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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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残ったのはいらない希望



 玄関で靴を履きながら、「せんせー」と俺は声を掛ける。
 少し不機嫌そうな「あ?」という疑問符付きの一文字が返ってくるのと同時に靴を履き終え、俺は顔を上げてせんせーと視線を合わせた。

「言っときたいんだけどさ」

 言わないと気分が悪いから。
 こんな気持ちなの俺だけだってわかってるけど、でも言っておかないと、この先気持ち悪いから。

「俺、せんせーのこと好きだわ、やっぱ」

 それ以上は付け足さなかった。もっと言いようはあったのかもしれない。
 だって、今わかる範囲では決して変な意味ではないのだ。
 多分、先生として好きなんだろうし、少し年の離れた兄を見ているような気分でも好きなんだろうし、人として同性として憧れている部分もあるのかもしれない。断定できるのは漠然と自分がこの人間を好ましく思っているということだけで、細かいところは全部憶測。もしかしたら、恋愛感情であるかもしれない(流石にそれは自分でも否定したいけど)。これだけ好きだと思ってるのに、何か人間性は気に入らないとこばっかってのが変な話なんだけど。
 せんせーは、「そうか」とだけ返した。それで十分だった。






 そんなやり取りは数ヶ月前のことだ。
 今となってはどうでもいいことで、第一、当のお相手は亡くなったらしいと突然の報せが入った。奴はアメリカ人だから葬式だとか全部向こうでやるとかで、つまり、もう会うことは永遠に叶わなくなったということ。
 俺のことを心配して、朝から慎吾やヤマトが来てくれたけど、「ありがとう」「心配かけてごめんな」「俺は平気だから」なんて、そんな言葉を易々と吐き出せるほど俺は強くできていない。なあ、それはあんただってよく分かってるところだろ?
 連絡があってから部屋に閉じこもって、今日がエイプリル・フールでないことを何度も何度も確認して、声が聞きたくて何度もせんせーの携帯に電話をかけてみた。何度鳴らせど出てこないというその事実が、舞いこんで来た報せが本当のことなのだと俺に実感させる。流風、可哀想に。ちーちゃんはそう言って俺を抱き締めて慰めた。ちーちゃんの腕の中で、事実を整理しきれなくて、そうだよな、俺って可哀想だ。ぼんやりとそう思った。
 何でこうなったんだよ、あんた何かやらかしたのかよ、殺されるなんて、いくら人相悪いからって行きすぎだろ? 何があったのか俺に教えてくれよ、畜生。散々自分の部屋を荒らして、涙なんか出てこなくて、綺麗だった部屋をどんなにぐちゃぐちゃに荒らしても、俺とせんせーの間に残ったのは何冊もの汚いノートだけだった。


 こんなんじゃもう、勉強なんかできる訳、ない。


 何のために勉強してたんだよ、あんた見返したかったからだろ? 本人いないのにどうしろってんだよ。人間性なら既に俺の方が数倍勝ってる自信あるしさ?
 先の尖ったシャーペンで何度も何度も手の甲を刺す。痛みが、刺す痛みが、ここは現実なんだと教えてくれる。どうして俺はこんなに自分を傷つけたいんだろう。どうして、少しでも死にたいと思ってしまうんだろう。俺とあんたの間にはもうノートしか残ってないって、たったそれだけの関係だったんだって今さっき確認したばっかりじゃないか。
 何度も何度も、飽きるまで手の甲を刺して、飽きたら今度は手首に。段々血が滲んできても気にならなかった。太い血管を突き破って、血を撒き散らして俺だって死ねばいいと思った。

「流風」

 しばらくすると、この散らかった部屋に父親が足を踏み入れた。この状況なのに奴が微笑んでいるのは、何か真面目な話がある証拠だろう。俺は拒絶することなく、父さんが近寄ってくるのを待った。

「死にたい?」
「…………」
「可哀想に、そりゃそうだよな、死にたいと思うに足る理由が見当たらないんだもんな。でも、今までの師弟関係ってだけで十分そう思っていいと思う。それは仕方ない。だから俺は、今ここでお前が死んだってそれは今日の流れからどうしようもないことだと思えるよ」
「………そんなに、俺に死んで欲しいわけ?」
「そんな親がどこにいるんだよ。ただ、このままだと流風には死ぬしか選択肢がないみたいだ。ひとつ違う道を持ってきたよ」

