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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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初恋シュプール 2



「だぁあああ……。やっぱ六月だしあっついなー……」

 口ではそうぼやいていても、生真面目な性格からネクタイを緩めることはしない慎吾。目の前には白くて大きな教会。披露宴はせずに式だけをここで挙げるというのだから、騒がしいことが好きな新郎のイメージからすると少し意外な気がしていた。 
 式まではあと一時間ある。時計で時刻を確認している時に離れたところから近づいてくる影に気づく。どうやら二人。慎吾は手を挙げて挨拶した。

「ひっさびさだなー! 元気してたかー?」
「お前こそ、せっかく体育大入ったんだしさっさと代表になれっての」
「んな簡単に言ってんじゃねぇよ、ばーか」

 五十瀬至貴、そしてその隣に鳥辺山嵩皓。二人とも慎吾と同じように正装で、高校時代とあまり変わらない関係のようだった。これには未だに慎吾も手を焼いている。

「都筑は来ないの?」

 嵩皓が慎吾を見て問う。慎吾はひとつ頷いた。

「仕事あるんだってさ。新郎新婦によろしゅうー、ってメール来た」
 
 進学した慎吾たちとは違い、風哉はひとり実家の京都に戻って社会人としての道を歩んでいる。仲の良かったメンバーが揃わないのは残念だが、それも仕方ないことは誰もがわかっていた。高校の頃とは違うのだから、そういうものなのだ。
 他にも同じ学年の奴来てる、と慎吾が教えてやると、だろうなあとげんなりした顔をしてそれでも軽く挨拶回りをするのか、嵩皓を連れて至貴はその場を離れた。

「よう、似合うじゃん」
「うおっ、ヤマト先輩! と、葉山先輩!」

 そろそろ来るんじゃないかとは思っていたのだが、やはり唐突に来られると驚いてしまう人物の登場。後ろから掛けられた声に振り向いて、声の主の名を呼ぶ。
 この人はあの夏服以外なら大体似合うんだな、と心底思うほどに、大和の礼装はきっちりはまっている。その傍らにいるルミも、こげ茶色の控えめなドレスに淡いストールを羽織って、二人セットでいるのが何ら不思議でない。

「おっと野島、葉山先輩はもう卒業だ」
「は? 何ですか急に」
「籍を入れた。だから苗字が変わったんだ」
「……はあ、…………え、ちょ、結婚したってことスか!?」

 慎吾のオーバーな反応を見て、大和が大きく笑い出した。なんだ冗談か、そう思ってちょっとばかり安心した慎吾だったが、こんな冗談普段じゃ黙っているはずのないルミが黙っているのを見ると、さっと背筋が寒くなる感覚を覚えた。

「……ま、マジで、すか」
「大マジだ」
「で、でも、ヤマト先輩みたいな立場の人が結婚して、マスコミとか騒がないわけないじゃないスか!」
「だぁから、籍入れただけだって。書類書いて、役所出せば成立。式はもっと先だからその時騒ぐだろ。平々凡々の一般人と結婚ですかー、ってな」

 平々凡々で悪かったわね、とこれはいつもの反応。
 平々凡々がいいっつっただろ、と平然と流すのもいつもの反応。
 二人でいることが板につきまくっている。これは真実なのだろう。

「ちなみに、いつ?」
「んー、先月? 今日に合わせて体裁のいいようにさ」
「わざわざ参列するために結婚したんスか!?」
「ほらほら、こいつ、大学通ってはいるけど一応社会人だから」

