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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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ホワイトメイズ  2

 この行事、移動教室の最終解散の場所は学校だ。大型のバスが行きも帰りも乗せてくれる。俺と母さん、椿の母さんだとか、瑶子おばさんも変な連絡の真偽が気になるのかやってきていた。
 大型バスが何台もやってきて、遊び疲れた顔の生徒を下ろしていく。バスが何台来て、何台去っていこうと、その中にみのりや椿の姿は見えない。いよいよ本当に何かあったんじゃないだろうかと俺も不安になってきた頃、バスの集団にかなり遅れて、一回り小さいバスがやって来た。
 バスはさっきまでの集団と同じように校門を入ってすぐのところで停車し、生徒を下ろす。一番先に下りてきたのが……与一郎とかいったか、妙にテンションが高く、そいつだけを見るなら他のバスに乗っていた生徒たちと大差ない。異様だったのは与一郎の後だ。

 みんな、死んだような目をしている。

 あの樹理が、誰かに対して敵意剥き出しの瞳をしている。水城先生そっくりの野島流風もそうだ。椿は足取りおぼつかない様子で、都筑がしっかりとその肩を支えていた。みのりは一番最後、俯き加減の黎と一緒にバスを降りてくる。その姿を見てほっと一瞬だけ安心する。
 しかし、一抹の不安がよぎる。
 一部の先生の姿が見えない。
 父さんの姿も、見えない。櫂の姿も、見えない。
 どくどくと心臓が早鐘を打つ。違う、そんなはずない。そんなはずは、ない。

「……お、にい、ちゃ」

 ふらふらとバスを降り、ふらふらと俺へと近づいてくるみのりは、たどたどしく途切れ途切れに俺を呼ぶ。俺の目の前まで来ると、青い左目と黒い右目が一瞬で涙を溢れさせた。

「お、おとうさんが、おとうさんがぁ……!」

 ――マズい。
 みのりは糸がぷつりと切れたかのように泣き始め、つられてか黎も涙し始めた。そうなるともうダメだった。その場に留まっている面子は、昨日連絡を受けた人間なのだろう。あの連絡が嘘ではないことを誰もが悟り、……当然、一番に壊れてしまうのは母さんだと予想はついていた。
 それだけで十分衝撃だったのに、俺や母さんにとどめを刺したのは、みのりたちを乗せたバスの次にやってきた小さなトラックだった。
 
 見ちゃいけない。
 これを母さんに、見せちゃいけない。

 なのに俺は手も足も動かすことが出来ずに、俺たちの目の前に運ばれ「確認」を求められたその棺の中身を、見てしまった。みのりは一瞬息を止め、それから泣いた。
 胸に穴の空いた父さんの姿が見えた。
 母さんはきょとんとその中を見ていたが、「タク?」とひとつ呼びかけて、それから、表情が、どんどん強ばって、――悲鳴を上げた。みのりの泣き声よりも大きかった。暴れて止まらない母さんを見てみのりが戸惑い、また涙する。そんなみのりの腕を強く引いたのは、奈央おばさんだった。

「みのりちゃんは黎と一緒にうちにおいで! 真紘くんは紗央ちゃんお願いね、男の子だからちゃんとお母さん支えてあげられるよね!?」

 思わず頷いたが、そんなことできる自信はなかった。俺だって手も足も震えてる。けどこれ以上母さんにコレを見せているわけにはいかない。母さんを棺から引き剥がすと、引きずってでも家に帰ろうと心に決めた。
 視界の隅にちらりと見えたのは、奈央おばさんと黎の前にふたつ並んだ白い棺。
 ――ふたつ。
 その片方に誰が入っていて、もう片方が誰なのかなんて俺はもう考えない。そんなこと、絶対に考えない。 




 父さんは本当に、母さんのことを愛していたと思う。
 俺よりもみのりよりも、誰よりも母さんを愛していて、父さんの中で母さんは家族じゃなくて永遠に恋人で。いくつ年が離れていようがそんなのは関係なかった。父さんは俺たちにも隠すことなく、母さんが一番だと公言していた。
 家族を捨てた父さんが見つけた一番綺麗なもの。そして欲しいと強く願ったもの。
 思い出にしか縋れなかった母さんが、ずっと欲しいと強く願っていたもの。