 父さんは封筒を持っていた。
 それを俺の手元に置く。
 俺は黙って封を切った。

「ちょっと職権濫用して学校に連絡取り付けた。あの先生のことだからなあ、と思ってたんだけど、案の定。これで、あと残り二人が連続殺人とかされなければ、お前のこれからの道はきちんと整ってるよ」
「………っは、何コレ、……バカじゃねぇの? まだ夏なんですけど。………バカだろあの男こんなもん用意しやがって!! こんなの、あったって、」

 尚更行けるわけがない。
 自分が死ぬなんてこと、予知していたわけではないだろう。だからってとんでもないバカだ。俺のこれからをちゃんと用意しているみたいに、そんな風にいなくなるなんて、バカ以外にどうやってあんたを形容したらいいんだろう。こんなものいらないのに。究極的には、あんたがそこにいてくれるだけで、俺はきっと満足だったのに。

「……流風、でかい声出さないで聞いて」
「なに、を、」
「お前の先生を殺した犯人の話をしよう」
「見つからないんだろ、目撃証言も証拠も何もないから!!」

 父さんは、俺の頭をぐっと自分の胸に押し付けて、ぼそりと呟いた。

「……俺はね、流風。やったのはちぃじゃないかと思ってるんだ」
「……何、言って、」
「確かに目撃証言も、証拠もないよ。でもあんな辺鄙な場所だ、ちゃんと捕まえようと思えば捕まらないわけがない。どこかで潰されたかなと思う。学校の近くってでかい土地持ってる人が多いだろ? だから無差別っていうのもあんまり考えられない気がするんだ。そう考えると、凶器が門の近くの池で見つかったってのも、ねえ。確かに犯人がそこに捨てたのかもしれないけど、捨てるより持って逃げる方が確実だし、捨てるにしたって他に場所なんていくらでもある。とにかく、単に殺されたにしては変なんだよ、流風」

 この意味分かるか? 父さんは声に出さないけどそう聞いている。
 
「……分かりたく、ない」
「俺も分かりたくない。バカだなあと思うよ、あの先生」

 そうじゃない。それだけじゃない。
 もし今の話が本当なら、あんたを殺したのは俺じゃないか。ああそうだ、だって反対された。ちーちゃんに留学の話をして、ちーちゃんはすごく反対して、でも俺は「あんたには関係ない」なんて言って押し切ったんだ。もしあれが原因なんだとしたら、俺がもうちょっと粘ってちゃんと話つけてたら、もしかしたら、あんたは。なのに、あんたは、

「俺の、ために、わざわざ、捨てたってのかよ、凶器、を」
「言ったけど、証拠とか全然ないから俺の憶測だよ。でも俺の勘だとそうだし、……血の匂いがする。まあ、俺も失職しない分ありがたいとは思うけどさ」
「なんだよ、……どうしろってんだよ、俺に……!!」
 
 こんな道、残されても迷惑だ。もう勉強なんてできない。こんなもの用意されても、悪いけど応えられるほど俺強くない。わかってんだろ、俺がどんだけ弱いかわかってんだろあんただって!! なのにどうしてわざわざ俺のこと追い込むんだよ、こんなの困るんだよ!!

「流風、こんな家出て行け」
「……は? 何言ってんだよ」
「その書類見て、今の話を聞いたお前は死ぬことなんてできないはずだ。なら生きるしかない。でもここにいちゃダメだ。これだけのことを分かってる俺が、お前を生きたまま殺すわけにはいかないんだよ」

 確かに、ここまで知って、それでも俺が自殺なんてしたら、死んでもあんたには会えない自信がある。父さんは、俺がもう少し器用だったらこんなことになってない、と付け加えた。そんなの、関係ない。悪いのは俺だ。俺があんたを殺したんだろう。犯人が捕まっていなくても、きっと、そうなんだろう。

「大きいものを失った時、すぐ近くに縋れる何かがあるのは心強い。でも、お前が縋るべきは俺でもちぃでもない。どんなお前でも飽きないで支えてくれる子がいるだろ? お前はひとりで勉強して、今持ってるそれを無駄にしないことだ。で、ちゃんと先生に手合わせて来い。お前が復讐する時は絶対今じゃない」
「っ、そんなこと言ったって、俺、」
「最低限必要なものを詰めろ、すぐ。……犯人はまだわからないけど、先生がお前の事を考えてくれてたのは事実だろ? で、ちぃは留学に反対してる。今のお前の精神状況じゃちぃに押し切られるのがオチだ。けど俺は応援してる。俺もそういう生き方しかできないから。目標のために無茶するような生き方しかできないから、俺はお前を応援してるよ」

