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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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「おっ、そこにおわすは圭一くんでないの?」

 大学の図書館の前で見かけた人影に声をかける。反応して振り向いた男性はやはり、月見ヶ丘高校で英語の先生やってる、安藤圭一くんだった。今日は平日、今は夕方。出勤日には思えないから、研究日なんだろう。どうやら図書館から出てきたばかりのところだったようだ。

「照井さん」
「よーこさんでいいのに」
「いや、それは理央先生に申し訳ないなって」
「理央くんは呼び方なんか気にしたりしないよ。私が自分の名前気に入ってるから呼んでほしいだけ」

 そう言われてはなかなか嫌ですともいえないみたいだ。まったく私って嫌な奴なんだから。

「それじゃ、瑶子さん」
「おっけ。圭一くんは仕事用に何か借りにきたの?」
「まあ、そんなとこです。教科書だけじゃなくてたまにちゃんとしたのも読まないと鈍りそうで」
「わかるわかる」

 圭一くんは手にしていた数冊の本を軽く上げて私に見せた。しっかりした厚みのある本。これだけの洋書を日常的に読める先生がいるんだから、ツキ高ってつくづく教員のレベルが高い。

「瑶子さんは講義終わりですか?」
「そうなのよー。これから理央くんと夕飯の買い物行くんだけど、ちょっと遅れるって連絡あったし。圭一くん、時間あったらお茶でもどう?」

 私の提案に、圭一くんはちょっと困ったように笑った。

「いいんですか? 俺なんかとお茶して」
「うん。私モテる分には全然構わないし。何かあっても理央くんが助けてくれるしぃ?」
「あーそうでした、瑶子さんってそういう人でした」
「そうなのです、そういう人なのです。あ、圭一くんちょっときゅんとしたでしょ」
「あ、聞き取れなかったんでもう一回いいですか」
「圭一くんちょっときゅんとしたでしょ?」
「なんでボケたのに聞き直しちゃうんですか……」
「やだなあ、それが面白いんじゃない」

 圭一くんが本を手持ちの鞄に入れたのを確認してから、その足でカフェテリアへ向かう。道中話を聞けば、圭一くんも割と大学図書館を利用するらしい。近いところで専門書とかが揃うんだから利用しない手はないとか。そりゃ確かにそうだ。圭一くんと同じ理由で、理央くんもよくこっちの図書館に来る。そういう時は夕食が外食になったり、いきなり予定を変更してデートできちゃったりするわけで、誰得? 私得! なわけであります。
 ここの大学のカフェテリアは割としっかりしている。カフェテリア、っていうより、喫茶店っていう方がいいのかもしれない。私はブレンド、圭一くんはアイスティーを注文。私が誘ったんだから私が払うと言ってるのに、俺にも一応プライドがあるんで、と言い切った圭一くんに全額払ってもらうことになってしまった。なんだか申し訳ない。とある人から圭一くんの財政事情は事細かに伺っているというのに、本当に申し訳ない。

「なんか、ありがとうね。奢ってもらっちゃって」
「いいえ。代わりに結婚式のご祝儀の中身が少なくても見逃してください」
「圭一くんの私たちへの気持ちってそんなもんだったんだなあ、ってちょっと悲しくなるだけだからいいよ別に」
「ちょっと、その微妙に追い込む感じやめてもらえますか」

 人に奢ってもらうコーヒーのなんとおいしいことか。口をつけたカップをソーサーに置いて、圭一くんを見る。学生客の姿はそう多くない。それは今日に始まったことではなく、ちゃんとしたコーヒーを楽しみたい教員の方が来客としては多いんだろうと思う。なので私と圭一くんが座っていたところで浮いた感じはない。あ、そうだ、浮いたといえば。

「圭一くん、浮いた話のひとつもないの? 私が認識できるくらい近場で」
「まず聞いておきたいんですけど、どうして今現在俺には浮いた話がないことが確定してるかのような言い方なんですか?」
「しまった、私としたことが」
「フォローのひとつもないんですか! うっわ、地味に傷つきましたよ俺!」
「ごめん、私嘘とか苦手で☆」
「ソースはわかってますよどうせあいつでしょうあのスイミーでしょう!」

 ご明察。圭一くんの財政事情もスキャンダル情報もそのスイミーからいただいたものです。
 いらついたようにとんとんと指でテーブルを叩きながらアイスティーのストローを咥える圭一くんに、私は手を合わせる。

「弁解させてもらうとね、私聞いてないのに積極的に流してくれるのよスイミーが! 私ってば賢いから聞いたらぼんやり覚えちゃうんだよね、てへ☆」
「はい、明日スイミーが海の藻屑と消えますので乞うご期待」

