FC2ブログ
プロフィール

軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--) | スポンサー広告 |

おやこごっこ



「今日はボロネーゼを作ります!」

 樹理が若草色のエプロンを身に着けながら上機嫌にそう言うのを聞いて、ケレスは「そうか」とだけ返して新聞を捲った。樹理が中学に上がってしばらくした頃から、食事作りは樹理の担当になった。最初は任せるつもりなどなかったし、見た目通りの抜けっぷりを普段から披露しているから刃物なんて危険すぎてとても任せられないと思っていた。しかし樹理は、これでしっかり父親の血を引いているらしい。『学べばできること』への執着力と成長度合いは目を見張るものがあった。とんでもない方向音痴だけは教えたところでどうにもならないようではあったが、これに関してはもう諦めている。
 樹理は幼い頃から、飲み込みが早い。見た目は春の妖精のような、脳の中までお花畑ですと主張しているような華やかなものだが、これで意外と強かだし、しつこいし、負けず嫌いだ。十年以上一緒に暮らしていればそんなものも嫌でも理解してしまっている。その片鱗を見せつけられる度に、もうこの世にいない樹理の父親が脳裏をふと過ぎり、ケレスの眉間に皺を刻ませる。亡き父親の性質を深く受け継いでいるけれど、それでも見た目通りの穏やかさも兼ね備えている。少なくとも無理や無茶は好まないようで、そこはおそらく母親に似たのだろう。
 料理に興味を持ち始めたのは小学校の高学年になった頃だった。ちょうど家庭科の授業が始まったのがきっかけだったのだろう。ケレス自身は教えてやれるほど料理が上手いとは自分でも思っていないし、身近にプロがいるのだから、と休日に扇谷家に赴き、大した事情の説明もしないまま、樹理に料理を習わせた。おかげで和食は相当上手いのだが、「和食じゃシラギクに敵わないから」と家で作るのはもっぱら洋食だ。
 たまねぎ、にんじん、セロリなどの野菜をみじん切りにしながら、「ケレス」と樹理が声を掛ける。

