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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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ホワイトメイズ  3
 ぼろぼろになって帰ってきた黎と、預かったみのりちゃんを寝かせて、あたしはリビングのソファーでやっと頭の整理をする。わけがわからなかった。昨夜連絡があってから半信半疑、ううん、九割は冗談だと思っていた。なのにそれがすべて本当で、あたしは大事な家族を二人も亡くしてしまった。黎だけでも帰ってきてくれたのが本当に、せめてもの救い。それであたしの心はなんとか保たれる。

「……空君……」

 背中を刺されていた。相当強い力だったんだと思う。どうしても抜けなかったのか包丁がそのまま空君の背中に刺さっていた。柄が食い込みそうなほど背中の肉に深く刃が沈みこんで、……あれで、空君はどれだけ生きたのだろう。即死だっておかしくない。でも空君だから、黎に何も言わずに死んだなんてことないだろうと思う。片割れと父親を失う黎だから、自分が死ぬ間際だって空君はちゃんと気にかけてくれたはずだ。瀬川 空は、そういう人だ。
 黎は何を聞いたのかな。あたしには聞けない。それは黎が、しっかり自分の心の整理をして、あたしに話せるようになったらきっと話してくれる。死は誰にでもいつか必ず訪れるから、それ自体は悲しくないことだって自分では思っているのに、この埋めきれない心の穴はどうしたらいいんだろう。何もわからないから。彼の痛みも、苦しみも、あたしには思いを馳せることすらできない。
 あたしのこと、少しでも考えてくれたかなあ。黎のことばっかりだったのかなあ。……寂しいなあ。
 音のないリビング。隅で眠っていたゴールデンレトリバーの権造が寂しそうに小さく鳴いてあたしに近づいてきた。その頭をわしゃわしゃ撫でてあげて、抱きしめる。家を買って数年して、「やっぱりマイホームには犬がいねぇとな!」と空君が言い出したから、みんなでペットショップに見に行った。一番元気で、やんちゃで、イタズラ好きの子犬を買って、また子供がひとり増えたみたいだってあたしは思ってた。黎と櫂は空君にそっくりで、明るいけど賢くて誰のことだってちゃんと考えられる。まあ、やんちゃが過ぎるところはあるけど、だから権造を飼い始めた時も怖がるなんてこと全然なかった。

「……お母さん」

 権造と一緒に過ごしていると、リビングの扉から小さく声が聞こえた。顔を上げると、やつれた顔の黎がいる。

「どうしたの? 眠れない?」

 近づいてその頬に手を当てる。黎は力無く笑ってみせた。

「あはは、それもあるんだけどね。……お母さんが、一番辛いかなって、思って」
「お母さんのことなんて心配しなくていいから。黎が一番疲れてる。……黎には元気でいて欲しいの」
「私は櫂も、お父さんも、ちゃんと見た。分かってる。何も分からないで家族が二人もハイ死にましたって言われるお母さんの方が辛いに決まってるよ」

 ――あたしは本当に、この子が空君の子供で嬉しいよ。
 思いやりがあって賢くて、本当に空君そっくりなんだもん。
 黎はあたしの隣に腰掛けて、あたしの服の袖をつまんでしばらく黙っていたけど、
 
「お父さんがね」

 そう、切り出した。
 すぐには聞き出せないと思っていたことだ。
 少し、緊張してしまう。

「……ルカのお父さんに刺されたの。気がついたら後ろからぐさっとやられてね、犯人はルカと一緒に逃げちゃって。私は、追いかけて殺してやる!って言ったんだけど、お父さんは、……やめてやれ、って」

 そこから少しずつ涙声になる。あたしにも何だかその風景が見えてくるようだった。

「慎吾だって父親だからルカのこと守らなきゃならないんだ、って。俺も黎の父ちゃんだから、黎を危ない目には遭わせられない、黎を守らなきゃいけない。でも櫂のことは守れなかったから、俺は櫂の父ちゃん失格だなあ、って、言って……」
「……お父さんらしいね」
「馬鹿だよお父さん、私のお父さんなら、櫂のお父さんでもあるのに。……それに、俺センセイだしなあ、って、言ってた」

 ……それは、本当に、空君が言いそうなことだった。
 俺はセンセイだから。
 センセイだから、教え子を恨んだり、呪ったり、ましてや手に掛けたり、そんなことは自分の命と秤にかけたってできなかったんだろう。死にたい人間なんかいない。空君だって本当は生きたかった。けど、教え子を殺して生きながらえるくらいなら死んだ方がましだって、空君は馬鹿みたいに真っ直ぐだから、何だって大事にする人だから、そう、思ったんだろう。そしてきっと、櫂をひとりにさせられないって思ってくれたんだろう。櫂は黎といつも一緒だったから、離れただけできっとすごく不安がっているだろう。
 ああ、最後まで、空君は空君だったんだ。

「……それでね、……奈央にも伝えてくれって」
「な、……何を?」

 自分の名前が出て驚く。
 空君は、あたしに何を言いたかったのかな?