 グッバイスイミー、もとい、瀬川くん。君のことは忘れないよ。奈央ちんには要くんあたりを紹介しておくから許してね。
 と、そんな感じで遠い瀬川くんに思いを馳せる。おそらく今頃くしゃみでもしてるんじゃないだろうか、盛大に。

「え、じゃあ浮いてるの? 浮いてるの、圭一くん」
「それはなんかニュアンスが違って聞こえます。いやまあ、別に、浮いてないですけどね」
「なんだ、やっぱり浮いてないんじゃん。計画通りです」

 圭一くんは「計画通りってなんですか!」と言い出しそうな顔をしていた、というかもう言い出しているオーラは放っていたけれど、口には出さなかった。言い出したら終わらない気がしたのだろう。もしそうなら奇遇だ、私もちょうどそう思っていた。

「俺の浮いた話なんて関係ないでしょう、近々ご結婚される照井瑶子博士には。式の日取りとか場所とか、早めに教えてもらわないと俺着ていく服あるかどうか」
「知らないかもしれないから言ってみるけど、理央くんって世界的な宝飾会社の副社長ご子息なんだよ」
「へー、初耳ですけどまああの雰囲気なら納得……あれ、じゃあ奈央さんも」
「そうだよー」
「紗央さんも?」
「もちろん」
「へー…………って、宝飾会社!? ご子息!? 何それ俺初耳なんですけど!!!!」
「ほんと、ぶれないねえ圭一くん」

 この反応を待っていた私としては嬉しいことこの上ない。圭一くんは「そもそも俺招待されんのか!?」と頭を抱えている。大丈夫だよ圭一くん、面白そうだから圭一くんだけは全力でご招待するから。最近理央くんとちゃんと話をし始めて、具体的な日取りとかはまだまだだけど、式の規模くらいは聞いたことがある。理央くん自身は慎ましい人だから、身内だけでの式で全然問題ないみたいなんだけど、やっぱりおうちの関係上それなりに大きくしないと体裁が悪いらしい。瑶子さんはステージ慣れしてるから平気でしょう、と言われたのがまだ記憶に新しい。まあ確かに研究の発表とか? ステージ慣れはしているけれど、あの言い方はまるで私が目立ちたがり屋みたいだ。否定はしないけど。否定はしないけど!!
 
「圭一くんそんなに面白いのに浮いた話のひとつもないなんて意外だよ」
「面白いことと浮いた話がないことを等式で結ばないでください」
「最近は顔よりも面白さなんだよ、圭一くん自信持って!」
「俺は芸人かっ」
「芸人が板についてる、そんな圭一くんが好きです私」
「ああそうですか、うれしゅうございますねえ」

 とても嬉しそうには見えない顔で圭一くんはそう言う。それからグラスの中のアイスティーを少しだけ飲んで、あ、と目を見開いて一文字声を上げた。どうやら私の後ろに何かいたらしい。
 振り返ってみれば、それは仕事を終えた理央くんだった。大学のカフェテリアにいることはメールしてあったから、特別返信はしないでここまで直接来たのだろう。なんにせよ、私にとってはお待ちかねの人だ。
 
「理央くん! お疲れさまぁ」

 私の声に続いて、圭一くんも「どうも」と軽く挨拶をする。
 圭一くんという暇つぶし相手がいたとは言っても結構待った気がする。嬉しくて自然と声が高くなった。でも、理央くんはこの前私とケレス君が話しているところに居合わせた時のような瞳のまま、なかなか返事をしてくれない。

「理央くん?」 
「あ、すいません。瑶子さんもお疲れ様です」
「私なんかぜんぜんだよ。理央くん何か飲む? 圭一くんがおごってくれるって」
「いや、まあ、いいですけど。何か飲みますか、理央先生」
「そんな気を遣わなくていいですよ。すぐ出るでしょうし、瑶子さんの分奢ってもらってその上長話に付き合わせちゃったんですから、僕が奢るくらいじゃないと釣り合い取れません」
「ちょっと理央くーん、何それー! 圭一くんに迷惑かけたみたいな言い方に聞こえます!」
「違わないでしょう」

 理央くんが私の隣に腰かける。困ったように私を見て微笑む姿に私は安心する。ずうっと前から、理央くんは理央くんのままだ。優しくて頼りがいがあって、結構自分から苦労引き受けちゃって、それでいて、私のことが大好きな理央くん。

「前から思ってましたけど、仲良いですねえ、瑶子さんと理央先生」
「でしょー? 羨ましい? 羨ましいよねー」
「ちくしょう、否定できない自分が恨めしい……!」
「ごめんねー、私がフリーだったらちょっと考えてあげたかもしれないけど」
「そんな同情票いらないやい!」

 圭一くんをいじるのってなんでこう、とてつもなく面白いんだろう……。私リア充でほんとによかった!
 ちらりと理央くんの表情を窺う。見られていることに気づいたのか、理央くんと目が合った。

