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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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つめたいゆびさき



 二月に入り一週間ほど。後期試験が終わっても研究に忙しい瑶子さんとは付き合い始めてから毎日必ず何らかの手段で連絡がある。暇な時は俺の家まで突撃したりしていたが、学校が休みに入ってからは彼女は図書館に篭ることが多くなり、連絡もメールや電話になった。そんな瑶子さんから今日の予定について聞かれたのが一昨日のことだ。俺より瑶子さんの方がいつも忙しい。だから俺は彼女の予定にできる限り合わせることにしている。今回もその例に漏れない。彼女の都合のいい時間に、彼女が指定したコーヒーショップに向かう。そこは駅前にあるチェーン店で、それなりの広さがあるから探すのに苦労しそうだと思っていた矢先、店頭のテラス席に座って携帯電話を耳に当てている女性の姿が目に入った。ミルクティー色の長い髪、紺色のカチューシャ、白いコート。間違いなく瑶子さんだ。程なくして彼女も俺に気づいたらしく、電話を耳に当てたまま嬉しそうにこちらに手を振った。俺も手を振り返して、気づいていることをアピールし、それから店内で温かいものを注文しに行く。瑶子さんのいたテーブルの上にはカップが置いてあったから、彼女に飲み物は不要だろう。
 一番小さいサイズのブレンドコーヒーを頼んで外へ出る。二月の夕方はコートを着込んでいてもやはり寒い。立春が過ぎているのが嘘のようだ。わざわざ外に座らなくてもよかったのに、とは思ったけれど、電話をするなら外ということなのだろう。もしかしたら見つけやすい場所を選んでくれたのかもしれない。真意を確かめられない以上、真相がどうなのかはまだ分からないが。
 まだ通話を続ける瑶子さんの目の前に座って、コーヒーのカップで手を温めながら中身を少しずつ飲む。温かさが胃に落ちていく感じだ。

「うん、今来てくれたとこなの」

 電話の相手に向かって瑶子さんはそう言う。相手は友達なんだろう。

「あ、そだ、ちょっと聞いてくれる?」

 その台詞の合間に瑶子さんはちらりと俺を見た。誰が相手なのかは知らないが、これからの瑶子さんの台詞に対して一抹の不安を覚える。

「あのねー、理央くんってばひっどいんだよ、知り合って八ヶ月以上、付き合ってもう二ヶ月になろうってのにね、ちゅーはおろかぎゅーもないし、手だってなかなか繋いでくれないのー! どう思う!?」

 口許にカップを持っていった瞬間その台詞だ、危うく中身を零しかけた。
 言い訳をするなら好きじゃないとかそういうことじゃないし他意はないし、そもそも年上と付き合うのが初めてだからどうしたらいいかよく分からないというのが強い。他意はない、他意はないんだ。
 ……ここは屋外だったことを喜ぶべきなのか!? 店内の限られた人数にこの大声を聞かれるのと、大通りに面したこの席で不特定多数に聞かれるのとどっちが正解なんだ、ていうか、……電話の相手100%紗央だろ……。

「おかしいよねちょっと病院必要だよねっ、まあ年下の意地っていうか? いやいや誠実なジェントルマンっていうか? そういう面はもちろんあるのかもしれないし、寧ろそこがいいっていうか?」
『切っていいかしら?』

 機嫌よく喋り始めた瑶子さんを制するように、携帯から大声が聞こえた。やはり紗央。相当ご立腹だ。ここで止めてくれなかったら俺が恥で死ぬところだった。

「ええっ、なんでよう! 理央くんが一緒にプリクラ撮るの拒否した話とか聞きたいでしょ?」
『全っ然。身内の恋愛話なんて聞いてて悪寒するだけだわ。これから夕飯の買出し行くから切るわよ』
「ちぇー、紗央ちんのケチー、独り身ー」
『うるさい!!』

 電話使ってんのに対面で話してるかのようなこの音量……。いかにこの二人の声量がでかいか思い知らされる。
 休みの日にわざわざ瑶子さんが電話かけたんだとしたら紗央に悪いことをしたかもしれない。……じゃなくて、そんな暇に思うほど待たせてしまっただろうか。文句の一つも言いたくなったのかもしれない。一応予定の時間より少し早めに来たつもりだったんだが。
 ちなみにプリクラの件を拒否した俺は間違ってないと思うんだがどうなんだろう、瀬川と奈央なんかは似合う気がするけど、自分があの機械を使うなんてあんまり考えたくない。
 瑶子さんはそのあと少し紗央と他愛無い会話をして、通話を切った。やっと正面を向いて俺と話してくれるらしい。