「トマトあけて」
「どこだよ」
「そこ。買い物袋の中。ふたつとも開けて」

 席から立ち上がって言われた通りに買い物袋を見ると、トマトの水煮缶がふたつ入っていた。プルタブのないタイプの缶だったので、台所の引き出しから缶切りを取り出すとそれを使って開けてやる。大した労働ではない。中身はボウルに移してから、樹理のそばに置いておく。中身が空になった缶は軽くゆすいで、缶専用のごみ袋に入れておく。その一仕事が終わるとケレスはまた席に戻って新聞を開く。
 樹理は、缶がダメだ。ジュースなどは極力ペットボトルや紙パックのもの。缶の場合は一度グラスに移せば平気。しかしできれば触りたくないので、移す作業は誰か別の人間がやる必要がある。料理に使う缶も同じだ。今日のようなトマト缶や果物の缶も苦手だ。ホワイトソースやデミグラスソースは缶のものを使えば楽だと本人も分かっているようだが、料理するときにいつもケレスがいるとは限らないので、自分でルウから作った方がいいと思っているらしい。トマトの水煮はさすがに面倒なのでやらないようだが。
 何故ダメなのか、と聞いても樹理は首を傾げる。何でかわかんないけどダメなの、という。幼い頃は見ることさえダメで、泣いて嫌がったほどだ。わからない、という樹理の心の中にどんな映像が焼き付いているのか、それは今や、ケレスしか知らない。といっても、ケレスもその映像を見たわけではない。その状況を伝え聞いただけだ。
 樹理の父親は元々ケレスの教え子だった。何の因果かケレスと同じ大学を目指して渡米し、ケレスと同じ肩書を背負って帰国する直前に、空港で車に轢かれて亡くなった。樹理が生まれたのは学生時代真っ只中の頃のようだった。教え子の性格を考えれば意外すぎるものではあったが、彼は馬鹿ではないこともまた知っているからこそ、何か理由があって樹理が望まれたのだということはわかっている。彼は帰国前から頭痛やめまいを訴えていたらしい。忙しさの中で医者にかかる時間もなかったのだろう。あるいは、帰ってから、という思いがあったのかもしれない。人ごみの中では頭痛が激しくなるからなのか、彼は空港の外のベンチに樹理を座らせ、その目の前の横断歩道を横切ったところにある自販機で樹理に缶ジュースを買ってやって、また横断歩道を渡ろうとした。歩行者用の信号は青。他に通行人もいた。しかし歩道の途中で足を止めたのは彼だけだった。その理由はわからないが、おそらくめまいか強い頭痛が襲ったのだろう。それでもまだ歩行者用の信号は青だった。信号を無視したワゴン車が彼の体に激突しても、まだ、青かった。即死だったらしいが、目撃者の話によると血まみれの体で子供に向かって這って行ったらしい。彼が力尽きたのはあろうことか、樹理の目の前だった。血まみれの父親、その周りに血だまりが広がって、すぐそばに、中身がこぼれ出した血まみれの缶が転がっていた。そんな光景が樹理の心の奥深くに焼き付いている。後日の解剖の結果、樹理の父親の脳には腫瘍が見つかったようだ。初期のものであったらしく、少し早く医者にかかっていれば、との声も聞かれた。大人になっても父親になっても変わらなかった彼の詰めの甘さに舌打ちしたのはいつのことだったか。彼はいつもやりすぎる。肝心なところでいつも、それをわかっていなかった。だからこうして、大事なものを手放さざるをえなくなってしまう。
 野菜とひき肉をトマト缶で煮詰めるいい香りがリビングに広がった。





 シャワーを浴び終えてリビングに出ると、ソファーで小さく膝を抱えながら最新号のニュートンを捲る樹理が顔を上げた。樹理の方が先に入浴を済ませていたから、肩にタオルを掛けてパジャマが濡れるのを防いでいる。樹理は雑誌はそのままに立ち上がると冷蔵庫へ向かう。

「ビール飲む? お水? フルーツ牛乳?」
「ビール」
「はーいっ」

 フルーツ牛乳はお前だろ、という突っ込みは飲み込んでおいた。フルーツ牛乳は樹理が風呂上りに必ず飲む一品だ。
 樹理が冷蔵庫からビールと、グラスをひとつ棚から出してテーブルに置く。樹理は缶がダメだが棚や冷蔵庫から取り出したり、買い物をするくらいならできる。しかしあまり眺めていたいものでもないらしいということもわかっているので、ケレスは缶を開けると中身をグラスに移す。この作業は確かに面倒だが、十年以上続けていれば気にならなくなる。洗い物がひとつ増える程度だ。その洗い物はいつも樹理がしているから、特に文句を言う立場でもない。グラス一杯のビールを一気に飲み干すと、再びソファーで雑誌を読み始めた樹理の金色の頭に手を置く。

「お前、ちゃんとタオルで拭けっつったろ」
「だって長いんだもん」
「じゃあ切りゃいいじゃねえか」
「ケレスは髪の長い女の子が好きと聞いて」
「誰が言った」
「わたし調べです!」

 これほど頼りにならないものはない。
 樹理が小さい頃は長い髪がとにかく面倒で、いっそ切ってやろうかとは何度も思ったが、今となってはここまで伸ばしたのだから、と思わないでもない。自分が不精なせいもあるかもしれないが、樹理を美容室に突っ込んでも大概切りそろえるだけで樹理自身もあまりこのヘアスタイルを変えるつもりはないらしい。ため息交じりに洗面所に戻ると、ドライヤーを手にリビングへまた戻る。パソコンを使うために延長したコードにコンセントを差し込んで、樹理の隣に腰かけた。

