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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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きみに遺す物語

『これからフライトか。体平気なのかよ』

 旧友――芹沢 大和は電話の向こうで、珍しく心配そうな声を出している。それがなんとなく気色悪くて、俺は笑った。

「平気だよ。そっち着いたらとことん寝るから。面倒よろしく」
『ガキの面倒はついでみたいなモンだからな、任せとけ。俺はやらないけどな』
「はは。葉山後ろで怒ってんだろ」
『心配無用。お前のガキの話、あいつには通してないから』
「お前なあ……。簡単な話くらい通してやれよ。可哀想だろ」
『サプライズって奴だろ。そっちのが面白そうだしな』
「へーへー、然様でございますか」

 ヤマトは相変わらずだ。葉山との夫婦生活も、随分板についている。そりゃもう子供がいるんだから板についていないと困るわけだが。
 
「――それじゃ、もう切るぞ。着いたらまた連絡すっから」
『了解。気ぃつけてな』
「ん、さんきゅ」

 携帯の通話を切る。その瞬間にくらりと眩暈に襲われて、膝の力がかくんと抜ける。
 俺の右手を弱い力で握る樹理が、不安そうな瞳でこちらを見上げる。金色の髪、淡い緑色の瞳。彼女の忘れ形見。彼女の面影を宿した小さな命。俺はこの子にもう二度と不安な思いをさせてはいけないのだ。今だって樹理はきっと、今にも俺がこの手を離して一人で国へ帰るんじゃないかと思っているはずだ。幼かったはずの彼女が、少しだけ大人になって、樹理に呪いを与えた。恐ろしく純粋な呪い。湧き上がる思いに、彼女は正しい言葉を選べなかった。知っている言葉で、樹理に伝えた。お父さんの困ることはしちゃダメよ、と。それが樹理の小さな心にどう響いたのかは、わからない。弱っていく母親が、最後に自分に託した言葉。それをこの小さな子供が、どう噛み砕いたというのだろう。
 
「……だいじょうぶだよ、樹理」
「ほんとに? だいじょうぶ、おとうさん?」
「大丈夫だから。ごめんな」

 ふわふわの髪を軽く撫でてやる。今にも泣きそうなくせに、その若草色の瞳は頑なに涙を流そうとはしない。樹理の手を握り直して、取りあえず近くのベンチまで移動することにした。大丈夫と口では言うものの、こうも頭痛と眩暈が酷くてはかなわない。電話をする数分前にタクシーで空港についたばかりだった。空港の中でもいいのだが、中は中で人が多くて頭痛がひどくなりそうだった。外ならまだ人の煩わしさは解消されるだろう。
 ここ数年で、立て続けに人が死んだ。まず、俺の両親。旅行先で事故に遭ったということで、俺に知らせが届いたのは随分後になってからだった。彼女より先に親が逝くとは思っていなかったから、そりゃあまあ、かなりのショックがあった。相続だとか、諸々の手続きのために帰国して、なんだかんだと面倒な法手続を終わらせてこっちに戻った頃には、もう論文を仕上げに掛からないとまずい時期に差し掛かっていて、ほとんど寝ないで研究やら論文やらに勤しんでいた。それでも彼女と樹理を放っておくわけにもいかないから、できるだけ時間を作って会いに行って。
 彼女が亡くなったのは、論文を提出する一か月前のことだった。彼女については分かっていたことだったが、それでも、胸がきりきりと、未だに痛む。彼女に何をしてやれたか、何を与えてやれたのか、思いは尽きない。そこからがまた怒涛の日々だった。論文と並行して、樹理を日本人にする手続きを済ませなければならなかった。俺は留学生という身分で、その上国にいた両親は他界している。書類の手続きと論文とに追われて、論文は無事提出できたが、手続きが無事完了したのはほんの数日前のことだ。
 いくら寝ても疲れはとれないし、頭痛も酷い。以前は勉強に加えてバイトもしていたが、両親が遺してくれたものもあって、バイトをしなくてもよくなったのはいいが、それでも精神的な疲労は段違いに増えていた。だからってそんな姿を樹理に見せていい理由にはならない。
 空港の建物から少し離れたところにあるベンチに樹理を座らせ、隣に腰を下ろす。必要な荷物は全部芹沢の屋敷に送ってあるから手荷物自体は少ない。眉間に手を押し当ててみるけれど、そんなことで解消される頭痛なら今こんなに煩わされてはいないだろう。ここまでの体調の変化は珍しい。高校の頃は何でもかんでもやりすぎてすぐぶっ倒れていたが、こっちに来てからはそれじゃ本末転倒なのだと理解した。無茶なこととはしばらく距離をおいていたからその反動かもしれないし、もしかすると過労で何かの病気に罹っているのかもしれない。医者に診てもらっていないから何とも言えないが、全部向こうに着いてからだ。樹理は体が弱いから、俺が臥せっていてはまずい。向こうに着いたら早いところ医者に診てもらおう。これまでの疲れは回避しようがなかった。仕方ないものだった。

