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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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きゅうくつ な いえ



「気分が優れませんか」

 よく通る声。その声で拓海は目を開く。
 目の前には美しく活けられた花。色の取り方も、空気も、佇まいも、申し分ない。
 眉間を親指でぐりぐりと回してから一度目をしっかり閉じて、それから開く。広い和室にいるのは自分と、目の前の少女だけ。

「いや、少し疲れてるだけだ。悪かったな」
「いえ、お疲れでしたら早めに休まれた方がよろしいのでは?」
「平気だ。ここでへばったらあいつが何言うかわかんねェだろ」
「そうですね。だから程々にしとけって言ってるじゃないですか、飲みすぎ吸いすぎなんですよ、少しは自分の年考えたらどうですか? ……難なく想像できます」
「お前も容赦なくなってきたな」
「これはお母様譲りでしょうね」

 にこりと微笑みながらそう言う、目の前の少女の姿。長い黒髪はハーフアップにしており、藤色の着物を綺麗に着こなしている。華美な装飾品などなくても美しさが十分ひきたつ佇まい。
 何よりも目を引くのは、透き通るアイスブルーの左目。右目は拓海と同じ黒。その西洋的で幻想的な雰囲気に、黒髪が和の要素を足し、不思議なバランスが保たれている。
 そのどれもが母親に生き写しだ。黒髪も、青い瞳も、白い肌も、その辛辣な言葉も。彼女の言うことは間違っていない。

「だろうな。紗央に生き写しだよお前は。――みのり」
「お父様にそう認めていただけるなんて、極上の褒め言葉です」

 拓海の知るどの世界のみのりともかけ離れた容姿。それは環境に依存するものなのだろうが、ここまであからさまに違うキャラクターとなったのはこれが初めてだ。
 みのりはいつも、紗央の娘として生まれる。拓海と結婚して生まれる最初の子供は必ず娘だし、紗央が拓海ではない他の男と結婚して生まれる最初の子供もまた、娘だ。どの場合でも彼女は娘に同じ名前をつける。「みのり」という、ひらがな三文字。容姿もいつも変わらない。母親譲りの白い肌、黒い髪、片方だけ青い瞳。性格は大概お転婆で、天真爛漫。芹沢家という場所がみのりの成長に大きく影響を与えたことは想像に難くない。
 紗央と結婚してすぐに父親が病死した。拓海は芹沢を出ていないため、当然長男として家を継いだ。自分の後を誰が継ぐかどうかは些末な問題であって、やりたい奴がやればいいと思っている。自分だってこの家のためにここにいるわけではない。もっと大切なものを守るために、今も試行錯誤しているだけだ。しかし一応当主として、子供に稽古をつけないわけにはいかない。どの世界のみのりよりも学習能力の高いこの世界のみのりに、指導らしい指導をする機会は最近ぐんと減ってしまった。子供らしくないといえばそうだが、まるっきり可愛くないというわけでもない。自分の考え方もおそろしく変わったものだと思う。まあ、環境に依存しすぎたためか、みのり自身の性格には若干の歪みがあるようだが、自分が中高生だった頃を考えればそれも正常な範囲だろうと拓海は思う。みのりに関しては、好きなように生きればいい。こんな家にいるのだから使えるものは使って、好きに幸せになればいいと思う。家に縛り付けたいなんて考え方は少しもない。
 その後一時間ほどみのりと稽古という名の親子の会話をし、部屋から出した。
 特に今日は予定もない。みのりの稽古が終わればあとはゆっくりできる。息をついて、袂に入れていた煙草を取り出し、一本咥えて火をつける。障子の向こうから、「宗匠」と声がかかったのはその時だった。

「稽古は終わってる。入れ」
「はい」

 ほとんど音もなく障子が開き、「失礼致します」と一礼。そこにいるのは芹沢の長男であることはわかっている。障子の向こうの人物は立ち上がり、部屋の中に入るともう一度座って閉める。
 煙草を吸う拓海の目の前できちんと正座をすると、軽く頭を下げた。袴がよく似合うようになったと思う。もともと大きい家の子供だからか、きっとこの立ち振る舞いは生まれついてのものなのだろう。