「おら、乾かすから」
「はーい」

 樹理は体勢を変えて膝をソファーの上で抱え直し、ケレスに背を向けて座った。不十分なタオルドライでまだ湿っている髪を乾かしていく。髪は長いが量は多くない。ドライヤーの熱風で乾いた髪からふわふわと舞っていく。できるだけ地肌から乾かすように、軽く髪を梳かしながら髪の間に空気を入れる。
 小さい頃は風呂に入るのも乾くのも早かったからこうして乾かすこともなかったけれど、小学校高学年くらいからはこうして乾かしてやるようになった。濡れた髪のまま寝かせるとよく風邪を引くという統計がとれたためだ。自分ではまったく気を使わないところだが、あまりかけ方が上手くないと枝毛が増えるということも分かってしまった。

「ケレス、これもう読んだ?」
「ああ」
「じゃあ部屋持ってっていい?」
「好きにしろ」
「やたっ」

 誰の影響か、興味は理数系に向けられているらしい。英語は仕込んだからネイティヴの読み書きも受験英語も十分できる。反面国語はさっぱりだが、それにしたって平均以上だ。雑誌は部屋で読む方が集中できると考えたのか閉じた状態で置かれている。

「あのね、次の土曜日の午後にコトヤの軽音部がライブやるんだって」
「知ってる」
「だからエンジとオリカとコーキと見に行くの! その後ね、みんなでご飯食べに行こうって言ってるんだけど、いい?」

 樹理が男だったなら、好きにしろの一言で十分なのだろうが、一応女の子だ。親馬鹿とは違うが、平均よりは可愛いだろうとも思っている。好きに遅くまで遊びに出すわけにはいかない。それは樹理に対してもそうだし、同行するという子供たちも全員ケレスの務める学校の生徒なのだから当然だ。

「帰る前に連絡入れろよ」
「はい!」
「ひとりで行動すんじゃねえぞ、迷うんだから」
「はーい!」

 これはもう毎回言っていることなので樹理も破ったりはしないだろう。迷って困るのは自分だということも分かっているらしい。樹理の周りも、樹理が道に迷うと面倒だということは炎而を中心によく理解している。よく知っている面子だし、心配はそうないだろう。
 粗方髪が乾くと、今度はあまり熱を与えても仕方ないのでドライヤーを止める。終わったぞ、と声を掛けると樹理は立ち上がって、リビングの隅の棚へ向かった。腰くらいの高さの棚だが、その上には写真立てが一つと、冊子が一部置いてある。

「パパ、ママ、今度コトヤのライブに行くの! コトヤ、今度のライブの曲は自分たちで作ったんだって! 英語の曲だって!」

 樹理は写真の人物をママと呼び、冊子に向かってパパと呼ぶ。写真には長い金糸の髪とペリドットの瞳を持つ女性、樹理の母親の姿。父親の姿はなく、彼女が幼い樹理を抱えている写真だ。冊子は一通の論文だった。樹理の父親がケレスと同じ肩書を得た時の論文。
 樹理の父の遺品を整理した時に、三人で写っているものもあったのだが、樹理が拒否したのだ。この男はパパではない、と。ケレスも何度か写真を見せたことがあったが、その度に「違う」と拒否された。高校時代のものを見ても、確実に樹理が生まれてから一緒に撮ったものであっても、樹理は認めない。その姿の男が父親だとは、絶対に認めない。しかし父親の存在自体を否定しているわけではなく、彼が水城 流風という名前であったことや、この論文を書いた博士であることもわかっている。幼い頃は父親の膝に乗って、一緒にインターネット中継でバスケを見たことも、簡単な日本語を教えてくれていたことも覚えている。樹理に聞けば、父親の顔は覚えていないという。目の前で息絶えた血まみれの肉塊は、見せられる写真の顔であっただろう。樹理は、優しかった父があの恐ろしいものと同じとは思いたくないのだろう。だから認めないし、覚えていないという。樹理の父の姿は今や、論文と樹理の記憶の中にしかない。
 何かあると樹理はいつも写真と論文に報告する。今日はこんなことがあった、明日は何をする、嬉しかったことも辛かったことも、ケレスに話したあと必ず両親に報告する。今日も一通りのことを写真と冊子に語り終えると、満足したようにソファーに戻ってきた。

