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軽石へちま

Author:軽石へちま
基本自キャラで凄まじく妄想してみる。
隠れ家なのでBLとか黒とか暗とか主。
キャラ崩壊必至。何とも思わないけども。
妄想についてこれる人だけどうぞ。

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天空への階段



「あら? あんた初めて見る顔ね。新入り?」

 色あせた暖簾をくぐって店内に足を踏み入れた拓海を一目見ると、彼女は綺麗なアイスブルーの瞳をまるくして問いかけた。昼時とあって、狭い店内は休憩中の男たちでいっぱいだ。しかし拓海は知っているし、周りの男たちもわかっている。拓海の席は、いつだって空いている。彼女が作業をする厨房が一番よく見えるカウンター席。その一番左端。この工場の作業員ならば全員、その席に座ってはいけないと理解していた。
 拓海は薄く笑う。普段誰にも見せないような、青年のような爽やかな笑顔を、一日に一度だけ、この昼時にだけ、彼女に捧げる。

「ああ、そうだ。ここのメシは地上で一番美味くて、えらく美人の店主がひとりで切り盛りしてるって聞いてな」
「褒めたってご飯以外は出ないわよ」
「そいつは残念。あんたの顔、好みなのにな」
「余程の面食いね、あんた」
「自分で言うんじゃあ返す言葉もねェな」

 これによく似た会話を拓海と彼女は毎日する。彼女は拓海を見ると、毎日言う。あんた初めて見る顔ね。拓海は毎日答える。ああ、そうだ。
 店内で定食を掻き込む作業員たちは、沈痛な面持ちでその様子を見ていた。拓海は彼らにとって頼れるリーダーなのだ。工場勤めが長く、男らしいあっさりした性格で同僚は皆拓海を慕っていた。前科者だからといって一生ここに縛り付けられる理由などない。適度に金が貯まれば皆別の仕事を求めてここを出ていく。こんなに長くここで頑張っている人が、それゆえにこんな悲しい目に遭うなんて。
 作業員たちが意図的に空けていたカウンター席に座ると、彼はメニューも開かずに日替わり定食を頼んだ。彼女はその声に「はいはい」と答える。それから、ふと何かに気付いたかのように振り向く。

「……ねえ、名前、なんていうの?」
「メシ以外は出さないんじゃなかったのか?」
「そうなんだけど。新入りさんなら名前くらい覚えておかないと」

 それが嘘であることも、皆知っている。拓海も知っている。これも毎日、繰り返されることだからだ。

「桜井 拓海」
「さくらい? あたしと同じ苗字」
「そうなのか。奇遇だな」
「あたしは紗央っていうの。桜井 紗央」

 その苗字は紛れもなく、彼から与えられたものなのに、屈託なく笑う彼女にその記憶はない。工場から漏れる機械音をバックに、彼女は忙しなく狭い店内を走り回る。濡れたような長い黒髪がその度に揺れて、心底楽しそうにアイスブルーの瞳を細めて笑う。拓海はその様子を毎日見ている。もう二度と愛の言葉を交わすことはないけれど、それでも、拓海は世界で一番、彼女のことを愛していた。
 拓海が店に来ると、それまで店にいた拓海の同僚たちは掻き込むようにして食事を終える。そうして人がまばらになった店内で拓海はゆっくり、しかし手早く食事を終えると立ち上がった。いつも同じものを注文しているから、料金はいつだって同じワンコイン。その料金だって、この店を始める時に彼女から相談を受けて、拓海が助言して決めたものだ。
 また来てちょうだいね、などと残酷な言葉を吐きながら、彼女は拓海の一番好きな表情を作る。いつまでもその笑顔は、少女のころのようにあどけない。

「指輪、してんだな。人のモンなのか」
「え?」

 来た時と同じように暖簾をくぐって外に出る直前、拓海は彼女に声を掛ける。それで初めて彼女は自らの手元に視線を向ける。
 白磁のように透き通った肌は毎日の水仕事で少し荒れてはいるが、保湿はずっと続けているらしい。左手の薬指の根本に光る銀色の輪。頂点に彼女の瞳と同じ色の淡い青色が一粒輝いている。

「……あれ、あたしいつの間に」
「よく似合ってる」
「……ありがとう」

 その優しい声を背に、拓海は店を後にした。




 その晩、拓海が路地裏の部屋に戻ると、部屋の隅で娘が小さく膝を抱えていた。電気はつけておらず、真っ暗だ。室内灯のスイッチを入れると小さな電球が仕事を始める。
 少女はあまり綺麗とは言えない、ゆったりした白いシャツに色あせた茶色のロングスカート姿だった。ただでさえ小柄なのに、膝を抱えて座っているからその小ささは際立って見えた。少女の傍らには小さなボストンバッグ。そこに少女のこれまでとこれからのすべてが詰め込まれている。

