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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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どこへだってきみを抱きしめにいくよ



 その日は、いつにも増して冷え込んでいた。あたしは秋物のこげ茶色のコートにからし色のストールを巻いて学校に行ったけど、キャンパスを歩く人の中には早々と冬物のコートを着込んでいる人がいるくらいで、もう冬か、と実感する。正門近くの桜並木はとっくに色を変えて、そろそろ葉を落とし始める頃。ああ、もう冬だ。
 寒くなると、近くに人がいないのが途端に寂しくなる。寒空の中を二人肩を並べて歩く恋人たちを羨ましいと思うわけではない、……ってことはない、か。やっぱりちょっと羨ましい。大和と連絡を取らなくなってから、カフェテリアにも行く気が失せてしまって、最近はF5やみのりちゃんの姿も見ていない。あの人たちを見たら、どうしたってあたしは惨めな気分になってしまうだろう。でもあたしはとっくに吹っ切れたのだ。シーマスも言ってたから。今回は大和が頑張らないとどうにもならない、って。そうだと思う。大和がこれから先、誰と人生を歩むにしたっていい。あたしを踏み台にして、しっかり生きてくれるならそれだって全然構わない。寂しいという本音が多少あるにしても、八割くらいは本気でそう思ってる。あたしが手を伸ばしてもどうしても届かない、その最後の数センチは大和が伸ばしてくれないと。それを分からないで手を引っ込めてしまうのも、それも大和の自由だ。そう思う。
 今日の授業は二限から四限まで。そろそろ年末だし、気合い入れて勉強しないといけないし、就活だって本腰入れて始めなきゃいけない。大変な時期だ。
 二限は学科の授業だったから、お昼は食堂で友達ととる。最近彼氏と一緒にいないね、なんて言われて、はぐらかすのが大変で。別れたとも別れてないとも言いがたい、この状態は自分としても対外的にも大変きついものがある。まあ、あたしたちの内情を知らない友達は、風邪引いてるみたいで、とか適当に言い訳すれば大体信じてくれる。それはありがたい。
 三限は教職の授業。概論みたいなものだとケレスと一緒になったりするからちょっと嫌なんだけど、この時間は社会科の授業だからケレスに会うこともない。とても楽だ。
 四限はゼミ。先生は始めるの遅いからか終わるのも遅くて嫌になる。チャイムちょうどで教室を出ると他の学生もたくさん居て帰るのが億劫って言えばそうだけど、やっぱり時間が決まってる以上、チャイムで出て行きたいじゃない? 今日も案の定三十分近く遅れてやってきて、三十分遅れて終わった。
 外に出るともう五限の授業が始まっているからか、人影はまばらだ。朝よりもずっと冷えた風がびゅうびゅう吹いているのに、空だけは綺麗に晴れていて、闇に姿を変えていく夕焼けが遠くに見える。もう少ししたら外灯も点くだろう。鞄を肩にかけて、クラッチバッグを脇に抱えて歩き出す。ブーツの靴底がこつこつと地面を叩く。冬の音だ。

「――……遅い。あんま待たせんな」

 正門へ向かって歩いていると、前方から声が掛かった。もうしばらく聞いていない声。
 顔を上げると、黒いコート姿の男の影が見えた。桜の木に寄りかかっている。
 約束した覚えなんてない。勝手に待ってたのはそっちじゃない。すると男は、「あ、いや」と頬を掻いた。

「……待たせてたのは俺の方、か」

 鞄と一緒に、ストールを肩に掛け直す。あたしからかける言葉なんて見当たらなくて、そのまま黙り込んだ。あたしと、――大和を横目に、数人の学生が門へと歩いていく。
 大和はしばらく何も言わなかったけれど、やがて意を決したように木から離れるとあたしに向かい合ってその場に立つ。

