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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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わるいおとながすき



 穂積先生のかっこいいところを、クラスのみんなも、部活のみんなも、あまり知らない。


 政経の担当をしている渡会穂積先生は、とても飄々とした人。よく言えばフランク、悪く言えば不真面目? そんな人だから、生徒からはよく懐かれる。ユリ高に勤めて五年になるけどまだ担任を任されたことはない。でも部活の顧問はやっている。私の所属する、弓道部の顧問の先生だ。弓道部でも先生の評価は変わらない。軽くてしゃべりやすい、若い先生。世界史の奥出先生とは同い年同士とは思えないほど、対極にいるようなふたりだ。
 穂積先生と初めて会ったのは、私が中学に入学したばかりの頃。ユリ高に勤め始めたばかりの先生が、帰るのが遅くなってうちの旅館を利用したのだ。終電を逃しそうなユリ高の先生を泊めてあげるのは、うちも風間のところもやっている。でもどの先生も大体綺麗で新しい風間旅館を選ぶので、うちに来る人なんて本当に珍しかった。次はもうきっと来ないだろうと思って、お父さんお母さんも張り切って過剰なくらいのサービスをしていた。
 穂積先生はまだ若いのに、鞄とか、小物がすごくきれいで洒落ている。多分上等な革でできているんだろうそれは、使い込んでいるらしくこなれた感じがして、見た目に似合わず大人なんだなという印象を受けたのを覚えている。 
 その日、先生の布団を敷きに部屋を訪れると、テレビも点いていない静かな部屋で、先生はひとりで本を読んでいた。よく見るとそれは、誰でも知っているような流行りの少年漫画だったので、漫画好きなのかなと思って声をかけた。

『それ、好きなんですか? 学校でもすごく流行ってるんですよ』

 私の言葉に、先生はあまり興味なさそうに「ふーん」と答え、ぱらぱらページを最後までめくるとテーブルに置いた。

『生徒から没収したんだけどさ、よくわかんねえのな。初めて見たわこんなん』

 それが私の中では未だに衝撃的なやりとりで、穂積先生がこういったサブカルチャーの流行にすごく疎いのだと悟った瞬間だった。学校でも、そのことを知らない生徒は多い。城崎先生なんかはとても詳しくて生徒と盛り上がっているし、奥出先生も一応世間話程度にはついていけるみたい。でも穂積先生は、五年経った今でもその手の話は遠巻きに見てるだけ。学生時代に漫画なんてたくさん読んでそうだけど、そうじゃないんだなと私にはわかった。学生時代どころか、これまでの人生でまるで興味がなかったんだなということもわかった。穂積先生は、見た目と中身のギャップがすごい。



 穂積先生は週に一度くらいの頻度でうちに泊まるようになった。浴場の掃除とか、廊下の雑巾がけとかも手伝ってくれる。私たちは先生に、ゆっくりしてくれていいのに、と言うのに、先生は「やったことないから楽しい」とか言いだして、本当に楽しそうに手伝ってくれる。そうこうして一年弱が経った頃、いつも世話になってるからお礼がしたい、と先生は私に弓を教えてくれた。
 日曜日のユリ高、誰もいない弓道場に入れてもらった中学生の頃の私は変にどきどきしてしまっていた。先生と出会って、いつかここに入って先生の授業を受けたいと思うようになっていた、憧れの学校。その場所に足を踏み入れているなんて。冬に入りたての道場は底冷えしてすごく寒い。先生は肩をすくめながら隅にあったストーブを点け、それから「ちょっと待っててな」と言い残してその場を離れた。学校だし、なんかいろいろとあるんだろうと思いながら所在なく道場を見て回って先生が来るのを待っていると、数分して先生が戻ってきた。
 きちんと道着を着て、いつもよりずっと凛と締まって見える。先生は背が高くて肩もしっかりしているから、きちんと着るとすごく綺麗だった。しっかり着付けもできていて着こなしていることにも驚いたし、とても似合っていたことにも驚いた。コメントができないでいる私に、先生はばつが悪そうに笑っていた。

