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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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理央奈央書くのが苦痛でしょうがなくなった頃。






「あー、理央せんせーやっと見つけたー! 化学質問あるんだけどいい?」
「俺の手に負えるなら。俺なんかじゃなくてケレス先生に聞けばいいだろうに」
「学年会なんだってさ。言い訳じゃね?とか疑うくらい学年会多いんだよなあ、最近」
「人手が足りないんだろう、仕方ない」

 参考書を片手にやって来た三年の水城 流風は、少し意外そうな顔をして理央を見ていた。どうした、と理央が聞けば、いや、と軽く濁す。

「理央せんせーがそれ言うって意外、かなと思ってさ」
「意外?」
「あ、いや、いいや別に! そうだよな、うちの学校って少数精鋭って感じだし、いい先生は多いけどその分人数少ないよな!」

 乾いた笑いを響かせて、持っていた参考書を開く。ぎこちないその態度を理解できないまま、理央は教師として振る舞い始める。 
 風に揺られる葉は、花弁を落としたばかりの桜だ。もうそろそろ半袖のシャツが必要になる時期。新しい学年が始まって一ヶ月が経った、今は五月。目の前の茶髪の生徒はかなり体育会系だからかシャツの長袖をかなりまくっている。

「もうすぐ、夏か……」
「そう。今年暑くなるの早いよなぁ……。だからさ、結構生徒としては理央せんせー心配してんだ」
「心配?」

 参考書の余白にペンを走らせながら、流風は頷いて理央を見る。

「毎日そんな黒いスーツ着て、夏平気かなー、ってさ。ほら、去年はもっと紺とか灰色っぽいのとか着てたから。高そうな奴。うちの父親と色違いのとか着てたから高いんだろうけど」

 言われて初めて理央は自らのスーツに目を落とした。真っ黒。奈央に手渡されるがまま着ていたからあまり意識がなかったのだろう。奈央がそう言うなら、自分は従う。奈央は理央を思ってこの色を着せているのだ。だから、問題はない。ひとつも、問題はない。





 以前は遅くまで学校に篭って仕事をしていた理央だったが、ここ最近はそんなこともしなくなっていた。講師の立場であることを大いに利用し、自分のやるべきことが終わったらすぐに帰る。だからといって生徒を蔑ろにするようなことはないし、与えられた仕事をこなせないわけではなかった。 
 家に帰りたい、とどうしても思ってしまうのだ。奈央の顔を見たいと思ってしまう。それで仕事が手につかなくなるなんて、他人にはどうしたって言えないことだろう。
 マンションのロビーを抜けて、足早にエレベーターに乗り込む。押すのは最上階のボタン。ゆっくりと上がっていくエレベーターにじれったさを覚えながら、扉が開くのを待つ。他の階から乗り込む人間はまずいないから、時間にして一分ほど。鉄の扉が開くとすぐに理央は部屋へと向かう。奈央は今日休みだったはずだ。多分、家にいるだろう。そう思ってインターホンを押す。はい、という可愛らしい声がインターホン越しに聞こえ、すぐに鍵が開いた。
 
「ただいま、奈央」
「おかえり、理央」

 ふわりと耳に届く、優しい声。
 自分だけに向けられる笑顔が、この上なく理央を安心させる。
 
「鞄持つよ」
「いいよ、重いから」

 そう言っても奈央は意地になって理央の手から鞄を奪い取る。中にはプリントやら授業用のノートやら、ノートパソコンも入れているからそれなりの重量だ。最近は買い物に行っても大体荷物は理央が持っているし、案の定奈央は重い鞄を手にした瞬間軽くよろめいたので、理央は妹の細い肩をそっと支えた。
 
「だから重いって言っただろ?」
「持ってあげようと思っただけなのに」
「分かってる。……ありがとう」

 少し不機嫌そうな声を上げる妹に、後ろから覆うように腕を回す。奈央はその場所から動かずに、軽く頬を理央の腕にすり寄せた。
 
「……奈央、鞄、置いて」
「けど、ごはん、冷めちゃうよ……?」
「いいから」

 鞄を持つ奈央の手に自分の手を重ねて、鞄を奪い取ると床に置き、すぐに奈央の頬に指を這わせると、奈央が薄く笑っているのがすぐに分かった。
 こうして二人でいると、とても落ち着く。これでいい。これだけでいい。他のものなんて必要ない。奈央が愛してほしいと言うのなら、いくらでも愛してやろうと思う。それで奈央が救われるのなら、いくらでも、何秒でも何分でも何時間でも奈央だけを見つめていられる。理央自身もまた、そうすることで安らぎを得られる。そうだ、二人だけで生きていた、もう何年も前のあの頃を思い出す。こうして触れ合うことはなかったけれど、静かな空間で、何の障害もなく二人で生きていられた頃。
 奈央がくるりと振り向いて、理央と顔を合わせる。黒いスカートの裾が揺れた。

「理央……?」

 奈央は多分、分かっている。自分がどう振舞えば、理央が躊躇することなく自分を愛するのか。額を理央の胸に擦り付けて、まるで小さな猫のように離れない。卑怯だと思う。この女は、俺の理性をどこへ追いやってしまうのか。そう考えることさえ、最近では少なくなった。心と体がどうしようもなく妹を求めてやまない。目の前の対象への欲望だけに忠実に、奈央の小さな顎に指をかけた。


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2007.12.28(Fri) | eternal damnation | cm(0) | tb(0) |

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