「……俺と、結婚してください」

 そう言って大和は頭を下げた。
 ゆっくりまばたきをすると、冷たい風が強く吹いてストールを揺らす。コートの裾も一緒にはためいた。
 何度も、何度も、その言葉を頭の中で再生する。わかんないからもう一回言って、なんて子供みたいなこと、あたしは言わない。ただ、何度も、何度も噛み締める。大和が何日もあたしと離れて出した結論を、よく考える。
 それ以上大和は何も言わなかった。それは潔いことだと思う。大和がそれだけ言ったから、あたしの答えはもう決まっている。

「………あたしに断られるかも、って、気が気じゃないでしょう? 不安で苦しいわよね、違う?」 
「……俺はそんな女々しくねぇよ」

 あたしの言葉に、大和は顔を上げた。あたしは薄く笑ってみせる。

「あたしは大和のそういうところが嫌い。他の誰に対して強がってもいいわよ、でもね、あたしにまで強がる大和が嫌い。何年も一緒にいたあたしにどうして強がる必要があるの? 全部教えてよ、これまで以上に大和のこと教えてくれなきゃ。あとあたしが知らないことって、大和の心の中しかない。今までは遠慮してたけどね、大和がそういう結論出したならもう遠慮するべきじゃないと思うの。男だからとか女だからとか芹沢だからとかそうじゃないとか、あんたの中の段差全部捨ててよ。対等でいさせてよ」

 できるだけ淡々と、感情を入れずに喋ることに徹する。
 嬉しいの、本当はすごく嬉しいの。何日もひとりで考えた大和が、あたしのところに来てくれたことが嬉しくて仕方ない。
 でもね、それだけじゃ絶対これからまた何度も同じ事を繰り返す。もう戻れなくなるかもしれない。あたしはそれが嫌だから。

「……あんたの全部見せてくれる覚悟がなきゃ。そうじゃなきゃ、今の言葉はいつもあたしにくれる、『好き』ってライトな言葉と何も変わらないの。今のままの大和にあたしが身を寄せることなんてできない。二人とも倒れちゃう」

 大和の顔が面白いくらいに暗くなる。この空と同じだ。あたしに断られてることが理解できているんだろう。
 
「……今、あなたからのプロポーズを受けることはできません。ごめんなさい」

 微笑んで言ってみせれば、いや、と取り繕いたいけどショックを隠せていない声が聞こえた。
 大和が手を伸ばしてくれた。あたしがいいと言った。家のこととかを大和の中でどう折り合いをつけたのかはわからない、けどあたしと一緒にいたいと言ってくれた。それが嬉しい。あたしが、あたしたちが踏み出すには、それだけで十分。




 ――ああ、あの時も。
 最初からこうしておけばよかった。









「……だからね、大和」

 目に見えて落ち込んでいる大和に、あたしは声をかける。
 次は何を言われるんだとほんの少し怯えが入ったような瞳があたしを見た。そう、見てて。あたしを見て。

「――あたしと結婚して?」

 暗くなった空を染めるように、外灯がぱっと一斉に光を灯す。うわあ、すごくいいタイミング。
 肩を落としていた大和が目を大きく見開いて、何の話なんだか分からない様子であたしを見ている。仕方が無いのでまた鞄をしっかり肩に掛け直すと、あたしはこつこつと冬の音をさせながら大和に近づく。黒いコート姿の大和は、今までに無いくらい驚いている。

「あたしはもう遠慮しないわよ。大和がそれだけ言ってくれただけで十分。大和が内側から壊せないものはあたしが外側から壊してあげる。大和があたしのことを思って言えないことは、あたしが大和のことを思ってこじ開けてあげる。大和にあたしが寄りかかるのはまだ不安だけど、大和があたしに寄りかかってくれる分には問題ないわ。あたしの全部で幸せにしてあげる。絶対幸せにするから、あたしと結婚して?」