「いつまで拗ねてるんだ、みのり」

 少女の名を呼んで、拓海は彼女と視線を合わせるようにしゃがみこむ。じとりと恨みに満ちた視線で少女――みのりは拓海を見つめる。右の瞳は拓海の黒、左の瞳は彼女の母親譲りの、宝石のように輝くアイスブルー。烏の羽のように黒くて艶のある髪も、この透き通る白い肌も、その顔立ちも、母親譲りだ。数年すれば母のように目の覚めるような美人になるだろう。
 みのりは一度は上げた視線を再び下げた。だって、と消え入るような声。

「……あたしがいなくなったら、お父さんひとりぼっちになっちゃう」

 色の違う瞳に、大粒の涙を湛えて、みのりは絞り出すように言った。拓海にはそれだけで十分だった。みのりがいるだけで、それだけで、確かに自分と紗央との間には形に残るような感情があったのだとわかる。その存在をも紗央が忘れているとしても、みのりが生きている限りその証拠が消えてなくなることはない。

「いいんだよ、母さんがいるから」
「でも覚えてない」
「覚えてなくても、父さんにとっては母さんは母さんだ」

 拓海の言葉に、ついにみのりは泣き出した。この問答も何日続けたことだろう。みのりは毎日毎日目を腫らすほど泣く。どこにそんなに水分があるんだと思うくらいに。しかし拓海もそれを止めたりできるはずもなかった。この幼い娘が自分の代わりに号泣しているのだと思うと、ただ強く抱きしめて、その涙が自然に止まるまで待つことしかできない。
 みのりは今晩、空都に行く。海に沈みゆくこの大地から、人類の科学が生み出した希望の箱舟。そこではエリートの研究者や貴族たちがこぞって自分の居場所を作っている。本来ならば前科者の娘が切符をつかめるはずもなかった。拓海は奔走した。使えるものはすべて使った。このままここで、娘を危険に晒しているわけにはいかない。もとい、このままここにいれば自分もいつ紗央を忘れるかわからない。それ以上に、みのりが自分を忘れてしまった時のことを考えることが、恐ろしかった。
 控えめにドアがノックされる。腕の時計を見れば約束の時間の十分前だった。薄く扉を開けると、真っ直ぐな瞳の青年が立っていた。思わず目を見開いて、それからドアを大きく開く。

「……兄様。お迎えに上がりました」
「……まさか直々に来て頂けるとは」
「俺以外では下手な中傷の的になるでしょうから」

 この都市の花のすべてを牛耳る芹沢家。拓海を兄と呼ぶこの青年は、拓海と二十以上も年が違う、実の弟であった。今はもう拓海は芹沢から縁を切られているため、彼が後継者であることは間違いない。本来ならば立場が違いすぎる。芹沢の嫡男が、こんな治安の悪い北エリアを単独で歩いていていいはずはないのだ。

「みのり」

 まだ部屋の隅でうずくまる娘に、拓海は声を掛ける。
 みのりは動こうとしない。きゅっと唇を一文字に結んで、親の仇を見るような目でドアの向こうの青年を睨みつける。

「兄様に似てますね」
「そうか? 母親そっくりだぞ」
「顔立ちはそうなんでしょうね。けどあの目の強さは芹沢譲りでしょう」

 そう言われると、確かに娘の目力は今目の前にいる弟と似通ったものがあるような気もする。
 母親の細胞から分裂してできたような娘だが、それでも確かに自分の血も通っているのだと実感する。
 名前を呼び、みのりが無視する。そんなことをどれだけ繰り返しただろうか。十分も続けると、そろそろ実力行使に出なければと拓海が思ったところで、部屋の中にみのりより少し背の高い少女が入り込んだ。
 弟が「つばき」と声を掛けたが、彼女はそれを無視する。

「……行きましょう、大和様。あまり長居しては明日の予定に支障が出ます」
「……そうだな」

 つばきと呼ばれた少女はみのりの腕を掴んで立ち上がらせる。嫌がるみのりの声など聞いてはくれない。
 そのままみのりを強く引っ張り、抵抗できないと判断したのかみのりも足元の荷物を持ち上げた。正直、助かったと思った。拓海だけでは、結局ぐずぐずと送り出せなかったかもしれない。
 年はみのりと同じくらいだろうか。少女の瞳は強く、前を向いている。

「大和、この子は」
「椿といいます。みのりと同い年です。うちの分家の娘で、今は空都の研究室で海洋調査の助手をしています」
「優秀だな」

 拓海も部屋の外に出た。みのりを引きずって、暗い路地に立ち尽くす椿の目の前に立つと、軽く膝を曲げて彼女と視線を合わせる。黒髪も、大きな黒い瞳も、夜に綺麗に溶け込んでいる。暗いところでは顔はしっかり見えないが、きっと器量の良い子なのだろう。