『俺が道着着るとみんな腹抱えて笑うんだけどさ、はるちゃんは笑わねえのな』

 みんなが笑う理由がわからないです。こんなに綺麗に着てくれたらきっと袴だって嬉しいと思う。
 そんなこと言えなかったけど、私の表情で先生は何か察してくれたらしい。
 それから先生は、実際に弓を引いて見せてくれた。
 先生の表情は、今まで一度も見たことがないくらい真剣で、真っ直ぐで、鋭くて。
 先生の腕が弓を引き絞って、その矢の先を的の中心に定める。放たれた矢は微かな曲線を描いて、吸い込まれるように的の中心に刺さっていった。
 私は感動してしまって、子供みたいに、馬鹿みたいにすごいすごいとはしゃいだ。先生は満更でもなさそうだった。

『はるちゃんは純粋でいいねえ。射会以外で人前で弓引くの好きじゃねえんだけど、はるちゃんなら今までになくやりやすい』

 その時は意味がわからなかったけど、その後私がユリ高に入学して弓道部に入学してからも先生はよくそう言うので真意を聞いた。
 なんてことはない、道着のことと背景は同じらしい。生徒や、母校の弓道部の知り合いは先生が弓を引くと、その真面目な表情を茶化したり笑ったりする人が多いようで、気が散るから普段試合以外では人前で弓を引くことはほとんどないのだと言う。私しか道場にいない時はよく引いているから、私としては実感があまりなかったけれど、先生が私を他の生徒と違うところに置いていてくれている気がして、嬉しかった。
 穂積先生のそんな面を、クラスのみんなも、部活のみんなも、きっと知らない。確かに飄々としていて軽くて、そういう部分ももちろんあるけれど、たまにどこか真剣な表情を見せる。それは道場でしか見たことはないけれど、まるでそれしかないみたいに、縋るように、先生は弓を引く。それを見せてもらえるのが私だけなんて、そんなの、勘違いするに決まってる。そんなの、好きになってくださいと言っているようなものじゃない?




「おー、はるちゃん。おはよ」

 約束の時間、うちの玄関先。朝いちばんに聞く先生の声。まだ少し眠そうだけど、朝ご飯はちゃんと食べてくれたのは知ってる。私はあんまり喉通らなかったけど。

「おはようございます、穂積先生」
「いつも思うけど私服かわいーよね。大学デビュー準備ばっちりじゃん」
「そんなことないです。私なんかぜんぜん」

 穂積先生と出かけるのは初めてのことではない。文化祭の買い出しだとか、何かと休日に二人で出かけるようなこともあったりした。もちろん弓道部の合宿とかで私服を見せる機会もある。先生が私服が可愛いと言うのは、頑張って可愛い服ばかり着ているからだと思う。もちろん、あまりひらひらしたものは動きにくいし印象も悪くなりそうだから、媚びすぎない程度には頑張っている。今日は上を茶色、スカートを白できちんとまとめてみた。
 嬉しいと思う反面、先生みたいな大人の男の人には、私の悪あがきなんて全部お見通しなんだろうな、とも思う。ガキのくせに背伸びして、とか、思ってるのかな。

「一応制服にしといた方がよかったかねえ。ま、俺は眼福なんでいいけどね」

 行こうか、と先生が駅へ向かって先を歩く。私も、その後を追いかける。
 一緒に歩いてたら、教師と生徒には見えないかな。そのまま大学に入ったら、恋人同士に見られたりするかな。仲のいい先輩後輩くらいにしか見えないかな。
 先生と出かけると、いつもドキドキする。私だけだってわかってる。私と先生は、絶対そんなことにはならない。私は、頑張っても隠しきれないくらい先生のことが好きだけど、でも、先生には変な噂があることも、知っている。

(………“生徒キラー”)