 リビングには嗚咽だけが響いている。
 母さんはテーブルに突っ伏し、俺は部屋の隅でぼんやり突っ立っていた。幾度も呟かれる、ごめんなさい、の言葉。痛々しくて聞いていられない言葉。


「……………ったから」

「欲しいなんて、言ったから」

「あたしが、子供欲しいなんて、言ったから」

「要らないから」

「そんなわがまま言わないから」

「もう、言わないから」


 ここにみのりがいなくてよかったと心底思った。
 あ、いや、……否定されてるのは、母さんが望んでしまった最初の子供だけで、みのりに罪はない。
 要らない、ごめんなさい、それを繰り返して、だんだんと心が切り刻まれていく。
 そうだよな、俺なんか要らなかった。俺を望まなければ、母さんは父さんとずっと二人で暮らせたんだろう。こんな別れをすることもなく、ずっとだ。それが叶わないのならせめて、死ぬのが父さんでなく俺だったらよかったのに。産んだことをこの年になって悔やまれるくらいなら、死んだ方がきっと有意義だ。
 俺が死んでもきっと父さんが母さんのフォローをしてくれる。でも、父さんが死んだら俺は母さんに何もしてやれない。母さんにとっての父さんは、本当に唯一無二なのだ。他の何でも替えがきかない。そりゃ何でもそうだろうと思われるのかもしれないが、母さんは、父さんさえいれば生きていける。そういう意味での唯一無二。
 父さんは、母さんにとっての“世界”そのもの。母さんという世界の“器”を満たしていたのが父さんの存在だった。それを失った悲しみは、俺なんかじゃ想像もつかない。

「母さん、もう寝た方がいい」

「子供なんて要らなかったのに」

「体壊すぞ」

「タクがいればそれでよかったのに」

「今日はゆっくり休めよ」

 声をかけても母さんは俺の声なんてまるで聞こえていないかのように独り言を続ける。いや多分、本当に聞こえていないんだろう。俺は母さんの中でいなくていい存在だから、俺の声なんてあってないようなもんなんだ。
 でも休ませないと。今の母さんの精神状態じゃ、下手すりゃ自殺しかねない。それは俺も嫌だし、みのりにこれ以上辛い思いもさせたくない。この一線だけは守らないと。父さんがいない以上、俺が守らないと。
 時計の針は残酷に時を刻んでいく。ぶつぶつ独り言を言う母さんに、俺は声を掛け続けた。もう休め、寝ないと体壊すから。……もう壊れている母さんにこんな言葉ほど微妙なものはない。やがて日付が変わる時刻になる。ふらふらしながら母さんが椅子から立ち上がったが、すぐに膝の力が抜けて崩れ落ちる。慌てて駆け寄ってその体を支えると、母さんの青い瞳が大きく見開かれた。心底驚いているみたいに。

「……なんで、あんたみたいのがいるのよ」

「片方だけ青い目なんて馬鹿みたい」

「そのくせ外見はタクにそっくりなんて、そんな都合のいい人間生まれるはずないじゃない」

「消えなさいよ」

「夢なんだから早く消えなさいよ!!」

 母さんが呪いの言葉を吐き出す。
 流石に俺も辛くなって何も言い返すことができない。俺の存在は母さんにとってただの悪夢だ。でも、俺だって望んで生まれてきたわけじゃないのに、どうして俺を産んだ当の本人に存在を否定されなければならないのか。生まれる感情は怒りでなく、悲しみ。
 そうだよな、なんで、俺なんか欲しがったんだろうなあ、母さん。
 俺の手を振り払い、一人で立ち上がると母さんはよろめきながら寝室へ向かった。俺はその背を眺めて、強く扉が閉まる音を聞いて、リビングでしばらく一人で泣いた。



メインはヒロ君です。
あとは二の次です。



次はバトロワ本編にしようかな。
慎吾と空のところは慎吾視点だけ書き上がってるんだし。だしだし。
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2010.06.21(Mon) | ホワイトメイズ | cm(0) | tb(0) |

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