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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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時間がない!


「はあ!? 私立う!?」

 その申し出があまりにも突飛なものだったから、俺はカレーを食べていたスプーンを危うく取り落とすところだった。間一髪のところでそれは防いだが、だからといって目の前のガキの発言がなかったことになるわけではない。いや、でも、とりあえず落ち着け俺。そう思って一口カレーを食べる。うちのカレーは、いつからか、しっかりと辛い。

「お前がうちの財布の事情も理解できてねェたあ、俺も予想外だった」
「うるせえよ、財布の事情なんてアンタよりよっぽどわかってるっての」
「わかってる奴がんな発言すっかね、普通」
「いいから最後まで聞けよ」

 ガキは俺を睨みつける。最近目つきが鋭くなった気がする。特に俺が外で飲んで帰ってきた日なんかにゃ、そりゃあ眼光がすげえもんだ。この性格は一体誰に似たのやら。俺も知らないこいつの母親だろうか、それとも父親だろうか。俺、ってことはねえな、100%。
 ガキ、には名前がある。エンジ、それがこいつの元々の名前。それに俺の苗字をくっつけて、桜井炎而。それが今のこいつの名前。
 エンジは卓袱台の下で胡坐をかいていた足を組み替えると、わざわざ咳払いなんぞをして見せた。

「そりゃあ、父さんの稼ぎだけじゃ私立なんて厳しいっつーか無理ってわかってる」
「そうだな」
「だから公立へ行きたくないってわけじゃないんだ。でもせっかく進学率もいいから狙ってみたら、って担任に言ってもらえたんだ」

 なるほどその担任はうちの財政事情も知らないでそんなお気楽な台詞を吐いたわけか。頭が痛くなる。
 話に聞く限りじゃエンジは学校でもそれなりの成績で、所謂優等生に属すタイプのようだ。こいつの学生生活とはほとんど縁がないから確かめようもないが、多分、おそらく、そうなのだろう。
 だから担任も、優等生に見合うレベルの学校を紹介した。それだけの話だ。そしてエンジは馬鹿ではないから、我が家の状況からして私立校なんかに通うのは到底無理だということも分かっているはず。

「……お前、馬鹿じゃねぇのに今日は珍しく食い下がるな」
「考えがあるからさ。その学校、特待制度がある。A特待取れれば、入学金も、三年分の授業料も設備費も免除。返還義務なし」

 昔から変に切れるガキだなとは思っていたが、考えたな。学費がネックなのだから、それがすべて免除になるのなら俺の考えも変わる、と思っているのだろう。「それで?」と俺は先を促す。

「もちろん制服代とかはかかってきちまうけど、その辺は高校入ったらバイトするつもりだし、追々返す。だから、特待の枠に入れたら通わせてほしい」

 進学校の特待ねえ。俺にはさっぱり縁がなかったから実感なんてあったもんじゃねぇな。
 カレーを食べ終え、口の中いっぱいに広がった辛みをグラスの中の水を飲みほして押さえる。エンジは俺の様子を窺っている。こればかりはいくら普段態度がでかくても自分の一存では決められないことだ。一応意見を求められているらしい。

「で? 取れんの、特待」
「へ? あー、無理じゃないと思うけど」
「んな半端なこと言ってんじゃねェよ。交換条件だ」
「交換条件?」

 エンジが首を傾げて目を丸くする。

「必ずその枠に入れ。それなら残りの制服代だの何だのは仕方ねェから工面してやる。返さなくていい。ただ、落ちて公立行くってなったら俺は一銭も出さねぇからな」
「言ったな! 後でナシとか言うんじゃねぇぞ! 今聞いたからな、返さなくていいって!」
「おう、男に二言はない!」

 表情は一変。エンジはにやりと笑って皿の中のカレーを平らげた。俺の皿もついでに持って流しへと向かう。腕まくりをして洗い物を始めるその背中を見て、多分こいつはやる、と確信めいたものを感じる。まあでも、これくらいの方が張り合いが出ていいだろう。
 しかし、いつからこんなに辛くなったんだ、こいつの作るカレーは。





 エンジは最初、とかく気持ち悪いガキだった。
 妙に聞き分けはいいし、大人を困らせることを知らない、子供らしくない子供。こいつの出自を考えりゃ当然だ。でかいお屋敷の跡継ぎだったんだから。
 金目当てでエンジを攫ったのに、エンジは屋敷に見放され、なんだかんだで俺が面倒を見ている。父親を始めて早十年。早い、早すぎる。
 そして、そんなエンジを見ているとふと思うこともある。生まれているのならエンジとそう年齢の変わらないだろう、俺の本当のガキのことを、思い出す。
 その女とはかなり長いこと付き合っていた。女は家庭的で料理も上手かった。何よりも、俺の好みの女だった。気が強くて、とびきりの美人だった。ただ、運悪く妊娠したというので捨てた。
 十年以上も前のことだ、俺もそれなりに若かった。お互い楽しめりゃそれでいいだろうと考えていた俺にとって、ガキなんてのは騒音をまき散らすただの荷物でしかない。相手が好みの女であることと、その荷物とを秤にかけて、結局荷物を受け入れることは俺にはできなかった。
 最初にその荷物の存在を思い浮かべたのは、いつだったろう。