「今度会う時も、歌っててくれなきゃ俺は見つけらんないからなって、言ってた。黎と櫂もそうだぞ、って。今度みんなで会ったら、俺がピアノで伴奏するからって、それで……」

 夏の青い空。
 熱をもった空気。
 ぬるいプール。
 誰もいない、プール。
 人目を盗んでプールで歌っていたあたしを見つけてくれた、空君。

 ――次に会えるのは、いつ?
 ――次に声を聞けるのは、いつ?
 ……もう会えないんだよね、声も聞けないんだよね、あたしがそっちに行くまでは。また新しくどこかで巡り会えるまでは。

 鼻をすすって泣き始めた黎の肩を抱いて、手に伝わる確かな温かさの代わりに本当に大事なものもいくつも失くしてしまったのだと実感が湧いてきた。
 一番大事で楽しい時間はもう永遠に訪れない。けれど彼は、あたしに残りの時間を楽しむことができる可能性を残してくれた。黎だけでも、こうして帰してくれた。

「……黎だけでも帰してくれて、空君は本当に立派なお父さんだよね……」 
「……お母さんは、悲しくないの……?」
「悲しいよ」

 でも、わがままを言ったら空君に申し訳ない。
 本当は空君にも、もちろん櫂にも会いたかった。
 わがままなんて言えないよ。いつもいつもわがままだったのはあたしの方だ。

「……お父さんが、櫂を守れなかったってすごく後悔して、黎だけでも絶対に守ろうってすごく頑張ったんだ、ってあたしには分かるから。だから、この結果以上を求めるのはお父さんに対して失礼だよ。……黎を無事に帰してくれて、たくさん言葉も残してくれた。確かに意味がわからないし理不尽だけど、最後まで空君らしかったんだって、わかる。あたしのことも考えてくれてたんだって、わかるから、……悲しくないよ……」

 言いながらあたしは涙していた。 
 ひとりでそれだけのものを背負って、空君はどんなに不安だっただろう。強くても完璧な人じゃないから、空君は普通の人だから、きっと怖くて震えただろう。それでも、あたしや子供たちや教え子のことを気にかけてくれていた。
 そんな空君が、孤独や恐怖と戦っている間に隣にいてあげられなかったことが、とても悔しい。隣にいて、声をかけてあげたかった。少しでもその恐怖を取り除いてあげたかった。できることなら代わりたいし、あたしも一緒に死んであげられたら、と思う。
 でも、できないんだよね。
 空君は空君の全部をかけて、黎をあたしのところに帰してくれたんだよね。

 あたしは、最愛の人に心からの感謝を贈りながら、世界で一番大事な娘を抱きしめた。



書いてて一番楽しかった。
次はバトロワ本編の空視点かな。


高校から大学にかけての時間軸は慎吾が一番カッコイイけど、親になったら空だよなあ。
それまでが歪んでるから、奈央とちゃんと結婚できたら空は本当にヒーローになると思うよ。
本編時間軸の空が何を考えてたのか想像するのが楽しいです。
父親であり、奈央の夫であり、教師であり、ただの人間であり、強い要素をたくさん持ってても所詮人間なんだって分かってるのがバトロワの空。だから多少リスキーな選択肢でも採っちゃったりする。
奈央が幸せになるのは断然前クリチューだと思ってたけど、ツキ高未来も同率くらいかも。


最初の夏休みが7月のラストになりそうなんで、そこで奈良行ってきます。暇な人いたらご一報ください、一緒に行きましょう!(笑)
京都までの往復新幹線と奈良のフリー切符4日分がついてるチケットをとろうかと。ホテルは奈良駅前にビジネスホテル。でも温泉ついててすごく綺麗そう。


ついでにマンスリーなんとやらの話もしたいねえ。暇な日遊びましょう。ちょっと話し合おうじゃないか。



もう限界……。眠いんで寝ます。

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2010.06.23(Wed) | ホワイトメイズ | cm(0) | tb(0) |

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