「稽古終わってるっつったろ。足崩していいぞ」
「吸うなら外か部屋で吸ってくださいって何度言ったら分かるんですか。自室ならともかく、教室に匂いがつきます」
「お前も芹沢なら植物は平等に愛せよ」
「なら蓮だの百合だの乾燥させて紙で巻いたものを作りますので、火を点けて吸ってくださいね。芹沢の愛煙家として、平等に」
「人の揚げ足取るんじゃねェ」
「そういう事いうなら自分の家馬鹿にするのもいい加減にしてください、父さん」

 この小生意気な台詞を言うのが他のどこかの子供なら殴って黙らせるところだが、相手が愛息であれば許してしまう。もうどういう経緯を経てこの家に連れてきたのかは覚えていないが、この家の誰にも外見の似ていない青年――炎而はいつの間にか芹沢の一員として馴染んでいた。年はみのりの二つ上で、拓海が引き取った子なので無論芹沢の長男である。稽古はつけているが、みのり同様拓海は炎而にも家を継がせるつもりは毛頭ない。それがいいと受け入れるのなら話は別だが、それを強要することは拓海の目的とはかけ離れている。最初からこの家に固執する理由などないのだから。
 火のついた煙草を大人しく灰皿に押し付けると。炎而はほっとしたように息をついた。妻である紗央や、娘のみのりも拓海の行動には干渉せずさせたいようにさせている。拓海の弟一家も同じ敷地に住んでいるが目上に干渉などできるはずもない。そんな中で、炎而だけが異質であった。炎而自身が物怖じしないのもそうだが、炎而の言うことなら拓海は大概聞き入れる。それが無茶苦茶な言い分なら黙らせるのかもしれないが、炎而の言い分が的を外れていたことはない。拓海が普段から自由奔放に動きすぎなのだ。

「で? 用件は」

 続きを促せば、炎而は姿勢を正した。そういえば足は崩していなかったな、と思い出す。普段ならば、崩していいと言われた足は遠慮しながらも崩すのに。

「明日、学校のグループ学習で図書館に行くことになりまして」
「ふーん、行きゃいいじゃねェか」
「夕方に稽古が入っていたかと」
「どっかで俺に時間できた時に埋め合わせする。学生は学業だろ」
「ありがとうございます」

 稽古に関わることだから足を崩さなかったのか、と拓海は納得する。炎而は公私混同はしない。稽古中に普通に親子の会話を楽しんでしまう自分とみのりとは違う。
 どれだけの時を一緒に過ごしても、思うことは一緒だ。どう育てたとしても、この子は炎而だ、と。それ以外の誰でもない。
 話はそれだけなので、と部屋を後にしようとする炎而の背に、声をかける。名前を呼んで、呼び止めた。何事かと障子に手を当てたまま振り返る炎而に、追加の指示を出す。

「わかってると思うが、必ず椿は連れて行け」

 その言葉に、炎而はしっかりこちらを向いて正座し直した。

「いえ、やはり俺の学校のことに椿を付き合わせるのは」
「そのための椿だ」
「椿は俺のためにいるわけではないですし、椿にもやりたいことややるべきことが」
「椿のすべきことは、お前の傍に付き従うことだ。年の差があるのは致し方ないが、できるだけお前の時間に合わせさせろ」

 炎而がぐっと何かを堪えたような表情になる。この言いつけをすっかり受け入れているみのりと違い、炎而は違和感を拭えないのだろう。炎而のその優しさは炎而らしさだと拓海は思う。それは炎而の長所であると思うし、親として愛しく思うべき部分であるとも思う。しかし、この芹沢で生きるのなら不要なものだ。使うべきものは使い、使い古したら捨てるのだ。最初の生活のように、古いものを大切に使い続けてもいいことはない。新しいものを取り入れることができるのだから。
 まあ、拓海が次男一家を毛嫌いしているからだろうと突っ込まれてしまうと、それ以上の反論はできないわけだが。「そうだが、だから何だ?」と答えるくらいしかできそうにない。

「お前が椿に負い目を感じる必要はない。お前は俺の息子で、芹沢の嫡男なんだから。お前が話をできないというなら俺からするか?」
「……いえ、自分で行きます」
「そうか」

 失礼します、と部屋を出る前の一言は、入ってくるときよりも幾分か厳しい声色だったように思う。
 また音もなく静かに閉まった障子を見つめながら思う。

(やっぱり窮屈な家だ)