「すみません、かなり待たせたみたいで」
「ううん、図書館で資料集めてたんだけど思ったより集まらなくてね。今度大きい図書館行くからいいや、って早めに来ちゃった。せっかく理央くんとデートできるんだしね」

 その言葉は可愛いと思うのだけれど、どうもさっきの紗央との会話が強烈すぎて素直にものを言えそうにない。愚痴るなら俺のいないところですればいいわけだし、俺がいることを確認して切り出したということは明らかに聞かせたかったということだろう。だからってこの往来の中でやらかさなくても……。そこが瑶子さんらしいといえばらしいけれど、らしいで済ませていいものかも迷いどころだ。

「紗央ちんも酷いよねー。“あんたが、理央くん、なんて年上面してるからじゃないのー”なんて言うんだよ? 理央くんは理央くんだもんねっ、他に呼びようがないよ」

 ぶう、と少し膨れながら椅子の背もたれに体を預け、テーブルの上のカップを口許に運んでいく。どうしてそこまでさっきのやりとりをスルーできるのか、俺にはちょっと理解できないが、仕方ない。

「呼び捨てにしたらいいじゃないですか。瑶子さんが誰かを呼び捨てにしてるの見たことないですし、俺は気にしませんよ」
「私が気にするの! だってだって、私だけ理央くん呼び捨てにしたって変わんないもん」
「じゃあどうしろっていうんですか」
「……うーん……」

 瑶子さんのカップの中身が何なのかは分からないが、瑶子さんは俺よりも一回り大きなカップに口をつけて、しばらく唸った。それから何かに気づいたらしいが俺には言い出せないようで、意味ありげにちらちらと俺の目を見る。そっちの方が怪しい。夕方の駅前は少しだけ人の数が増えて、街灯にも明かりがともり始めた。

「何ですか、言ってみてくださいよ」

 俺が促せば瑶子さんはまた唸る。しかしすぐにカップをテーブルに戻した。

「理央くんも私のこと呼び捨てにすればいいと思う! そしたら対等でいい感じになる! という案も出てますよ」
「年上の人を呼び捨てにするのって抵抗あるんですよね……」
「ほらあ! 言うと思った、理央くんはぜーったいそう言うと思った!」
「でも、あんまり距離があるのも微妙ですから、お互い呼び捨てにするなら構いません」
「え、」

 瑶子さんの目が一層丸く見開かれた。
 その後、え、え、え、と何度か聞き返すように俺を見る。そんなに意外だったんだろうか。

「じゃ、じゃあ、一回練習っ」
「はい」

 今のままじゃ傍から見て距離があるように思われても仕方ないし、その所為で彼女に変なのが寄ってきても嫌だなという思いも少なからずある。誰とでも友好的に接するからこそ、余計な厄介を呼び込む可能性もあるわけで、俺はそういうのは遠慮したいと思ってる。
 瑶子さんがそこまで気づいてくれてるかどうかはわからないけれど、とにかく、今はなんだか緊張した面持ちでひとつ咳払いをすると、大げさに深呼吸してみせた。

「……理央」
「瑶子」
「り、理央っ」
「? どうしたんですか、瑶子」

 丁寧語に呼び捨てっておかしいだろ明らかに、と思ったけれど言ってしまったものは仕方がない。俺の言葉の後突然瑶子さんが俯いたので笑われたのかと思いきや、彼女は両手で顔を覆って、ちらちらと俺の顔を見る。今日はチラ見が彼女の流行なんだろうか。俺が顔を覗き込もうとすると、すかさず片手で近づくなと牽制される。……何のこっちゃ。

「な、なんか、ヘモグロビンを多量に含む液体が噴き出しそう」
「は!? 大丈夫ですか!?」
「せ、精神的なものなので平気です、うん、……私の精神衛生上よろしくないからこのままがいい、かな、やっぱり」
「精神衛生上って」 