 苦笑しながらルミが大和を指差す。そうだぞ、と威張るように笑う一つ上の先輩の説明を聞けば、今回の式のメイン、新婦直々に教会を花で飾って欲しいと依頼されたということだった。大和は快諾して、最近アレンジメントの資格も取ったからご祝儀代わりにやらせて欲しい、と提案したが断られた。芹沢の次期当主にお願いしている、とのことで、そこはもうビジネスだ。そこまで言われて断るわけにもいかないし、最低限の金額を受け取って、大和は仕事をした。籍を入れたのは大和の面白半分でもあったけれど、仕事とは別に挨拶をしたり御祝儀を渡したりと、そういった時に華やかさをプラスするパートナーがいるのといないのとでは気の持ちようが違うということらしい。
 おかげで大学でも注目されて困っている、とルミは言う。大和は大学の芸術コースで講師をしているから、その時にやっぱり面白半分で言いふらしたのだという。どこまでも非情で非常な人だ、と慎吾は思った。

「そーいや、今来たんですか? お二人は」
「いや、新郎新婦には挨拶してきたよ。見てきたらいいのに」
「ドレス姿すっごい綺麗なんだよー? 見たらあれは惚れるね」
「いやいや、そういうのは取っておきます、あとのお楽しみってことで」
 
 新婦が綺麗だなんてこと、そんなの当たり前だ。あの鈴城理央の双子の妹で、交番や喫茶店でよく見かける鈴城紗央の従妹で。
 新郎はきっと七五三状態で。ああでも、卒業する頃あんまり小さいと思わなくなったかも。そう思い出して、やっぱり後に取っておこうと思う。その方が多分感動するし、心から祝えそうな気がする。

「おーい、もう会場入れるってよー!」

 少し離れたところから至貴に呼びかけられ、じゃあ早速行きますか、と大和とルミに訊ねる。しかし大和は軽く首を横に振った。

「もーちょい待ってろよ。まだ始まらないだろ?」
「そうですけど、何ですか? あ、後輩ひとりVS先輩二人って状況作ってリンチする気ですか!? 俺負けませんからね!」
「お前がそれでいいなら俺は全然構わないけど? ……とか言ってる間に、来た来た」

 教会に近づく黒塗りの車。
 何が何やら、といった感じの慎吾と、すべて知っているような大和とルミ、その三人の前に車が停まる。
 見覚えのある車だ、とぼんやり慎吾は思う。多分芹沢の車なのだ。それなら何度か見たことがある。

「遅いぞ」

 大和が声を掛けると、ドアが開いた。

「うるさいな、ちょうどいい飛行機無かったんだから仕方ないだろ」
「お、スーツ似合うじゃんー! 苦労して選んでよかったっ」
「おー、葉山。じゃないか、芹沢夫人? 結婚おめでとう。スーツわざわざ選んでくれてさんきゅ、悪いな」
「いえいえ、芹沢的にははした金らしいからねー」

 見慣れない、黒い髪。
 でも、その背丈も、顔も、声も、全部が記憶の中の彼と同じもの。
 呆然と立ち尽くす慎吾の肩を、軽く大和が押してやる。慎吾はつんのめってバランスを崩し、そのまま彼の前に立った。

「……久しぶり、慎吾」
「る、っ、流風、せんぱい……ッ!!」

 学生時代の恩師の結婚式に来たというのにこれじゃあメインがまるで違う。
 一年ぶりに見る憧れの人間。その姿に感動して、まるで夢でも見ているようで、慎吾は髪の色だけが変わった流風に思いっきり抱きついた。

「うあっ、お前っ、キモいんだよ! はーなーせー!!」
「離しませんよ!! もういっそこのままゴールインしたいくらいです!」
「ぜってー嫌だ! もう式始まんだろ、離せー!!」

 そう言いつつも、流風の顔も嬉しそうに綻んでいた。嬉しいくせにー、と流風の頭を大和が強引にぐりぐり撫でる。せっかくセットしたのにやめなって、とルミがそれを制止した。でも、笑っていた。

「さてと!! そろそろ行きましょうよ、空先生の結婚式!」

 ひとしきり騒ぎ終わった後の慎吾のひとことで、四人の足は教会へと向かう。
 本日の主役の晴れ姿を見るために。

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2008.03.09(Sun) | 初恋シュプール | cm(0) | tb(0) |

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