 炎而が離れのベルを押すと、目当ての人物はすぐにやってきて扉を開けた。炎而よりも少し背は低いが、それは年齢差のせいもあるだろう。襟足が少し眺めの黒髪、線は炎而より細い。伏し目がちな目の、少年。今日は稽古がないからか、黒のスウェット姿、つまり普段着だ。

「炎而様、何か御用ですか」
「えーと、まあ。そうなんだけど。入っていいか?」

 その言葉を言うと、相手はいつも露骨に嫌そうな顔をする。好かれていないのだということは炎而とてわかっている。それでも、だからといって父の言うことを真に受けてこの少年を思うようにこき使っていいなどとは思わない。父の言うことは芹沢の一員としては絶対だし聞かねばならないこともわかっている。けれどひとりの人間としては、そしてこの少年の従兄という立場としては、どうにか打開策を見つけたいと常々思っていた。
 少しの間の後、少年は「どうぞ」と扉を広く開ける。

「悪いな、椿」
「ええ、本当に。悪い人です」

 少年――椿の言葉は冗談のようにも、彼の本心のようにも聞こえる。
 玄関で草履を脱ぎ、居間へ上がるといつもの光景に炎而はため息をついた。どれだけ憎まれ口を叩いても、偉そうな口をきいても、椿は椿だ。

「……椿、片づけられないんだから呼べっつったろ」
「炎而様の手を煩わせるほどのことではないので」
「結局俺が片づけるんだろうが」
「誰も頼んでません。僕はこれで十分生活できますから」
「部屋を三日でこんな状態にする奴は生活できてるって言わない」
「なら訂正します。この部屋でも十分寝起きできますから」

 椿はいわゆる、クソナマイキなガキ、に分類される。炎而もそう思うことがよくある。けれどそれは炎而に対してだけであって、他の誰かにこの態度をとっているのを見たことはない。両親にはもちろん、炎而の両親にも、みのりにも。みのりはすっかり父親の方針に慣れきってしまっているらしく、同い年の椿を格下と信じ込んでいるようだ。よろしくないとわかってはいるものの、父親の影響力が絶大すぎて炎而には成す術もない。椿への態度はこれでも、炎而にとっては父親で、思春期であっても嫌いになれない程度にはいい父親だと思っているのである。
 椿は部屋の片づけが苦手だ。それは椿の父も、炎而の父にも言えることで、みのりも片づけるという行為には無頓着である。片づけをさせられるのは大概は家政婦だが、椿はこの離れに人を入れたがらない。両親相手でも嫌がるのに、赤の他人である家政婦などはもってのほかだ。幼い頃から炎而に付き従うように、と拓海に厳命されているからか、炎而だけは渋々中にいれてくれる。そして自動的に片づけ役は炎而に回るシステムだ。椿は片付けなどしなくていいと言うが、この散らかった部屋を見るとどうしても片づけずにはいられない。
 物は少ないはずなのにどうしてこうも汚くできるのか、と常々炎而は不思議に思う。床に散らばった本やら雑貨やらを粗方片づけて、ゴミをひとまとめにすると、ようやく綺麗になった部屋に炎而は腰を下ろした。

「それで、お話はなんですか」
「……明日、なんだけど。グループ学習で図書館に行くことになって」
「……そんなこと、当日に言ってくださればいいといつも言っているでしょう。ですからここ掃除しに来るのやめてください」
「当日になんてできるわけないだろ。タクシーか何かじゃあるまいし、椿にだって学校も用事もある」
「ありません」

 椿は立ち上がって冷蔵庫から烏龍茶のペットボトルとグラスをふたつ持ってきた。椿自身は温かい緑茶や紅茶の方が好みらしいが、自分で淹れるとなぜか不味くなることがわかっている。
 自分の分と、炎而の分と、グラスに一杯ずつ注いで、片方を炎而の目の前に置く。

「僕には学校の用事もその他の用事もありません。炎而様のご要望があればすべてそれに合わせるよう、拓海様に命じられております。炎而様に付き従うことに障害になるのなら、学校にも行く必要はない、と」
「だから、それじゃ嫌だからこうして来るんだろ」
「来たところで変わらないでしょう。炎而様のお節介は結局、僕を不快にしかしません。わかったら拓海様の仰るように僕を好きなだけ使えばいいんです。僕もそのつもりでここにいるんですから」