 よく見れば彼女の顔は赤い。寒さのせいでなければ照れたということなのだろう。これまで呼び捨てくらい経験あるだろうに、不思議な人だ。

「だってね、理央くんの声で呼び捨てなんかされちゃったらなんかもうっ、勿体無いっていうか! 毎日ドキドキしちゃうっていうか!」

 白いテーブルを強くばんばん叩いて彼女は猛抗議する。
 ドキドキされないよりはいいと思うのは気のせいだろうか。言わないでおくけれど。

「まあ、俺もあんまりしっくり来なかったっていうか。瑶子さんに呼ばれる分にはいいんですけどね」
「理央くんはやっぱり理央くんなんだよねー。そういえば理央ちゃんから理央くんに昇格したばっかりだし」
「あれって昇格だったんですか」
「昇格だよ。呼び方ひとつも大事なことでしょ?」

 確かに、気持ちにメリハリを持たせるためにはそういう細かいところに気を使うのが一番だろう。フィーリングで動いている人に見えて、意外と考えている。あの時の彼女はそこまで考えていてくれたのかと思うとそれなりに感慨深くもなった。
 彼女はやはり照れていたらしく、恥ずかしいからこの話題はここでストップ! と自ら振った話題を打ち切った。乗じて俺も話を振る。

「何か俺に聞きたいことあるとか言ってませんでした?」
「言った! うふふふー」

 そう、一昨日貰った電話では、“直接聞きたいことあるんだけど”と言っていたから、何かしら俺に用事があるのだろうと思っていた。
 瑶子さんは二月の寒さをもろともしない笑顔で、傍らの鞄を漁って、クリアファイルの中から二枚の紙を取り出した。二枚ともA4サイズ。見せられた紙の中央にはお菓子のデザインらしきものが描いてある……CGで。片方はウェディングケーキを彷彿とさせるデコレーションのもの、もう片方はシンプルにハートを象ったもの。簡単にどう違うか説明すれば、それは確実に使用インクの量だろう。

「ね、バレンタインどっちのタイプがいい?」
「は?」
「かたや紗央ちんがやらかしそうなごってごての、いかにも手間ひまかけました! なチョコ。かたやシンプルで愛情だけ詰め込んだのvなチョコ! さあどっち!」

 そういえばもうバレンタインが近いらしい。瑶子さんも一応考えてくれているらしく、その気持ちは純粋に嬉しい。

「紗央だけじゃなく奈央も凝るんで、後者で」

 そう言うと瑶子さんはさっきのように頬を膨らませた。それからじろりと俺を睨む。

「そんなんじゃダメだよ理央くん、奈央ちん紗央ちんなんて今はいいの! 私から貰うならどっち、って聞いてるんだから!」
「あ、すみません、うっかりして」
「そんなんじゃ私に愛想尽かされちゃうぞー?」

 いいのかなー? と挑発するようにこちらを見る瑶子さんは、すぐ笑い出した。付け足された言葉は、百年後か二百年後くらいには私の愛想も尽きてるかも、だった。そんな言葉をぽんぽん言い出すからこの人は本当に読めない。俺をただ呆れさせるだけじゃなく、これまで生きてきて考えられないくらいの緊張感を味わっている。誰かの仕草ひとつ言葉ひとつにこんなに心拍数を左右されるものなのかと感心してしまうくらいだ。こんなガキみたいな感情が今の俺の表情から滲んでしまっていないか少し心配になる。

「それで、どういうのがいい? リクエストあれば私頑張って手作りするよ」

 瑶子さんが話を戻した。悩む必要はなかった。

「それでも後者です」
「えー、つまんないなあ、せっかく紗央ちんとデコレーション勝負したかったのに」
「考えるだけで恐ろしいんでやらなくていいです」

 かけた時間が気持ちをそのまま表すことに繋がるなら、前者と俺に答えて欲しかったのだろうことはわかる。それでも、俺は瑶子さんにそこまでを求めてはいないし、瑶子さんならたとえどんなシンプルなものだろうと、ごてごてのデコレーションに負けないだけの気持ちを詰め込んでくれているだろうという半分以上惚気のような予測もあるわけで。
 瑶子さんはやることがたくさんあるから、俺はそれを応援したいと思っている。バレンタインに豪華な手作りお菓子を貰うために彼女と付き合っているわけではない。

「俺のためにそんなに時間使うくらいなら、本の一冊も読んでください」
「わ、手厳しい! うーん、残念だけど、シンプルでおいしいの作ることにする。理央くんに似合うラッピング考えておくね」

 それくらいなら許容範囲だろう。第一、デコレーション過多なものってラッピングしにくい、……というより、できなくないか? 紗央は作るだけ作って俺に押し付けて満足することとかあったからな。
 瑶子さんは問題に一応の解答を得たようで、俺の目の前に出した二枚の紙をファイルに仕舞う。かなり精巧なCGだった。

「瑶子さん、そのCG自分で作ったんですか?」
「え?」

 ファイルを手に首を傾げたので、それ、と彼女が手にしているファイルを指差すと、まっさかー、と一笑。

「この前図書館でね、こういうCG得意だっていう工学部の男の子と知り合ってねー、作ってもらっちゃった」
「……はあ」

 そのパターン、なんかどっかで覚えがあるのは気のせいか?