「……樹理」

 ふわふわとやわらかい金糸の髪を梳くように、小さな頭を撫でる。ベンチに座って足をぶらぶらさせながら、樹理は大きなペリドットの瞳を俺に向けた。
 これからはふたりだけで生きていく。たったふたりだ。俺が望んだ、彼女が望んだ、家族になることを選んだ、この小さな命を何があっても守り抜く。それしか俺が彼女にしてやれる恩返しはないのだから。何があっても樹理の傍には俺がいる。樹理をひとりきりにすることだけは、絶対にしない。

「まだ時間あるからな。そこで飲み物買ってくるよ」

 ベンチの前、そこそこ車通りのある道路の向こうに見える自販機を指差した。
 わざわざ樹理を連れて行くほどの距離ではない。充分目に入る距離だ。

「樹理、ここで少し待っててな」

 ぽん、とまた樹理の小さな頭に手を置いた。樹理は、うん、と頷く。
 少し離れた横断歩道を渡って、通りの向こうの自販機で適当な飲み物を二つ買う。
 後は今辿った道を同じように辿るだけだった。
 歩道の信号が青に変わったのを確認して、歩き出す。

(―――あれ……?)

 地面がぐにゃりと曲がった気がした。地面はアスファルトのはずなのに、ずぶずぶと泥のように吸い込まれていきそうで、ぐっと目を瞑って開くと、視界までもがぐるりと渦を巻いて見えた。とても立っていられなくて、がくりとその場に片膝をつく。手から力が抜けてさっき買ったばかりの缶がふたつ、ころころと道路を転がっていった。でも、そんなものを追いかけている余裕すらなかった。冷や汗とも脂汗ともつかない、嫌な感じが全身を襲う。樹理のいる方向を見ると、樹理はさっきまでと同じように、ベンチに座ってぶらぶらと足を揺らしている。ああ、早く戻らないと、樹理が待ってる。
 ゆっくりと立ち上がる。黒いコートが汚れてしまったが、そんなことはどうだっていい。またずきずきと頭が痛む。樹理のもとへ戻るために一歩踏み出した時、さっきとはまた違う衝撃が全身を襲った。
 何の音も聞こえなかった。ただ、全身が強い力で何かに弾かれた。体が宙に浮くのがわかった。次に地面にたたき落とされて、がつんとまた頭を打った。痛みは感じない。



(―――あ、れ、……)



 でっかいワゴンがすげえスピードで走り抜けていく。歩道用の信号はちょうど赤に切り替わった。
 信号無視されて突っ込まれたのか。事実は認識できるが、だんだん理論的な思考ができなくなる。
 液体の中にいる。
 さっき買った飲み物の中にいる。
 飲み物はさっき落として転がした。
 でも液体の中にいる。
 俺から流れた、液体の中にいる。
 動けない。
 動かない。
 眠い。




 目の前で、樹理が待ってる。




「ッ、づ、う、あ、あぁああ……」

 弾けた。
 もう何も考えようとしなかった脳がフル回転を始める。樹理が待ってる。目の前で待ってる。死ねない、死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない、樹理をひとりにさせるわけにはいかない、でも、体が動かない、樹理の名前を呼びたくても、もうこれ以上溢れなくていい血液が喉から出てきて声にならない、死ねない、俺は樹理を残しては死ねないんだよ畜生ッ、なんで俺、こんな所で、樹理の目の前でくたばろうとしてんだよ、俺は樹理に、嘘しか教えてやれねえのかよ……!!!
 
 樹理を一人にはできない、俺が、傍にいてやらないと。俺しかいないんだ、俺しか、あの子の味方をしてやれる奴はいないんだ。
 他の思考は全部切り捨てた。ただそれだけの思いで、動かない体を樹理に向かって這わせた。どんな、恐ろしい光景だったろう。血まみれの、全身強打で動けないはずの男が、金髪の子供に向かって這いずっていくというのは。 

 俺しかいないんだ、俺がこれから母親の分も愛してやるって決めたんだ。俺はあいつとこの子を見つけるためにこっちに来て、探してたものを得たんだって本気で思ったんだ。
 なのに俺は、俺は、俺は、