 男子が先生を茶化して呼ぶとき、そう言ったりする。最初はただの悪ふざけだと思っていた。よくある、若い先生を茶化して遊ぶやりとりの一環なんだと思っていた。
 でも、卒業した生徒会の先輩が、日曜に先生と一緒にいるところを、ある日たまたま見てしまった。少し離れた駅のショッピングモールで、楽しそうに一緒にアイス食べながら歩いていた。先輩、彼氏いたはずなのにな。全然考えられないことではなかったから、思ったよりもショックは大きくなかった。先輩、綺麗な人だったし。ショックを受けるどころか、先生は生徒もそういう対象で見てくれるのかと希望すら抱いた。
 それが打ち砕かれたのは、それから三か月ほどが経った日のこと。弓道部のOGの先輩が道場に遊びにきてくれた時のことだった。先輩は先生に話があるからと道場に残って、現部員はみんな帰宅。私はたまたま道場にサブバッグを忘れてしまって、取りに戻ると、倉庫の奥で物音がするので見に行った。そこから先はお約束で、微かに開いていた扉の隙間から覗き見ると、倉庫の隅で先生と先輩が、キス、していた。先輩、彼氏と結婚考えてるって言ってたのにな。
 そこまで考えて私はわかった。先生は生徒を対象にしてるんじゃなくて、彼氏持ちの子としか遊べないんじゃないかって。先生のこと好きな生徒は私だけじゃなく他にもいるし、卒業式の度に先生が告白されてるのも知ってる。でもその子と付き合ったって噂は聞いたことがない。だから、先生は、自分のことを一途に思ってる子とは、付き合えないんだ。先生が遊びなのか本気なのかはわからないけど、彼氏持ちの子じゃなきゃ、先生の目にはきっと、映らない。
 じゃあ私はダメなんだ、と悲しくなったのはもう随分前だ。私は先生のことばっかり、ずっと前から好きだ。先生が何とも思わないなら、どれだけ頑張って背伸びしようとも自由だしやりたい放題だ、と前向きに考えるようになってからはだいぶ違うけど、それまでは沈み込んだ時期もあった。
 だって、先生の趣味がそうでも、私の前でだけ弓を引いてくれることに変わりはないんだから。私が特別なら、もしかすることだってあるかもしれない。

「せんせい」
「ん? どした?」
「明日から英語教えてくれます? 先生の母校の英語、すっごく難しいんですよ。一回見てみた方がいいです」
「あーじゃあ俺無理だわ。俺現役じゃぜってー受かってねえもん」
「もう、そんなのが聞きたいんじゃないです!」
「いやいや、マジな話さ、うちの英語のレベルならちゃんと英語の先生に教わんなさい? 茜せんせーという力強すぎるのがいるでしょ」

 そんなのわかってる。穂積先生は専門じゃないってことくらい、承知の上だ。

「……穂積先生がいいです」

 いつも笑われて茶化されてばっかりでも、性格の割に娯楽に興味がなくても、弓道にしか真剣になれなくても、生徒キラーでも彼氏持ちキラーでも、なんでもいい。私はそういう先生をずっと見てきたから。だから、私は、穂積先生がいい。
 先生はすぐに、声をあげて笑った。

「ませてんねえ、はるちゃん! いやはや、教師冥利に尽きるというか、政経担当で残念っつーか。お役に立てるよう頑張りますよ」
「はいっ、頼りにしてます! 先生英語もできるの知ってるんですからね」
「できるってほどじゃないっての。あんま褒めるとつけあがるからね俺」
 
 笑う先生に小走りで追いついて、隣を歩く。 
 どうなりたいなんて、高くは望まない。先生とこうして一緒にいられるだけで、可愛がってもらえるだけで、今は充分なんだから。





穂積のいいところを考えるのは苦痛。
でも、晴佳はいいところとか悪いところじゃなくて、穂積が好き。
なら穂積そのものを詰めてったらいいじゃない、と思った。


穂積は愛されたがりの皮をかぶった愛したがりな人だと思う。
愛に飢えているみたいに見えるけど、そうじゃない。好かれるには好かれるから、愛されないことに悩んだりはしてない。自分が誰かを愛することに関しては大きくセーブをかけてる。自分は病気だから彼氏持ちしか愛せないし、相手は彼氏持ちだから心の底から本気にはなれない。
なので、「これは俺のもの!」って確信していられる愛し方はできないし、趣味だのなんだのも結局穂積には弓道しか真っ直ぐになれるものがない。その弓道だって茶化されたりするし、自分のままで取り組むことがあんまりない。
穂積にとって晴佳の何が特別なのかって、穂積の意外なところもダメなところもかっこいいところも、そのまま受け止めてくれるところ。ついでに言うと好意をもって受け止めてくれるところ。
晴佳って穂積にとっては、手を出せないとか出さないとかじゃなくて、出したくない存在なんじゃないかな。
このままで十分だからこれ以上はどうにもなりたくない。というのを本人もわかってなくて、無意識で思ってるといい。


日曜ドラマの「とんび」が激しく俺得な気がするので録画するよ。
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2013.01.08(Tue) | ユリ高 | cm(0) | tb(0) |

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