『とう、さん』

 と、物分りの良すぎるガキが、言い出した頃だったか。それになることが嫌で女と子供を捨てたのに、エンジにそう呼ばれてもそんなに悪い気はしなかった。
 ああ、俺は今こいつの父親なのか。と。そんな当たり前のようで、そうじゃないことを、俺はひどく自然に受け止めた。
 あの山道をひとりで下りて、家まで帰ろうとしたガキだ。物分りが良くて聞き分けがよくて、あの公衆電話に置き去りにした俺の言う事を素直に聞きやがったガキだ。俺がこう思う資格なんてないんだろうが、思ってしまった。
 ――どうしてこいつに誰もいないんだ、と。
 そう考えるようになってわかった。俺はガキを許容できるようになったわけではないと。あくまでも、エンジだったから生活を維持できているのであって、他の誰かの頼みなら断るし、他のガキなら首を絞めて殺していたかもしれない。俺にはエンジの父親もどきはできても、他の子供の父親になんてきっとなれなかった。
 エンジはあの約束以来かなり勉強時間を多く取っているらしく、勉強している姿を見かけることが多くなった。これまでそうお目にかかる機会のなかったものだ。少し新鮮でもある。

「エンジー、腹減ったー」
「それが仮にも父親の発言かよ……」
「ほう、俺に料理をさせたい、と。よしわかった、これまで封印されていた親父の料理をご披露しよう」
「結構です!」

 俺が家事をまるでできないことは、一緒に暮らしてきたのだから誰よりもわかっているはずだ。
 だからこそエンジはため息交じりで立ち上がる。どうやらある程度できているらしく、あとは温めるだけなのだという。
 でかい鍋を火にかける。

「今日はハヤシライスにした」
「何でもいいけど、代わる代わる煮込むのな」
「安上がりで大量に作れて味もそこそこなんだからうちには必要な料理だろ。米の消費量は多いんだし」
「そうですねえ」

 あと作るの楽だし、とエンジは付け加えた。やってもらっている以上文句は言わないが、十年俺と暮らしてきて、いったいどこでこのしっかりした思考を培ったのやら。
 意外と俺がしっかりしているのかもしれない。むしろその線が濃厚か。

「あ」

 鍋の中身が焦げ付かないようかき回しながら、エンジが声を上げた。俺はちょうどテレビの電源を入れたところだった。

「父さん、三者面談の案内来てんだけど」
「無理。つーか嫌」
「だよなあ。言っとく」

 エンジはこういう境遇のガキだが、保護者会だの授業参観だのを俺に黙っているガキではない。一応俺にお伺いを立てる。
 俺は一度もそんなものに顔を出したことはないが、親子の会話は一応成立してんだしいいだろう。

「勝手に二者面談やれよ。親の了承得て志望校決めたって言っとけ」
「わかった」

 下手に俺なんかが口出しするより、勝手にいろいろ決めてもらった方がエンジも気が楽だろう。俺は一応話を聞くだけでいい。
 できるガキは育てるのが楽でいい。ただ、できるガキには金がかかるというのが鉄板みたいだが。

「勉強、捗ってるのか?」

 ふと思い立って、たまにはそれらしい会話もしてみるか、と言葉を投げかける。
 鍋の前に立っていたエンジは目を丸くして一度こちらを見て、それから嫌な笑顔を浮かべた。

「入試の費用と制服代、調べて教える」
「……お前、その性格の悪さはどこで拾ってきやがった。拾い食いすんなっつったろ」
「何が拾い食いだよ。アンタに似たんじゃねぇの」
「俺はそんな性格してない」
「自分の胸に手ぇ当ててみろ。嘘っぱちもいいとこだ」

 ……腹が立つが、そろそろ本当に金の問題を考えなければならないらしい。
 金を手に入れるために攫ったガキが金食い虫になるなんて誰が想像する? こいつを引き取って育てようと思った当時の俺はどうかしていたらしい。
 溜息交じりでテレビのチャンネルを変える。温まってきたハヤシライスの香りで腹が鳴った。





もう準備する! ごめん点呼どん!



タっくんは心を許してる相手にはゲロ甘だなと思った。
なんだかんだでこの人真紘とかみのりのこともすごくかわいがってるので、エンジ君にもそれだけの愛情を注いでいるものと思う。こっちが手さぐりなのにエンジ君が近づいてくれる分やりやすいんだと思うし。
これが樹理だったらきっとうまくいかないだろうなと思う。


もう準備します、すいません点呼どん。
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2012.01.09(Mon) | IF世界 | cm(0) | tb(0) |

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