしまう。漢字にすると水城 椿で綺麗だけど音がなあ。
けど、大和は自分ひとりじゃ椿育てられないと思ってるような気がする。いやしかし、そのまま行くとこの話の流風さんは「じゃあ俺がお前の嫁になる!!」くらい言い出しかねない。そんなことしないとは思いますが。


ツアー案内無事に来てよかった……。遅いからびっくりしたよ。
しばらく腕が動かなかった、積極的になってみる紗央をちょっと書こうかと思う。どうせすぐ止まるだろうけど、あれだ、反動だ。
もしくは反転奈央(真っ黒)で紗央に言い寄って欲しい。
欲が尽きんな。誕生日プレゼントには画力と文章力が欲しい。割合は6:4くらいで。

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2009.09.19(Sat) | ほんとうのさいわい | cm(0) | tb(0) |

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