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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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だいぶ書いてるのが嫌になってきました。
コピペもめんどいです。






 雨だった。



「何も返さないで、聞いてほしいんだ」

 夜、遅くだった。
 どれくらい遅いのかと言えば、今理央がここにいるのがおかしいくらい遅い。
 仕事帰りとはとても言えない時間。普段この兄妹はあまり遅くまで起きていないようだから、部屋を抜け出してきた、というのが一番しっくり来る。

「俺にはもう、無理なのかもしれない」

 何も返すなと言うので、要は何も返す気はなかった。
 ただ、暗く澱んだ理央の黒い瞳を、見つめているだけ。
 数日前までは毎日機嫌が良さそうだった奈央は、要が気まぐれに質問したその日を境に、別人になったように黙り込んでいた。その奈央と、よく似た瞳をしている。

「奈央も、もう、無理なのかもしれない」

 悲しそうな声色だった。
 
「奈央をそこまでにしたのは俺だ、けど、俺が思うよりもずっと奈央は壊れてて、俺は、今まで奈央を何だと思ってたんだろうって、考えた。奈央は俺の世話を焼く機械なんかじゃないのに、俺の方が辛いって、どこかで思ってたんだと思う。俺のことを考えてくれる奈央が、俺は一番好きで、そういう奈央が一番脆いのに。俺のことを考えてくれる奈央は、俺にコンプレックスを抱いてる奈央で、そんな奈央が好きだなんて、エゴイストもいいところだと、思う」

 暗い瞳はまっすぐものを見ることができずに、斜め下ばかりを見ている。
 時計の秒針の音がやけに響いて聞こえる。

「最近そういうことに気づいてきたのに、ダメなんだ。奈央にどうしても勝てない。このままだとどっちも戻れなくなる。わかってるのに、俺が、俺自身が、無意識のうちに奈央を欲しがってる。全部に目を背ける方が楽なのは、当たり前だ」

 普通の人間は、逃げたくても逃げ道がない。いつでも現実の矢面に立たされて、不可避の状況を何度も味わう。普通は、それでいい。それでも仕方なく生きていけばいい。
 
「一度逃げ道を知ったら、その場所は忘れられないんだ。いつでも逃げられるように、頭がその道を覚えてる。俺は逃げ道がいつも目の前に用意されてて、その道こそが正しい道みたいに誘導される。奈央が好きだから、その為に良かれと思っていたことが、もっと奈央を壊してるんだ。奈央が壊れて俺に縋る度に、俺はどうしてもそれを振り切ることができなくて、俺と奈央はきょうだいなんだ、って理性が認識すると、奈央をどうして突き放さなきゃならないのか、わからなくなって」
 
 そして貧乏揺すりが始まる。遠くに聞こえる雨の音の合間を縫うように、がたがたと理央の足が床を打って音を立てた。不快な音だったが、止む気配は、ない。

「どれだけ歪んでるのか、醜いのか、わかってるのに。もう、悲しかったことを言い訳にできる時間は過ぎたのに、これ以上は、奈央も俺も、全部バラバラになるか、いっそひとつになるか、それしか、ないのに」

 二人だけで行ける場所なら、そこは地獄だ。
 理央は虚ろな瞳で呟いて、それ以上は語らなかった。




 二階の窓からは通りが見える。
 理央がクリニックを出て行った後、要はその窓のカーテンを少しだけ開けて、雨の降る暗い通りを見つめた。
 黒い傘に守られる、いつもよりずっと華奢に見える理央の背が少しずつ遠ざかって、一番手前の角に差し掛かった時、人影が飛び出した。女だ。傘も何も手にしていない。
 黒い服。長い髪。それに、素足。
 当然ながら何を喋っているのかはわからないけれど、泣いているということと、あまり小さな声ではないらしいことだけはわかった。女は、髪を振り乱して大きな口で、おそらくは何か叫んでいるのだろう。
 あれだけ苦悩していた理央は、どうすることもできないらしかった。
 ひとつも言葉をかけなかったわけではない。理央がドアを開いて出る直前。

『出るも留まるも、お前の自由だ』

 意識はしなかったが、同じ言葉を紗央にもかけた気がしていた。

『期待した言葉を聞きたかったっていうのは、俺の我侭か?』

 困ったような笑顔で理央は言った。その言葉も、紗央が口にしていた気がした。
 その理央は、素足のままの奈央に泣きつかれ、喚かれ、結局、傘を地面に落としてその頭を抱いた。
 カーテンを閉める。
 落胆したわけでも、何でもない。ただ、見ている必要性を感じなかったから、明日もまた仕事だから、今日を終わらせるために、カーテンを閉めた。


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2007.12.28(Fri) | eternal damnation | cm(0) | tb(0) |

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