「……こいつは両親とも馬鹿だからな、可哀想なくらい頭は悪い。母親みたいに料理だとか家事ができるわけでもねえ。ただ運動能力はそこらの奴には絶対負けない。使えねえかもしれないが、……よろしく頼む」

 少し冷たくも見える瞳をほんの少し伏せて、椿はこくりとひとつ頷いた。

「……芹沢の風当りは強いです。私にできることなら、微力ながらお手伝い致します」
「……頼りにしてる。みのりと仲良くしてやってくれ」
「人付き合いは苦手なので、それはどれほど期待に沿えるかわかりませんが」

 椿が大真面目にそう言うと、吹き出したのは大和だった。「お前じゃそうだよな」と笑いながらつぶやくと、拓海に向き直って軽く礼をする。

「俺が責任もって預かります。心配しないでください。しょっちゅうこっちに下りてくるんで、顔も出しますから」
「……俺のことなんか知らないも同然なのに、芹沢に楯突く真似させて、……すまん。感謝する」
「いえ、……あの生活をしていて、そこから出ようとするなんて、それができるなんて、俺は尊敬してるんです。俺もあの家を飛び出したいと思ったことがないわけではないですから」

 では、と大和が踵を返す。みのりの腕を掴んだままの椿が路地を歩き出す。みのりは数歩それに着いて歩くと、急に椿の腕を振り払って、拓海に向かって駈け出した。拓海の腰に手を回して抱き着いたみのりは先ほどまでと同じようにまた泣き出して、ぐずぐずと涙を拓海の服に吸わせている。

「おとーさん」
「なんだ」
「忘れちゃやだからね」
「……忘れねえよ」
「ぜったい!? 絶対に!?」

 両手でみのりの頬を覆う。両の親指でぐっと涙を拭ってから、その小さな体を抱きしめてやる。
 忘れるわけがない。この子が母親の中に宿ったことを知った日のことも、この子が生まれた秋の夜のことも、初めて歩いた日も、しゃべった日も、何もかも忘れるわけがない。拓海にはその自信がある。絶対に揺らがぬ自信がある。

「……お前は二番手だからな。お前のことは絶対忘れねえ」
「おかあさんのことも忘れちゃやだああ」
「お前が忘れなきゃいい。俺はここから離れられねえ。何があるかもわからん。だからお前はずっと覚えてろ。父さんと母さんから生まれたことを、お前は絶対に忘れるな」

 腕の中の娘が、こくこくと小さく頷く。何度もうなずく。ぼろぼろと涙を零しながら。
 この子が生まれて十五年。十分だ、と思う。ここまで愛せる存在にふたつも出会えたのだから、この先何があっても悔いがあるということはないだろう。あとは、みのりさえ幸せに生きてくれれば。




「幸せになれ、みのり」








瑶子さんは瑶子さんでもいいし、研究に没頭する瑶司さんでもいい。
瑶司さんだったら、助手やってた理央が発症しちゃって忘れちゃってるっていうのがいいなとちょっと思ってる。
この理央は女の子より男のが楽しいな。BL的なあれではなくて、ブロマンス的な。
もちろん通常運行で恋愛は研究の邪魔なんでしないけどイケメンは大好きです☆な瑶子さんでもおいしい。
でもそのネタは流風でやりたいからそしたら瑶子さんで通常運行のがいいですかね。まあそこまで書かないと思うけど。


タっくんが洗剤もびっくりのかつてない白さ。
このタっくん多分悪いとこない。頭くらいですかね、悪いのは。
取りあえずタっくんと紗央のとこだけ書きたい。おいしい。どうしてこうタっくんは昔逃がしたうさぎがひょこひょこ戻ってくる系のシチュエーションばかりなのか。


北エリアは刑務所だとか受刑者とか前科者が入れられる工場のあるエリア。治安悪い。
タっくんは元々警邏隊の人間で、東エリア(平民層が住んでるけど貧民街もある)で仕事してたけど北エリアに異動になってすぐ紗央を助けてるといい。後輩は穂積で。安定のやる気のなさ。
大和が生まれた年にタっくんは芹沢出てるのでお互いほとんど知らないはずだけど、初のそれなりに仲のいい兄弟関係だったらいい。タっくんと大和って仲良かったことないよね!
もうちょい年が近ければ違うんだろうけど。
「お前あの貧相な女がいいとか趣味悪すぎだろ大和」
「はあ? 毎日あんな美人相手にしてたら食あたり起こしますよ、兄様飽きっぽいじゃないですか」
「飽きねえよ、見ろあいつあの見てくれで馬鹿なんだぞ」
「蹴られてくればいいのに」
おいしくない兄弟なんて珍しいです。

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2013.05.21(Tue) | パロディ | cm(0) | tb(0) |

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