「ドライヤーわたし片づけるね。ありがと」
「片づけたらとっとと寝ろよ」
「はあい。おやすみなさい、ケレス」

 立ち上がると樹理は軽く腰を屈めてケレスの頬に唇を寄せる。それを受けてケレスも樹理の頬に口づけた。

「Sweet dreams.」
「Thanks, I will.」

 にこりと笑う樹理は本体にコードを巻き付けたドライヤーを手に、スリッパでぱたぱたと音をさせながら洗面所へと向かっていった。このやり取りも毎日の繰り返しだが、傍から見れば犯罪めいているのかもしれないとケレスは思う。樹理自身は「大人になったらケレスのお嫁さんになる!」と昔から今まで豪語しているが、その戯言も何年持つことやら。
 缶の中に残ったビールをグラスに移し、またそれを一気に呷ると息をついた。一日は、こうして終わっていく。






勝手なイメージですが、樹理が女の子だったらケレスさんは男に対してよりはちょっと優しくなるだろうと。
でも女の子の樹理も見た目以外は結構流風に似てるもんだから、そういう部分を見つけては小憎らしく思ってるといい。男の樹理は反抗期もがっつりあるし、がっつりケレスさんに似るけどな。こっちの子は随分確立されてる感じがします。
打たれ弱いのは男の方で、女の樹理はかなり強か。樹理っつーとぼろぼろ折れまくるのが持ち味だけどこっちはそうじゃない。


そいで、ガチでケレスさんのお嫁さんになると思ってる。結婚しなくてもいいからずっとそばにいたいと思ってる。疑似親子の炎而くんがタっくんと一緒にいる、って思ってくれるみたいに樹理もそう考えたらいい。
家事・料理全般得意。料理は割と流風もしっかりやるからな。学べばどうにかなることについては流風の血は強い。和食は扇谷家直伝ですごく上手だといい。普段ほえほえなくせに!
ケレスさんと樹理はアメリカ人家族みたいな結構ベタベタなやり取りをしててくれるとおいしいなと思ってます。髪乾かしたりおやすみのキスしたり! おいしいです!


慎吾バレするとこ見たいなあやっぱり。流風が報われないのは、ちょっと可哀想という気持ちもあり、ざまあwwwという気持ちもあります。
本筋炎而くんと椿の話も書きたかったのにもう無理だ。新婚なのに寝室別々でいろいろ事態の脱却を図る炎而くんとゆかいな仲間たち(冬二くん・与一郎くん・真紘・ルカあたり)を書こうと思ってた。
椿が留守のうちに勝手に模様替えしたったらええやん、という結論にたどり着いて椿の部屋入ってみたら部屋は前に見た時より随分片付いてるし、実はひとりで編み物とかはじめちゃったりしてて、椿のくせに編み物……! みたいに炎而くんがちょっときゅんとしたところで椿が帰ってきて、編み物見られちゃうしまだへたくそだしえらいこっちゃ、みたいなドタバタを書いてみたかった。
椿はあんなツンツンしてたくせにくっついたとたん嘘のようにデレるから謎だ。椿はねこタイプだよなと思います。懐くとえらい可愛い、みたいな。書きづらいが。


よし、寝ます。
スポンサーサイト

2013.03.12(Tue) | 擬似親子 | cm(0) | tb(0) |

この記事へのトラックバックURL
http://hechima1222.blog88.fc2.com/tb.php/954-512acf62
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
Name
E-Mail
URL
Title

password
管理者にだけ表示を許可
/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。