 今まで電気をつけていなかった部屋。父さんは素早く明かりをつけて、クローゼットにしまってあった俺の旅行用のバッグを取り出して投げて寄越した。もう何がなんだかわからない。わかるのは、あとはただ俺が生きていくしかないということ。
 制服と、服を何着か詰めて、あとは教科書や参考書一式。それと、残してくれた書類と、汚いノートの束。
 こんな準備をして、ようやく涙がぼろぼろと零れてきた。
 ごめん、ごめん、本当にごめん。何度も何度も心で呟いて、これからの方が今までよりもっと頑張らなきゃならないのに、俺はやっぱり強くないと自覚する。もう強気でいるのも難しい。俺あんたがいたからずっと強気でいられたんだ。入学してからずっと、視界の端にあんたの金髪が見えるたびに、本当はどうしようもなく弱気な自分を叱咤してきたんだ。

「っ、せんせ、い……」

 会いたい。声聞きたい。もう叶わないとわかっているのに、死にたいと思ってるわけじゃないのに、どうしてもどうしてもそう思う。会いたい。声が聞きたい。一度くらい名前呼んでくれたってよかったじゃんか。俺だって結局周りのみんなみたいにあんたのこと名前じゃ呼べなかった。

「会いたい、っ、会いてぇよ、畜生っ……! 何刺されたくらいでくたばってんだよ、ざけんなよぉ……!!」

 泣き叫びながら荷物を詰める俺の頭を、父さんが撫でた。
 しばらく涙は止まりそうにない。何でこんなに悲しいんだよ、何なんだよ俺。なんでこんなに会いたいんだよ。
 乱暴に扱うからノートがばさりと音を立てて開いた。あんたの赤いペンが描く雑な軌跡。俺はそれをなぞって、また涙した。インクの上に涙が落ちないようにするのがすごく大変だった。あんたの残してくれたもの、滲ませたくない。
 やっぱり、こんなに心乱されるくらいには、あんたのこと好きみたいだ。どんな意味で好きだったんだろう。きっと、全部なんだろうな。どんな、なんて特定できないくらい、あんたを失って死にたいと思うくらい、すごくたくさんの意味であんたのことが好きだった。これから生きていかなきゃいけない俺は、あんたのことをそう思えたこと、後悔するわけにはいかない。
 でもさ、こんなに痛いなら、俺の心返してくれよ、マジで。







すごく流風視点を書きたかったんだけど、流風にとって先生の存在が大きすぎて文章にはならなかった。一人称でもよくわからなかった。多分流風自身がよくわかってないからだと思う。

流風が先生がしてくれたことを無駄にしないで生きていくには、誰かが本当のことを教えてあげなきゃいけない。でも誰でもいいってわけじゃなくて、実際にそうして挫折して、今生きてる陸さんしかちゃんとは教えられないんじゃないかなと思う。先生がどういう意味でそんな行動を取ったのか、もちろん本当のことはわからなくても、刑事の勘なんて名目で全部教えてあげて、そこまで知ったら流風は弱いから死んだりするわけにいかなくて、そこから先生きていくにはもう家を出るしか思いつきませんでした!
だからこれから芹沢邸に向かいます。流風にはもう陸さんが手出しさせません。

いっやもうダメだわ、あまりにもショッキングすぎて流風の思考がまるで読めない。怖いくらい何もなかった。泣かせればあとは早いんだけど、事が重大すぎて泣かないんだもんなあ。
泣いたら楽だったけど。絶対こいつ会いたいって叫ぶ。夢と理想を詰め込んでみた。告白シーンはいつぞやの押しかけ女房の焼き直しでなく、照れてないので素なんだと思う。そういうの可愛いなとか思ってね!
「何刺されたくらいでくたばってんだよ」とか私の台詞です。(笑)



以上。秋臼さんの続きを超☆楽しみにしてます。
もう寝ます。

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2008.03.22(Sat) | Title | cm(0) | tb(0) |

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