「…………おと、さん?」

 きょとんとした声が俺を呼び、彼女によく似た、ペリドットの大きな瞳が俺を見下ろす。
 樹理、と何度も何度も呼んでいるつもりなのに、掠れた声にすらならない。伸ばしているつもりの腕も地面から1mmも動いていない。
 目がまだ開いているのはわかる。
 でも、閉じる力もなさそうだ。そんな余力があるなら、樹理の名前を呼んでやりたい。もう一度頭を撫でて、抱きしめて、俺は、ローラはちゃんとお前を心の底から望んで、本当に本当に愛してると伝えて、それから、それから。
 何度も考えて、何度も「じゅり」と呟いて、声にならなくて、全身が冷えていくのが、ありありとわかる。足掻いたって無駄だってわかっている。あの衝撃で痛みを感じなかった時点で、俺の身体はあの時死ぬ準備を一瞬で整えたんだろう。もうこの体は死んでいる。生きているのは思考だけだ。樹理をひとりにできない、俺の執念だけがほんの少しだけこの頭を長らえさせている。
 俺なんでこんなところで死ぬんだよ、なあ、俺死んじまうのかよ、教えてくれよ、あんただったらどうする? 目の前で親父がくたばるとこ、ガキが見てんだよ。あんただったらどうする? あんただったらきっともっとずっと鮮やかに、救ってくれるんだろうなあ。ガキだった俺に夢見させたみたいに、あの満月の夜みたいに。返事なんて誰もくれないことは、樹理が生まれたときからわかっていたことなのにな。

「………じゅ、ぃ、……」

 樹理、ごめんな。ここでお前をひとりにしちまう。本当の本当に、お前をひとりきりにさせちまう。
 どれだけ俺を恨んでくれてもいい。呪ってくれていい。憎んでくれていい。それはこれまでお前に本当に何一つしてやれなかった俺が父親としてできる最後の、たったひとつのことだと思う。
 ローラが残りの命をすべて託して、俺がガキの頃からの夢と願いと、全部込めて、お前を育てていこうと決めた。だからお前には、どんな感情を俺たちに抱いてでも、生きてほしいよ。辛いこと全部忘れて、その方がお前が生きやすいならそうすればいい。本当は負の感情を媒体にしてでも、俺たちのことを覚えていてほしいけど、お前が生きて、ローラが見れなかったものを見て、俺が見せてやりたかったいろんなものを自分で見てくれるなら、それでいいよ。
 愛してる。この世にこんなに大切なものができるのかって本当に本当に思ったんだ。俺たちはどこにいたって、誰よりもお前を愛してるよ、樹理。
 どうしてこんな大事な言葉を、声にして伝えてやれないのか、もどかしくて、悔しくて、悔しくて悔しくて、涙が頬を伝ってアスファルトに流れたのがわかった。
 


 目を閉じることができないまま、世界が暗闇に沈んだ。
 




流風はでっかいワゴンにぶつかられて吹っ飛ばされて樹理の目の前で死んでる。
でもきっと樹理は覚えてない。誰か周りの大人が、それはお父さんとは別の人だって教えたんだといい。
血まみれの親父が自分の方に這いずってきてそのまま死んだとか覚えてたらトラウマだろ。
本当は流風はもう死んでる体で樹理のところちゃんと戻ろうとした、っていつか思い出したらいいな。勝手に置いて行って勝手に死んだんじゃなくて、死ねないからちゃんと戻ってきたんだ、ってグロい画像でもいつか思い出してほしい。


流風はやっぱりいつだってケレスさんをヒーローだと思っていて、最期の時だって、きっとケレスさんなら鮮やかな答えを出してくれるって思ってる。
本当に本当にこの流風は可哀想な。恨まれるしかできることがない。自分の意思でどうにかなることなら(バトロワとか)、いくらだって足掻いて樹理と一緒に生き残る道を選ぶけど、不可抗力なら仕方ない。
流風は樹理が生きやすいように生きてほしい。父親なんていなかったことにした方が生きやすいなら、それでいい。生きてくれるなら、それでいい。幸せに生きてほしいとか、そんな願いを持つことはおこがましいし、願える立場にない。
でも、流風の気持ちなんて誰にもわからない。何を思って流風が死んだのかなんて、推し量ることしかできない。
そこをケレスさんはちゃんと汲んでくれてるのから、父親にならないんだよな。


樹理がいると無双モードになれる流風がこうやって死ぬと、いろいろ思うところがありました。
ケレスさんが樹理を育ててくれてるって流風が知ったら、きっと号泣して喜ぶと思います。泣きながら謝って、喜ぶと思う。
やっぱり流風には一生ケレスさんは超えられないと思います。先に人の親になるから成長はしてるんだろうけどね。



さて、お風呂入ろう。
財布とお揃いのパスケース買ってうきうきしてます。私の財布とパスケースは世界一可愛い。




(追記)
うちの穂積なんですが、ちょっと暗い設定つけようかなあと思ってたけどうまくいかない。
恋人が死んでるとかはありきたりだし、今のところ一番いいなと思ってるのは、兄貴の嫁さんと不倫中みたいのwwwwww
気が付くと人のもんばっか欲しがってる嫌な男だったらいいなってちょっと思ってる。
基本的に年上好きだと思う。キンキの「スワンソング」が似合うようなのだといいなあ。

よし、寝る。
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2012.05.12(Sat) | IF世界 | cm(0) | tb(0) |

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