「まあ、安藤先生がいくら羨ましがっても瑶子さんはフリーにはならないんで」

 そんな台詞もさらっと言ってしまう。照れた様子も戸惑う様子も少しもない。何年も日本で待っててくれてた理央くんは、こういう理央くんで、こういう理央くんだから私をずっと待っててくれたんだと思う。私も同じくらい理央くんが大好きだ。理央くんの気持ちに何度でも何度でも応えてあげたいと思う。

「あの、理央先生、一回でいいんで殺させてくれませんか」

 憎々しげな圭一くんの声。もちろんそれには私が反論する。

「させませんっ」





 その後圭一くんと別れて、理央くんと買い物をして、いつもよりはずっと早めに家に帰った。私は家を出る前に干したままだった洗濯物を取り込むためにベランダに出て、理央くんは部屋で仕事をするみたいだった。広いベランダで洗濯籠に乾いた服を入れていくと、途中で理央くんがベランダのガラスの向こう側にいるのが見えた。理央くんはベランダに近づいて、きょろきょろと辺りを見回している。きっと私のことを探しているんだな、と思ったので、見える位置まで移動してみる。すると理央くんは微笑んでまた自分の部屋へと戻っていった。いないから心配になっちゃったのかなあ、可愛いなあ、なんて思いながら、うきうき気分で洗濯物を取り込んでいく。
 ベッドシーツやら大判のものもいろいろ干していたから、そこそこ重さのあるカゴを抱えて、ベランダを出ようと扉に手をかけると、

「………あれ」

 開かない。
 外からカギは掛けられないんだから、私がかけたってことはありえない。何か引っかかってるのかもしれない。そう思って何度も力を込めて開けようとしてみるけど、やっぱり開かない。理央くんに電話しようにも携帯はバッグの中に入れっぱなしだから連絡できない。理央くんがリビングに戻ってくるのを待つしかない。
 ベランダに立ち尽くしたまま、ずいぶん長い時間が流れる。……おかしい。理央くんは、夕飯作る時はいつも手伝ってくれる。早めに家に帰れた時は、部屋で仕事をしてても遅くたって七時半くらいにはリビングに顔を出す。もう私がベランダに出てから一時間が経つ。そろそろ七時半。腕時計を見て確かめる。
 だんだん気温も低くなって、肌寒くなる。薄着だったから寒さをダイレクトに感じてしまう。何度くしゃみをしても、なかなか理央くんは顔を出さなかった。
 理央くんに、何かあったのかもしれない。体調崩しやすいから、もしかしたら、熱出しちゃったとか、私が駆けつけないと危ないとか、もしかしたら。そう思ったら急に不安で不安で仕方なくなって、何度も何度も扉を叩いた。

「理央くん……!!」

 もう泣きそうな声で扉を叩き続けると、ひょっこり理央くんが顔を出した。全然大丈夫そう。仕事、すごく忙しかったのかな。
 理央くんがリビングを見回して、その後、ベランダにいる私を見つける。理央くんがこちらに駆け寄って鍵を開ける。

「大丈夫ですか、瑶子さん」

 扉が開いたら、ほっとして涙がぽろぽろ流れた。そんな私を理央くんは軽く抱きしめて背中をぽんぽん叩いてくれた。その温かさに安心する。

「大丈夫、ごめんね」

 


 その後はいつも通りに夕飯を作って、食べて、理央くんもいつも通りで、私もいつも通りだった。
 でも、何度ベランダの扉を見ても何かがつっかえていたとか引っかかっていた様子はなくて、……そもそも、あの時理央くんは、私が開けっ放しにしていたはずの鍵を、開けた。いつ閉まったのか、考えても考えても、私にはわからなかった。




理央と瑶子さんの場合は一番難しいのは遠恋中ではなくて瑶子さんが戻ってきたとき。
離れてる分には相手がどんな生活してんのかわかんないし、もう信じる一択しかないから耐えられるんだろうけど、瑶子さんの奔放な生活を毎日見ている方がしんどいと思う。しかも瑶子さん自分が奔放な性格してるってわかっててやってるだけに理央も口出しできない。
瑶子さんが留学する前までは瑶子さんがどんな男としゃべってようが割と平気だったと思うのですが、戻ってきてからは自分でも驚くくらい我慢ができないといい。相手が誰であっても仲良くしてほしくない。それがケレスさんでも、アンドゥーでも、みんなが敵に見える。
瑶子さんはアクティブな人だから自分でなんでもできちゃって、博士号も取って理央よりずっと偉くなっちゃって、場馴れとかもしてて大人になったし、まあつまるところが瑶子さんより素敵な女性なんていないんじゃないの的幻想を抱いてるんでしょう。そんなわきゃないのに。


さて、私もそろそろ寝ようかな。
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2011.08.10(Wed) | 未分類 | cm(0) | tb(0) |

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