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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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スノウメモリー 5



「椿が?」
「はい。何かやたらと意味深なんで気になってて」
「で、叔父さんに何かあるのかって?」
「まあ、あの性格ですから」

 確かに、叔父さんのあの性格はかなり人として問題がある。
 それ言ったら人の家の事情ぺらぺら喋るうちのババアも大差ないんだけど。

「椿、ねぇ……」

 叔父さんは、本当に人として問題がある。
 だけど、椿が嫌いなわけではないし、本当におもちゃ扱いしようと思ってそうしているんじゃないような気がする。今のところはそうするのがベストだからそうしている、みたいな、ああするのが今はいい、みたいな、そういう感じがする。
 
「まあ、いくら椿って言っても所詮他人なんで。あんまり深く詮索するのもな、とは思います」
「お前、事実とは言え言葉選べよなー」

 うちのババアではない、ウエイトレスが運んできた温かいカフェオレに二人して口を付ける。ババアは寿退社してからここでパティシエールをやっている。今も奥の厨房にいるんだろう。
 しかし、そうだな、椿は詮索されるのを好まないだろう。
 椿は、叔父さんのそのポリシーから言えば、存在自体が不思議だ。叔父さんは常々、『俺は冗談は言うが嘘は言わない』とかふざけたことを言っている。冗談の質が悪すぎるのは周知のことだけど、確かに嘘を言ったことはない気がする。ああそうだ、椿の両親もすごく仲がいい。叔父さんのポリシーが影響しているんだろう。何があってもすっぱり『妻以外の女は論外』とか言うしな。カッコいいんだかただ恥ずかしいのか分からない存在だ。
 ともかく、その叔父さんは、昔は一般の人だった叔母さんと結婚する前、芹沢の家の結婚の許しをもらいに行き、その時に、

『――こいつ以外要らない。家政婦も、弟子も、生徒も、子供も必要ない。こいつがいれば俺は何年だって芹沢引っ張っていけるよ』

 そう言ったらしい。あの叔父さんが、一族の前でそう宣言するんだから、かなり優先度の高い宣誓だっただろうに、嘘は言わないと言う叔父さんは数年後、あっさり娘を設けることになる。その原因が、愛する奥さんの要望に応えたものなのか、他の何かなのか、それは所詮甥っ子の俺にはわからない。ただ、叔父さんのポリシーからすれば、椿の存在は本当に有り得ない。十七年生きてきただけの俺でも、叔父さんの性格なら嫡子無しでやっていこうとしたはずだ。
 多分、椿もどこかでこの話を耳にして、知っているのだろう。こんな話聞けばあの図太すぎる椿だってそれなりのショックを受けるに違いない。父にとって自分は全く必要な存在ではなかったのだ、と。愛する妻がいればそれだけで他の一切を必要としない、と叔父さんは言った。そのくせ、生まれた椿には家を継ぐなんていう重荷付きだ。椿からすればたまったものではないだろう。結局、どうして椿が生まれたのか。それが叔母さんが望んだから、それならまだいい。叔父さんは叔母さんに屈服しているも同然だから、叔父さんの嘘を翻させるのは叔母さんしかいないだろう。けどもしも、ほかの事が原因だったら? 椿の生まれるきっかけが、他の何かだったら? 俺なら、感謝ももちろんするだろうが、ぞっとする。それが何なのか、どんなものなのか、知りたくて仕方なくなる。椿と同じ境遇に置かれたとしたら、憎むかもしれない。実際、あの言葉から椿が生まれるまでは数年ある。旧家としてはすぐに跡継ぎを決めて安心したいだろうにそうしなかったのは、もしかしたら。