 大和が手を伸ばしてくれた。ほんの数センチの距離はこれで十分埋まった。指先が触れたらそれで十分。引き寄せて抱き締めるのはあたしの役目なのね。
 あたしはいつもわかってる。大和があたしのことを考えて一歩引いたところから話していることを、知っている。大和が何考えてるかなんて、いつだってわかってるの。わかってるからこそ、大和の意思を尊重してあげていた。そうしてあたしのことを大事にしてくれる大和を大事にしてあげたかった。でももうその配慮もいらない。大和があたしを本当に家族にするつもりなら、椿ちゃんにするように全部ぶちまけてくれなきゃ。それでもあたしのことを考えてくれちゃうなら、そんな心配は無用だって堂々と言ってあげる。あたしだって家族なんだよ、ってちゃんと目を見て教えてあげる。ねえ大和、あなたにはあたしが必要でしょう? あたしはね、今のところ大和以外に欲しいものなんてないの。寒い冬に隣を歩いてくれる、あなたがいてくれればそれで十分。
 大和はしばらく目をぱちぱちさせていたけど、次に冷たい風が吹くと、ぷっと苦笑を漏らした。

「……なんでお前が俺より格好良いんだよ」
「あんたが不甲斐ないからよ」
「そいつは悪うござんしたねぇ」

 本当、悪いにも程がある。でも、女にここまで言わせるなんて、とは思わない。大和はただあたしを好きなだけだ。好きすぎて迷惑かけたくないだけ。そのありがた迷惑な気持ちも大事にしてあげたいし、これからもきっと、そういうことはたくさん起きるんだろう。……大和がひとりで越えられない壁は、あたしだって一緒にやっつける。家のことで真剣に悩む大和が、あたしは好きだ。だから悩んでる大和の一番近くにいてあげるのがあたしで、困ったときは何度でも助けを求めて欲しい。大和の人生に、あたしをぐちゃぐちゃに巻き込んで欲しい。あなたの背負うものがどんなに重くても、絶対見放さないであたしだけは一緒に背負っていくから。

「それで、返事は?」
「わざわざ返事すんのかよこの流れで」
「当然でしょ? ちなみに、選択肢は『はい』か『イエス』かのどっちかです」
「っは、迷っちまう」

 本当に欲しいものがある時は、逃げ道なんて作ってあげない。
 じっと大和の目を見ると、さっきまで驚いていた表情はどこかへ飛んでいって、すっと優しく目が細まった。

「……はい、宜しくお願いします」

 その言葉と一緒に大和が渾身の力であたしを抱き締めるから、苦しいなあと思いつつもあたしはあの台詞を呟く。

「……遅いのよ、ばか」

 最初からこうしておけばよかった。あたしからドアをぶち壊してあげればよかった。最初からその覚悟はあったのに、あたしも人のこと馬鹿にできないくらい大和が好きだから、えらく遠回りをしてしまった。
 ……まあ、結果オーライって奴なのかな。
 元々「人目? 何それおいしいの?」な大和さんはその後もしばらくあたしを離してくれなくて、五限終わりの学生の見世物になったけど、……うん、こいつに付き合うんだからあたしも人目なんか気にしちゃいけないのよね。
 これで就活に気合い入れる必要なくなったかな、なんて余計なことを考える。完全に空が夜に支配されると、随分前に昇っていた一番星がきらりと輝いた。






________________________________


私渾身のオチ!!!(笑)


ただ大和のプロポーズさせるだけじゃシンプルすぎるし何も変わらない気がして、じゃあどうするかな、と思ったらルミに動いてもらうしかなかった。
大和に寄りかかるのは不安、でも寄りかかってくれるなら受け止めるよ、って感じ。やっぱりルミの気持ちの方が断然強いなと思いました。
プロポーズの台詞をルミに言わせたかっただけってのもありますが、うん、何か書いてて楽しかったよ。展開を最後までわかってて書いてるけど、大和は知らないので途中大和どんな気持ちなんだろうなあとか考えるのが超楽しい。うわあああ、絶対今ショックだよこいつショック受けてるよ!! とか笑いながら打ちました。


さーて秋臼さん! これで心置きなくロンブー書けるよ! 楽しみにしてる!!
私は仕事が終わった気分で好きなことやらかそうと思います。セブンデイズ! 待ってろ瑤子さん!
明日も朝からバイトだからもう寝る!!

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2009.10.04(Sun) | ご近所物語 | cm(0) | tb(0) |

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