「瑶子さん、まさかそうやって俺のときみたいに次々アドレス交換して交流持ってるんじゃ」
「あー! 疑ってるなあ!? 付き合い始めて二ヶ月の最愛の彼氏に早々と疑われるなんて心外だー」
「瑶子さんならやりかねないじゃないですか」
「私はただ理央くんに愛情たっぷりのチョコ贈ろうと思っただけなのに! あ、そっか、理央くんよ、それはやきもちという解釈で良い? すると好感度がぎゅいーんと上がって、理央くんって可愛いvvって評価になるんだけど!」
「……少しでも疑った俺が馬鹿でした」
「はい、それでよろしい」

 この人純粋に知り合い増やしたいだけだ。でも自分との出会いが出会いだっただけに、他の人ともあんな感じの交流を持ってるんじゃないかと疑った俺は間違ってないと思う。考えの方向性は間違っていないのだろうが、相手が相手がその上を行く人だった。真っ直ぐなのに読めないって難しい人だ。

「飲み物冷めちゃった。冷たい」
「そうですね、結構時間も経ってますし。飲んだら行きますか」

 二月の夕方に屋外にいれば、いくら淹れたての温かい飲み物でも冷めるだろう。俺のカップもすっかり冷たくなっている。俺より早くここにいた瑶子さんはもっとだろう。冷めたコーヒーを喉に流し込むと、瑶子さんも同じく中身を飲み干したようだった。

「どこ連れてってくれる?」
「あんまり考えてこなかったんですけど、……映画でも行きますか?」
「いいねー、私観たいのあるんだあ」
「じゃあそれで」

 空になったカップを瑶子さんの分と二つ手にして先に席を立ち、燃えるゴミに紙カップを捨てる。遅れて席を立った瑶子さんがこちらに来るのを待って、「お待たせ」と俺に声をかけてきた彼女の左手を軽く引いた。

「え、なにっ」

 手袋をしていない彼女の手はかなり冷えている。こんなに冷えるなら店の中にいればよかったのに。
 映画館は駅前の大通りを少し進んだところにある。そこまではこのまま手を引けばいいだろう。

「病院なんて別に必要ないって言いたいんですよ」
「もしかして理央くんって結構根に持つタイプ?」
「あんな会話目の前でされて気にしない男がいるなら見てみたいもんです」
「あは、そりゃそうだ」
「そりゃそうだじゃないですよ……」

 締まりのない笑顔で瑶子さんが俺の手を握り返す。瑶子さんに対する呆れたため息はやっぱり板についてしまったみたいだが、まあ、これは致し方ないというか、気分が悪いわけではないし。
 来た時よりもぐっと下がった気のする気温に肩を竦めながら歩き出した。



詰め込みたいことが多くていろいろ没にした。
理央のバイトの話は別に書こうかなと思ってる。小学生相手に勉強教えてたりしたらいいな。
名前呼び捨て+丁寧語を石田ボイスでやったら完璧だと思うんだよね、そりゃあヘモグロビンを多量に含む液体噴き出しそうになるだろうと。
瑶子さんのオープンさに理央はいつもひやひやしてればいいと思ってる。杞憂だって分かってるんだけど、危なっかしいんだあの人。
多分傍から見ると、明るい年下の彼女に振り回される年上の彼氏な感じなんだろうなあ。書いてて楽しいです。
空と奈央は絶対プリクラとか撮ってるよなと思う。大和も意外とああいうの好きそうです。冬二くんも絶対みのりと撮ってるよな、譲れない。紗央は基本的にカメラにシャッター切られると魂抜かれると思ってる子なので(笑)


琴也のライブ話の続きでも考えます。
みのりの話もそろそろ真面目に考えなきゃなんですが、もやもやした点が多すぎるのでとりあえず保留。

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2010.02.05(Fri) | Always I Need | cm(0) | tb(0) |

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