「真紘さん?」
「あ? あー、いや、そうだな、何だろう」

 こんな話を他人に出来るほど俺は偉くない。それがわかるくらいには大人になったつもりだ。椿もわかっているから複雑で、けれど言うべきでないとわかっているから内側に溜め込んでいるのだろう。
 でもやっぱり、叔父さんは、叔母さんの一声があれば態度をころっと変えるのではないかと俺は思っている。叔母さんにとってはあの一言は多分、一生大事にとっておきたい言葉で、最初で最後の、そして最高の、芹沢大和の本音だ。大事にしておきたかったから、最初の数年は二人だけだった。やっぱり外から何か働きかけがあったんだろうか。旧家だから、やっぱり子供作れ、とか。けどそんなこと言われてすんなり聞く人でもないし。
 叔母さんが、『冗談にして』と言えば、叔父さんは世の中のバカ親みたいに椿を溺愛するかもしれない。あの発言全てを冗談にしてしまえば、叔父さんが誰か別の人のものになる可能性だって孕んでくるけれど、椿の状況改善には一番手っ取り早い。つまり、今の叔父さんの椿に対する態度は、誓いを一部嘘にしてしまったから、少しでも宣言に近い状況に仕立てたいのだ。それだけ叔母さんのことを考えているということなんだろう。まあ、子供云々以前に家政婦も弟子も腐るほどいるんだから他も嘘になってるっちゃなってるけど、それは死活問題だから別なのか。高校でバレーのコーチできるほど教室減らしてはいるから普通に家元やるよりはずっと人数も少ないのかもしれない。

「いいんですよ。僕がそれを知って得をするわけじゃないし」
「だな。俺もあんまり見当がつかない」
「嘘だー。いろいろ噂拾ってるって顔、してますよ」

 樹理は悪戯っぽい顔をしたが、そこまでその話題は引っ張らずに、区切るようにカフェオレを飲んだ。育ちが育ちだからか、樹理は分を弁えている。踏み込むべきポイントと、そうでないところをちゃんと分かっているから、こちらも話しやすい。空気が読めない奴ってのはいるもんだからな。黎とか櫂とかその父親みたいに。

「真紘さん、学部は?」
「俺? 法学部」

 進学予定の学部を聞かれたので律儀に答えてやったのに、樹理は「ほーがくぶ?」と変換できてませんって感じの顔で聞き返す。ほうがくぶって言って法学部以外にどんな感じが当てはまるというのか。芳か? 報か? それとも砲か? ……なんかこれはちょっと俺っぽい感じがする。

「あんまり似合わないものですから」
「お前率直にもの言いすぎ」
「百人に聞いたら百人が同じこといいます。真紘さんっていうと、何か、……船舶系とか漁業とか農業とかそんな感じが」
「俺は一体何キャラなんだよ」

 土木系か。漁業は土木じゃないし、とにかくごっついイメージなんだろうな。

「仕方ないだろ。目指すはキャリアなんだから」
「大和さんは無理だって即答してましたけど」
「叔父さんのいう事いちいち信じてたら絶望から這い上がれなくなるぞ」
「ははっ、それは確かに」
 
 ありゃ人ならざるものだろう。例えどんな真実を抱え込んでいたとしても、簡単に心を許していい存在ではない。樹理はちゃんとそこもわかっている。偉い。

「まあ、進学も決まってるし、勉強くらい教えてやるよ」
「多分僕の方が出来はいいですよ。だって真紘さん、下から数える方が断然早いでしょう?」
「いちいち余計なこと言ってくれるなー、樹理。一回殴り合いの喧嘩でもしてみるかー?」
「うわー、弱い者いじめですねー。真紘さんのお母さんに報告させてもらいますー」
「ちょ、お前っ、」

 にっと笑う樹理の顔はどことなく、白衣姿の流風先生を思わせる。
 その後、あることないこと樹理がしゃべって店内でババアと大喧嘩になった。叔父さんも心許せる存在ではないが、こいつも大概にしてほしいもんだな、と思った。





ということなので椿は暗いんだと思います。
エンジ君が本当は全然幸せなんかじゃないって分かっても、エンジ君には跡継ぎとして生まれたって理由があって、椿は跡継ぎとしても本質的には必要とされてなかったみたいなので、どうしたって結局暗いのか。
椿も後で書いてひとりで楽しみます。子供世代の暗闇楽しい。
櫂と黎と深春には縁の無いことなので書けないけどほとんどみんな暗くて楽しい。


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2008.03.02(Sun) | 未来話 | cm(0) | tb(0) |

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