 そう言われてしまうと反論はできない。前日に来ようが一週間前だろうが、椿の時間を拘束してしまうことに変わりはないのだ。
 椿自身もそれを致し方ないことだと受け入れている。それは異常なのだと、誰に訴えればわかってくれるのだろう。もう長いこと感じている歯痒さに、炎而は拳を固く握った。

「グループ学習ということは、他の方もご一緒ですか」
「ん? ああ、樹理が一緒。他の奴は中央の図書館行くんだ。郷土史調べんだけどさ」
「樹理さん……。僕、あの人苦手なんですよね」
「向こうはそうでもないと思うけどな」
「そんなのわかってます。あの人に苦手な人なんているわけないじゃないですか」

 頭を抱える椿は普段と違って年相応に子供らしい。樹理というのは炎而と同じクラスの女生徒だ。ハーフだということで、ふわふわした長い金糸の髪に若草色の瞳がとても印象的な少女。苦手意識というものがひとつもないその相手を、椿は苦手としていた。どんなに邪険に扱っても傷つかないものだから、どうにもしようがないのだ。炎而も椿に邪険に扱われても特に傷つきはしないから、椿からすれば似たようなものなのかもしれない。

「……わかりました。図書館でお待ちしていればいいですか? それとも正門まで?」
「いや、図書館でいいよ。そう時間はかからないだろうし、終わったら寄り道でもして帰ろう」

 炎而としては労いも込めての提案だったが、椿は眉間に深く皺を刻むと、はあ、とこれ見よがしに大きなため息をついた。

「ご命令であれば、いくらでも」
「お前、それ卑怯すぎ」
「僕の意思でなんて行くわけないじゃないですか。すぐにでも帰って引っ込んでたいのに」
「なら命令で」
「樹理さん同席ならお断りします」
「ちゃっかり断ってるじゃんか」

  父に従うことに何の抵抗も示さない椿の父に比べると、椿はまだ染まり切っていないだけ抗う余地がある。ルールとして仕方なく従ってはいるが、溺れきっているわけでもなく、現状を良いと思っているわけでもない。少しでも蟠りを抱いている炎而にとっては、椿がこの離れに閉じこもっていてくれるだけで助かる部分がある。口、というか、態度は悪いけれども。
 
「可愛くねえなあ、椿」

 それでも、ほんの少しだけ落ち着く。
 当の椿は嫌そうな顔をしているけれど。

「……ほんっと、貴方みたいな人の面倒を見なきゃならないなんて窮屈すぎます、この家は」
「はは、ほんとだな」
「嫡男に笑う資格があるとでも?」
「はいはい、すいません」

 本当に、窮屈な家だ。




シュタゲルートで、
・タっくん芹沢から出ない
・紗央とは見合い結婚
・どこのタイミングかわかんないけどエンジ君は引き取って芹沢で育てる
・みのりも生まれる
・大和は比較的自由にさせてもらってて、ツキ高進学→ルミと知り合う、あまり障害なく結婚
・椿は男の子。性格は本筋樹理みたいな。
・こっちの樹理は女の子。ケレスさんに育ててもらってる。ガチで母親似。天真爛漫。吸収力と諦めの悪さは父親譲り。「エンジー!」「ツバキー!」ってがばっと抱き着く。ケレスさんのことはきっと呼び捨て。
・みのりは高飛車な性格。椿は格下と見下してる。そんなみのりでもどっかで冬二くんと出会って惚れちゃって最後駆け落ちとかしたら胸熱。
という感じ。おいしい。


未来話本筋の炎而くんと椿の新婚話でも書こうかと思ってたんだけどやめた。
芹沢にいてもタっくんは子供第一だな。大和のことは嫌いだから椿は好きに使っていいと思ってる。ルミ死亡ルートの情の深さはどこにやったんだか。
ピクシブで小説ずっと読んでて、上手いひとの綺麗な話を読むと俄然文章が書きたくなるんだな。うまくいかないが。
IFルートを書くときは、タっくんは中井ボイスの青峰、と思って書くようにしてる。

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2013.02.18(Mon) | 擬似親子 | cm(0) | tb(0) |

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